続くイタチゴッコ、なぜかスッキリしない理由は「ゼロ対100理論」にあり!
「世界の記憶」を巡り、産経ニュースは昨晩、ユネスコが「申請は事実に基づき、偏向のない記載で行う」、「立証不可能な主張、主義や思想の宣伝は排除する」などの新基準を伴った制度改革案をまとめたと報じました。これが事実ならば、2017年にユネスコ分担金支払い凍結などの措置を講じたことが功を奏したという言い方をしても良いでしょう。日本政府の労をねぎらいたいと思います。しかし、どこかスッキリしません。
「世界の記憶」とはいったい何か
産経ニュースに昨晩、こんな記事が掲載されていました。
「世界の記憶」慰安婦資料は凍結濃厚 改革案判明…加盟国の阻止可能に
―――2021.4.1 22:37付 産経ニュースより
これによると、国際連合・教育科学文化機関(ユネスコ)は1日までに、「世界の記憶」を巡って、「政治利用」を狙った申請案件について、加盟国が登録を阻止することができるなどの仕組みを設ける制度改革案をまとめたそうです。
この記事を読む前に、まずは「世界の記憶」の概要を確認しておきましょう。
ユネスコのウェブサイトによると、「世界の記憶」(Memory of the World, MOU)とは、1992年に創設された制度で、「世界のさまざまな地域でのドキュメンタリー遺産」に対する保存、参照を容易にするためのプロジェクトだとされています。
すなわち、古文書や書物といった歴史的資料が、戦争や社会混乱、貧困などの問題によって散逸してしまうのを防ぐことに主眼が置かれているそうです。
ちなみに登録済みの「世界の記憶」については、ユネスコのウェブサイト “Registered Heritage” のページで確認できるほか、現在、登録申請を目指しているとされるプロジェクトリストとしても、次のようなものが掲載されています。
コロンビア・建築の100年史
はがきコレクションを通して見た20世紀初頭のエジプト
オランダ東インド会社のアーカイブ
(【出所】いずれもユネスコウェブサイト)
一見すると、なかなか興味深そうなプロジェクトですね。
また、文部科学省ウェブサイト『世界の記憶』によると、2017年10月時点で国際登録が427件だそうであり、日本関連だと2011年5月に登録された「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」など7件が登録されているようです。
新規登録は2017年以降凍結された
ただし、新規登録自体、2017年以降、進んでいません。
そのきっかけとなったのが、2015年の中国による「南京大屠殺文書(Documents of Nanjing Massacre)」の登録です。これについては今から約4年前の次の記事も参考になるでしょう。
ユネスコ分担金を再び留保 政府、記憶遺産審査の即時改善求める 「慰安婦問題」推移見極め
―――2017.5.7 07:39付 産経ニュースより
産経ニュースによると、この文書登録に対し、日本政府が「審査が透明性や公平性を欠いていた」として強く反発し、2015年におけるユネスコの分担金38.5億円の拠出を同年末まで留保。
また、政府は関係国とともに審査方法の改善などをユネスコに求め、2017年分の分担金約34.8億円の拠出についても当面見合わせる、などとしていました。なお、ユネスコの制度改革の進展を受けて、日本政府は結局、2017年12月にはこの分担金を支払うことを決定しています。
日本政府、ユネスコ分担金支払い 登録制度改革を評価
―――2017年11月17日 0:00付 日本経済新聞電子版より
いずれにせよ、本件は、日本政府が唯々諾々と分担金を支払い続けるのではなく、ときとして分担金の支払を凍結するという「荒業」も使うことで、国際社会の理不尽な仕組みを改めることができるという意味では、重要な教訓になったのではないでしょうか。
今回のユネスコの改革案
そのうえで、冒頭に紹介した産経ニュースの記事に戻りましょう。
産経によると、今回、ユネスコがまとめた改革案では、「▼国が登録を申請、▼ユネスコ事務局が申請案件を提示、▼ほかの国は最大90日以内に異議申し立てが可能、▼意義の出た案件については関係国が対話する」――、といった手続が定められたそうです。
