「希望する全国民」への２回接種はあと６週間で完了か

公式発表ベースで国民の過半数がワクチン２回接種を受けたと報じられましたが、こうした状況がとにかく「面白くない」と感じる方もいらっしゃるようです。その方は、「国民の２人に１人はまだ接種が終わっていない」、「いまだに予約も取れない方々への接種をより進めるべき」などと苦言を呈したそうです。この方は、国会議員としてそのために何か具体的な努力をなさったのでしょうか？本当に、何に対しても文句を付けるだけのお立場の方は、楽で良いですね。

ワクチン接種、早ければ来月にも２回接種がほぼ完了

ワクチンの「２回目接種」を受けた人が、人口の過半数に達したとする話題については、昨日の『おそらく50％を超えた日本のワクチン「２回接種率」』で言及した直後に政府から公式に発表されました。

このあたり、ずっと「ワクチン接種記録システム（ＶＲＳ）」のデータをチェックし続けていれば、だいたい１日あたり平日で150万回前後・週1000万回前後のペースでコンスタントに接種実績が積み上がり続けていることはすぐにわかる話です。

ひとつの「悩み」があるとすれば、ＶＲＳへの未入力が常時600～800万回分、下手をすると1000万回分は存在し、その分、現時点における「本当に正確な接種実績」が把握し辛い、という点ではあります（『ワクチン接種「未入力」の実態は600～800万回？』等参照）。

ただ、いまやワクチンの総接種回数が1.4億回を大きく超えているなか、現時点の正確な総接種回数が「1.4億回」なのか、「1.5億回」なのかによって、防疫に向けた情勢が大きく変わるというものでもありません。後述するとおり、早ければ10月中にも、希望する全国民へのワクチン接種が完了すると見て良いからです。

もちろん、自治体によっては、（敢えて言葉を選ばずに申し上げるならば）「能力が著しく低い」ため、いまだにワクチン接種の順番が回ってこない、というケースもあるようですが、こうした「アウトライヤー自治体」を除けば、多くの自治体で、遅くとも10月中にはほぼ２回接種が完了します。

菅義偉総理大臣が８月26日に視察（図表１）した墨田区のように、接種率を上げるべく創意工夫を凝らしている自治体もあります。もしかすると、早い自治体の場合は、すでに終了のめどが立っているケースもあるのではないでしょうか。

墨田区役所ワクチン接種会場視察

―――2021/08/26付　首相官邸ＨＰより

墨田区役所ワクチン接種会場視察等についての会見

―――2021/08/26付　首相官邸ＨＰより

図表１　【参考】ワクチン接種会場を視察する菅総理（※クリックで拡大）

（【出所】首相官邸ＨＰ）

現時点の接種状況は「1.45億回」

こうしたなか、いちおう「資料」として、現時点の接種状況についても確認しておきましょう（図表２）。

図表２　総接種回数と接種率

区分	総接種回数	接種率
全体合計	145,790,344
うち１回目	80,576,158	63.38%
うち２回目	65,214,186	51.30%
65歳以上合計	63,594,024
うち１回目	32,095,031	90.44%
うち２回目	31,498,993	88.76%
高齢者以外合計	82,196,320
うち１回目	48,481,127	52.90%
うち２回目	33,715,193	36.79%

（【出所】ＶＲＳオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。９月14日時点で取得したＶＲＳデータ、９月14日時点で取得した職域接種データ・重複計上データなどを使用。「接種率」とは累計接種数を『令和２年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。高齢者接種率は累計接種回数を3548万6339人で、「高齢者以外」の接種率は、接種回数合計から65歳以上接種回数を引いた数値を、9164万2566人で割って求めたもの）

※ＶＲＳ生データのダウンロード方法

• 次の文字列をウェブブラウザのＵＲＬ欄に打ち込むと、その時点の最新データが取得可能
• https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson
• 上記文字列のうちの「latest」以降の部分を「{dt}/prefecture.ndjson」（※）に変えると過去データの入手が可能（※なお、{dt}は「yyyy-mm-dd」形式で日付を入力。たとえば「2021年８月５日時点のデータ」なら、{dt}の部分を「2021-08-05」に変換）

なぜ「10月中に完了」といえるのか

日本の人口は令和２年度で1億2712億8905人だそうですが、ここから12歳未満の人口（約1200万人）を除くと、接種対象者はざっくり1.15億人であり、先行する高齢者3548万6339人を除外すれば、「後回し」にされた集団はざっくり8000万人前後ということです。

この8000万人の８割が接種する（２割は何らかの理由で接種しない）とすると、6400万人が２回接種を受ければ、日本におけるワクチン接種は終了です。なお、接種率が「９割」だとすれば、あと800万人増え、トータルで7200万人です。

この点、「高齢者以外」の区分だと、現時点で接種が完了しているのが、公式ベースで１回目が4848万1127人、２回目が3371万5193人ですので、８割接種を目指すなら、１回目についてはあと1600万回、２回目についてはあと3000万回、あわせて4600万回ほど接種が必要です。

（※ただし、９割接種を目指すなら、必要接種回数は１回目が2400万回、２回目が3800万回、あわせて6200万回に増えます。）

もっとも、現時点におけるＶＲＳの未入力回数が1000万回だとすれば、接種が必要な回数は「８割接種」なら3600万回、「９割接種」なら5200万回に減ります。実際のところはこの「3600～5200万回」の間に収まると考えて良いでしょう。

現在の接種速度は１週間で1000万回前後ですので、残り４～６週間、すなわち10月中旬から下旬ごろには、「希望する全国民への２回のワクチン接種が完了する」と考えられます。とりあえず「希望する全国民への２回のワクチン接種」という、最初のゴールは完全に見えてきたわけです。

