飲み屋でクダをまく酔っ払いの皆さまに心から謝罪します

当ウェブサイトでは数日前から「韓国の五輪ボイコット論」を楽し取り上げて来ました。これは、東京五輪組織委の公式ウェブサイトに掲載されている日本地図の竹島の位置に何らかの模様が描きこまれていることに対し、韓国側が五輪ボイコットをチラつかせて削除を求めているというものですが、ここであくまでもひとつの「理論ゲーム」を考えてみたいと思います。もしも日本政府が韓国の五輪ボイコット論に無反応を貫いたら、いったいなにが発生するでしょうか。

最初に謝罪から

あらためて、謝罪申し上げたいと思います。

昨日の『韓国前首相が日本に「偏屈、恥知らず」など暴言を吐く』では、韓国の丁世均（てい・せきん）前首相の発言について、「どこかの飲み屋でクダをまく酔っぱらいの発言」にたとえたうえで、「紛れもなく、大韓民国政府の首相という要職にあった人物の発言だ」、と申し上げてしまいました。

これは、著しく不適切なたとえです。まるでこれだと、「どこかの飲み屋でクダをまく酔っ払い」と丁世均氏が同レベルだといわんばかりですが、これは大変な侮辱です（※もちろん、「どこかの飲み屋でクダをまく酔っ払い」に対して、ですが）。

この場で改めて、「どこかの飲み屋でクダをまく酔っ払い」の皆さまに、心の底から謝罪したいと思います。

「飲み屋でクダをまく酔っぱらいの皆さま、変なものにたとえてしまい、本当に、申し訳ございませんでした。」

見極めるべきは「韓国社会に良識があるのかどうか」

さて、当ウェブサイトでは昨日、この丁世均氏という人物の、日本に対する「あいつら／悪い人たち／偏屈／恥知らず」といった暴言の数々を、話題に取り上げたうえで、「偏屈で恥知らずなのは丁世均氏の方ではないか」、と申し上げました。

ただ、それと同時に、もっと少し重要なことがあるとすれば、この丁世均氏という人物自体、現在、与党「ともに民主党」から次期大統領選への出馬を目指しているらしい、という事情です。つまり、この丁世均氏の発言自体も、大統領選を意識した政治的なものである、という可能性があるのでしょう。

そして、「大統領選を意識している」からといって、「日本に対し暴言を吐いて良い」、という話にはなりません。昨日の当ウェブサイトで、「この前首相の暴言問題に対し、一両日ほど、韓国社会の反応を待ってみたい」と申し上げたのは、韓国社会に良識があるかどうかを見てみたい、という気持ちがあったからです。

しかし、予想どおりというべきか、べつにさほど待つ必要はなさそうです。少なくとも韓国メディア『中央日報』（日本語版）に今朝掲載された次の記事を読む限りでは、韓国社会でそれを問題視する雰囲気はなさそうだと判断できるからです。

「偏屈な日本、五輪ボイコット」韓国元首相ら、反日感情を刺激した

―――2021.05.31 07:03付　中央日報日本語版より

それどころか、例の東京五輪組織委員会の竹島地図に関連し、中央日報は、「削除しい（※原文ママ）ならオリンピック（五輪）に参加してはならないという主張まで出ている」などと述べ、あたかも問題が日本の側にあるかのような言い草に終始しているようです（「削除しい」とは「削除志位」でしょうか？）。

昨日の時点では「韓国社会に良識があるか、一両日は待ってみよう」、などと書いてしまいましたが、韓国国内で（保守系とされてはいるものの）いちおうは最大手の範疇に入るメディアである中央日報にこんな記事が掲載される時点で、もうなかば結論は出たようなものでしょう。

（まったく予想どおりであり、サプライズのサの字もなかった、と言うべきでしょうか。）

事実関係の認定が雑過ぎる！

さて、この中央日報の記事に着目したのには、ほかにも理由があります。

それは、事実認定などがあまりにも雑で、読むに堪えられない部分もある、という点でしょう。韓国国内ではいちおう「大手メディア」とされているにも関わらず、です。

たとえば、日本政府が2019年７月、韓国に対して輸出管理の体制を変更する措置を講じました（いわゆる対韓輸出管理適正化措置）。その概要と個人的に考えるその狙いについては『対韓輸出管理の厳格化は日本を守るために必要だった？』で詳述しましたので、本稿では繰り返しません。

