今年9月には自民党総裁選が予定され、かつ、衆議院は遅くとも今年10月には任期満了を迎えます。こうした状況を踏まえ、コロナ蔓延状況もにらみつつ、菅義偉総理大臣は解散総選挙のタイミングを見計らわねばなりません。こうしたなか、政治ジャーナリストの田崎史郎氏の発言を読んで、ハッと気付くのは、「菅に菅なし」問題の深刻さです。
内閣支持率を見る意義
当ウェブサイトでは不定期的にではありますが、マスメディア(新聞社など)が実施する内閣支持率を「定点観測」しています。
といっても、さほど大げさなものではありません。単純に、いくつかのメディア(最近だと、日経・テレ東合同調査、産経・FNN合同調査、読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信など)の調査を選び、前回との増減をチェックする、というレベルのものです。
この点、メディアの世論調査には、「実施する頻度・時期が一定しない」、「母集団が偏っている可能性が否定できない」、「設問の順序、聞き方などで結果をある程度操作できてしまう可能性がある」、などの問題点があります。
こうした問題点にも関わらず、それでも内閣支持率をチェックすることの意義は、結局のところ、「同じメディアの世論調査がどのように変化して行ったか」という「タテ比較」、「同じ時期の複数のメディアでどのような結果が出たか」という「ヨコ比較」にあります。
これに加えて、政府首脳自身が内閣支持率を気にしているというフシもありますので、「支持率が下がった(上がった)」ということ自体が、政権の行動に何らかの影響を与えるという側面があることは間違いないでしょう。
直近の傾向は「支持率≧不支持率」
こうしたなか、今月は先週の読売新聞の世論調査に続き、昨日は朝日新聞の世論調査結果も発表されています。メディアの重複もありますが、3月から4月にかけての6つの主体による8つの世論調査結果を一覧にすると、次のとおりです(図表1)。
図表1 内閣支持率(2021年3月~4月)
メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
---|---|---|
読売新聞(3/5~7) | 48.0%(+9.0) | 42.0%(▲2.0) |
時事通信(3/5~8) | 35.0%(+0.2) | 41.0%(▲1.8) |
産経・FNN(3/13~14) | 51.4%(▲0.1) | 42.8%(▲0.4) |
共同通信(3/20~21) | 42.1%(+3.3) | 41.5%(▲4.4) |
朝日新聞(3/20~21) | 40.0%(+6.0) | 39.0%(▲4.0) |
日経・テレ東(3/26~28) | 45.0%(+1.0) | 46.0%(▲2.0) |
読売新聞(4/2~4) | 47.0%(▲1.0) | 40.0%(▲2.0) |
朝日新聞(4/10~11) | 40.0%(±0) | 39.0%(±0) |
(【出所】各メディア報道を元に著者作成
読売新聞とアサヒ新聞が2回ずつ出て来るのは、図表1が「3月から4月までの調査結果」を一覧にしたものであるからです(※もっとも、朝日新聞の今回調査は前回調査から3週間の間隔しか空いていません)。
ここでわかるのは、6つの実施主体が実施した8つの調査結果を見る限り、このうちの6つの調査で内閣支持率が不支持率を上回っている、という点です。コロナの「第3波」(?)が到来していた年末・年始の状況と比べると、支持率はずいぶんと改善したように思えます。
もちろん、こうした状況は、菅義偉政権の支持基盤が「盤石である」という証拠ではありません。支持率と不支持率はある意味で「肉迫」しているからであり、また、ちょっとしたイベントがあれば容易に逆転するかもしれないからです。
あぁ、立憲民主党はなぜこうなのか?