従来の「▼個人や民間団体が自由に申請可能、▼登録までのプロセスで加盟国には発言権なし」――、といった状況と比べると、ずいぶんとよくなりました。産経はまた、「対話は無期限で、異議が取り下げられない限り、審査は棚上げされる」としています。
さらには、新制度では「申請は事実に基づき、偏向のない記載で行う」、「立証不可能な主張、主義や思想の宣伝は排除する」という指針を定めたそうですが、逆に今までこのあたりの検証がザルだったこと自体、呆れます。
というよりも、正直、すでに登録された427件についても、この新指針の基準を満たしていないもの(たとえば南京大屠殺文書)については登録を抹消させるのが望ましいと思いますが、産経ニュースには「すでに登録されたものの抹消」についての手続は記載されていません。
このあたりは今後の課題でしょう。
さて、ここで影響を受けるのが、さしあたって「2016年に日韓などの民間団体などが申請した慰安婦関連資料」です。
産経によると、この慰安婦関連資料については「従来の制度で登録申請された」ため、今回の「国しか登録申請できない」、「立証不可能な主張・主義・思想は排除する」などの新基準の適用対象ではありません。
しかし、産経は「外交筋」の話として、「新制度が発足すれば、この慰安婦関連資料もこの基準に沿って取り扱うのが妥当とする声が加盟国間で強い」としており、かつ、日本が異議を取り下げていないため、常識的には登録が事実上、絶望的になった、という状況だそうです。
日本外交の完全な勝利、ということでしょうか。
ゼロ対100理論の典型例
残念ながら、当ウェブサイトとしては、本件については「日本外交の全面勝利」とは言えないと考えています。
もちろん、今回のユネスコ改革のきっかけとなった、日本政府による分担金留保や関係国への働きかけは、高く評価して良いでしょう。
しかし、それと同時に、今回の事例は当ウェブサイトで以前から提唱している「ゼロ対100理論」そのものです。この「ゼロ対100理論」とは、中国や北朝鮮、韓国といった無法国家が日本に対して闘争を仕掛けてくる際の屁理屈です。
自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使して「相手にも落ち度がある」などと言い募り、過失割合を「50対50」、あわよくば「ゼロ対100」に持ち込もうとする、中国や北朝鮮、韓国に特有の屁理屈のこと。
このロジック、以前から当ウェブサイトで何度も繰り返して指摘してきたものであり、今年2月に刊行した拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』にも転載した論点です。次の得失表で考えてみれば、よくわかります(図表)。
図表 ゼロ対100理論における得失表
ケース | 相手の得失 | 日本の得失 |
---|---|---|
100%、相手が勝った場合 | 100の利得 | 100の損失 |
日本と相手が引き分けた場合 | 50の利得 | 50の損失 |
100%、日本が勝った場合 | ゼロ | ゼロ |
(【出所】著者作成)
いかがでしょうか。
日本からすると、100%勝ったとしても、得るものはゼロです。
今回のケースだと、ユネスコの「世界の記憶」に「日本を不当に貶めるもの」が登録されなくなったということで、日本にとっては今後の損害がゼロになるということですが、べつに何か新しいものを得たわけではありません。
また、中国、北朝鮮、韓国にとっては、「今後、日本を不当に貶めるものをユネスコの『世界の記憶』という仕組みを使って登録することができなくなった」だけの話であり、また別の手段を探せば済む、というわけです。その意味では、まさにイタチゴッコ、もぐらたたきのようなものですね。
その意味では、やはりいずれ、何らかの形で「根元を断つ」ことをしなければならないと思う次第です。
View Comments (19)
武漢肺炎による世界的惨禍は、当然後世に語り継がれるべきものです。COVID-19だの、SARSーCoV2だのといった、訳の分からない名称ではなく、はっきり「武漢肺炎」として世界記憶遺産に登録すべきです。もちろん、人工ウイルス説みたいなことを匂わせるのは悪手ですが。
日本政府が提起すれば、当然中国は猛反発するでしょうが、南京大虐殺の如き与太話とは違うと、正面からやり合えば、勝算はあると思います。理屈では勝てないとみて、理不尽な行動に出てくれば、それこそ思うつぼ。武漢肺炎の被害によって世界の対中感情がどれだけ悪化しているのか、おそらく中国指導部は計算できていないと思います。
