レジ袋無料化こそ、国民生活を抜本的に改善する切り札になるのでしょうか。昨日発足した岸田文雄内閣では環境相も交代しました。あえて岸田政権にひとつ注文を付けるとすれば、政策をちゃんと見直したうえで、それらに誤った政策があったのであればその事実を認め、誤った政策を撤回する勇気を持つことだと思います。岸田政権にそれができるでしょうか。
2021/10/05 15:00追記
本文中にPDCのことを「Plan-Do-See」と記載してしまいましたが、この略だと「Plan-Do-Check」であるはずですので、修正しています(厳密にはこれに「Action」を加え「PDCAサイクル」などと呼ぶこともあるようです)。
目次
倍・菅政権の失政
消費増税という大きなミス
当ウェブサイトに対しては、「安倍晋三総理や菅義偉総理に対する評価が少々高過ぎるのではないか」といった批判ないしは苦言をいただくがあり、そのようなご批判は真摯に受け止めたいと考えています。
少し言い訳をさせていただくならば、いちおう、普段から安倍・菅政権の経済政策については批判的な視点を持っているつもりです。
とくに、2回に及ぶ消費税等の増税は、日本経済の回復を腰折れさせたと考えていますし、「アベノミクス」(の成れの果て)も、結局のところ、3本柱のうちのひとつだったはずの「財政政策」がまったくもって不十分だったことについては認めざるを得ないと考えている点です。
その意味では、安倍・菅両政権下で副総理兼財相を務めた麻生太郎総理の責任は非常に大きいと考えざるを得ません。
敢えて麻生総理を擁護してみる
もっとも、安倍総理が、本来ならば2014年4月と2015年10月、立て続けに予定されていた消費税等の増税について、2回目の増税を2019年10月にまで延期したのは、麻生総理が財務省をしっかり押さえていたからだ、という見方ができるとは思います。
著者私見で恐縮ですが、日本の総理大臣というものは権力基盤が弱く、これに対し財務省は国の財政の入口(国税庁)と出口(主計局)を一手に支配しており、財務官僚は下手な国会議員よりもはるかに大きな政治的権力を持ってしまっています。
あくまでも結果論ですが、安倍総理は連続在任期間として史上最長を記録したものの、その安倍総理ですら、財務省と「正面対決」することはできなかったのではないでしょうか。
すなわち、日本を取り巻く外交・安全保障環境が厳しさを増す中で、安倍・菅政権は日米同盟重視・「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」推進にエネルギーの多くを割いたのだ、という言い方をしても良いのだと思います。
すなわち、日本の外交・安全保障のFOIPシフトは間違いなく安倍・菅政権の遺産ですが、財政再建原理主義を掲げる財務省の支配を打ち破ることができなかったという意味では、やはり「仕事を途中にしてしまった」という気がしてなりません。
国民の敵の駆逐が急務
このあたり、当ウェブサイトとしては『憲法改正だけでなく「放送法改正」についても急ぐべき』を含め、これまでに何度となく述べてきたとおり、憲法改正もたしかに重要だとは思う反面、わが国が本当に急がねばならないのは、「自由・民主主義に反する勢力の影響力の駆逐」だと考えています。
こうした勢力については、少し言葉が悪いのですが、当ウェブサイトでは敢えて「国民の敵」という概念を使っています。
国民の敵とは?