もっとも、今すぐ政権交代が生じる可能性がどの程度あるのかと問われれば、そこもやはり微妙でしょう。
図表2は、与党・自民党と最大野党・立憲民主党に対する支持率を示したものです。
図表2 自民党と立憲民主党に対する支持率(2021年2月~4月)
メディアと調査日 | 自由民主党(前回比) | 立憲民主党(前回比) |
---|---|---|
産経・FNN(2/20~21) | 39.1% | 8.9% |
読売新聞(3/5~7) | 40.0%(+3.0) | 6.0%(+1.0) |
時事通信(3/5~8) | 23.0%(▲2.5) | 4.8%(+1.0) |
読売新聞(4/2~4) | 39.0%(▲1.0) | 5.0%(▲1.0) |
(【出所】各社報道より著者作成。なお、前回比については判明するもののみ記載している)
少し古いデータも混じっており、また、各政党に対する支持率にはメディアによってかなりのバラツキもありますが、どの調査でもおおむね、自民党の支持率は立憲民主党の支持率に対し、少なくとも4倍から、下手をすると8倍近くにまで達していることが判明します。
もちろん、先ほど申し上げたとおり、メディアによる世論調査自体、利用するに当たってはさまざまな限界があることも事実であり、また、「政党支持率」自体、「今すぐ選挙をした場合の議席数」を意味するものではないという点にも注意は必要でしょう。
しかし、まったく異なる調査実施主体の世論調査で、支持率で見て4倍から8倍もの差がついているという点を踏まえるならば、遅くとも10月までには実施されるであろう衆議院議員総選挙で、さすがに自民党が下野するという可能性は非常に低いと考えるのが正解でしょう。
枝野氏「内閣総辞職じゃ済まない」
というよりも、そもそも奇行が多い立憲民主党を支持する人が多数派だとも思えません。ここ数週間の話題だけでも、次のとおり、「ネタ」はいくらでもあるからです。
- メディアが立憲民主党の行動を「審議拒否」と報じたことを巡り、村田蓮舫・代表代行や安住淳・国対委員長らが「メディアが『審議拒否』を『常套句』のように報じている」と立腹(『審議拒否」報道に立憲・村田氏ら「常套句」と逆ギレ』等参照)
- 立憲民主党を筆頭とする野党議員の質問通告の遅れが官僚の長時間労働の原因となっているとの指摘に対し、安住淳氏が「陳腐な話」としたうえで「むしろ政府に問題がある」と逆ギレ(『「逆ギレの立憲民主党」質問通告遅れを政府に責任転嫁』等参照)
- 安住淳氏が国民民主党、日本共産党の国対委員長とともに、「コロナ第4波が到来したならば内閣総辞職に値する」との認識で一致したと発表(『野党3党「コロナ第4波到来なら内閣総辞職に値する」』等参照)
- 枝野幸男代表が記者会見で、「菅義偉内閣が退陣し、立憲民主党を少数与党とする『枝野幸男内閣』を暫定的に組閣したうえで、次期衆院選まで危機管理に当たるべきだ」と述べた(『さすがに無理がある、民意を否定する「枝野内閣」構想』等参照)
…。
いやはや。
要するに、一事が万事、こうなのでしょう。
こうしたなか、立憲民主党の枝野幸男代表を巡っては、週末にはこんな発言も報じられています。
リバウンド「総辞職で済まない」 立憲・枝野氏
―――2021年04月10日19時13分付 時事通信より
時事通信によると、枝野氏は菅義偉総理が計6都県に対する「蔓延防止等重点措置」の適用を決定したことに関し、「リバウンドをこれ以上繰り返したら(略)総辞職では済まない責任だ」、などと述べたのだそうです。
「コロナ第4波が到来したら総辞職しろ」と言ってみたり、選挙もしていないのに「政権を明け渡せ」と言ってみたり、いろいろと興味深い人物ではありますが、さすがにこの「総辞職では済まない」云々の発言は凄いと思います。
「イヤイヤ」と反対するだけならば誰にでもできます。
批判するより先に、コロナ防疫と経済対策を両立する素晴らしい対案を出してみてほしいと思うところです(※もっとも、彼らの順法意識の低さ、自分たちの行動を振り返る謙虚さの欠如などを踏まえると、彼らに「リスク管理」ができるとは思えず、むしろ彼ら自身が「リスク」そのものではないかと思う次第ですが…)。
田崎史郎氏、菅総理は「まあまあよくやっている」
こうしたなか、時事通信にはもうひとつ、こんな記事が出ていました。
菅首相は弱点を克服できたか? 政治ジャーナリスト田崎史郎氏に聞く【政界Web】
―――2021/04/09付 時事通信より
田崎史郎氏といえば、時事通信の出身者でありながら、「政権寄り」(?)とされる議論を発信しているためでしょうか、一部の人たちからは嫌悪されているとも聞きます。ただ、あくまでも個人的な印象ですが、この記事からは、「政治ジャーナリスト」を名乗る田崎氏の見識の一端をうかがい知ることができます。
やはり、非常に「なるほど」と思えるのは、菅総理自身が内閣官房長官の出身者である、という点を踏まえ、内閣官房長官と内閣総理大臣の役割の違いに戸惑っていた、という趣旨の指摘でしょう。
