「今回は、主権免除違反判決が下されなかった」。それだけの話です。何のことかといえば、本日、韓国側で自称元慰安婦らが日本政府を相手取って起こした訴訟で、裁判が却下されたという話題のことです。日韓間には数多くのトゲが刺さっていますが、むしろ今回の判決で、それらのトゲを「なかったことにできる」と韓国側が考えるのならば、日韓関係は一層悪化する可能性すらあります。
韓国の裁判所が訴訟を却下
例の主権免除違反判決に関しては、『【総論】韓国主権免除違反判決の現時点におけるまとめ』や『【総論】国家免除条約と「主権免除が認められる事例」』でも詳述したつもりですので、本稿では繰り返しません。
こうしたなか、今朝の『「李氏朝鮮回帰」?文在寅氏がフォーラムで中国を絶賛』では、自称元慰安婦に関連する訴訟を巡り、「日本政府が負ければ『日韓間に刺さったトゲ』が増え、日本政府が勝訴すればそのトゲが増えないだけの話に過ぎない」、と申し上げました。
その答えが見えました。先ほどの『第2次訴訟で自称元慰安婦らが敗訴=韓国メディア速報』で触れたとおり、韓国のソウル中央地裁は本日、自称元慰安婦らが日本政府を相手取った別の訴訟で、原告側が敗訴した、との報道が出て来たのです。
本稿は、その「続報」です。
慰安婦訴訟 原告の訴えを却下=韓国地裁
―――2021.04.21 11:20付 聯合ニュース日本語版より
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の報道によると、「旧日本軍の慰安婦被害者」(※自称元慰安婦のこと)やその遺族ら20人が日本政府を相手取った損害賠償訴訟で、ソウル中央地裁は原告の訴えを却下したとしています。
今年1月の判決とは真逆だが…
今年1月の主権免除違反判決とは真逆の結果でもありますし、また、日本政府が繰り返し要望してきた、「裁判自体が却下されるべき」に沿ったものと見ることもできるかもしれません。
もっとも、今回の判決を契機に日韓関係が好転すると見るのは時期尚早です。原告側が控訴し、上級審で再び主権国家違反判決が出てくる可能性もあるからです。
なにより、今回の判決が韓国で自称元慰安婦らに対し同情する世論が沸騰するようなことがあれば、むしろ任期を1年残してレームダック化しつつある文在寅(ぶん・ざいいん)政権としては、日本に対し、より強硬でより過激な不法行為を仕掛ける契機となり得ます。
その意味では、今回の判決も、後から振り返れば「日韓関係が壊れていくなかでの単なる小休止」に過ぎなかったと位置付けられるのかもしれません。
これにもうひとつ、注意点を付け加えておくならば、今回の判決も地裁レベルのものに過ぎず、そもそも日本政府が敗訴した今年1月8日の判決の効果が取り消されたわけではありませんし、ましてや2018年の大法院(※最高裁に相当)が下した自称元徴用工判決も、そのままです。
したがって、日韓間に刺さったトゲが抜けたわけではなく、むしろ今回の判決で「日本に対して配慮してやったぞ」、といった雰囲気が韓国側で出てくるのだとしたら、それは大変に本末転倒だと言わざるを得ません。
くどいようですが、日韓関係が破綻しそうになっているという状況が、今回の判決だけで改善するということはないと考えて良いでしょう。
韓国は、まずは不法行為の数々に真摯に答えよ
2017年に文在寅(ぶん・ざいいん)政権が発足して以降に限っても、韓国はさまざまな不法行為を日本に対して仕掛けているからです(図表)。
図表 文在寅政権下の韓国が日本に対して行った不法行為の例
# | 時期 | 出来事 |
---|---|---|
① | 2017年12月 | 2015年12月の日韓慰安婦同意に関する外交機密文書を日本政府の了解なく勝手に公表 |
② | 2018年9月頃 | 旭日旗騒動 |
③ | 2018年10月30日、11月29日 | 自称元徴用工判決 |
④ | 2018年12月20日~ | 韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射事件 |
⑤ | 2019年2月頃 | 国会議長による天皇陛下に対する侮辱発言 |
