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河野行革相、ワクチン「優先配分」で自治体に喝入れる

連日のように当ウェブサイトで報告しているとおり、ワクチン接種についてはすでに1日100万回どころか、好調なときには1日150万回前後に達している可能性すらあると考えているのですが、ただ、それと同時に悩みどころは「ワクチン接種記録システム(VRS)」への各自治体の入力漏れが極めて多い点です。当日の入力ができていない事例は、下手をすると1日当たり50万回以上に達しています。こうしたなか、河野太郎行革相が記者会見で述べた内容が興味深いところです。

ワクチン接種、実際の所どうなのか

以前から当ウェブサイトで主張してきたとおり、現在、わが国ではワクチンの接種が1日100万回を超えるペースで進んでいるものと「思われます」。

「思われる」、という表現は、個人的にとても嫌いなのですが、ただ、本件に関しては、「思われる」という言い方しかできません。

なぜなら、「1日100万回」が、「確たる数値」としてはリアルタイムには確認できないからです。

昨日の『いつのまにか高齢者6割「少なくとも1回は接種済み」』などを含め、これまでに何度も示してきたグラフについて、その最新版をアップデートしておきましょう。

まずは、ワクチンの接種実績データです(図表1)。

図表1 ワクチン接種実績(医療従事者等に対するものを除く)

(【出所】7月1日時点で取得したVRS『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』のオープンデータより著者作成)

これで見ると、一昨日時点で取得したデータに基づき、100万回を越えていたのは6月23日(水)の1日のみでしたが、昨日時点で取得したデータで見ると、100万回を超えていたのはこれに加え、6月16日(水)の1,005,920回、6月22日(火)1,015,553回の3日です。

一見すると、不思議な現象ですね。

VRSの入力遅れが実態を見え辛くしている

種明かしをすると、データを取得する時点で過去の接種実績がどんどん書き換わっていくというのが、政府が提供する「ワクチン接種記録システム(VRS)」のデータの特徴なのです。

昨日、「結果的に『1日100万回』を超えていた、という日が今後いくつも生じてくるはずだ」と申し上げたのは、VRSデータはバックデートでの入力が大変多いからであり、さっそく、その「予言」が成就した、というわけです(当たり前ですが)。

一方、過去の日付を無視した「データ公表日ベース」で比較したものが、次の図表2です。

図表2 総接種回数の増分(公表日ベース)

(【出所】VRS『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』で提供される6月7日(月)~7月1日(木)分のオープンデータより著者作成)

これについてはピークを付けたのが6月30日(水)に公表されたデータ(つまり6月29日までの入力分)で、じつに合計157万回を超えています。「1日100万回」どころの騒ぎではありませんね。

接種率、実際は1回目で「高齢者7割」超えているのでは?

さらに、接種「率」についても、引き続き、顕著な進捗が見られます(図表3)。

図表3 接種率

(『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータより著者作成。なお、「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。高齢者接種率は累計接種回数を3548万6339人で、全体接種率は累計接種回数を1億2712万8905人で割って求めたもの)

ワクチンの接種率は、「65歳以上」、すなわちいわゆる高齢者に対するものが1回目で61.89%、2回目で28.15%です。

ただ、この接種率は、あくまでも図表1に示した実績に基づいて計算されているものです。そして、VRSへのバックデートでの入力があまりにも多すぎ、後から検証した結果、下手をすれば1日あたり50万回以上、入力が漏れていたという日もあるという事実を思い出しておく必要があります。

あまり予断めいたことを述べるべきではないという点には注意が必要ですが、それでも過去からのVRSデータを集計してきた身からすれば、現時点において、下手をすれば300~500万回分は「未入力」が積み上がってしまっているのではないかという気がしてなりません。

たとえば1回目と2回目が350万回分ずつ漏れていたとしたら、現時点で接種率はそれぞれ10ポイント跳ね上がり、1回目に関しては70%以上、2回目に関しても40%近くに達するという計算です。

油断は禁物ですが、コロナ危機はいままさに、急速に解消に向けて動いているのではないでしょうか。

河野行革担当相「VRSにちゃんと迅速に入力して」

こうしたなか、行革などを担当する「内閣府特命大臣」である河野太郎氏の記者会見を眺めていると、なかなか興味深い発言がいくつか飛び出します。

河野氏は先月から何度も何度も口を酸っぱくして、自治体に対しVRSへの入力を急いでほしいと要望しているのですが(たとえば『河野大臣「VRS数値悪い自治体は1クール飛ばしも」』等参照)、今から約1週間少々前の6月23日の会見では、こんな趣旨の発言がありました。