自由・民主主義から逸脱した存在であって、少なくとも次のいずれかに該当する存在
- ①有権者から民主的な選挙で選ばれたわけでもないくせに、不当に大きな政治的権力を握り、日本の国益を毀損している存在
- ②自由経済競争で勝ち残ったわけでもないくせに、不当に大きな社会的影響力を握り、日本の国益を毀損している存在
(【出所】著者作成)
このうち、財務省や財務官僚は、①の定義にピタリと当てはまっていることに注目してください。
「直間比率是正」だ、「国の借金抑制」だ、「少子高齢化」だ、「社会保障財源」だ、と、言い分をコロコロと変えながら、この「失われた30年」でひたすら増税を繰り返してきた財務省は、「国民の敵」であり、人体でいえば癌のような存在です。
ただ、財務省を筆頭とする官僚組織の政治的権力はあまりにも大きく、また、官僚機構が新聞、テレビなどのオールドメディアを支配し、オールドメディアは自民党を批判し、野党を徹底的に擁護するという形で、日本の世論も悪い方向に歪められています。
非常に残念ながら、財務省やオールドメディアなどの政治権力、社会的影響力は、一朝一夕で低下させられるようなものでもありません。
レジ袋有料化
官僚利権の表れが環境省のレジ袋有料化
もっとも、「国民の敵」は、正当な活動を通じて政治権力・社会的影響力を握ったわけではありません。この手の理不尽に成立し、理不尽に国を苦しめる構造、まさに「利権」そのものでしょう。
財務省の場合も結果的に同省に大きな権力が集中する構造が出来上がってしまい、その利権は「増税」によりますます増長します。つまり、増税という日本のためにならない行動が、財務省の権力をさらに増すという形の矛盾が生じているのです。
ただ、これも当ウェブサイトで常に申し上げているとおり、利権には3つの特徴があるのですが、その3番目の特徴として、「得てして利権を持っている者の怠惰や強欲で利権が自壊することもある」、というものがあります。
利権の3つの特徴
- ①利権は得てして理不尽なものである。
- ②利権はいったん確立すると、外からそれを壊すのが難しいという特徴を持つ。
- ③ただし、利権を持っている者の怠惰や強欲で利権が自壊することもある。
(【出所】著者作成)
その「霞ヶ関で自壊しそうになっている組織」の典型例が、レジ袋有料化を強引に進めた環境省ではないでしょうか。
ちなみに環境省の現在の中井徳太郎事務次官が就任したのは、レジ袋有料化後の昨年7月のことですが、その中井氏は1985年に東大法学部を卒業し、大蔵省に入省し、20歳代で税務署長という「エリートコース」などを歩み、その後は主計官などを歴任したという、バリバリの「財務省出身者」です。
その中井次官は昨年7月22日の就任会見で、「炭素税」などの必要性に言及するなどしているほどです。
環境省の新次官、就任会見で炭素税の必要性強調
―――2020年7月23日 7時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より
当ウェブサイトとしては、この中井氏という人物は、環境行政の専門家というよりも「増税利権一族」の一員のようなものではないかと疑っているのですが、環境省がその後、レジ袋有料化の検証をやろうとしていないことも、こうした疑いを抱かせる要因でしょう。
国民の敵には「PDCを欠いている」という共通点が!
この点、『レジ袋有料化も日本学術会議の提唱がきっかけ=元会長』などを含め、以前から指摘してきたとおり、日本の行政には「PDC」(Plan-Do-Check)が欠落しています。
レジ袋有料化によって、具体的にどれだけ二酸化炭素の削減が実現できたのか、レジ袋有料化の社会的弊害はどのようなものであったのか、などについて、行政サイドの検証がまったくないのです。
ちょうど、財務省がゴリ押しした消費税等の増税を巡っても、その増税が日本経済の成長力をどれだけの押し下げたのかに関する包括的な検証が存在していないのと同じでしょう。
あるいは、オールドメディア自身が2009年8月の偏向報道について何ら検証していない、最大野党である立憲民主党が2009年9月からの3年3ヵ月間の民主党政権について何ら検証していないのを見ると、財務省、オールドメディア、立憲民主党はまったく同じマインドの持ち主であるように思えてならないのです。
結局、レジ袋有料化に「メリット」があったとすれば、小泉進次郎氏が将来、首相になれる可能性を減らしたということくらいでしょうか。
ポリ袋メーカーの説得力のある発信
ただ、レジ袋有料化の検証を環境省が行っていないからといって、悲観する必要はありません。
レジ袋メーカーの清水化学工業のウェブサイトによれば、ポリ袋の環境負荷が非常に小さく、じつは大変に環境に優しいという事実が掲載されています。
脱プラ、脱ポリ、紙袋へ切り替えをご検討のお客様へ
―――清水化学工業HPより
同社ウェブサイトには、このような事実が紹介されています。
- ポリエチレンの燃焼時に発生するのは二酸化炭素と水、そして熱。ダイオキシンなどの有害物質は発生しない。ごみ処理場で焼却されれば、燃料的役割を果たし、重油などの本来燃料の削減となる。
- 石油精製時に(ポリ)エチレンは必然的にできるので、ポリエチレンを使用する方が資源の無駄がなく、エコ。ポリエチレンは石油をガソリン、重油等に精製した残り・余りもの。
- ポリ袋は薄いので、資源使用量が少量で済む。
- ポリ袋は見かけほどごみ問題にはならない。目に見えるごみの1%未満、自治体のごみのわずか0.4%。
- 繰り返し使用のエコバッグより、都度使用ポリ袋は衛生的。
- ポリ袋はリユース率が高い。例)レジ袋として使用した後ごみ袋として利用
- 自治体によってはサーマルリサイクルし、ごみ焼却燃料になり、重油燃料の使用量がその分減少し、無駄とならない。総二酸化炭素排出量は、サーマルリサイクルしても、そうしない場合と大差ない。
- ポリ袋は紙袋の70%のエネルギーで製造可能。
- ポリ袋の輸送に必要なトラックの量は、紙袋の7分の1。
- ポリ袋の製造に必要な水の量は、紙袋の25分の1。
- ポリ袋は紙袋に比べ、ごみにしてもかさばらない。
- 紙袋は再生できるものと再生できないものがある。ラミネート加工されているものや紐の種類によっては再生処理できない。
- 紙袋は森林資源を利用。
レジ袋有料化が、いかに意味がない政策であるか。
見事な説明でしょう。
新環境相はどう出るのか?
