ワクチン接種「未入力」の実態は600~800万回?
政府が運営する「ワクチン接種記録システム(VRS)」に基づく生データの分析は、当ウェブサイトでこれまでも続けてきたところです。ただ、このデータを眺めていると、どうも明らかに、直近データの入力が大変に遅れているように思えてなりませんでした。これについて検証したところ、最大で800万回程度は未入力である可能性が出て来ました。
目次
VRS生データがおかしい
VRSデータの取得方法
以前から当ウェブサイトでは、政府が運営する「ワクチン接種記録システム(VRS)」をもとに、日本におけるワクチン接種状況がどうなっているかについて、その客観的な数値を追いかけてきたつもりです。
VRS生データのダウンロード方法
- 次の文字列をウェブブラウザのURL欄に打ち込むと、その時点の最新データが取得可能
https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson
- 上記文字列のうちの「latest」以降の部分を「{dt}/prefecture.ndjson」(※)に変えると過去データの入手が可能(※なお、{dt}は「yyyy-mm-dd」形式で日付を入力。たとえば「2021年8月5日時点のデータ」なら、{dt}の部分を「2021-08-05」に変換)
ただ、それと同時に、当ウェブサイトでも常々提示して来たのが、「このVRSのデータがどうもおかしいのではないか」という論点です。具体的には、このVRSによる接種実績データ、直近の数値になればなるほど減少して来るという特徴があるのです。
え?直近で接種回数が激減!?
図表1は、本日時点で取得したVRSデータに基づいて、過去の接種実績を1回目、2回目の別にグラフ化したものです。
図表1 日別ワクチン接種実績
(【出所】本日時点で取得したVRSデータより著者作成)
これで見ていただくとわかりますが、6月中旬から8月中旬にかけて、コンスタントに1日120~140万回程度のワクチン接種が行われていました(途中、大きく落ち込んでいる日があるのが確認できますが、祝日や盆休み期間です)。
ただ、8月中旬以降は、盆休み明け以降も接種回数が回復せず、1日120万回程度の日もありますが、ほとんどのケースでは辛うじて1日100万回いくかどうかというレベルであり、8月末から9月初めにかけ、ついに100万回を大きく割り込んでしまっています。
つまり、VRSデータだけを信じるのであれば、直近になって接種回数が大きく落ち込んでしまっている、というわけです。
7月頃に「ワクチン不足」が大々的に報じられていましたが、やはりこのタイミングでワクチン不足のため、接種が滞り始めたのでしょうか。
自治体などがVRS入力を怠っている
正体は「データの未入力」
結論的に言えば、これは「データの未入力」によるものであり、ワクチン不足が生じているからでも、接種が滞っているわけでもありません。
だいたい、「ワクチン不足」を一部特定メディアが報じたのは7月初旬ごろであり、「ワクチン不足」のはずなのに、なぜか7月から8月にかけて、1日100万回を大きく超える接種がなされているという事実は、「ワクチン不足」が単なる誤報(あるいは悪質な捏造報道)であった証拠でしょう。
ただ、「データで見たら、たしかに最近の接種回数は1日100万回を割り込んでいるじゃないか」、という反論ないしお叱りが来るのは、それは当然のことでもあります。
これについてどう考えれば良いのでしょうか。
じつは、著者自身はこのVRSデータを6月8日分以降、毎日ダウンロードして計算し、その結果を保管しているのですが、そのデータが80日分を越えて来ました。
そして、これらを分析すると、大変に面白いことが判明したのです。
たとえば、現時点(つまり9月2日時点)で取得できるのは、4月12日から9月1日までの、合計143日分の接種実績データです。そして、このデータに格納された9月1日の接種実績は「582,009回」であり、その前日・8月31日までの142日分の接種実績は「113,225,836回」でした。
(A)9月2日時点で取得したVRSデータ
- 格納されているのは4月12日から9月1日までの合計143日分の接種データ
- 9月1日の接種実績は「582,009回」
- 4月12日から8月31日までの合計142日分の接種実績は「113,225,836回」
一方、昨日(つまり9月1日)時点で取得できるのは、4月12日から8月31日までの、合計142日分の接種実績データです。そして、このデータに格納された8月31日までの142日分の接種実績は「112,430,828回」です。
(B)9月1日時点で取得したVRSデータ
- 格納されているのは4月12日から8月31日までの合計143日分の接種データ
- 4月12日から8月31日までの合計142日分の接種実績は「112,430,828回」