  • 必要な場所にワクチンを届けるに際し、頼りになるのがVRSの接種記録。自治体におかれてはなるべく速やかにVRSへの入力をお願いしたい
  • VRSの入力にかかる人件費について、もしアルバイト等にお願いをするということであるならば、人件費については国が全額お支払いをする。自治体においては遠慮なく人の手当をしていただいて、なるべくリアルタイムに近い形でVRSへの入力をお願いしたい
  • VRSの入力が遅れると、システム上、その分、その自治体に在庫が積み上がっているように見えてしまい、我々としてはそれがリアルな在庫なのか、入力遅れのための在庫なのかがわからない。VRSの入力の加速化は重ねてお願いをしたい

じつは、これこそがVRSへの入力遅れにおける、最大の問題点なのではないでしょうか。

実際、VRSへの入力が遅れると、それが単なる遅延なのか、それとも自治体に配分したワクチンが接種されず、在庫が積み上がってしまっているのかがわかりません。

河野大臣、自治体間競争を仕向ける?

そして、河野大臣は一昨日、つまり6月30日の記者会見で、こうも発言しました。

  • 今後それぞれの自治体におかれては、手持ちの在庫と今後の供給を見ながら、接種スピードを最適化していただくということをお願いすることになる
  • 貴重なワクチンを無駄にすることのないように、今一度、数の方もしっかりと再確認していただいた上で、必要な量のオーダーを入れていただきたい
  • 各自治体などに配分した残りの900箱弱については、VRSの接種回数で見た接種率上位の自治体から順番に、直近1週間の接種回数と希望量のいずれか小さい方の数量をお届けする。これで上位200番程度までの自治体に対して、追加的にワクチンが配送されることになろうかと思う

…。

なかなか、興味深い発想ですね。

こうした河野氏の発想、好きか、嫌いかで問われれば、個人的には嫌いではありません。それどころか、縦割りで硬直してしまいがちな行政組織に対し、結果的に迅速に進んでいる自治体に対し、ワクチンが余分に配分されるという仕組みは、大変良いものではないでしょうか。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、必要量が確保できていない某国の事例と異なり、日本の場合は、国民全員に行き渡るワクチンの確保は終わっています。

あとは、それを接種するスケジュールないしは能力の問題だった、というわけであり、なかには菅総理の掲げた「1日100万回」を、「荒唐無稽」だ、「口から出まかせ」だと口汚く罵った、無責任極まりないメディアもあります(『「1日100万回接種計画の荒唐無稽」=特定メディア』等参照)。

いずれにせよ、VRSなどの仕組みが結果的に自治体の事務負担を増やしているという側面はあるにせよ、ぬるま湯の公務員の世界に競争原理を導入した仕組みは鮮やかにも見えます。

個人的には、各自治体もさることながら、極めて事務処理能力が低い組織、とくに日本年金機構や日本年金機構、日本年金機構、さらには日本年金機構などについても解体撤去作業を行い、厚生年金等の収受も「歳入庁」に一本化してはどうかと思うのですが、これについては機会があれば別稿にて議論したいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (36)

  • VRSへの入力遅れは各自治体のマンパワーの不足だろう。
    小生仕事の関係で、親密な会社が例の10万円定額給付金の業務をある自治体から請け負っているのを知り「こんなことまで民間に外注するのか」という感想を持った。

    • かといって、全てをユニットコストの高価な公務員でやろうとすると…。

      同じ職場で同じ仕事をしていると、正社員と派遣で微妙な人間関係になるんですよねえ。
      だからこそ同一労働同一賃金なんて言葉が話題になるわけで。

    • 地方の公的な組織と仕事してます(ました)けど、大体何処も人手不足で余力無いのが殆どのように見えます。
      今の医療機関では事務方職員が足りなくて、管理職が毎日残業しても作業の進捗管理が出来なくなってて現場のトラブルが後回しになってますし、大昔いた別業界では市レベルで現場担当が数人しかいなくて、複数応急対応が必要になるとすぐ回らなくなります。
      日本は効率とっても良いんですよね。なので不測の事態には対応できない(効率悪いと対応できるわけではありませんが)。臨時で人を使おうにもその為の仕組みが色々あって作れないのでしょう。なので丸投げされて下っ端は苦労するのですw

    • 大臣が
      「VRSの入力にかかる人件費について、もしアルバイト等にお願いをするということであるならば、人件費については国が全額お支払いをする。自治体においては遠慮なく人の手当をしていただいて、なるべくリアルタイムに近い形でVRSへの入力をお願いしたい」
      といっているのだから、ほんと自治体の「怠慢」でしかないような…。
      これで自治体が文句いってるっていうんだからほんとしょーもない人をトップにするとひどいことになるね。