⑥ | 2019年7月頃まで | 慰安婦財団解散 |
⑦ | 2019年7月19日 | 日韓請求権協定に基づく紛争解決措置の完全な無視 |
⑧ | 2019年8月22日~11月22日 | 日韓GSOMIA破棄騒動 |
⑨ | 2019年9月11日~11月22日、2020年6月2日~ | 日本の対韓輸出管理適正化措置を巡るWTO提訴騒動 |
⑩ | 2021年1月8日 | 自称元慰安婦の訴訟に関連し、ソウル中央地裁が日本政府に主権免除違反の判決を下す |
⑪ | 2021年4月14日~ | 日本政府が決定した福島第一原発のALPS処理水の海洋放出を巡って「汚染水」と誤った用語まで用いて激しく批判する |
(【出所】著者作成。肩書は当時。なお、余談ですが、2020年までの出来事については、拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』のP33にも転載しています。)
まずはこれらについて、ちゃんと韓国の側で解決策を出して来なければ、話は始まらないのだ、とだけ申し上げておけば十分でしょう。
View Comments (39)
> まずはこれらについて、ちゃんと韓国の側で解決策を出して来なければ、話は始まらない
もしも、これらを解決できたら、
・竹島の不法占拠
・在コの回収
について話をしましょう。
> これらを解決できたら、
竹島と在コを先に解決してくれても構わないけど。
>今回の判決で「日本に対して配慮してやったぞ」、といった雰囲気が韓国側で出てくるのだとしたら、
韓国側じゃわなくて、外務省とか日本側で「韓国は配慮したから、次は日本の番だ」みたいなことを言い出す人がいそうで、そっちが心配なのです♪
七味さま
そう言う奴には、「いつも掃除当番をすっぽかす不良が、珍しく掃除をしただけだ」と言いましょう。
だんな様
それはちょっと。。。「不良だと言っても、根は真面目なんだよ」と言い出しますよ。
「教員免許はもってるけど常習的な性犯罪者だよ。そいつに自分の子供を預ける?」と言う方がよろしいかと。
頓珍韓 さま
それじゃあ本気を出して、「韓国は三権分立だから、判決に政府は関係ない」にしましょう。
だんな様
ごもっとも。
だんな 様
「足元に落としたガムを拾っただけ」でどうでしょう。
もう一度噛んだ後、その辺に吐き出すと思いますが。
七味様
外務省が”相誤主義”を発揮しそうで心配です。
皆様
別記事で新宿会計士様が取り上げていたけど、朝日新聞がさっそく言い出してるみたいですね♪
日本にとって、マイナス10がマイナス9になり、韓国にとっての、プラス10がプラス9になった程度でしょうか。数々の日本の国益を損なう行為は、依然として継続中ですね。どのみちすぐ変節しますので以後も冷静に行為を注視していく必要がありますね。
iwamurastaさま
マイナス10は、マイナス10で、変わらないと思います。
これでマイナスが減ったと思うようでは、0対100にはならないでしょう。
だんな 様
たしかに、おっしゃる通りかも。
浅はかでした。
どんな言いがかりを付けてこようが、相手にしない。
これが大正解であることを、これ以上無いほどの形で見せてくれた、
今回のドタバタ劇でしたね。
勝手に踊って、勝手にヘタレル www
とりあえずNHKラジオニュースでは、この判決をトップ扱いでした。
ねじれ判決については、韓国国内、国外のどちらの影響なのか、誰が得しようと思っているのか、まだ分かりません。
誰か尻尾を出すのを待ちたいと思います。
楽しみなのは、この判決で、韓国国内が荒れる事です。
更新ありがとうございます。
「日本に貸しを作ってやったゾ」ですね。それと韓国が米中からタコ殴りされ、日本からはひたすら無視され、そんな状況で自称元慰安婦訴訟を支持したら、日本は、より冷淡になり、世界の孤児になるのが分かりきっているからでしょう。
こんな茶番劇に日本は付き合う暇はありません。もはや従軍慰安婦や徴用工や、軍艦島の嘘発言は聞き飽きた。ことごとく反論し、国際法を守らぬ非常識国家として、G20やG7でも会う必要無い。大臣級・次官級のカウンターパート会談もやる必要無い。ただひたすら無視、関知しない!