(A)と(B)の違いは、データの更新日ですが、同じ「4月12日から8月31日までの合計142日分の接種実績」が、わずか1日で「795,008回」分も増えていることが確認できるのです。
(C)上記(A)と(B)の差分
- (A)9月2日時点で取得した4月12日から8月31日までの合計142日分の接種実績は「113,225,836回」
- (B)9月1日時点で取得した4月12日から8月31日までの合計142日分の接種実績は「112,430,828回」
- (C)(A)-(B)=795,008回
これが、その「違和感」の正体です。
ということは、9月2日時点と9月1日時点を比べた際の、この795,008回という差分こそ、8月31日までに接種が済んでいながら、各自治体などが当日中にVRSへの入力を怠り、翌日以降にVRSに入力した数値です。
過去にさかのぼると数値は数百万回分に!
問題は、これだけではありません。
上記(A)~(C)の計算は、過去85日分にさかのぼって実施することができます。
たとえば、現在著者自身の手元にある最も古いVRSデータは6月8日に取得した「4月12日から6月7日(月)までの合計57日分の接種実績データ」ですが、この合計値は「9,854,167回」でした。
ところが、本日、すなわち9月2日時点で入手したデータで、同じく「4月12日から6月7日(月)までの合計57日分の接種実績データ」を計算してみると、その合計値はなんと「14,553,036回」、差分はじつに「4,698,869回」(!)に達するのです。
(D)6月8日時点で取得したVRSデータ
- 格納されているのは4月12日から6月7日までの合計57日分の接種データ
- 4月12日から6月7日までの合計57日分の接種実績は「9,854,167回」
(A)9月2日時点で取得したVRSデータ
- 格納されているのは4月12日から9月1日までの合計143日分の接種データ
- 4月12日から6月7日までの合計57日分の接種実績は「14,553,036回」
(E)上記(A)と(D)の差分
- (A)9月2日時点で取得した4月12日から6月7日までの合計57日分の接種実績は「14,553,036回」
- (B)6月8日時点で取得した4月12日から6月7日までの合計57日分の接種実績は「9,854,167回」
- (E)(A)-(D)=4,698,869回
最大で800万回近くの未入力が判明
そういうわけで、同じ計算を85日分実施してみましょう。その結果が、図表2です。
図表2 過去の「VRS未入力分」
(【出所】過去85日分のVRSデータを使用して著者作成)
いかがでしょうか。
この図表2は、いわば左軸が「後日になって判明した未入力データ」、右軸が「経過日数」を意味しています。
そして、とくに7月以降に関していえば、少なくとも600万回、多いときでは、じつに800万回近い未入力があったことが判明します。当ウェブサイトで報告していた、「VRSデータの未入力は少なくとも200~300万回」というのは、ちょっと見積もりとして少なすぎたわけです。
なお、この数値、8月中旬以降は500万回を割り込み、直近になればなるほど小さくなりますが、これは「最近になって未入力問題が解消された」からではありません。「未入力の実態が判明するには1~2ヵ月の時間が必要だから」、です。
やはり、現時点において、VRSへの未入力は、600~800万回と考えるのが妥当でしょう。
今後の展開
直近の接種実績
さて、首相官邸ウェブサイトに昨日時点で掲載されていた8月31日までの接種実績に、著者自身が本日時点で取得したVRSデータを反映させた「接種実績」は、図表3のとおりです。
図表3 総接種回数と接種率
区分 | 総接種回数 | 接種率 |
---|---|---|
全体合計 | 132,277,634 | |
うち1回目 | 73,091,580 | 57.49% |
うち2回目 | 59,186,054 | 46.56% |
65歳以上合計 | 62,952,144 | |
うち1回目 | 31,841,568 | 89.73% |
うち2回目 | 31,110,576 | 87.67% |
高齢者以外合計 | 69,325,490 | |
うち1回目 | 41,250,012 | 45.01% |
うち2回目 | 28,075,478 | 30.64% |
(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。9月2日時点で取得したVRSデータ、9月1日時点で取得した職域接種データ・重複計上データなどを使用。「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。高齢者接種率は累計接種回数を3548万6339人で、「高齢者以外」の接種率は、接種回数合計から65歳以上接種回数を引いた数値を、9164万2566人で割って求めたもの)
