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東京都で高齢者の新規陽性者数はこれからどうなるのか

残念ながら現時点ではまだ「高齢者感染者が激減した」とは言えないが…

本稿は、最新の現状報告です。先日の『接種が先行する医療従事者の新規陽性数が東京都で激減』で、この東京都のデータについて、「医療従事者」というカテゴリーの新規陽性者数が激減した、とする話題を取り上げました。これの「高齢者版」についても作成したところ、現時点において「ワクチン接種で高齢者の感染率が顕著に下がった」とまでは説明できませんが、同じ分析を7月後半ないし8月に実施すると、顕著な成果が出ていることがわかるかもしれません。

「政権がゴリ押し」メディアの批判

あくまでも個人的印象に基づけば、今月中旬以降、「ワクチン接種が遅れている」とする批判は、メディアから急激に姿を消しつつあるように見受けられます。

先月、いくつかのメディアには、菅義偉政権がワクチン接種を「ごり押し」している、あるいは自治体などに「7月末を無理やり約束させている」、といった批判が掲載されていました。中日新聞に先月16日付で掲載された次の記事など、その典型例でしょう。

「7月完了」政権ごり押し 高齢者ワクチン接種、市区町村86%「可能」

―――2021年5月16日 05時00分付 中日新聞より

ただ、現実のワクチン接種データを確認すると、現実に1日100万回が視野に入っていると考えられます。

この点、政府の情報発信もなにかと稚拙であり、大変にわかり辛いのも事実です。

まず、ワクチン接種データ自体、4月9日以前のデータは厚生労働省ウェブサイト『新型コロナワクチンの接種実績』、4月12日以降のデータは医療従事者等向けが首相官邸『新型コロナワクチンについて』ページ、それ以外が『ワクチン接種記録システム(VRS)』と、あちこちに存在しています。

また、VRSオープンデータ(※)、直近の数値については入力が大変に遅延しています(※元データについては「https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson」をURL欄に打ち込むと入手可能)。

たとえば、現時点で入手したVRSデータによると、昨日(6月20日・日曜日)時点の接種回数は453,036回で、これに「医療従事者等」向けの接種回数(日々だいたい10万回程度)を足しても、50~60万回に過ぎません。

しかし、データは過去にさかのぼってどんどんと増えて来るという傾向があります。実際、現時点で10日以上前の6月9日(木)時点のデータをチェックすると、接種回数は807,910回であり、その後はさらに接種回数が増えていると考えられます。

したがって、現時点において1日当たり接種回数は、すでに100万回を超えている可能性が非常に高く、「高齢者向けに7月末までにほぼ接種が完了する」とする政府発表も、あながち誇張ではありません(※もちろん、自治体によっては7月中に完了しない、というケースもあるとは思いますが)。

高齢者向け接種、1回目はすでに過半数も?

なお、データの反映が遅すぎ、あまり参考になりませんが、現時点で入手できた最新データから「1日当たり接種数」をグラフ化したものが図表1、65歳以上高齢者に対する接種状況をグラフ化したものが図表2です。

図表1 1日当たり接種数(医療従事者等+一般人)

(【出所】『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』公表データより著者作成)

図表2 累計接種数・接種率(65歳以上)

(『新型コロナワクチンの接種状況(高齢者等)』オープンデータより著者作成。なお、「接種率」とは累計接種数を『令和2年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の日本の65歳以上人口3548万6339人で割った数値)

先週後半から接種回数に急ブレーキがかかっているように見えてしまいますが、VRSデータ自体、直近数日分は、あとから検証すると、当初は半分も入力されていないこともあり、現実には先週あたりから、すでに1日100万回を超えていると個人的には考えている次第です。

65歳以上、すなわちいわゆる高齢者向けの1回目接種率も45%を超えていますが、現実にはすでに50%を超えた可能性が非常に高いと考えた方が良いでしょう。

高齢者接種の効果はまだ実証できず…

さて、こうしたなか、先週から少しずつ、個人的に進めている作業があります。

東京都のウェブサイト『東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』で提供されているオープンデータの分析です。

以前、『接種が先行する医療従事者の新規陽性数が東京都で激減』で、この東京都のデータについて、「医療従事者」というカテゴリーの新規陽性者数が激減した、とする話題を取り上げました。

あらためて、東京都の新規陽性者数、昨日時点までのものを掲載しておきましょう(図表3)。

図表3 東京都における新規陽性者数(と1週間移動平均値)の推移

(【出所】『東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』オープンデータより著者作成)

これによると、東京都における昨日時点の新規陽性者数は前日比12人減って376人、7日間移動平均値は前日比10人増えて388人でした。新規陽性者はしつこく発生し続けている、というわけですが、これについて、60歳以上を「高齢層」と定義し、その高齢層が新規陽性者数全体に占める割合をグラフ化したものが、図表4です。

図表4 東京都における新規陽性者に占める60歳以上の人口の比率の推移

(【出所】『東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』オープンデータより著者作成)

これによると、今年の1月下旬ごろから、東京都では新規陽性者に占める「高齢者」の比率が上昇し、3月末ごろにかけて3割前後を占めていたのですが、4月に入って突然15%台に落ちています。

正直、高齢者向けの接種が本格的に始まっていない時期に、どうして新規陽性者に占める高齢者の比率が突如として「上がって下がった」のかはよくわかりませんが、直近ではその比率が、5月下旬の20%台前後から、現時点では10%前後にまでさらに下がっています。

