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ワクチン接種「増分」一気に「240万回超え」の衝撃

なぜかメディアが報じない「1日200万回超」

ついに、「1日240万回超」です。何の話かといえば、本日ダウンロードしたデータを確認したところ、医療従事者等を除く「一般向け」の接種実績が、1日で一気に240万回以上増えたのです。このことはおそらく、「1日の接種回数が240万回だった」という意味だとは限りませんが、それにしてもすごい勢いでワクチン接種が進んでいることだけは間違いありません。

VRSの生データ

ワクチンの接種状況を「「ワクチン接種記録システム(VRS)」の元データ(※)から確認するという作業、最近では当ウェブサイトでの「日課」のようになってしまっています。

VRS生データのダウンロード方法
  • 次の文字列をウェブブラウザのURL欄に打ち込むと、その時点の最新データが取得可能
  • https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson
  • 上記文字列のうちの「latest」以降の部分を「{dt}/prefecture.ndjson」(※)に変えると過去データの入手が可能(※なお、{dt}は「yyyy-mm-dd」形式で日付を入力。たとえば「2021年6月21日時点のデータ」なら、{dt}の部分を「2021-06-21」に変換)

生データ自体、行数は多いものの、データの構造は比較的単純であり、通常のスキルがあれば、加工は容易でしょう(個人的には時間を節約する都合上、都度、エクセルに文字列を張り付けて関数で必要な文字を取り出す、という方式を好んでいます)。

そして、このVRSのデータを眺めていると、日々、接種実績が着々と積み上がっていることが確認できます。

「1日200万回」超の現実、「荒唐無稽」は『日刊ゲンダイ』さんの方だった

とくに、昨日の『ワクチン接種「増分」が初めて「1日200万回超過」』で報告したとおり、このVRSで提供されるデータを7月8日時点で取得したところ、1日の「増分」が初めて200万回を突破し、じつに2,126,643回を記録しました。

これは、菅義偉総理大臣が5月7日の記者会見で掲げた、「1日100万回」という、『日刊ゲンダイ』さんに言わせれば「荒唐無稽」かつ「無理筋な精神論」で「口から出まかせ」の目標(※)と比べ、じつに2倍以上、という速度です。

(※なお、『日刊ゲンダイ』さんが「1日100万回目標」を「荒唐無稽」、「無理筋な精神論」、「口から出まかせ」と批判したのは事実です。詳しくは次の記事をご参照ください。)

菅首相がシャカリキ「ワクチン1日100万回」計画の荒唐無稽

―――2021/05/11 13:25付 日刊ゲンダイDIGITALより

しかも、このVRSのデータに含まれるのは「一般向け接種」だけであり、「医療従事者等」に対する接種実績は含まれていません。医療従事者等に対する接種回数(76,653回)を含めれば、データ増分は2,203,296回、というわけです。

うがった見方ですが、『日刊ゲンダイ』さんの「荒唐無稽」という指摘については、「『1日100万回』目標は日本における接種能力と比べて『少なすぎる』という点において『荒唐無稽』だった」、と言いたかったのかもしれませんね(※もっとも、後述するとおり、接種実績は「1日200万回」ではありませんが…)。

バックデートでの入力はかなり多い

さて、この「7月8日時点で取得したデータにおける増分2,126,643回」は、「1日の接種回数」を示すものではありません。そして、VRSデータを加工していて気付くのが、バックデートでの入力があまりに多い、という点です。

VRSのデータでは、取得日の前日までの接種実績が記録されています。つまり、7月8日のデータは、4月12日から7月7日までの接種実績を、7月7日のデータは4月12日から7月6日までの接種実績を、それぞれすべて入力したものです。

  • 7月8日時点のデータ…4月12日~7月7日までの接種実績
  • 7月7日時点のデータ…4月12日~7月6日までの接種実績

ということは、7月7日と8日を比べた「増分」は、本来ならば「7月7日分の実績データ」が中心であるはずですが、現実に7月8日時点で取得したデータを眺めると、7月7日の1日の接種実績は、742,814回に過ぎません。

その差の1,383,829回分は、いったい何者か――。

これが、当ウェブサイトで以前から問題視している、「VRSにあとから入力した回数」のことです。

7月8日時点のデータは、こうです。

7月8日(木)時点のVRSデータ
  • 7月7日(水)の接種回数…742,814回
  • 7月6日(火)の接種回数…910,860回
  • 7月5日(月)の接種回数…926,200回
  • 7月4日(日)の接種回数…1,023,257回
  • 7月3日(度)の接種回数…1,090,813回