これで見ると、公式発表でも接種回数が1.3億回を超えており、また、接種率も1回目で6割近くに達していることが確認できます。もうすぐ、2回目も50%を超えるでしょう。
9月末に国民の3分の2が接種完了へ
しかし、この図表3のデータには、次の数値が含まれていません。
- ①本日・9月2日に公表される予定の職域接種・重複データ(マイナス計上)
- ②来週・9月8日に公表される予定の職域接種データのうち9月1日までのもの
- ③一部自治体によるVRSへの未入力データ
このうち①については本日夕方ごろまでに更新されるのだと思います。また、②についてはおそらく日付別内訳が明らかにされないため、その実態はよくわかりません。ただし、この①と②については数値的に見てもさほど大きな影響はないため、相殺して無視してしまっても差し支えないでしょう。
しかし、③については、本稿の試算に基づき、「少なくとも600万回、下手をすると800万回」という数字が出て来ました。この数値を無視するのは、ワクチン接種の実態を正確に把握しているとはいえません。
よって、仮に「VRS未入力回数」が1回目、2回目で300万回ずつだったとすれば、総接種回数は138,277,634回(うち1回目が76,091,580回で接種率は59.85%、2回目が62,186,054回で接種率は48.92%)と求まります。
おそらく、こちらが実態に近いのでしょう。
そして、当ウェブサイトの8月初旬の試算通り、このペースでワクチン接種が続けば、連休のある9月13日から始まる週を除き、毎週1000万回ずつワクチン接種実績が積み上がり、9月末時点で総接種回数は1.8億回前後に達します(内訳は1回目が9500万回、2回目が8500万回)。
人口(127,128,905人)で単純に割ったら、1回目が75%、2回目が67%。いわば、「ワクチンを1回でも受けたことがある国民」は全体の4分の3、「2回接種を完了した国民」は全体の3分の2に達する計算です。
全国的に見れば、まだまだ新規陽性者数が多数出ているという状況ではありますし、また、ワクチンは「万能薬」ではありませんが、それでも9月末が近づけば、状況は大きく変わるのではないでしょうか。
いずれにせよ、こうしたワクチン接種の実態をメディアが正確に報じないことは不思議と言わざるを得ないのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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いつも、データベースに基づいた解析、ありがとうございます。おかげで、国をあげて実施しているワクチン接種大作戦がほぼ確実に後半戦に入ったことが確信できました。
別スレで投稿済みですが、ワクチン接種実績が積み上がったことで、残存する未接種人口割合がその分だけ減少したことになります。仮に現在、人口の半分が接種済みだとすると、接種済み人口割合が国民人口の50%から60%に10ポイント向上するだけで、未接種人口は50%時点より20%減少します。接種済み人口割合が60%から70%に10ポイント向上した場合は、未接種人口は60%時点より25%減少します。このように接種済み人口が増えるほどその傾向は顕著になり、接種済み人口割合が70%から80%に10ポイント向上した場合は、未接種人口は70%時点より33%減少します。更に、接種済み人口割合が80%から90%に10ポイント向上した場合は、未接種人口は80%時点より50%減少します。
忍耐強く本施策を継続し、後半戦まで来た結果、今後も施策を継続すれば、上述のように、今まではあまり体感できなかった目に見える効果が急速に出てくると予想します。季節の変化など気がかりはありますが今後の吉報が楽しみです。
詳細な分析、お疲れさまです。
VRSへの未入力が600~800万回もあると想定されることについては、自治体も接種することに全力を傾けており、どうしても入力が二の次になってしまうのではないかと思料いたします。(まあ、怠慢と言われればそのとおりですが)
近いうちにワクチン接種(一巡)が国民の7割超に及ぶことが見込まれること自体、とても好ましいことと思いますが、一方で、ブースター接種の見通しなど、今後も難しい判断が必要になってくるように思います。
早々に接種した高齢者層や医療従事者を皮切りに、抗体価の低下に伴って3回目をどのように接種していくのか、また、その接種体制は現行の手法を踏襲していくのか、打たない打てない未接種や12歳未満の子供達の存在等々、懸念や心配は尽きず…。
以前のように生活することは無理にしろ、ある程度緊張感が緩和される生活が待ち遠しいです。
接種証明書のデジタル化、基になるデータはVRSのデータですよね。
稼動したら、バックログの多い自治体はクレームの嵐になりそう。
接種機関が入力してないからって、言い訳するのかな?