正直、「韓国なんか」(日本人高官の、この発言で怒ってましたね)どうでもいい国です。自己採点だけエベレスト級、めっちゃ高い。周りからは日本海溝かマリアナ並みに低いのですが(爆笑)。
今回の判決で韓国側が日本政府の求めに応じて問題解決に一歩踏み出したとは到底言えません。日本政府は今の姿勢を続けるべきだと考えます。理由は、
1、1月18日の国際法違反の判決に関して、日本国の財産を差し押さえるのは国際法違反の恐れがあると決定しています。しかし、これはあくまで訴訟費用の負担を中央地裁が日本政府に命じたことに対する判断だからです。本筋の日本政府に賠償を命じた判決は手付かずで有効なまま残っているからです。つまり根本の国際法違反の状態を是正することには程遠いものです。さらには巧妙に韓国側の都合によっていつでもこの問題を蒸し返したり、自称元慰安婦たちが賠償を求め続けるための錦の御旗が残されていますからね。
2、今日の2つ目の訴訟では、主権免除を認めて自称元慰安婦の請求を却下しましたが、これはまだ地裁の判決です。当然原告側が諦めるはずもなく、高裁、大法院へと上訴して判決が確定するまでは長い時間が掛かりますし、その時々の情勢によって結論がどうなるかは全く予期できせん。従ってこれも「最終的かつ不可逆的に解決した。以後非難はしない」という2015年の慰安婦合意を破ったままの違法、不法な状況が是正されないからです。
しかし、韓国の国民感情はこの判決を受け入れることはできず、混乱がより深まると思うし、それがより強硬な反日攻撃になるのか、国民情緒を裏切った文政権への攻撃に転化するのか注視する必要があると思います。従ってこれで日韓関係に変化が現れるとは考え難いです。
イジワルばあさん様
同感です。
>しかし、韓国の国民感情はこの判決を受け入れることはできず、混乱がより深まると思うし、それがより強硬な反日攻撃になるのか、国民情緒を裏切った文政権への攻撃に転化するのか注視する必要があると思います。従ってこれで日韓関係に変化が現れるとは考え難いです。
私は、韓国や日本国内、アメリカ等の法律学者や弁護士等を総動員し、慰安婦問題に対する主権免除の適用は妥当では無い、といったコメントを出さしめ、より慰安婦問題を大きくして日本を外堀から埋める戦略に出るものと推測します。
今回の判決は、明らかにアメリカの圧力、及び韓国保守派(用日派)に対する働きかけの影響によるものでしょう。
韓国政府も司法も正面切ってアメリカに抗することは困難なので、福島処理水問題に対する豹変態度と同様、表面的には日本の主張を受け入れたように見せかけ、内外の民間人を使って今回の判決の批判をさせ、最終的には大法院での日本敗訴、もしく最低でも国際司法裁判所(ICJ)への付託に対する日本政府の同意を取り付けたいのでしょう。
このまま終局するとは到底思えません。
それが異常なのです!
