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    Categories: 外交

米欧が対中制裁で歩調合せる一方で、中露韓の接近も?

同じクアッドでも日米豪印ではなく中露朝韓ならどうする?

本稿は、事実関係の整理です。米国のアントニー・ブリンケン国務長官が先週の日韓に続き、今週はNATO外相会談などに参加するために、欧州連合(EU)を訪問しています。また、このタイミングで欧州連合(EU)が30年ぶりに中国などへの制裁を決定し、あわせてロシア外相が8年ぶりに韓国を訪問するそうです。「『日米豪印』クアッドに対抗するために、『中露朝韓』クアッドが発足する」――。これが単なる与太話だと良いのですが。

ブリンケン国務長官の行動

アントニー・J・ブリンケン米国務長官は3月16日以降、日本、韓国、中国のそれぞれの外交トップらと会い、今週はベルギーを訪問してNATO外相会合に参加するなど、世界各国の外相らとの面談をこなしています。

米国務省ホームページからブリンケン氏の3月16日以降の行動の一部を抜粋しておきましょう(図表)。

図表 アントニー・ブリンケン米国務長官の3月16日以降の行動の一部
日付 出来事 参考リンク
16日 茂木敏充外相との日米外相会談 冒頭会見報道発表
日米2+2 冒頭会見共同声明質疑
菅義偉総理大臣表敬 プライス報道官発表
17日 鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外交部長官との米韓外相会談 報道発表冒頭会見プライス報道官発表
米韓2+2への事前発表 ファクトシート共同記者会見
文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領表敬 報道発表
18日 ウクライナへのG7共同声明 報道発表
米韓2+2 共同声明
ノルド・ストリーム2に対するドイツ、ウクライナ等に対する牽制 報道発表
アフガニスタン和平巡る米中露「トロイカ」声明 報道発表
米中外交トップのアラスカ会談 報道発表
22日 新疆ウイグル自治区に対する米英加3ヵ国外相の共同声明 報道発表
23日 ベルギー訪問・NATO外相会談参加 等 行程表

(【出所】米国務省HPより著者作成)

訪問の順序は日→欧

米国務長官が最初に日本を訪れ、その後は韓国、中国の各カウンターパートとの会談をこなし、その次に欧州を訪問するという流れは、近年、米国の外交における重要性が欧州からインド太平洋にシフトしつつあるという意味で、非常に注目すべき現象といえるかもしれません。

ことに、米国から見て現在の日本は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の事実上の事務局であるとともに、米国の対中戦略、対世界戦略における欠かすことができないパートナーであると見て間違いないでしょう。

では、今回の訪欧の目的はどこにあるのでしょうか。

Secretary Blinken’s Travel to Belgium

Secretary of State Antony J. Blinken travels to Brussels, Belgium, from March 22-25 to attend the NATO Ministerial, engage with European Union leaders, and meet with Belgian officials. The meetings in Brussels reaffirm the United States’ commitment to our Allies and European partners on our shared agenda.<<…続きを読む>>
―――米国務省HPより

米国務省によると、第一義的には北大西洋条約機構(NATO)外相会談への参加とNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長との会談ですが、中国とロシアに対する牽制、気候変動、サイバー・セキュリティ、テロとの戦い、エネルギー安保などが議論されるとしています。

また、ベルギー訪問に際し、欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表との会談で、「民主主義国の連携の強化」などについても議論するとしています。

欧州連合(EU)が対中制裁、ロシア外相が訪韓

こうしたなか、ほかにも興味深い話題がいくつかあります。

ひとつは、これです。

EU agrees first sanctions on China in more than 30 years

―――2021/3/22 22:36付 euronewsより

『ユーロニューズ』の報道によると、EUは30年ぶりに中国に対する制裁を決定しました。具体的には、ウイグル人ムスリムなど少数派の人権侵害に関与していると疑われる4人の中国当局者と1つの団体に対し、EUへのビザ発給停止、資産凍結などの措置としています。