それにもかかわらず、中央日報の記事を読んでいると、こうした輸出管理に対する基礎知識も事実関係もまったく無視した決めつけが出て来るのです。李洛淵（り・らくえん）韓国元首相について触れた部分の、こんな記述がその典型例でしょう。

「彼は首相を務めていた2019年、日本の半導体素材の輸出中止で両国の対立が頂点に達した時、政府の代表として徳仁天皇の即位式に参加し、非公開で菅義偉首相（当時官房長官）と会談した」。

ここで、「日本の半導体材料の輸出中止」とありますが、日本が韓国に半導体材料の輸出を中止したという事実はありません。というよりも、もしそれを実施していたら、世界貿易機関（ＷＴＯ）ルールにも明確に違反しかねません。

くどいようですが、日本の措置は輸出管理上の対韓輸出の取扱い変更であり、個別承認方式に切り替えられた品目も、使途が確認できたものについては問題なく輸出が継続しています。

とくに、普通貿易統計上、個別の番号が付与されている「フッ化水素・フッ化水素酸（ＨＳ2811.11-000）」に関しては、対韓輸出が継続していることが事実として確認できます（たとえば『「北のウラン濃縮」で気になる日本産フッ化水素の行方』等参照）。

輸出管理に関する誤記は、これだけではありません。

「第21代総選挙を目の前にした時点で、日本が一方的に半導体の輸出中止を宣言すると、与党の反応は激しかった」。

この点、日本の対韓輸出管理適正化措置に対し、韓国国内から「異常」と呼んでも差し支えないほど激しい反発が見られたことは、事実でしょう（詳しくは２年前の『総論　対韓輸出管理適正化と韓国の異常な反応のまとめ』でもまとめています）。

しかし、くどいようですが、日本が行ったのは「半導体の輸出中止宣言」ではありませんし、貿易統計上も、「半導体製造装置」等の輸出が過去最高水準にあることは紛れもない事実です（『日本にとって台湾が韓国よりも重要な貿易相手になる日』等参照）。

「ちょっと調べれば容易にわかる事実関係をろくに調べずに記事を書いてしまう」というのも、なんだかすごい話ですね。これがどこかの個人ブログならスルーするところですが、仮にも韓国を代表する大手メディアである中央日報の記述なのだとしたら、やはり看過できません。

五輪ボイコットの実現可能性は50％…くらいかな？

なお、インターネット上のごく一部では、韓国側から「五輪ボイコット論」が出て来ていることについて、それが実現するという可能性を楽し心配する人も多いようですが、個人的にはその可能性は現時点で50％はあると考えています。

韓国や北朝鮮は、「越えてはならない一線」を示すと、その手前でピタリと止まり、その「一線」の向こう側からこちらを一生懸命に挑発してくる国です（『放っておけ、どうせ越えてはならないラインの手前でピタッと止まるから』等参照）。

しかし、逆に日本の側が、この「越えてはならない一線」を示していない場合には、どうなるでしょうか。

こういうときに、たいていの場合、彼らはしきりに日本を挑発する発言を行い、「その一線」がどこにあるのかを見極めようとします。

この点、ひとつ大いに期待懸念される点があるとすれば、加藤勝信官房長官は、まるで「能面」（失礼！）のように、あまり感情を露わにしない人物である、ということではないでしょうか。

つまり、韓国の「ボイコット」自体にはほとんど言及せず、竹島問題については一歩も譲歩しないという態度を続けることで、韓国が激昂し、本当に五輪ボイコットにつながってしまう、という可能性が、今回はゼロではないように思えるのです。

こうした見立てが正しいかどうかについては、引き続き今後の展開を楽し慎重に見極めていきたいと思う次第です。