こうしたなか、桜田義孝衆議院議員がこんなツイートを発信していたようです。
桜田議員は山口壮・新環境相に対し、レジ袋有料化のメリット、デメリットについて「直接相談した」と述べています。
いかなる政策であっても、必ず見直しが必要であること。
誤った政策であれば、それを「やめる」という勇気が必要であること。
著者自身、日本の役所には「誤りを頑なに認めない」という弊害があるとは思っていますが、それでも、私たち有権者の声が大きくなれば、役所に誤りを認めさせ、政策を撤回させる原動力になるはずです。
岸田文雄首相も、まずは「レジ袋有料化撤回」を政権公約に入れてみてはいかがでしょうか。
View Comments (26)
見出し「国民の敵には「PDCを欠いている」という共通点が!」
部の冒頭、
「・・日本の行政には「PDC」(Plan-Do-See)が欠落しています。」
この部分Cは「Check」ではないでしょうか・・?
hiro 様
まったくご指摘のとおりです。早速修正します。ご指摘大変にありがとうございます。
いや、PDSサイクルのことをおっしゃりたかったと思われるので、むしろ「PDS」と記載すべきだったと思われます。
自己レスではあるのですが、
個人的にいわゆる官僚や行政組織は、
「自分たち(とそのお仲間の近い組織)の決めたことに間違いはない。
間違いを認めたくない」あまりに、
「やったことや決めたことに、見直しや振り返りが全くない。」
(元に戻すことは「作戦失敗」を認めることになる?)
と前々から思っていたので、会計士様のこの部分の内容については全く同意します。
PDCA もPDSどちらのサイクルも「見直し、評価」はありますからねえ・・
犬HK 様のご指摘もごもっともです。
hiroさま
返信ありがとうございます。
既にサイト主殿がPDCである旨コメントされておりますね…
ただ、PDCとするならば、PDCAの「C」が欠落している、と記載すべきであるように思いますが、意味が通ればいいですね。
見直しや振り返りは、一般企業であれば、自社内や取引先からしょっちゅうやらされます。
また、得られた知見から軌道修正を図るのは、技術者などでは当然のことです。
官僚や行政組織(分科会も?)がこれらを全く行わないのは、
(1)主張が全くのデタラメと認識
(2)責任を取りたくない
(3)手放したくない利権
の1つ以上であることを疑います。
結局、レジ袋を業務スーパなどで買ってます。生ごみを入れたり、冷凍庫の食品をくるんでおいたり使い道はいろいろです。100枚で、百数十円くらいからあります。もちろんエコバッグも使ってます。
単純に目立つところをやり玉にあげるのは、やめて欲しいです。もっとも、小泉進次郎先生を大臣に推薦した人は、レベル感を広く知らしめてくれた功労者だと思います。
余談ですが、地元選挙区の議員さんが経済安保相になられました。どこかの2代目かと思いこんでましたが、自民党の公募で立候補、当選でした。こうゆうテーマに担当大臣がいるのは、重要だともいます。
他からのご指摘もないようですので卒爾ながら…
この記事の目次、本文見出し共に"安倍・菅政権"が"倍・菅政権"になってしまってます。
ポリ袋より再エネ還付金をどうにかしてくれ、こちらの方が経済に悪影響を及ぼしていると思います。
最近発電コストで太陽光が一番安いとか試算出てますけど、だったら再エネ還付金何とかしろと思うんです。
還付金じゃなくて再エネ「賦課金」かな?
