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格安スマホ加入手続きはドコモショップではできません

携帯電話料金の引き下げは菅義偉政権にとっての「悲願」(?)のようなものだと思いますが、それと同時に、私たち一般人の側も、現在の携帯電話がどのような仕組み・契約形態であるかをある程度は理解し、消費者として賢く付き合って行かねばなりません。これに関連し、新聞記者ご出身の方がご自身のブログに投稿された『格安スマホの加入手続きでドコモに怒り』と題した記事が「炎上」しているようです。

携帯電話新時代

菅義偉政権の「携帯料金の値下げ」

携帯電話料金の引き下げは、菅義偉総理大臣が就任直後から問題して来た論点のひとつです。

実際、菅総理は昨年9月16日の内閣総理大臣就任記者会見で、「国民の財産の電波の提供を受け、携帯電話の大手3社が9割の寡占状態を長年にわたり維持して、世界でも高い料金で、20パーセントもの営業利益を上げ続けている」と述べています。

菅総理はまた、第203回国会における所信表明演説でも「携帯電話料金の引下げなど、これまでにお約束した改革については、できるものからすぐに着手し、結果を出して、成果を実感いただきたい」と言及しています。

じつは、この携帯電話料金改革は、菅総理が内閣官房長官時代から提唱してきたことであり、2018年には「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」などと発言したこともあるほどです。

携帯料金、「4割下げ余地」 官房長官/「業界、競争が働いていない」

―――2018年8月21日 17:40付 日本経済新聞電子版より

こうしたなか、最近になってよくメディアでも出てくるようになったのが、MNO/MVNOと呼ばれる業態の分類です。

MNOは “Mobile Network Operator” 、つまり自社で回線網を持ち、携帯電話事業を営んでいる業者(日本語でいう「移動体通信事業者」)のことで、日本だと3つの大手キャリアがその代表格です。

これに対しMVNOとは「仮想移動体通信事業者」、すなわち “Mobile Virtural Network Opeartor” のことで、回線などの通信インフラを借りて携帯電話事業を営んでいる業者のことです。あまりデータ通信容量を使わない人であれば、MVNOで契約した方が安く上がることが多いようです。

ひと昔前であれば、携帯電話を契約しようと思えば、携帯電話ショップに出掛け、好きな機種を見繕い、その携帯電話会社と契約をして電話番号をもらう、というパターンが圧倒的に多かったのではないかと思います。

つまり、「携帯電話本体、携帯電話番号、通話プラン、データ通信プラン、故障時の保証」、といった製品・サービスが一体だったのです。現在でもMNOのショップに行けば、これらを一括で契約することが可能です。

自分で組み合わせて買うことができる時代

そういえば、昔の携帯電話(ガラケーなど)は、携帯の端末にキャリアの名前が最初から印刷されていて、「携帯電話本体=その携帯電話の会社」、というイメージが強かったのではないでしょうか。

しかし、世界的にキャリアと無関係に使用できるスマートフォンが主流となり、MVNOの新規参入などが相次ぐなどした結果、現在ではこれらをバラバラに買うことが可能です。

たとえば、携帯電話の本体を家電量販店やアップルストアなどで購入し、MVNOなどからSIMカードだけを購入して月額プランを契約し、古い機種で使っていた電話番号をMNP(マイナンバー・ポータビリティ)によりそのまま引き継ぐ、といったこともできます。

もしも「欲しい機種」が確定しているのであれば、わざわざ街に出掛けなくても、インターネットの価格比較サイトで調べ、最も安いものを選ぶ、といったことも効率的です。

さらには、最近の携帯電話の場合だと、現在使用している電話のままで、キャリアだけを変更する、ということも可能です。SIMカードだけ差し替えればそれで完了です(※ただし、機種によってはSIMロックの解除などが必要ですが…)。

この点、たとえば「データ通信は外出時にしか使わないし、動画など大容量のデータを消費するサイトには、自宅でWiFi環境に接続しているときにしかアクセスしない」、などと決めているのであれば、せいぜい1GBもあれば十分かもしれません(極端な話、月額数百円というMVNOも存在しています)。

そして、わざわざ「本体+番号+通信通話プラン」などをセットで買うのではなく、自宅からインターネットでこれらをバラバラに注文し、自分でそれらを組み立てるということも可能です。