村田齊藤謝蓮舫さんの発言

ただ、これが面白くないと感じる人もいらっしゃるようです。

蓮舫RENHO・れんほう@立憲民主党

2人に1人がまだ受けられていません。
予約が取れない不安の方々をなくすために何でも協力します。
臨時国会を開いて与野党一致で出来うる施策全てを。
―――2021年9月13日 21:07付　ツイッターより

蓮舫RENHO・れんほう@立憲民主党

『2回目接種が全国民の5割』との見出しに違和感。
64歳以下で見ると東京は33％、北海道20％、京都22％、大坂24％と2割から3割。
菅総理もワクチン接種は進んでるとよく言われますが、未だ予約も取れない方々への接種をより進めるべきです。
２回目の接種、全国民の５割…
―――2021年9月14日 10:04付　ツイッターより

「蓮舫（れんほう）」さんとは、村田蓮舫参議院議員のことです。

公式には「蓮舫」、あるいは「蓮」と「舫」の間を開けて「蓮　　　舫」などと名乗っておられ、まるで「蓮」が姓、「舫」が名であるかのように見えることもありますが、なぜかたくなに村田参議院議員が苗字を名乗らないのかについてはよくわかりません。

いちおう、参議院のウェブサイトによると、現在の本名は「村田蓮舫」さんではなく「齊藤蓮舫」さんだそうですが、ツイッター上では「renho_sha」、すなわち「謝蓮舫」さんと名乗っておられるなど、姓が多数あるようですので、当ウェブサイトでは「村田齊藤謝蓮舫」さんと呼称させていただくこともあります。

それはともかく、「日本国民の50％以上が２回接種を終えた」という状況、村田参議院議員は「国民の２人に１人がいまだに受けられていない」と苦言を呈しておられます。

先ほど申し上げたとおり、順調にいけば、あと１ヵ月半（あるいは長引いたとしても２ヵ月）ほど待てば、希望する国民への２回接種が完了する計算です（※ただし一部自治体だとこの限りではありませんが…）。

国会議員であり、かつ、過去には最大野党だった（旧）民進党の党首を務められたという方が、人々の不安をいたずらに煽るようなツイートを積極的に発信なさるのも、いかがなものかと思います。

立憲民主党の強烈な政権公約の数々

さて、その村田齊藤謝蓮舫さんが所属されているのは、最大野党・立憲民主党です。

その立憲民主党が発表している「政権公約」（…なのかな？）などについては、当ウェブサイトとしてもこれまで散発的に紹介して来たのですが、いかに立憲民主党がこの４年間、なにも勉強をしてこなかったのかということがよくわかる、どれもある意味では現在の立憲民主党を象徴するような代物です。

「枝野幸男内閣」が初閣議で直ちに決定する７項目

• 2021年度補正予算の編成
• 新型コロナウイルス感染症対策司令塔の設置
• 2022年度予算編成の見直し
• 日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命
• ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開
• 「赤木ファイル」関連文書の開示
• 森友・加計・『桜』問題真相解明チームの設置

（【出所】立憲民主党ＨＰ『枝野代表が「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」7項目を発表　福山幹事長会見』）

市民連合と立憲民主党など野党４党の共通政策

• 憲法に基づく政治の回復
• 科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化
• 格差と貧困を是正する
• 地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行
• ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現
• 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する

（【出所】立憲民主党ＨＰ『市民連合と立憲民主党をはじめ野党4党が共通政策で合意』）

#政権取ってこれをやる Vol.2

• 選択的夫婦別姓制度を早期に実現
• LGBT平等法の制定/同性婚を可能とする法制度の実現を目指す
• DV対策や性暴力被害支援など、困難を抱える女性への支援を充実
• インターネット上の誹謗中傷を含む、性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指すとともに、差別を防止し、差別に対応するため国内人権機関を設置
• 入国管理・難民認定制度を改善・透明化するとともに、入国管理制度を抜本的に見直し、多文化共生の取り組みを進める

（【出所】立憲民主党『枝野代表「 #政権取ってこれをやる Vol.2」で多様性や人権に関する政策を発表』）

もしも日本の有権者に見識があるならば、この公約で立憲民主党が自民党に圧勝することができるものであるとは、とても思えません。マクロ経済運営、外交・防衛、災害対策、医療・社会保障改革などの内外の諸課題については、ほぼ言及がないからです。

それどころか、極めて抽象的な項目（「権力の私物化を許さない」「あらゆる差別の解消」など）、多くの日本国民にとっては「どうでも良い」と思っているであろう項目（たとえば「もりかけ問題」）、さらには明らかに日本の国益に反すると思われる項目（たとえば入管制度の改悪など）も含まれているほどです。

逆に、この段階で立憲民主党がこれらの公約を発表したことで、立憲民主党が実質的に、かつて存在した社会党のような「何でも反対野党」に劣化しつつある、あるいは日本共産党のような「反社会的政党」に化けつつあることが露呈した、ともいえます。

有権者にとって本当の試練はこれから来る

いずれにせよ、衆議院議員総選挙というものは、本来、「政権与党を選ぶための手続」と思われているようですが、考え様によっては、「最大野党」を選ぶための手続でもあります。

正直、選挙ともなれば、野党の選挙協力の状況に加え、その政党の候補者の地盤などの個別事情による影響も大きいため、立憲民主党がただちに議席を失うということは考え辛く、おそらくは10月に行われるであろう総選挙でも、立憲民主党は（残念ながら）最大野党の地位を維持するでしょう。

ただ、それでも次回総選挙の個人的な注目点は、日本にとって有害な政党（※著者私見）である立憲民主党の議席がどこまで減るか（あるいは減らないか、あるいは増えてしまうのか）、という点でもあります。

日本の民主主義の真価が試される局面が、再び到来しそうです。