ありがとうございます。
そうです、本当に還付金なら嬉しいのですけど。
賦課金を設置者の利益に換算してコストが安いとホラ吹いてるんじゃないかとすら疑います。
当時ごみ分別をする理由をガラスや金属のリサイクルと同時に、ライフスタイルの変化で倍増したプラスチックゴミの燃焼熱で焼却炉が傷んでしまうからと説明された記憶があります。
しかし年月が経ち設備更新も進み焼却炉の性能が向上した結果、いまや考慮不要になって逆に重油節約に添加されるのは本文中に示された通り。
ポリ袋は海洋ゴミの0.4%を占めるにすぎず、小泉大臣も反論をぶつけられたら啓発、意識改革に意義がある、とお茶を濁した回答するので精一杯。なんとも環境省の仕事してますアピールにうまく乗せられました。
レジ袋については、マスコミは、「マイクロプラスチックの削減」というキャンペーンを展開していました。清水化学工業の主張はもっともですが、「例えわずかでも、海洋ゴミを減らすべきだ」と騒ぐ人々はいそうですね。
レジ袋の有償化で自分に起きたことは、買い控えです。
自分の経験からすると、エコバッグを持っていない時には、買い物を控えることが多いのです。エコバッグを持っていたとしても、無意識に「買う物はエコバッグに入るだけ」にしてしまいます。
また、小心者なので、精算を済ませた物を、長時間レジ前を占領して詰め込むことが憚られるのですね。できるだけ少なく買い、さっさと詰めて立ち去るため、買う点数は最小限にすることがあります。衝動買いも減り、ちょっとコンビニに立ち寄るということも激減しました。
しかし、ゴミ袋用に、レジ袋は買っています。自分的には、環境負荷は大きく減っていませんね。セブンイレブンでは、レジ袋の売り上げが半年で5億円を超えるらしいので、レジ袋の削減は、消費者への価格転嫁に過ぎなかったのでしょう。
ポリ袋って海に流れても分解されないってのが問題じゃなかったっけ?
もっともその対策として、有料化が何の意味があるのかはわかんないけど・・・・・
>紙袋は森林資源を利用。
あと、ここんとこには製紙業界の言い分をのせておくのです♪
日本製紙連合会のページなのです♪
https://www.jpa.gr.jp/env/proc/efficient-use/index.html
一応、海に流れて分解されないものは有料化するけど、分解されるものは有料化対象外というたてつけのようです。
https://www.soumu.go.jp/kouchoi/substance/chosei/rejibukuro.html
の資料2-2
袋が厚ければ、再利用できるから有料化対象外、というのも不思議な基準とは思いますが。
>政策をちゃんと見直したうえで、それらに誤った政策があったのであればその事実を認め、誤った政策を撤回する勇気を持つこと
これって大切だけど、すっごく難しいと思います♪
役所からこの政策は誤りだったなんてなことが出てくれば、鬼の首を取ったかのように「任命責任」とか言い出すのが目に見えるのです♪
本当は冷静に政策評価して、目的が達成できたのか?目的や手段は合理的だったのか?改善が必要ならどう改善すべきか?ってやんなきゃだけど、表でやると荒れちゃって、なんの生産性もない活動になっちゃいそうなのです♪
1. 日本の組織では、それが公的なものであれ、或いは私的なものであれ、一つの政策決定、実行についてのPDCAがないというのは概ね共通しており、それは根本的な欠陥といわざるを得ないと思います。よりよきものを希求し、実現する、との観点からはPDCAのようなprocessは不可欠。PDCAが有効に実行されていない原因は何なのでしょうか。政策の失敗、欠陥に対する批判を恐れているからでしょうか。もしそうであるなら、これはやはり公的な組織であれ私的な組織であれ、権力の私物化の一作用という事だともいえるのでは。組織としては、健全なる批判を大いに歓迎し、よりよき姿を実現するとの風土が非常に大切です。歴史を正しく顧み、これを国家の政策に反映するという事もいってみればPDCAと同義です。
2. ポリ袋についてもしかりです。かつて私は仕事でフィリピンに駐在していましたが、当時フィリピンでやはりポリ袋が禁止となりました。最大の理由として指摘されていたのが、排水溝がつまり、これが大雨時の洪水発生原因の大きなものとなるとの点でした。確かに路上にぽいぽい捨てたポリ袋は都市部の洪水原因でしたが、日本ではそれは無いのでしょうね。積水化学のHPの指摘は大いに参考になりました。有難うございます。
海洋プラスチックの主な原因は漁網、マイクロプラスチックのメインは人工芝。脱炭素の悪者代表格石炭発電もIGCCなど高効率燃焼技術がある。だが、「意識の高い」環境マフィアの前では聞く耳を持ってもらえない。レジ袋を再度無料化したら嬉々として攻撃してくるだろうな。ついでに外国に発信するまでがセット。