「―菅政権半年の評価はいかがですか。
田崎氏 結論からいうと、まあまあよくやっている。菅さんは官房長官から総理になるプロセスを歩んでいるように思う。官房長官というのは事実を正確に伝えるのが役割。だから、紙を読み上げてもいい。しかし、総理大臣は国民を説得して国民の心を動かしていかなければいけない。それがなかなかできなかったが、多少やれるようになってきた。」
官房長官時代の菅総理が「紙を読み上げるだけの人物だった」とは思いませんが、やはり、就任直後の菅総理が官房長官時代の発想から抜け出していなかったという指摘は、そのとおりかもしれません。
なにより、菅政権の大きな懸念材料について、田崎氏は「政権を裏方で支える参謀役の欠如」と指摘しています。
安倍晋三政権が8年近くも続いた最大の理由は、やはり「優れた参謀役」である菅義偉官房長官が存在していたからなのかもしれませんし、もしそうなのだとしたら、菅義偉政権には「菅義偉官房長官が存在しない」、すなわち「菅に菅なし」という状況が最大のネックなのかもしれませんね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、田崎氏の発言で興味深いのは、つぎのようなものです。
「菅さん自身が人の話を聞くようになった。それまでは菅さんは聞かなかったし、周りの人も言わなかった。支持率が好調なうちは言いづらい。」
つまり、政権発足直後にいちど支持率が低下することは、決して悪いことではない、ということです。なぜなら、菅総理自身がそれで他の人の苦言を受け入れることで路線を修正し、結果的に政権が良い方向に向かう可能性もあるからです。
このように考えたら、支持率調査にも社会的な意義がある、という言い方ができなくはないのかもしれませんね(※もっとも、極端に偏った支持率を出してくる一部のメディアは論外ですが)。
今後の国内政治の注目点は、いつ衆議院の解散総選挙が行われるか(あるいは任期満了解散となるのか)という点と、9月の自民党総裁選で菅総理に対立候補が登場するかどうか、という点ではないかと思います。
内閣の動向、今後も目が離せない展開が続きそうです。
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>よく記者には「国民の声を代弁している」というふうに思いたがる人がいるんだけども、実は自分でそう思っているだけで、政治家の方がうんと多くの国民と接しながらその声を聞いている。だから、そこであまり居丈高にならないことが大事じゃないかな。
田崎氏は時事(マスコミ)の出身者らしからぬ見識の持ち主だと思いました。
> 菅義偉政権には「菅義偉官房長官が存在しない」、すなわち「菅に菅なし」という状況が最大のネックなのかもしれませんね。
それなら菅総理が官房長官を兼任してはいかがでしょう?
(ジョークです)
それなら、枝野氏を菅内閣の官房長官にしてあげたらいいんでない。
(真面目です)
カン内閣の官房長官でしたね。(ジョークのような悲惨な現実)
「してあげたらいい」と現在形で書いているので「菅内閣」の「菅」は過去の「かん」でなく現在の「すが」としか読めませんし、「真面目です」と書いておられるので敢えてマジレスさせて頂きますが、そんなことをしたら毎日の官房長官記者会見で枝野が菅(すが)首相の考えや方針とは全く違う勝手なことを言いたい放題をして、首相の会見と官房長官の発表とが完全に食い違い、国民からは菅内閣が目指す方向が全く理解不能となって収拾がつかなくなり、確実に菅内閣は吹っ飛びますよ。
官房長官は時の総理大臣の考えを最も良く理解して賛同できる人間でなければ務まらないというのが通り相場です。
そういう意味では、現在の官房長官の加藤さんは確かに「菅内閣には菅さんが居ない」と言われても仕方ないレベルだと個人的には感じます。先日のアメリカからの対中問題への対応要請を即座に否定した加藤発言などを見ると。
すみません、マジレスいただくとは思っていませんでした。枝野氏の発言が「第4波なら内閣総辞職」とか「枝野内閣」など、あまりに荒唐無稽なので、つい当方も「タレントの一日〇〇署長よろしく一日官房長官やらせてガースー抜きして差し上げれば」と同じノリになってしまいました。
謹んで、
「枝野氏がそこまで言うなら、一応野党第一党であるからしてシャドウキャビネットを立ち上げて影の首相なり官房長官となり、政府とは異なる具体的政策を発表して下さい。 かつて官房長官を務めたことがあるので出来る筈です。そうすれば国民も少しは耳を傾けるかもしれず、野党支持率も上がるかもしれません。それでこそ野党としての責務を果たすことだと思います」
に訂正させていただきます。
人事が難しいのはよくわかります。
「パチ倒ブログ」さんの仰るように、「安倍幹事長」の登場を望む次第です。