こうやって書いてみるとややこしそうに感じますが、やはり、自分自身で実際にひととおり、手続をやってみるのが良いのかもしれません。いったん流れを理解してしまえば、対して難しい話ではないからです。

かくいう著者自身も、恥ずかしながら、以前は大手キャリアの携帯電話で月額8000円ほど支払っていたこともあります(涙)。しかし、現在のプランは、月額1000円弱、といったところでしょう(※ただし、業務上、通話とデータ通信が必要であるため、これ以上下げることは難しそうですが…)。

大手キャリアもオンライン専用プランを発売

こうしたなか、大手キャリアも「オンライン専用プラン」を打ち出してきました。NTTドコモが「アハモ(ahamo)」、AUが「ポヴォ(povo)」、ソフトバンクが「ラインモ(LINEMO)」だそうです。

これらのプランは、「ネットで契約すること」、「店頭のサポートもない」、「家族割などのサービスもない」、「キャリアメールがない」などの制限もあるようですが(※詳しくは各社サイトでご確認ください)、その分、料金を従来よりも安価に抑えることができる、というものです。

とくに、小容量プランが主体のMVNOなどと異なり、キャリアのオンライン専用プランは月20GBまで使用できるとのことであり、「5G回線」にも対応しているとのことです。外出先から動画を視聴するなどといった使い方も想定できます。

(※なお、当ウェブサイトはべつにこれらの会社から宣伝料をもらっているわけではありませんし、推奨するつもりもありません。もしこれらのプランにご興味があるならば、それらの会社のサイトなどで直接申し込んで下さい。)

いずれにせよ、このプランを使用するのに適しているのは、最低限、「自力でネットを通じて申し込みができる人」でしょう。店頭でサポートを受けながら新規に機種を設定するというやり方は向いていません。そのような方は、従来通り、大手キャリアで契約した方が無難です。

アハモを巡る混乱

これで元新聞記者とは…

こうしたなか、このあたりの事情をまったく理解されていないと思しき方の文章を発見してしまいました。

格安スマホの加入手続きでドコモに怒り

―――2021年03月28日 06:00付 アゴラより

執筆したのは元読売新聞記者で「ジャーナリスト」という方で、この記事自体、この方が運営されている個人ブログから転載されたものだそうです。

ご経歴を拝読すると、「読売新聞で長く経済記者として、財務省、経産省、日銀などを担当、ワシントン特派員も経験。その後、中央公論新社、読売新聞大阪本社の社長を歴任した」、などとあります。

タイトルも過激ですが、内容はもっと強力です。

記事冒頭で「菅首相は自ら体験したらよい」とありますが、これは、実際にこの著者の方がアハモの契約をしようとして四苦八苦する、というものです。

この方によると、先行予約していたアハモの本契約手続に入る際、スマホの画面が突然ダウンし、ネットワークへの接続が途絶えたそうですが、理解に苦しむのはその次の行動です。

何と、この方は地元のドコモショップに駆け込んだというのです。

ドコモショップでは「あなたのスマホの機種が古く、アハモとの本契約が成立せず、その影響でダウンしたようだ」と伝えられ、そのうえ、「アハモはすべてオンラインで処理することになっているので、ここから先はドコモショップでは対応しません」と言われた、ということです。

これが、記事タイトルにもある「ドコモに怒り」の意味なのでしょう。

ドコモショップの対応に問題はありますか?

くどいようですが、そもそもドコモショップのサポートの対象外であるアハモの契約でドコモショップに駆け込むという事自体、そもそも筋違いです(あるいは、東京ドームシティのアトラクションのチケット売り場に「読売新聞との契約を解除したい」と申し込むようなものでしょうか)。

それなのに、この人物は、こうも食い下がります。

オンライン処理のことは知っている。なぜスマホがダウンしたのか、その理由を知りたい」。

ドコモショップの店員は、「それはアハモに聞いて下さい」と返します。当たり前ですね(どうでも良い話ですが、もし自分自身がドコモショップの店員だったとしたら、こんなことを要求してくる人を見ると、何だか、ウンザリします)。

しかし、「ドコモもアハモの同じ会社ではないか」、「いや別々に対応することになっています」、といったやりとりを続け、さらには「困ったな。では新しい機種を買えば、解決するのか」と食い下がったところ、ドコモショップの店員からは次のように宣告されたそうです。

