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日本のワクチン接種率、実質的にG7トップの可能性も

ポンコツ憲法下でロックダウンも罰金もなしにコロナを抑え込んだ日本

これまで当ウェブサイトでずっと追いかけてきたとおり、ワクチン接種については、すでに日本がG7諸国でもトップに達した可能性があります。というのも、対象年齢に絞って接種率を計算してみたら、1回目で8割弱、2回目でも6割を超えているからです。そして、ロックダウンもできない、罰金制度も適用できないポンコツ憲法下でありながら、昨日は東京都の新規陽性者が50人を割り込むという展開となったようです。現時点で油断は大敵であるにせよ、ポンコツ憲法下でコロナを抑え込んだ日本モデルは研究に値します。

ついに7割を大きく超えた1回目接種率

当ウェブサイトにて数日前からししば言及しているとおり、武漢肺炎(新型コロナウィルス感染症)に関し、日本におけるワクチン接種にゴールが見え始めました。「ワクチン接種記録システム(VRS)」(※)のオープンデータ上、接種完了率が、接種対象者の7割前後に達したと見られるからです。

※VRS生データのダウンロード方法
  • 次の文字列をウェブブラウザのURL欄に打ち込むと、その時点の最新データが取得可能
  • https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson
  • 上記文字列のうちの「latest」以降の部分を「{dt}/prefecture.ndjson」(※)に変えると過去データの入手が可能(※なお、{dt}は「yyyy-mm-dd」形式で日付を入力。たとえば「2021年9月24日時点で公表されたデータ」なら、{dt}の部分を「2021-09-24」に変換)

まずは、客観的なデータを確認しておきます。

首相官邸ウェブサイト、厚生労働省ウェブサイト、VRSオープンデータなどの情報を総合し、本日時点で入手できる公式データを取りまとめたものが、次の図表1です。

図表1 総接種回数と接種率
区分 総接種回数 接種率
全体合計 175,813,769
うち1回目 93,696,197 73.98%
うち2回目 82,117,572 64.84%
65歳以上合計 64,673,804
うち1回目 32,547,821 91.00%
うち2回目 32,125,983 89.82%
12~64歳合計 111,139,965
うち1回目 61,148,376 77.52%
うち2回目 49,991,589 63.37%

(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。10月12日時点で取得したVRSデータ、10月11日時点で取得した職域接種データ・重複計上データなどを使用。「接種率」とは累計接種数を『令和3年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。「65歳以上」の接種率は累計接種回数を3576万8503人で、「12~64歳」の接種率は、総接種回数合計から65歳以上への接種回数を引いた数値を7888万5741人【※12歳未満人口を1200万人と仮置き】で除して算出)

「高齢者以外」も6割超が2回接種終える

さて、この図表1、これまでに当ウェブサイトで示したものとは少し異なっています。

「12~64歳」の区分を新たに設け、比率についても、12歳から64歳の人口(※)で割って求めているからです(※ただし、住民基本台帳に12歳までの人口が記載されていないため、便宜上、「12歳未満人口」を1200万人と置くなど、数値自体は若干不正確です)。

ただ、ざっくりと現時点における「対象者への接種率」を把握するうえでは、有益な数値であるという確信を、個人的には持っています。

そのうえで、改めて図表を眺めて気付くのですが、現時点の「公式値」ベースでも、65歳以上以外において、1回目接種を終えた人が6115万人に達しており、これは、対象者(7889万人)に対して約78%という水準です。

また、2回目接種を終えた人についても4999万人で、これも対象者(7889万人)中63%という数値です。

データ入力漏れ実績は最大で1200万回も!