更新ありがとうございます。
コロナ禍が宮城、東京、大阪、兵庫、京都、奈良、沖縄県で特に人口比で感染者が多い状態です。「まんぼう」、、。このまま感染者が減らなければ、東京五輪は無観客で開催しますね。
衆議院の解散総選挙は、自動的にオリ・パラ後になります。となると9月?自民党総裁選も同じ頃か。菅総理の対立候補は安倍晋三前総理(妄想)。でも菅総理はよくやっていると思います。という事を言うと、必ず某氏が「何にもやってないじゃないか。貴方は何処を見てるんだ⁉︎」と上から目線で言われそうです(笑)。
でも次世代には河野氏、世耕氏、小野寺氏らが居ますし、立憲民主党のような人材難にはならないでしょう。
追伸
官房長官に適任者がいないというジャーナリストの発言、確かにそう見えますが、安倍=菅ラインは出来すぎでした。なかなかそうはならないと思います。
菅総理は、大体予想通り。
コロナ感染のこの時期に、良く頑張っているように思います。
後一つ思うのは、野党が不信任案を出さない事。
2Fと菅総理が、不信任案提出→即解散を公言した途端にダンマリになりました。
卑怯の上塗りでしょう。
国会中継をよく聞いているというわけではありませんが、たまに菅総理の答弁を耳にすると、やたらに出てくる単語が気になります。
野党議員の質問内容を大まかになぞった上で、
「ただいまの~についてのご質問(ご意見)でございますが、」
につづけて、
「いずれにせよ」で、ただちに結論。
エッ、なにそれ。
なにとなにをどう吟味した上で、その結論になるという議論抜きに、
「いずれにせよ」って言われても。
官房長官時代は、安倍首相の意向をそのまま伝えてるだけで良かった。
国会では大将の方が、ときにムキになってでも、野党とやり合ってくれたから。
あれはあれで結構面白かったということもありますが、
国民には内閣の考えというのが、ストレートに伝わっていたと思います。
今の菅総理は?
少なくとも国民へのメッセージの発信力は
前任者より相当に劣るような気がします。
発信力なら内閣の中で随一の方がいらっしゃるではありませんか。
そう、小泉進次郎環境相が。
残念なことに。
いつもお世話になっております。
菅首相の発信力が低い事は十分に解っており、最初の時からすれば
良くなってきていると思いますが、これは個人特有の問題であり、いわゆる
コーチィングすれば改善できるというものではありません。
官首相も個人経営の会社社長なら特に問題ありません。
本来ならば、現在の官房長官である加藤氏が発信力でカバーできたらと思いますが
加藤長官もこれまた発信力が小さい。
政府の発信力を出す為に「いわゆるパリピー的」な人を他国みたいな報道官として
採用し記者会見に臨ませた方が無難と思います。
この発信力こそ、学校の生徒会と異なる大きな点だと思います。
立憲等の方々は国会を生徒会だと思って行動しているとしか見えません。
頭がいいから生徒会会長になれても、政治家になれないのは発信力であり
首相や大統領等国を代表する方が持たないといけない力だと思います。
新宿会計士様の意見と同様、私も田崎氏は見識が高いジャーナリストだと思います。
理由は、人を見る目(評価能力)があること、政官界から生の情報を入手する能力とルートを持っている、と感じられることです。
菅首相に参謀がいない、というのは、田崎氏が言うように、元々はあまり人の意見を聞かず、自己完結的に判断する傾向にあったからでしょう。
対照的に、安倍元首相は、官僚や他の議員のみならず、財界、経済等の学者やジャーナリスト、芸能人、スポーツ選手等意見を求める相手は多岐にわたっていました。
菅首相の強みは、「頑固一徹梃子でも動かない図太い精神力」のような気がします、それは繊細な神経であった安倍元首相には無いものかと思いますので、その強みを生かした政権運営をして頂ければと思います。
政治家にとって最も必要な「愛国心」は安倍元首相同様強く持っているのでしょうから、私としては全面的に応援したいです。
田崎氏自身が準参謀になっても良いのかもしれません。
政治家同士の人間関係を全く知らないので妄想です。
安倍さんにとって菅(すが)さんは結構年上で自分を脅かす可能性の少ない相談相手であったように思います。菅首相にとって相談できる相手がいないのかなと心配になります。
首相動向をみると菅さんは朝散歩をされているようです。この時が熟慮の時間なのですかね。
菅さんは内政の課題解決型政治家ですね。
デジタル庁やこども庁の創設など内政で期待しています。
私としては行政の課題解決の優先課題として「省庁再編」に是非取り組んで頂きたいと思っています。
特に厚生労働省、総務省、財務省の見直しを早急に行って頂くよう希望します。
外交に関しては菅さんの国家観があまり見えないところが不安です。
安倍さんの路線を踏襲して頂ければ良いと思います。
菅さん、茂木さんが安倍さんの外交ポリシーを理解しているかどうか不安ですが。