いや、新機種はアハモのオンラインで購入して下さい。いったん契約も解除する必要があり、やり方はアハモで聞いて下さい」。

この対応は、ドコモショップ側としては止むを得ない回答でしょう。大変きつい言い方かもしれませんが、このドコモショップの店員さんには、心の底から同情してしまった次第です。

再びドコモショップに駆け込む

ただ、文章はここでは終わりません。

この方は帰宅し、PCでアハモのチャット相談の窓口を探し当て、アクセスするも、「ただいま混雑しています」「アクセスし直してください」の表示が出たそうです。

これが事実なのだとしたら、アハモの窓口のマンパワーが不足しているということであり、この点についてはたしかにドコモに対し「怒り」を感じるべきところかもしれません(もっとも、窓口が混雑するというのはよくある話であり、個人的にはこの程度のことが「怒り」を感じるポイントではありませんが…)。

そこで、この方が取った行動が、驚きです。

なんと、再びドコモショップに駆け込んだというのです。

そこで、先ほどとは別の店員さんとの間で、こんなやりとりがあったそうです。

『ここでアハモに対応できる新機種を買えますか?』『買えます』『先ほどの店員はアハモのオンラインでしか購入できないと言っていた』『いやここで買えます』」。

これについてこの著者の方は、「店員教育の不足、想定されるトラブルに対する準備不足か」と述べておられます。

しかし、その場にいたわけではないにせよ、このやりとりを読んだ限りでは、「アハモにも対応している新機種はこのドコモショップでも売っていますよ」、という、ごく当たり前のことを店員さんがおっしゃっているようにしか思えません。

そもそも「アハモのオンラインでしか購入できない」のは「アハモのプラン」であって、「新機種」ではありません。実際、この場合も「当店で携帯の端末だけ買って、そのうえでご自身でアハモと契約する、という選択肢もありますよ」、という意味でしょう。

もしかしてこの方は、携帯の端末と契約がセットだったガラケー時代のままで認識が止まってしまっているのでしょうか。

さらにこの著者の方は、別の店員さんとの間で、次のようなやりとりがあったと述べます。

『新機種を買えば、この店でアハモとの契約解除の手続きができます。ドコモとの旧契約に戻せます。そうしてから改めて、アハモと契約して下さい』。『先ほどドコモの窓口では解除できないといわれた』『料金契約の変更ですからできます』」。

おそらくこれも、「ドコモとの旧契約のまま、新機種を買って『機種変更』の扱いをし、そのうえで改めてご自身でアハモと契約し、ドコモの旧契約を解除する」、というやり方に見えます。少々面倒臭いですが、このようなやり方もアリでしょう。

ネット時代は「情報は双方向に流れる」

さて、リンク先記事について、少し厳しいことを申し上げれば、冒頭の菅総理に対する「自ら体験したらよい」という主張は、暴言の類いでしょう。

この点、リンク先の記事に同意できる部分が皆無、というわけではありません。とくに、国税庁のe-Taxの仕組みについて、使用しているブラウザがEdgeの場合にはうまく機能しない場合がある、という趣旨の記述があるのですが、これについてはそのとおりでしょう。

というよりも、e-Taxには「IEでなければうまく機能しない」という致命的な欠陥があります(個人的には今年Chrome版のe-Taxを使って酷い目に遭いました)。このあたりは早急な改善が必要でしょう。

しかし、当たり前の話ですが、アハモについては菅義偉政権が作ったプランではありませんし、ドコモショップの店員の対応に関しても、菅義偉総理に責任はありません。

実際、この方の個人ブログのコメント欄を拝読すると、現時点で100件のコメントが殺到していて、なかには著者の方の見解に賛同するコメントがないではないのですが、ざっと見たところ、8~9割方が、この著者の方に批判的です。

この点、コメント欄では著者の方の人格を攻撃するような卑劣な単語も含まれていたことも事実です。あくまでも批判はその人の発した意見に対してなされなければならないのであり、その「人物」に対してなされてはなりません。

(※もしこうした人格攻撃コメントを書いた人が当ウェブサイトをご覧いただいていたならば、しっかりと反省し、著者の方に謝罪して下さることを強く推奨します。)

ただ、この方がもう1本掲載した『誤解に基づき罵詈雑言』という記事に含まれた、次の記述については、どうもいただけません。

100件近いコメントの9割は、少数の同一人物が複数回、投稿していると想像します。愉快犯なのか、からかうのが目的なのか。事業関係者の投稿なのか、マニアの投稿なのか。ネット社会の危うい現象です。