問題は、南京大虐殺が「事実に基づく」となる事が危惧される事だと思います。
更新ありがとうございます。
ユネスコがダメなら東京五輪よ〜。福島事故の海水、魚類の汚染よ〜。そのあとは北京五輪よ〜。その後は大阪万博よ〜。何かとまとわりつく南朝鮮。2025年迄には、韓国という国体は無くなっているかも。中国二省かな(笑)。
いいえ、ジェノサイド対象族となって隔離されています。
今度は新制度を使って日本の申請が登録されないように嫌がらせをしてくると思います。
自分の国を良くすることより、あらゆる手を使って日本を貶めることに情熱を注ぎ込んでいる国ですから。
日本はどんどんやり返していくしかないと思います。またやられていなくても、根拠が無いような申請には意義を申し立てていくべきだと思いますね。
今度は新制度を使って日本の申請が登録されないように嫌がらせをしてくると思います。
自分の国を良くすることより、あらゆる手を使って日本を貶めることに情熱を注ぎ込んでいる国ですから。
日本はどんどんやり返していくしかないと思います。またやられていなくても、根拠が無いような申請には意義を申し立てていくべきだと思いますね。
すいません。
間違って二重投稿になってしましました。
「南京大虐殺」は中国軍の仕業だった JBpress 2019.1.9
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55155?page=5
>当時、南京に派遣された特派員は朝日新聞約80人、東京日日(現・毎日)新聞約70人、同盟通信社約50人など、総計200人超とみられ、また「アサヒグラフ」などの写真報道も盛んに行われた。
>こうした資料が「南京事件」を全くと言っていいほど扱っていないのは、そもそも事件は「なかった」という最大の傍証ではないだろうか。
*ここでも、後に30万人説を流布した朝日新聞。なんてことを・・。
史記の内容じゃあるまいし30万人を殺戮しその死体を処分するには途方もない労力を必要とします。あのナチスでさえ短期間ではできませんでした。
中国軍というより、大虐殺が本当にあったのかさえ疑われます。
このブログサイトさん、とてつもない情報源です。訪問記が楽しい。まずはいかをご覧ください。
https://nkurashige.wordpress.com/2019/10/17/19%e5%b9%b4%e5%a4%8f%e3%80%80%e6%87%90%e6%97%a7%e5%8f%b0%e6%b9%be-%e8%b1%8a%e7%94%b0%e6%9d%91%e6%8e%a2%e7%b4%a2%e3%80%80/
----引用開始----
いい機会だったのであの老人から受けた不可解な非友好的な態度について尋ねてみた「あああの人たちは客家人だからよ、外省人の彼らは我々台湾人と違って日本人には親しみを持っていの、私たちとも習慣も言葉も違うのであまり関係がよくないね」なるほどね
----引用終了----
お次はこれです。画像が読めなくなっているのは残念です。
https://nkurashige.wordpress.com/2008/07/20/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%81%a8%e4%b8%ad%e8%8f%af/
----引用開始----
あらゆる分野にわたって台湾の自然を研究しそれが今も台湾の土台になっているのだときちんと評価されていることに感心する。日本の侵略→共産党指導による民衆の蜂起と言う史観が根底にある大陸とはずいぶん違う。児玉源太郎や後藤新平の銅像さえもきちんと保管されていた。
----引用終了---
そしてこれをお読みください。
https://nkurashige.wordpress.com/2012/07/17/%e9%9b%a8%e3%81%ae%e5%8f%b0%e6%b9%be%e7%b4%80%e8%a1%8c%e2%91%a1%e5%9b%bd%e5%8f%b2%e9%a4%a8%e8%a8%aa%e5%95%8f/
----引用開始----