これに対し、7月7日時点のデータは、次のとおりでした。

7月7日(水)時点のVRSデータ
  • 7月6日(火)の接種回数…715,134回
  • 7月5日(月)の接種回数…825,600回
  • 7月4日(日)の接種回数…900,529回
  • 7月3日(度)の接種回数…983,167回

つまり、両データを比べると、7月5日の接種回数は100,600回、7月6日の接種回数に至ってはじつに195,726回(!)もの差が生じているのです。

つまり、7月8日(木)時点で取得したデータには、本来ならば7月7日までに入力が終わっていなければならないはずの7月6日分、7月5日分、…、さらにはそれ以前の4月12日分までのデータがバックデートで入力されてしまっている、というわけです。

ただし、それでも「あとから振り返れば1日100万回を達成している」という事例がいくらでも出て来ていますので、やはり、『日刊ゲンダイ』さんは「1日100万回は荒唐無稽」と述べたことを、日本国民と菅義偉総理大臣に謝罪なさった方が良いような気がする次第です。

「1日240万超え」の衝撃

さて、VRSのデータ特性という前提条件を確認したうえで、是非とも紹介したいのが、本日、つまり7月9日時点で取得したデータを加えて作成した、次のグラフです(図表1)。

図表1 前日比増分

(【出所】過去のVRSデータをもとに著者作成)

なんと、本日時点のVRSデータ増分は、なんと、2,419,728回(!)でした。四捨五入して、1日242万回、というわけです。昨日の2,126,643回を易々と突破し、1日の増分としては間違いなく過去最大でした。

「医療従事者等」に対する7月8日の接種実績データについてはまだ公開されていませんが、とりあえず「医療従事者等」については7月7日までの実績で、それ以外の一般向けについては7月8日までの実績で、それぞれ接種率をグラフ化したものが、図表2です。

図表2 接種率

(VRSオープンデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』データ等より著者作成。なお、「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。高齢者接種率は累計接種回数を3548万6339人で、全体接種率は累計接種回数を1億2712万8905人で割って求めたもの)

公式数値で、65歳以上のいわゆる「高齢者」向けの接種率は1回目で73.99%、2回目で43.19%、全体で見れば1回目が28.33%、2回目が16.72%です。

あとからあとから追加される

もっとも、先ほども申しあげたとおり、これはあくまでも「増分」です。VRSのリアルタイム実績によると、昨日の接種回数は786,473回に過ぎません。そして、最近だと普通に、前日のデータを10~20万回以上書き換えているという事例が散見されるのです。

たとえば、7月9日時点で取得したVRSデータに基づけば、各日の接種実績は次のとおりでした。

7月9日(金)時点のVRSデータ
  • 7月8日(木)の接種回数…786,473回
  • 7月7日(水)の接種回数…979,100回
  • 7月6日(火)の接種回数…1,031,700回
  • 7月5日(月)の接種回数…1,024,940回
  • 7月4日(日)の接種回数…1,112,143回
  • 7月3日(土)の接種回数…1,172,599回

さきほど挙げた「7月8日(木)時点のVRSデータ」と比較していただければわかりますが、7月7日の接種実績については236,286回(!)も上書きされているほか、過去データもかなり遡って習性が行われているのです。

7月9日(金)時点のVRSデータの上書き回数
  • 7月7日(水)の上書き回数…236,286回
  • 7月6日(火)の上書き回数…120,840回
  • 7月5日(月)の上書き回数…98,740回
  • 7月4日(日)の上書き回数…88,886回
  • 7月3日(土)の上書き回数…81,786回

同じく本日までのデータを使い、データ公表日別の過去データの書き換え状況を図表3にまとめています。

図表3 過去データの上書き状況

(【出所】過去のVRSデータをもとに著者作成)

したがって、VRSの未入力がかなり積み上がっていることを踏まえるならば、先ほどの「接種率」も、じつは高齢者に関しては1回目で8割、2回目で5割を超えている可能性が濃厚であり、一般向けも1回目は3割、2回目も2割程度に達していると見るのが自然でしょう。