時期的に判断して、6月に入ってからの新規陽性者数に占める高齢者比率の低下が、ワクチン接種と関連している可能性はあるかもしれないにせよ、これについては「ワクチン接種が進んだから高齢者の陽性者が減った」、とまでは断定できません。

だいたい、ワクチンは2回接種を終え、さらに2週間程度経過しないと十分に効果を発揮しないと指摘されているため、おそらく現時点での変動については、ワクチン接種によるものとはまだ無関係でしょう。

しかし、先行する医療従事者等の事例から判断する限りは、7月下旬から8月にかけて、新規陽性者数に占める高齢者の割合が激減してくれば、ワクチン接種の効果は「本物」と考えて良いのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 特に根拠はありませんが、4月に高齢者の感染例が一気に減少したのは、
    医療従事者へのワクチン接種が進んだためではないでしょうか。
    報道によれば日本国内での医療従事者向けワクチン接種は2月17日から始まっており、都内では接種が比較的順調に行われたようです。
    今年初めには病院内クラスターの発生が度々報道され、これを受けて入院患者への一般人の面会はできなくなっていました。院内で感染が広がるとすれば医療従事者を介してだったのではないかと。
    ただ、新宿会計士さんが「接種が先行する医療従事者の新規陽性数が東京都で激減」のページに載せているグラフと今回の高齢感染者のグラフにあまり相関はなさそうなので、自説に自信はありません(笑)。

  • >「7月完了」政権ごり押し 高齢者ワクチン接種、

    急がせる理由は、ごり押しではなくて、使命感の現れなのかと。
    信頼のおけるワクチンの接種に ”ためらう理由” があるのでしょうか?

    どうせ接種するのなら、早いに越したことはないのかと思うんですけどね・・。

  • 高齢者の陽性者が減るかどうかは、ワクチン接種会場に出かける事ができる高齢者は
    減ると予想されますが、マスコミがまたクラスターが出ましたと嬉しそうに報道している
    老人施設関係向け接種次第とも考えられます。
    老人世代になると、若年者より免疫力が衰えるのは当然として、それをカバーできる
    運動量・食事量の減少があるので、どうしても病気がちになりやすいんです。
    ましてや寝たきりとなると運動・食事量共に大幅に減少しますから。

  • 高齢者へのワクチン接種に加え、医療従事者(報道ベースではなんと500万人以上とのことです)および高齢者向けサービス事業(主に介護事業)従事者へのワクチン接種が7~8割(基本再生産数に大きく左右されるらしいですが)を超えてくれば、高齢者層への感染は極めて低く抑えられる可能性が高く、さらに重症化リスクが若年層に比し極めて高い高齢者(例:30歳代のリスクを1とした場合、70歳代は47倍、80歳代は71倍リスクが高い=厚労省発表資料よりhttps://www.mhlw.go.jp/content/000788485.pdf)への感染が低く抑えられれば、全体(全年齢)の感染者数が再び増加したとしても、重症者数は非常に低い状況、すなわち医療現場への負荷はとても軽くなっている可能性が高いと予想します。
    今のペースでのワクチン接種が進行すれば、東京五輪が閉幕したころにはその状況が達成され、東京パラリンピック閉幕の頃には、飲食店や旅行関係も含めてかなりな程度で通常モードになっているのではないでしょうか。そうなれば、「命より五輪を優先するのか!東京五輪は中止・延期せよ!」と現在にいたるまで主張している共産党やそこと共闘する立憲民主党は10月とささやかれている衆院選にどう臨むのか見物です。

  • 議会制民主主義にとって、センスがなさ過ぎる野党第一党党首の存在は害悪ではないかと。これでは与党が弛緩してしまう恐れが。

    立憲民主党 枝野幸男代表
    「国民の命と暮らしを守る責任を負う日本のリーダーは、ワクチンの効果が間違いなく表れることが期待される1年後に大会を延期するか、中止する選択を、IOCと交渉すべきだ」
    6月21日(月)NHK NEWSWEBより
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210611/k10013079881000.html

  • ワクチン接種加速の隠れた功労者は河野-小林ラインが進めた「VRS」だと思います。
    初期の目論見通り、大規模集団接種、職域接種等で大きな効果を発揮しています。

    東京オリンピック・パラリンピックでワクチンパスポートのテスト稼働も出来れば素晴らしい。が、それより先(並行でも)に未だ改善されない保健所の負荷軽減にむけ、活躍してほしい。

    厚労省は、病院のカルテの標準化は進めているのだろうか?

  • 新宿会計士さまが着目して数日おきにグラフに落として頂けるので、本当に助かります。
    接種終えた数の報告がさみだれ式に当日から始まって、ジワジワと数日間追加追加で増えて来る。これは時系列を追って、しっかり観察していないとわかりにくい性質のデーターですね。そして生のデータの集計とはこのようなモノなのだと感じます。
    「全国民にPCR検査を、出来れば毎日のように検査を」と言っていた方々が居ましたが、彼らはもしもそれを政権が実施したらかかる費用とスタッフの手間と「ゴリ押し」には全く言及しませんでした。でワクチン接種が大規模に進むと「ゴリ押し」とか。そのあたりの記憶も掘り起こして観察したいです。

  • 皆様に質問です。
    日本人へのワクチン接種での、死者数など副反応が、どれくらい起こっているか、情報お持ちの方は、教えてくださいm(__)m