蒋介石は台湾に逃げる時、故宮博物館の財宝だけでなく、南京図書館の蔵書や政府档案も持ち込んでいる。大陸ではこの種の史料はよほどコネがないと一般人は見ることができないが、情報公開の進んだ台湾では誰でも(外国人でも、大陸の中国人でも)閲覧できるのは有難い。
----引用終了---
南京政府官僚だった人物による発言、探してます。見つけ次第こちらに続報します。
発見しました。
信じるも信じないも勝手ですが
・ジャーナリズムの志こころざし
・ジャーナリズムの灯ともしび
・ジャーナリズムの道標みちしるべ
はどう応答するのかじっくり観察させていただきたく思ってます。
https://nkurashige.wordpress.com/2010/05/01/%e7%be%85%e6%9d%b1%e5%86%99%e7%9c%9f%e5%b1%95/
—-引用開始—-
80を越える高齢だが日本語はよどみない。戦後南京で1949年まで国民政府の職員として現地の日本人の引き上げ業務をしていたそうだ。「日本軍が30万にも支那人を殺したと言う共産党の言う南京大虐殺はうそっぱちよ、あなた知ってる当時の南京の総人口は80万人よ、そのうち30万も殺せるわけないじゃない」「日本は欲張りすぎたね、満洲だけで止めておけばとかったのに」。う~んそうですか
—-引用終了—-
はにわファクトリー様
>「日本は欲張りすぎたね、満洲だけで止めておけばとかったのに」
結果論というか、後講釈というか・・。
南方の要所(シンガポールあたり?)を制圧したくらいのところで、一方的に終戦宣言してれば・・。とか、思わないでもないんですよね。
発言者は「対日戦に勝利した側」の人物ですので、それを踏まえた上での分析理解が必要です。
台湾島移入後は、日本企業が残した施設をわがものにしてよろしくやった一味と考えて間違いありません。
ところで、彼は引き揚げ事務を担当できるほどになぜ日本語が得意でなのでしょうか? 興味は尽きないです、よね。
ライダイハンと済州島事件の方こそ事実でありユネスコ世界の記憶に残すべきと思いますが。
匿名29号様
済州島事件の件は彼らの国内問題(もちろん重罪)なのでともかくとしても、ライダイハンの件は彼らからの反証を聞いてみたい気がしますね。
新宿会計士さんの某国の外交の特徴を以下のように3つにまとめておられますが
①ウソツキ外交…国を挙げて、「慰安婦強制連行・性的奴隷」というウソをつくこと
②告げ口外交…欧米や国連など国際社会を巻き込んで、日本の名誉を傷つけること
③瀬戸際外交…日本企業の資産を売却するぞ、売却するぞと脅すこと
④ダメもと外交…ゼロ対100理論の屁理屈外交 というのもありかな。
更新ありがとうございます。
国が登録になるんですね。
考え方ですけども、慰安婦の像も「嘘の歴史」的なモニュメントとして提起できなくなるわけですね。
歴史研究の稚拙さの証明としての記憶遺産で登録できればとても良かったと思います。歴史の検証が不十分で、尚且つ、銅像で一財産を築いたご夫婦のことも併記したりして・・・。
軍艦島の韓国ファンタジーが準備されていたようですのでその点は良しとしますか。
日本としては、戦後引き上げ時に韓国人により強姦され、その後、米国に渡り自叙伝を出された方の本を、亡き者にしようとする勢力が現れましたので、その本を登録していただきたいと考えます。
そもそも、資料を劣化から守るだけの目的で作られた仕組みだったのです。だから、無審査でよかったのです。登録された記録が真実かどうかは誰も見ていません。
でもこれはさすがに性善説に過ぎます。ねつ造資料を登録して、さも本物のアーカイブのように振る舞えるのですから。
少なくとも、その記録がニセモノ、ねつ造でないことの審査は必要ですね。南京大虐殺関連は、実は日本人が被害を受けている場面を中国人の被害と騙っているとかはチェックが必要です。
ただ、慰安婦関連についてはあまり気にしなくていいと考えてます。慰安婦を強制した証拠をねつ造してとかそんな話じゃないんですよ。単に慰安婦おばあさんの書いた絵画とかを登録しようってそんな下らない話なんです。まあ、例のブレブレの証言集とかもあるかもですけど。
ユネスコも変な企画始めちゃったねって話。もうちょっと『誰が見ても素晴らしくてこれは残さなきゃダメでしょ』ってものだけが選ばれるようにすべきでした。ユネスコのキャパだって限られてるでしょ。老人ホームの作品レベルを登録するヒマはないはずです。