はて。

これらのコメント、おそらく「少数の同一人物が複数回投稿した」のでも、「愉快犯」でも「からかうのが目的」でもありません。記事の内容自体に対して違和感を覚えた人が多数いたからではないでしょうか。

なにより、何となく想像するに、(あくまでも一般論ですが)むかしの新聞記者の方は自分が企業や政府などを批判する立場になることはあっても、新聞記者そのものが批判されることについては、想定していなかったのではないかと思います。

考えてみれば、新聞とインターネット空間との最も大きな違いのひとつは、「情報が一方通行であるか、双方向であるか」という点にあります。ネット社会化する以前であれば、新聞の場合は情報を発信したら発信しっ放しでしたが、ネットの場合はひとつの情報に対し、あっというまに拡散してしまいます。

ツイッターなどでも読者が気軽に反応を示せます。

このあたり、得てして新聞記者出身者というものは何でもかんでも政権批判や企業批判につなげる傾向がある一方で、そのロジックの強引さがネットで「炎上」する、というパターンが増えて来たように思えてならないのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (26)

  • 日本の30年間の経済停滞には幾つも理由があると思うけど、
    一番大きいのは世界で最初に最悪レベルの少子高齢化社会に
    なってしまった事かもしれんね。
    人間歳を取れば、程度の差はあれ保守的になり、新しい事を
    調べたり覚えたりするのが億劫になる。
    そういう人達が多数で社会の中枢を占めるようになると
    あらゆる領域でドラスティクな改革がし難くなり、世界の
    変化に着いていけなくなる。

  • 自分は、新聞記者って大体が文系出身でメカ、システムに弱くて頭が悪い、という偏見を持っていることを告白します。スミマセン。

    • 念のため付け加えると、元新聞記者様のブログを含め他人の人格を傷つけ誹謗中傷するようなことは書いたことはありません。

  • (あるいは、東京ドームシティのアトラクションのチケット売り場に「読売新聞との契約を解
    除したい」と申し込むようなものでしょうか

    大笑いしました。

    窓口の方の困惑顔がすぐに想像できます。
    しかも相手は茹でタコのように赤くなってる妙齢の紳士。

    • 妙齢とは、若い女性の年齢を指します。
      女性が最も美しく輝く年頃ということで、数値で何歳という定義はありません。

  • あー、病院じゃこんなレベルの騒ぎは日常茶飯事ですよ。

    ちなみに今日は認知症フォローの患者さんが予約を忘れていてすっぽかされました。
    怒るに怒れないw

    • たとえ変ななお客様が百人に一人でも、まともなお客様は人の手を煩わせずに静かに去って行きますから、店員さんやお医者様は、一日中変な客の相手をすることになります。

      警察官の知人がボヤいていました。「私達が相手にするのは、例外の人たちなので…」

      • 某損害保険会社勤務でしたが,某お客様から「オレの保険は対物5千万だが,仮に百万円払ったら,残りの4千9百万円はどうするんだ?」と聞かれて困りました。

  • この板の皆さんの投稿を見るに 社会的地位は高かっただろうと十分予測できますが そのことをあからさまに言う人はおられないと感じています。新聞記者とりわけ朝日新聞は事実を報道するのでは記事と言わない。角度をつけて 愚民を指導するのが使命と勘違いしている記者が大半の印象です。肩書を外してからが本物の人生かな。

  • 小人閑居して不善を為すw
    至らざる所無しw

    言い過ぎですかねえw

  • これだからネットは〜
    これって
    今の若者は〜
    と同じで変化についていけてないように見えますし、レッテル張りして見下してるようにも見えます。

  • 更新ありがとうございます。

    居ますよねーこんなオッサン。私もハタから見たらきっとそうです(笑)。一言で言えば例えモノを買うにしても、「エラソーに言うな!」です。客だぞッは通じません。こんなヤカラは100人に1人ではありません。100人に50人です!韓国対日本の100対0じゃ無いですけど。

    分からないなら、素直に聞け!自分の子供や知人の若い子に聞け!店員さんより分かりやすい場合もあります(笑)。それに店員さんとはイーブンだ。客が上と思うナ!

  • 分からん人はサポートなしのプラン選んじゃダメですよね。
    最低でもスマホ+PC、スマホ2台のように調べながらトラブルシュートしていく体制は必要かと。

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