あわせて、北朝鮮やリビア、ロシア、南スーダン、エリトリアなどに対する制裁も発動されたそうです。

もっとも、これに対して中国側は「事実に基づいていない」として反発し、「欧州議会の5人の議員を含む10人の個人と4つの組織」に対する制裁を直ちに発表するなどの対抗措置を発動したとしています。

その一方で、もうひとつ気になる記事が、これです。

ロシア外相、8年ぶり訪韓…北京を経てソウルへ

―――2021.03.23 08:40付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、22~23日の日程で中国を訪問していたロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が23~25日、2泊3日の日程で韓国を訪問するそうです。ラブロフ氏の訪韓は2013年11月以来8年ぶりのことです。

中央日報はこれについて、バイデン政権発足後の日米協力に対応し、中露両国が密着する構図のなかで韓国と接点を作ろうとする狙いがあると分析しています。

また、中央日報は、「来月初めにはロシア国防省の次官が訪韓することで調整中」としつつ、これが実現すれば、「ロシアの外交・国防高位官僚が相次いで韓国を訪れる」という意味で、先週の米韓2+2に続き、それと「近接する連鎖接触が実現することになる」としています。

あれ?「クアッド」になっていますか?

ここから先は、あくまでも個人的な感想です。

バイデン政権の外交はどうも稚拙だと思わざるを得ない部分が多々あります。そのひとつは、中露を接近させてしまっている点でしょう。

外交とは国同士の「仲良しごっこ」ではありません。あくまでも国益を実現する手段のひとつです。その意味では、基本的価値を共有しない国とであっても、うまく付き合って行かねばならないこともあります。

そして、外交の世界においては、「個別撃破」が鉄則であり、無駄に敵対国を作るべきでもありません。とくに敵対国同士が密着すると、大変に厄介だからです。

ことに、ロシアと中国が急接近していることは、米国やその同盟国の外交力を弱めることにつながりますし、中露を核に無法国家が結合すると、非常に面倒です。

先日、読者コメント欄に、どなたかが「クアッド」という意味では、「日米豪印」対「中露朝韓」の構図が出現すると厄介ではないか、といった趣旨の書き込みを頂きましたが、この点についても警戒しておくに越したことはないのかもしれませんね。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • なんだったか。連帯の一番弱いところを狙うのが常套手段とかなんとかってどっかで聞いたが、この場合いの一番に狙われるのがどこか、馬鹿でもわかるな。みんなの注目を浴びれて嬉しいんだろうな〜。

  • プーチンを殺人者呼ばわりはバイデンの悪手だったな。本当のことなのは、承知でも公然と云い放つのは、ロシアと中国を結び付けることにはなる。それがわからないならバイデン認知症説もあながち嘘ではないかもしれない。危ねぇなぁ、、、。

    • ハゲの人にハゲって言っちゃう人w

      オバマもポップコーン片手(嘘だけどテンション的に)にビンラディン暗殺の生中継見てたって話ですけど。

  • 今の韓国政府は、「中露朝韓」の枠組みを想定済み、というかその方向に進んでます。独裁的ユーラシア大陸連合となって、おかしな事は一つも有りません。
    その枠組みで北方領土の開発をされちゃう可能性もあります。
    中露の関係をどう見るか、否定的な向きもあると思いますが、価値観を共有しているという部分で、一時的に手を組むと思います。

    • だんな様

      >独裁的ユーラシア大陸連合・・
       
       この最前線に立つのは日本なので、出来れば避けたいが、もうそんなことを言っている時ではないので、米中デカップリングに向け、サプライチェーン見直し、スパイ防止法等法整備を急ぐべきだと思います。 いまだにLINEを使うというボンクラ大臣(複数!!)が居る様では心もとないですが、菅さんには手足と割り切って使える内は使い、結果を出してほしいと思います。

      > その枠組みで北方領土の開発をされちゃう可能性もあります。
       これも、マグニツキー法と同様に、日本の主権を侵害する輩への制裁ができる法の整備が急務です。これをベースに資金を絶つ事で先ずは対応するのが良いと思います。
       先行して、一番弱い南北朝鮮の経済焦土化準備を米国・EUと進めるべきでしょう。