データの一掃が進んだため?それとも…

ただ、この「242万回」が「昨日1日で達成されたもの」かどうかは微妙ではありますが、現時点における未入力が全国各地で相当に溜まっているものと考えられますし、この「242万回」も滞留していたVRSのデータ入力が一気に進んだ可能性も否定はできません。

したがって、「1日200万回進んでいる」と短絡的に受け止めるべきではありませんが、ただ、「データ上は、200万回を超えている」という事実については、もっと注目しても良いのではないかと思います。

しかし、昨日、当ウェブサイトで「1日200万超」を公表した直後から、気になってさまざまなメディアを眺めてみたのですが、メディアがこの話題を積極的に取り上げている様子はありません(「東京都における4回目の緊急事態宣言」の話題は、やたらと目につきますが…)。

このあたり、「じつは東京都の場合、高齢者の感染数が大きく減っていて、医療崩壊リスクが格段に低くなっている」という実情(『東京で第5波?むしろ「感染危険指数」は伸びていない』等参照)をメディアが積極的に無視しているフシがあるのと、よく似ている気がします。

なぜ、メディアがこうしたデータやロジックを無視するのかについては、よくわかりません。

いずれにせよ、コロナに関し油断は大敵ですが、それと同時にデータやロジックを無視し、「東京五輪中止」などと半狂乱で叫ぶのは、いかがなものかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (31)

  • マスコミって、都合のいいデータ使って、国民を扇動してオリンピック反対させ、無観客にしたらそれも非難。海外から見たら、感染者や死者も少ないのになぜ、ここまで慎重なのか滑稽に映るでしょうね。マスコミは普段、「海外から見たら」「海外と比べ」が好きですが、こういった時は比較しません。マスコミと野党のせいで失った損失や国益を弁償して欲しいです。マスコミを罰することはできないんですかね?今のままなら報道や表現の自由を盾に好き放題しそうな気がします(不法侵入すら大目に見ろという連中ですから)。

    • ジロウ様おっしゃる通り、今後マスゴミは「無観客」を菅政権の落ち度として非難してくるでしょう。ちなみに本日の地方紙(共同)の論調は、「オリンピック開催により支持率アップを狙った菅政権の目論見は、無観客により潰えた(ざまあ)」。一方産経新聞は、「無観客はオリンピック開催という世界との約束を反故にするも同然だ(ざんねんむねん)」。
      勿論私見ですが、この「無観客」と4回目の「飲食するな・旅行するな」宣言は、マスゴミ対応と責任回避に偏った菅政権の過ちだと思います。できればどちらも撤回すべきです。対策がないと立憲と同じになりますね。プロ野球やプロバスケットや一部制限付きで有料入場者を入れて始まった高校野球予選大会でも見習えばいいのではないでしょうか。それと、医療者と高齢者の次は、海外選手の旅行(バス運転手等)・宿泊・会場関連者へのワクチン優先接種をお願いします。あ、それと「ワクチン接種済」名札のないマスゴミは接近禁止でお願いします。

    • 毎日サンデーな生活なので、午前中は大谷ショー、午後はワイドショーの掛持ちを見ておりますが、今週のワイドショーはちょっとずつ「100万回超達成、高齢者の感染減少、壮年層の感染と重症化の拡大」「ワクチン接種先進のイギリス、イスラエルで感染拡大も重症化、死者数は抑制」「オリンピアンの努力」というニュースも混ぜてきてました。
      つまりツートラック戦術で、オリンピック無観客化とワクチン接種体制批判をしつつ、開催後のお祭り報道へのシフト、ワクチン効果が出た頃にマスコミ批判されない逃げを打ちつつ衆議院選挙に向けた次の反自民ネタ探し(熱海の盛土は自民系業者の仕業らしい)のようです。

      それにしても何故、酔っ払いを擁護する飲食店の苦境ばかり報道するのでしょうか?
      外で取材できなくて番組制作が難しいから、自分たちこそが緊急事態・蔓延防止処置に不満タラタラなんでしょうね。そして政府が無策だから若者は止む無く公園で缶チューハイのムンだ~!夜遊びは若者の特権だ~!みたいな煽り報道して感染者増やして、益々政府批判に熱を入れる。マッチポンプスタイルだと思います。
      新橋で酔っ払いにインタビューしないと面白い番組を造れないんでしょうね。