  • VRSは内閣府IT総合戦略室が主導するお粗末なITシステムです。
    自治体は余計な仕事を増やした中央政府によりサボタージュで抵抗しています。
    間違ったことをしている時ほど高圧的に振る舞うのは官僚のサガでしょう。

    • VRSは急ごしらえのお粗末なITシステムかもしれないけれど、他にワクチン接種をした人を集計するシステムがあればよいのですが。パンデミックを予見してもっとましなシステムを作っておけばよかったと言うのは結果論なので除外するとして、現状できることで他に方法があれば教えてください。
      住民のワクチン接種がどの程度進んでいるのかを把握するのは、自治体の役割と思うのですが余計な仕事なんですか?

      • 匿名さんに同意です。
        入力のアルバイト代まで国が色釉すると言っているのですから、コロナでの仕事が減った企業からの派遣等、一石二鳥の対策ができるとも思います。
        自治体の工夫の見せ所だと思います。
        サボタージュで抵抗しているなどのニュースソースはあるんでしょうか?
        前向きな対策が取れるはずと思います。

    • V-SYS がカウントしていますからなんら問題ありません。
      1月25日の自治体向けZoom会議から「事件」を順に時系列を調査し、それ以前から進んでいた計画と突合すれば、いったい何が起きているかは理解できるはずです。

      • V-SYSですと「個人情報なし、1回目,2回目の接種実績数,廃棄数入力」だと思いましたので、大規模接種や職域接種で自治体外接種もある状況では接種管理は無理なのではないでしょうか。在庫管理がV-SYSのみで可能なのは理解できます。しかし個人情報を扱うことを避けた結果でしょうがシステムが乱立して外からみると本当に訳わからんです。

    • >自治体は余計な仕事を増やした中央政府によりサボタージュで抵抗しています。

      VRSへの入力はワクチンの接種数=国から提供されたワクチンの消費量の報告ですよ。
      提供されたものをどれだけ消費したか報告するのが余計な仕事というのならば、そういう自治体は自分でワクチンを手当てすべきですね。

      国から無償でワクチンを供給して貰っているのに,どれだけ使っているのかを報告するのは余計な手間だというのは子供レベルの我儘なロジックですね。

      そんな身勝手な自治体は自分で勝手にワクチン企業と交渉してワクチンを入手して接種しなさい。

  • 論旨に影響ありませんが、
    『(各自治体の入力漏れが)極めて多い点です。』
    →『極めて遅い点です。』かね?

    • 訂正)文脈から理解できるので、論旨に影響ありませんが、
      を入れそびれていました。失礼しました。

      • 何度もすみません。会計士さんの表現で問題ありませんでした。先ほどの投稿は撤回します。

  • 毎日の更新ありがとうございます。
    ワクチンの供給が足りないと喚いている明石市長ですが、
    明石市のホームページや他を検索しても進捗率が一切見つかりません。
    そもそも現状把握ができていないのか、よほど進捗率が低くて公表できないのか。 兵庫県全体の進捗率も下から三分の一くらいで低いです。 市民からの突き上げも厳しいので、お得意の論点ずらし責任転嫁ですね。 関西在住で進捗率ご存知の方おられましたらレポートお願いします。 この後におよんで65歳以上接種率が50%以下の赤い大地、北海道はどうなっているんでしょうか? 道民は諦めているのでしょうか? 無能なのか(知事?)、中国からの指令で反日サボタージュなのか。道新には他県の進捗率は載ってないのですかね? 道民の方おられましたらレポートお願いします。 昨日も書きましたが我が田舎町でも特設ページがあって、65歳以上接種率は77%と善戦しています。 ITとは程遠い田舎ですが、医療機関との関係は良好そうです。小生は65歳以下ですが接種券がわりと早く届きましたので大手町で第一回の接種済みです。 地元役場を見直すとともに感謝です。

    • NHKのサイトですが、都道府県別の接種状況のデータがあります。
      入力遅れもあるようですが、7/1時点のデータが表示されています。

      これで見ると兵庫県が突出して接種率が低いということでもないようです。
      ただ、北海道は、東北6県と比較すると接種率が低いのは、気になります。

      https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/progress/

    • 明石市、もしかしてVRSサボタージュで在庫積んでる扱いになってるんじゃない?
      マスメディアに取り上げられている明石市長のこのところの発信観てるとそんな疑念も…