こういうことこそ自治体の担当者をひっぱってきて説明させなきゃ。
接種の進捗見ながらでいろいろな対策を打っていくんだから。
更新ありがとうございます。
ワクチン接種の全体合計は、1億3千2百万回。うち2回目が59,186,054回、46.56%と聞くとホッとします。よくやってくれました関係者の皆様、菅総理。コロナ禍は早く終息せよ!ま、あと1年はかかるかもだし、シロウト的にはインフルエンザみたいに、毎年、型を変えて出て来そうな気がします。
VRSベースの摂取状況は東京各区等で最近公表し出しているようです。
1回目と2回目の完了で、現時点で
例えば
墨田区、70.0%、57.9%
https://www.city.sumida.lg.jp/kenko_fukushi/kenko/yobou_sessyu/covid-19/vaccine.html
台東区 68.7%、57.0%
https://www.city.taito.lg.jp/kenkohukusi/kenkokikikanrieisei/kansensho/kansenshoyobo/c19vaccine/sessyunituite/sesshujoukyou.html
港区 67.0%、57.3%
https://www.city.minato.tokyo.jp/wakuchintan/corona_wakuchin/wakuchin1.html
等です。まずは住んでいる自治体を確認するのもありだと思います。
すごいですね、現在ファイザーが人口の60%、モデルナが5%くらい供給されています。
さすが”在庫なし”を目指した墨田区、恐れ入りました。
新宿会計士様
長きの集計継続に頭が下がります。そして継続しているからこそその示唆が確固としたものとなっていますね。8月31日分を開いてみたら4月12日付のデータがあって、医療や役所における普段の仕事ぶりからしたらこんな遅延が許される現状に現場がどれだけ混迷してるか想像を超えています。
せっかくデジタル庁発足したのですからマイナンバーカードの利用や、紙で接種券やるなら仕様の事前策定、タブレットは写真撮るだけで画像認識はサーバサイドでマシンパワーかけるとか迅速なシステム構築を期待したいところです。
さすがに未だにVRSでワクチンの在庫管理してるなんてことはしてないと信じたいところ。
継続して分析有難うございます.
>人口(127,128,905人)で単純に割ったら、1回目が75%、2回目が67%。いわば、「ワクチンを1回でも受けたことがある国民」は全体の4分の3、「2回接種を完了した国民」は全体の3分の2に達する計算です。
この会計士様の予測通りならば,9月末にはワクチン接種を希望しているであろう日本国民のほぼ全員が少なくとも1回は接種を済ませ,その8割ほどが接種完了ということになりますね.
日本人は個人の自由を声高に主張し譲らない欧米人に比べると素直ですから,ワクチン接種拒否者の比率も低いと思いますが,それでもワクチン接種希望者は8割程でしょうから.
これも菅総理が「1日100万人接種を目指す」という非常に明確な目標を示してコミットしてくれたお蔭で,このリーダーシップは我々国民からもっと高く評価されるべきだと思うのですが,マスゴミの偏向報道のために正当に評価されていないのは非常に残念です.