一方で、VRSのデータを見る際には、「未入力回数」の存在を無視してはなりません。

上記図表1は本日時点で取得したVRSのデータなどをもとに計算したものですが、現実には、VRSのデータには翌日以降に入力されているという事例が大変に多く、いちばんわかりやすい事例では、8月10日の接種実績は大変に「酷い」といえます。

VRSのルール上、接種したらその当日中に接種実績を入力しなければならないはずです。

そして、8月11日時点でVRSのオープンデータを眺めれば、4月12日から8月10日までの121日分の接種回数が正確に入力されていなければおかしいのですが、現実にはかなり不正確です。後日、データを取得すると、どんどん、どんどんと接種回数が増えて行くからです。

4月12日~8月10日の121日分の接種データ
  • ①8月11日時点のデータ…85,359,056回
  • ②10月12日時点のデータ…97,276,233回
  • ③上記の差分(②-①)…11,917,177回

(【出所】過去のVRSデータをもとに著者作成)

すなわち、8月10日までの接種実績、本来ならば8月10日までに入力されていなければおかしいのに、8月11日から10月11日までの62日間で、過去分の接種回数の入力漏れが、じつに1200万回近くも存在しているのです。

こうした「過去データの入力漏れ」の存在は、各自治体のVRS入力が遅延している証拠です。当時の河野太郎ワクチン担当相が「国費でアルバイトを雇っても良いからVRSに当日中に入力して欲しい」と強く求めていたにも関わらず、です。

入力漏れを考慮したら、もうワクチン接種はほぼ終わっている

そして、こうした「過去データの入力漏れ」はいまだに続いています。現時点においてもおそらく、「接種済みだけれどもVRSに入力していない」という事例は、数百万回分は存在している可能性が濃厚です。

仮に、「12歳~64歳」の区分において、1回目と2回目でそれぞれ300万回ずつ、合計600万回分の入力漏れが存在していた場合、図表1は次のように書き換えることが可能です。

図表2 総接種回数と接種率(入力漏れが600万回存在していた場合)
区分 総接種回数 接種率
全体合計 181,813,769
うち1回目 96,696,197 76.35%
うち2回目 85,117,572 67.20%
65歳以上合計 64,673,804
うち1回目 32,547,821 91.00%
うち2回目 32,125,983 89.82%
12~64歳合計 117,139,965
うち1回目 64,148,376 81.32%
うち2回目 52,991,589 67.18%

(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。10月12日時点で取得したVRSデータ、10月11日時点で取得した職域接種データ・重複計上データなどを使用。「接種率」とは累計接種数を『令和3年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。「65歳以上」の接種率は累計接種回数を3576万8503人で、「12~64歳」の接種率は、総接種回数合計から65歳以上への接種回数を引いた数値を7888万5741人【※12歳未満人口を1200万人と仮置き】で除して算出)

…。

いかがでしょうか。

かりに、入力漏れが1回目、2回目で300万回分ずつ存在していたとしたら、現時点において、すでに1回目接種率は人口の76%、対象者の8割以上に対して実施されたということであり、2回目も人口、対象者のそれぞれ7割近くに対して接種が終わっているという計算です。

また、社会全体で1回目76%、2回目67%というの接種率は、G7のなかではカナダと並ぶ水準でもありますし、この調子でいけば、今月中にも日本はG7諸国で接種率トップに躍り出る可能性は高いでしょう。

ちなみにデータサイト “Our World in Data” によれば、「公式ベース」での日本のワクチン接種率は、G7ではカナダ、イタリア、フランスに次いで4番目ですが(図表3)、もしも接種率が図表2のとおりなら、カナダに次いで2番目に浮上します。

図表3 ワクチン接種率国際比較

(【出所】 Our World in Data “Share of people vaccinated against COVID-19, Oct 11, 2021”)

ただし、昨日の『いよいよ最終段階のワクチン接種』でも述べましたが、都内某区の場合、すでに予約なしでの接種を開始しているほか、集団接種会場についても撤収が始まっています。

また、現時点のVRSデータでも、1日当たりの増分は平日で100万回前後と、先月までの150万回前後という水準からは大きく落ち込んでいます。諸外国の事例に照らしても、接種率が社会全体の7~8割に達した場合には、それ以上、ワクチン接種は進まないという傾向が見られます。

このように考えるならば、そろそろワクチン接種も「頭打ち」、といったところでしょう。

東京都で新規陽性者が「50人割れ」!