  • >この「242万回」も滞留していたVRSのデータ入力が一気に進んだ可能性も否定はできません。
    今後も現在と同じ様な過去データの更新が続いていくと推定接種数は高齢者数を超えてしまう勢いなので、データ入力が進んでいる可能性は高いと思います。また、今までは水・木曜日のデータは落ち着いていましたが、今週はアップデート数が増加し続けている事も一つの傍証かもしれません。

  • ここまで接種ペースが上がるとは思いませんでした。
    飢餓感も演出しながらオリパラを超えて9月末まで突っ走りたいものです。
    職域接種は、韓国の報道機関がバラシてくれた大韓航空不正事件
    による見直しということで、良さそうですね。
    ATMは、見通しが甘かったとか、政府批判しかしませんが
    ソフトバンクやアイリスオーヤマ等韓国系企業はどうなっている
    のでしょう。

    • 流石に大韓航空不正事件を報じる日本の新聞社はありませんね。
      ただ引っかかった下記記事見ると ”韓国という国には近づきたくない” ですね。
      https://news.goo.ne.jp/article/recordchina/business/recordchina-RC_879126.html?isp=00002

      >この記事を見た韓国のネットユーザーからは、「大韓航空に拍手を」「韓国の企業は一流、官僚は三流、政治家は四流」「大韓航空は文大統領より優秀だ」「大使館職員は何もできない人間ばかりだ。

      正に詐欺師の国。価値観があまりにも違い過ぎる。

      Fly Teamの公式発表は表向きは真面です。
      https://flyteam.jp/news/article/133414

  • オリンピックが無観客開催に決まるまで、左まきの自治体が入力を遅延させ、しかもワクチンが足りないと喚き散らした、と邪推してます。

  • ワクチン不足キャンペーンで入荷しない原因を知った自治体があわてて滞っていたVRS入力を一気に行ったのではないかと推察します。

    • それを思いました。

      >4月12日分までのデータがバックデートで入力されてしまっている

      まあ、たまたまかもしれませんが。
      4/12のデータすらサボっていた基礎自治体があっても、最近は不思議に思いません。
      住民からも「ちゃんとVRS投入してんだろうな?」という問い合わせも来るでしょうし。

    • 9日になってほとんどの自治体がバイデンジャンプのように1回目の高齢者接種率が70%を超えました。
      やっぱり急遽VRSの入力を慌てて入力したのだろうと思います。

    • サボっていた自治体が慌てて入力したとしても、接種日を正確に入力するなら過去分に上乗せされるだけで、昨日や今日の実績が増えるわけでは無いですよね。
      私の曇った心は「接種日を偽って最近の成果であるかのように入力している」と分析しています。

      自治体ごとのデータも見られると面白いのですがね。

      • >サボっていた自治体が慌てて入力したとしても、接種日を正確に入力するなら過去分に上乗せされるだけで、昨日や今日の実績が増えるわけでは無いですよね。

        過去分の接種実績がアップデートとされるので昨日や今日のトータル実績は増えますよ。

  •  南京事件や慰安婦、徴用工なんかも、いまだにバックデート追加されてますしねぇ。
     まぁ日本の場合は人口を超えるようなことはないでしょう。

  • 1日242万回とは凄まじい接種数ですネ〜。そういえば自治体の長が「ワクチンが足りない」と一部吠えてましたが、昨日県知事選挙の事前投票に行くと、区役所には「本日分、大規模会場のワクチン接種、空きが有り〼」と貼り出してました。

    65歳以上では無く、接種券を持っていればOKのようです。多少、余裕があるのかな?マスコミはナイナイと煽りまくりましたが、個人のかかりつけ医も「少数なら枠有り」でした。

    次はきっと野党、マスコミは五輪の無観客試合にフォーカス当てるんでしょう。私は特に屋内競技は無観客で結構(大相撲なんて客入れてやる場合じゃないだろ)、屋外競技も無観客試合の方が良いと思います。

  • 職域接種の接種券なしで うっていた方たちのデータが 接種券回収に伴って 後日大量に登録されてくるものと思います。
    振り返ると”あっ すごい!”
    ということに なりそうな予感です。

  • オリンピックの問題は 試合会場や観戦客の会場への動線での感染拡大を防ぐことだけでなく、 日本各地でおこりそうなオリンピックお祭り騒ぎで 各地にクラスターが多発するのではないか ということです。
    パブリックビューイングは もちろんですが 職場や自宅で数人で飲みながら応援でも クラスターになりかねないですからね。
    東京だけの問題ではなく 各地それぞれが警戒しないといけません。

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