>主権免除を認めて自称元慰安婦の請求を却下しましたが、これはまだ地裁の判決です
判例となった最高裁判所の判決(主権免除の否定)
に
反する判決を出した地方裁判所
なんてありえませんよ、嘘捏造その場しのぎで
ご主人様(上位奴隷)のご機嫌しだいで金魚を握り潰すように殺されてきた半万年を
他の奴隷が殺されるように嘘捏造の限りを尽くして生き延びてきた奴隷の末裔でなければ。
誤解があるかもしれませんが、1月の主権免除を否定した判決を出したのはソウル中央地裁であり、誰も控訴しなかったのでそのまま確定したものです。大法院が下した判決ではありませんので、前例ではあるかもしれませんが、判例とまでは言えないと思います。
まあ、今回の判決も、原告が控訴するのはほぼ確実ですので、まだ確定したわけではありません。
>、1月の主権免除を否定した判決を出したのはソウル中央地裁であり
失礼しました。
完全に勘違いしていました。
小生の予想です。
韓国は譲歩したから次は日本の番だとマスコミは言い出すでしょう。また、良心的日本人の自主的な謝罪と賠償を期待すると言い出すでしょ。
今回の判決は地裁の決定なので、さらに高裁、大法院となればどう転ぶかは未知数です。
しかし、韓国の一貫性のなさは日本人が理解するのは難しいです。前回と今回の判決では180°違うのに、あたかも当然の如く報道しています。
久々に「韓国だなぁ」と感じました。
駄文にて失礼します。
お久しぶりですねぇ。
もう少し頻度高くご意見を頂戴できると有難いのですが・・・
元韓国駐在日本人様
元韓国駐在日本人様のお名前を見てびっくりです。
白いカワイイ猫ちゃんは元気にしていますか?
元一般市民 様
色々ありまして、なかなか時間がありません。
また、小生は既に帰国しており、韓国の話題に関しても、現地の意見等を集める事ができません。例えるならば、現役を引退した野球選手が解説するようなものです。
サイトには目を通しておりますので、機会があれば拙い意見を述べさせて頂きます。
タナカ珈琲 様
猫は元気です。日本に連れて帰ったら、嫁や子供に何を言われるかと心配していましたが、取り越し苦労に終わりました。今では、小生以上に嫁や子供が猫にメロメロです(笑)
駄文にて失礼します
元韓国在住日本人さま
お久しぶりです。
もっとコメントお願いしますm(__)m
>くどいようですが、日韓関係が破綻しそうになっているという状況が、今回の判決だけで改善するということはないと考えて良いでしょう。
同感です。
日本に対する様々な不法行為&嫌がらせの数々、それらに対して韓国政府としては何ら対策を講じておらず、むしろ煽り立て続けているのが現状です。
今回の判決も司法府としての判決、それも前任者と違う裁判長によるものであり、属人的とも言える韓国司法風土を感じさせます。
各裁判官の判断&判決が異なるのは当然としても、明確な国際法違反についてこれほど裁判官の判断が異なるのは異常であり、まさに法治でなく人治の司法制度であることを自ら証明したようなものです。
より重要なことは、司法府の下した判決に対して、外交の責任を有する行政府がどのようなコミットをするかです。
具体的には、韓国政府は控訴するであろう原告&裁判所に対して、「主権免除の国際法に基づき控訴はすべきではないし、また受理すべきではない」とコメントを発するべきであり、それを行って初めて、数ミリ程度の日韓関係の改善がなされたとものと判断すべきです。
今回の判決のみをもって改善がなされたと判断するのは、あまりにも時期尚早というべきでしょう。
また穿った見方をすれば、文大統領任期中に最高裁での判決は無いという判断のもと、敢えて控訴されるような判決を出させ、日韓関係の改善を迫るアメリカに対して「我が国の司法は国際法を順守する法治国家であり、政府としては今後の判決の推移を見守りたい」として国際法無視国家であるとの批判回避を図った、ということなのかもしれません。
1月8日は慰安婦全面勝訴、日本政府全面敗訴の判決で確定したよね?
「確定判決」って判例になる筈なんだが、裁判がこんなに結果が不一致で良いの?
>「確定判決」って判例になる筈なんだが、
そのように勘違いしていました、最高裁の判決と勝手に思い込んで。
ところが地方裁判所の判決が確定しただけとのこと!
地裁の判決がいくら確定しても判例にはなりませんから、他の地裁が真逆の判決を言い渡すことはありますね。