もっとも、東京都のオープンデータによれば、昨日の新規陽性者数は49人(!)と、ついに50人の大台を割り込みました。

都内のコロナ動向<10月11日(月)時点>
  • 新規陽性…49人(前日比▲11人、前週比▲38人)
  • 7日平均…109人(前日比▲5人、前週比▲87人)
  • 重症者数…62人(前日比▲5人、前週比▲15人)
  • 新規死亡…6人(前日比▲1人、前週比±0人)

(【出所】東京都『新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』、『新型コロナウイルス感染症重症患者数』より著者作成)

毎週、月曜日は新規陽性者の報告数が落ち込む傾向が見られるのですが、それにしても「49人」というのは、大変に低い水準です。というのも、東京都で最後に50人以下となったのは「昨年の」6月25日の48人以来のことでで、じつに473日ぶり(!)の快挙だからでもあります。

また、7日間平均値についても109人で、これは108人だった昨年7月8日以来、460日ぶりの低さです。

重症者は依然として62人と高止まりしていますし、新たに亡くなる方もいらっしゃいますが、それにしても、新規陽性者数が5773人に達した8月13日の状況とは、大きな違いです。

ロックダウン、罰金、行動監視などを行っている諸外国と異なり、緊急事態条項を欠くなどの「ポンコツ憲法」下で、政府にできることといえば「マスク着用のお願い」、「営業自粛のお願い」くらいなものしかないにも関わらず、ここまでコロナを鎮静化させた日本の事例は、これはこれで非常に重要な研究対象となり得ます。

いずれにせよ、現時点において油断は大敵ですが、人類と疫病との戦い、「手洗い・マスク着用の徹底」、「集近閉(しゅう・きん・ぺい)の回避」、「一気にワクチン接種を進める」といった「日本モデル」が、今後の世界の防疫における先進モデルとされるのかもしれません。

もっとも、『徹底して自分に甘いテレビ朝日:説明は明らかに不十分』などでも指摘した「テレビ朝日女性従業員泥酔ビル転落事件」の例にも見るとおり、マスメディア業界の意識の低さは何ともならないところではありますが…。

せめて1ヵ月くらい自主停波しては?「甘い、甘い、甘すぎる」!昨日の『「転落事件」から1ヵ月:ダンマリ決め込むテレビ朝日』の「続報」が出てきました。株式会社テレビ朝日が(なぜかPDFファイルで)例の不祥事についてやっと1ヵ月ぶりに詳細を発表したのですが、事実関係の調査と発表になぜ1ヵ月もの時間を要したのか、そして関係者に対する処分があまりにも軽すぎないか、読めば読むほど疑問に感じます。テレビ朝日がやっと報告書を公表昨日の『「転落事件」から1ヵ月:ダンマリ決め込むテレビ朝日』では、テレビ朝日とい...
徹底して自分に甘いテレビ朝日:説明は明らかに不十分 - 新宿会計士の政治経済評論
新宿会計士:

View Comments (16)

  • わたしの懸念ですが 海外発行のワクチンパスポートの有効性です。
    日本では 優れた有効性のある ファイザー、モデルナ、アストロゼネガが すべて メーカー規定の通りのきっちりした接種手順、接種間隔で うたれました。
    日本で接種された場合のワクチンパスポートは 大変信頼性がたかいことになります。
    一方 海外発行のものは どうでしょうか?
    ファイザー、モデルナ、アストロゼネガ以外のワクチンパスポートは認めるのか。
    かの国のように 製剤混合やメーカー推奨でない接種間隔でうたれた場合、有効と認めるのか。
    いい加減な国のワクチンパスポートは 有効性に警戒してもらいたいです。
    国民の中にワクチン接種による優劣がおきなかったことは 安倍・菅政権の 偉大な業績と思います。