  • 4月、5月には『7月に高齢者への接種完了なんてとても無理』との報道が溢れていましたが、実際にワクチン接種が自治体間競争の様相を呈しながら進んできたら、今度は『希望どおりのワクチン数を政府が送ってくれない。梯子酒外された、と一部自治体や医師会が言っている。』報道に変わってきています。ヤレヤレ感とともに呆れています。さて、今後の展開は。

    • 国の希望的想定を大きく超えて接種が進んでいるようですし、国の予定通りの調達なら在庫が品薄になるのも道理でしょうにネェ
      マスメディアもグダグダ文句タレ流しつづけず、ワクチン調達主体である国が在庫把握をオンタイムに近付けられるよう、ワクチン接種主体である地方自治体から国への報告がどうなっているのかについても深堀りしてモライタイモンデス

  • >各自治体などに配分した残りの900箱弱については、VRSの接種回数で見た接種率上位の自治体から順番に、直近1週間の接種回数と希望量のいずれか小さい方の数量をお届けする。これで上位200番程度までの自治体に対して、追加的にワクチンが配送されることになろうかと思う

    裏を返せばVRSの入力遅れで見かけ上、在庫がある自治体には配送が遅れるということですね。
    今マスコミが嬉しそうに供給遅れガーは一部の自治体の事ですかね?

    つくづくマイナンバーカードが有効的に使えればと思います。
    マイナンバーで脱税や出自を悪用する人たちに骨抜きにされたのが悔やまれます。

    • マイナンバーの導入が遅れている元凶の一つは厚労省では無いでしょうか。
      この制度の原型は住基番号制度で、この制度の導入時に厚労省は頑強に抵抗しました。
      論理はこうです。
      「国民年金の番号が付番されているので、これを使えば良い。」
      ただし、この番号は成人しないと付番されないので、未成年者には番号が無く、全国民対象ではありません。
      また、この住基番号カードを発行して健康保険証として活用する案がありましたが、これが厚労省をして自分たち縄張りに踏み込まれるとの危機感から導入に抵抗したと思われます。
      マイナンバーカードが健康保険証として通用すると法律に書かれるとは、隔世の感があります。

    • 在庫は在庫ですからねえ見かけ上かどうかは後からしか分からない。
      こういう声を抑えるためには人口など関係なく希望通り自由に取れるようにする、廃棄がいくら出ても誰も気にせず批判しない、廃棄によって足りなくなってもその都度(実質)無限に補充ができる。
      食料品と同じような出し方をすることでしょうが、まああり得ませんね。

  • もし、ワクチンが有り余るほど(余ったら捨てるほど)あるなら、VRSへの登録遅れは問題になることはない。登録が遅れていても実際に接種されているなら、コロナの拡大は防げるから。
    登録遅れの問題は、ワクチンは足りているが(時期の問題もあるが)余っている訳ではない状況で、需給が分からなくなっていることだと思います。
    状況的には、接種は順調に進んでいるがワクチンを余すことなく行き渡るよう、そろそろ終了に向けた撤収作戦を立案する時期かもしれないと思っています。

  • 自治体に仕事を促すやり方が、行政組織に対するものというより、能力もやる気もピンキリの個人商店を扱っているようで苦笑します。
    自治体は国の末端組織ではないのでわかりますけど。

  • 左巻きが首長でない自治体は、事務量に対して職員数はギリギリで新たな事務が生じた場合は、かつてはサ-ビス残業(議会対策が面倒なので補正予算対応が無い為)で賄っていましたが、今はそれができないので、面倒でも補正予算等で対応して派遣職員を新たに採用して対応する事になります。
    議会が、この補正予算を認めなければ事務対応は酷いことになります。
    ワクチン接種事業そのものは、議会も理解し新たに必要が生じた事務作業も認め、予算対応する事に反対はしないと思われますが、このVRSへのデータ入力事務作業を接種事業に入れる事を認めないのでは無いでしょうか(議員にとって執行部が示した額を削る事ができれば自分の手柄になります。)。
    ここは想像ですが、当初はこのシステムへの入力実績に基づき配分量を決定するとされていなかっので入力が遅れてしまっているのでは無いでしょうか。
    当初から配分量を決定するとしていたら、接種事業に含めて補正対応もでき、こんなことにはならなかったのでは無いでしょうか。

  • 別に余分に配布されるわけではないと思いますし、競争を促しているわけでも無いと思いますが。政府の目的は不必要なところに送って配送や備蓄システムに負荷がかかるのを防ごうというだけですし。強いて言えばタイムリーに供給を受けようとする各自治体の自分自身との戦いであって、自分のところと他の自治体を比べてどうこうというのは、そんな事考えてる暇があったら一生懸命接種して入力しろとしか。

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