    • 当然のことながら、日本入国にあたっては、日本で承認されたワクチン、少なくともWHOで承認されたワクチン接種済みであることが必要でしょう。
      ただし、中国・ロシアの取り扱いはちょっと面倒かもしれません。ロシアはさておくとしても、中国製ワクチンではダメとかにすると(そうしたいのは山々ですが)、中国が無茶苦茶な「報復」に出てくることはほぼ確実だからです。防疫当局としては頭の痛いところでしょうね。

  • 1回目接種率が社会全体の7割を超えていますのでそろそろ頭打ちになるかと思います。
    そうなれば接種実績は2回目が多数を占めるので思ったより早く終わりそうですね。
    例えば
    今までは一日の接種能力が120万回=1回目、60万回/日+2回目、60万回/日ですが
    1回目が頭打ちになり減少すればおのずと2回接種の回数は増えます。

  • MLBのポストシーズンの試合テレビで見たけど、アメリカの観客、ほとんどマスクしないで大声で応援してる。まだまだ新規感染者出てるのにね。
    最近知ったんだけどアメリカのコロナ治療は有料だって。
    医療面でも経済面でも命知らずの人たち。

    • 救急車を呼ぶと千ドルかかる国ですので、中産階級の真ん中辺以下は血を吐くくらいにならないと病院に行かないという凄い背景があります。有料とは普通の家庭に暮らしむきから子供の将来にまで影響が出る借金ということでして、結局、正常性幻想くらいしか逃げ場がないということなのだと思います。二党制でコロコロ入れ替わるから長期的な政策が行われないのは必ずしも有権者個々の責任とも言えませんし、命知らずと言ってはちょっと気の毒な気がします。

  • 中国の水際対策はすごいらしい。自国のワクチンの効果に自信がないから世界的な終息までやると思うよ。感染爆発してやっぱりファイザー、モデルナ打ちますじゃ面子丸つぶれだから。

    • sqsq様

      中国の伸ばした腕の上向けた手のひらから鳩出す広報さんの言う事は信じようが無いとしか…

      共産香港になった瞬間から香港の陽性者ゼロになるわけなかろうもん。

      実際は深圳とかから商品出荷する港湾施設とか麻痺してるし。

  • ここは、河野元大臣の「120%」もうなずける結果、とほめてあげないといけないでしょう。

  • 最終局面だと実感した話です。
    私がワクチン接種した 8 月頃は、10 ヶ所くらい接種場所の選択肢がありました。
    ようやく 1 回目を接種したばかりの友人の話では、1 回目は場所を選べたけど 2 回目の接種場所は 1 ヶ所しか残されていないそうです。

  • 秋田県でまた常温放置ワクチン1200回分とか、JR蕨
    の変電所火災で首都圏鉄道大わらわとか、全国で水道配水管断裂とか、活動家の皆さんも大忙しの今年であった…

  • 波は過ぎたみたいだけど、なんとなくまた次の波が来るんだろうなって思うから、落ち着いたこの間に、医療体制とか防疫と経済との両立とかの準備を進めて欲しいと思うのです♪

  • 1回目と2回目の差(1回目は接種したけど2回目はまだの人)が、10月に入ったあたりからじわじわ縮まってきているような気がします。
    8月初~9月末までは1400万~1600万回あった差が、10月に入ってから縮まってきて今は1150万回です。
    やはり新宿会計士様の早くからの読み通り、9月中に希望者全員への1回目が完了し、これまで接種を躊躇していた人が打ち始めるフェーズへとすでに入ったのでしょう。

  • ワクチン接種率が諸外国より抜きん出て高いわけでもないのに、収束しつつある日本モデルは謎です。ひとつの仮説として、マスコミが「テレビ朝日女性従業員泥酔ビル転落事件」のような例を起こして顰蹙を買ったため、マスコミ関係者が自粛したせいで第4波がピークアウしたのかもしれません。ヒヒ
    第4波は東京オリ・パラを潰そうとしたマスコミの自作自演であるというと陰謀論に近くなりますが、だってねー、ピークの時であっても自分の周りに新規感染者が出たという話を聞きませんでした。Qアノン様に聞いてみよう。

    • マスコミが自粛したという要素もあるかも

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