      これ等は、日本国民が自民党や経団連の親中・親韓派を、売国奴として切り捨てるのが早いか、中国の罠に嵌るのが早いかのせめぎあいでしょうね。
      今ならまだ間に合うと思います。
      ・国防動員法
      ・国家情報法
      ・輸出管理法
      ・企業内共産党組織の設置
      ・海警法
      ★共産党
      こう並べると、侵略準備を着々と整えている中国共産党を警戒しない方がおかしい。

      未だ ”日中友好・日韓友好・インバウンド”と叫ぶ人々を見ると ”無知蒙昧か、金に目が眩んだ子悪党か、日本を売り渡そうとする大悪党か”と、思えてしまいます。

  •  毎度、馬鹿馬鹿しいお話を。
     「韓国の文大統領がアメリカに、「クアッドの参加すると言ったけれど、日米印豪のクアッドとは言っていない」と言ったんだって」
     おあとがよろしいようで。

  • 更新ありがとうございます。

    さぞかし韓国はロシアと接近出来て、「運転席」にまだ居ると思って喜んでる事でしょう。中朝韓露が北東アジア+ユーラシアグループ、日米豪印台英NATO(EU)グループという二つの枠組みになる可能性は高いです。

    しかし韓国は悪の枢軸側にわざわざ行きたがるとは、先が見えてますネ。仲間うちで「タコ殴り」されて、更に自由民主主義国側からも殴られる(笑)。やっぱり国が崩壊するでしょう。

    半島はやはり、シナの一省、一自治区程度です。ウイグルや新疆と違い、自ら近寄り、やられっぱなしで併合される状況と思います。

    さて、現在の日本は、「自由で開かれたインド太平洋」の事実上の事務局です。合わせてTPP11やシックスアイズ等、本当に諸国から期待されていると思います。これらはやはり、安倍総理大臣時代に作られた「環」が太くなりつつある、という事だと存じます。

    • 「運転席」
      念願の運転席に座れた
      右は切り立った山肌
      左は深い谷
      前方はもうすぐ崖
      爆弾投げ投げ来た道は
      あちこち穴だらけだけど
      バックギヤ壊れてるから無問題
      燃料計は警告点灯
      タイヤもパンクしたみたい
      隣人に架けたら電話繋がらず
      これまで助けさせてあげてたのに!
      さあこれからどうしよう♪

      • 引っ掛かったオタク 様

        車が動かなくなったら、中朝露の駕籠かきでもやったらどうでしょう?「エイホッエイホッ、、喉、喉が渇いた!水、水をくれ!」(笑)

        「倒れる迄走れッ。お前には何も与えない。甘い顔しないのが正解だ」(中朝露 爆笑)。

    • めがねのおやじ様

      >やっぱり国が崩壊するでしょう。

      国破れたら、見るべき山河などどこにもない。
      況してや、そこに住まうあのめんどくさい民。

      >やられっぱなしで併合される状況と思います。

      半導体産業くらいは分捕るでしょうが、残りはいらんでしょう(笑)。

  • このタイミングでのロシア外相の訪韓は、要するにロシアから見ても韓国が「弱い輪」であると判断されているから以外の解釈は見当たりそうもありません。ちょっと前の韓国であれば、「米中だけでなく、ロシアからもラブコール貰っちゃったぁ。ますますモテモテでどうしよう」くらいに思っていたでしょうが、さて、どんな心積もりでロシア外相を迎えるのやら。
    ロシアからすれば、ちょっとちょっかいを出してみただけで、韓国側から米韓同盟を否定するような言質を引き出せたら儲けものくらいのところだと思われますが、韓国を丸ごと抱え込むようなつもりはさらさらないでしょう。

    現状、外交的に八方塞がりである韓国が、「対ロ外交に苦境脱出の活路を見出そう」だなんて思惑でいたとしたら、まんまとロシアの術中にはまると思われますが、まずは会談の結果待ちですかね。「貧すれば鈍す」になったら面白い......もとい、ならなきゃいいんですけれども。

  • いつもお世話になっております。

     露中北南のクワッドと言っても、我が日本の共産党や立憲・社会党等野党の
    母体国、つまりマスコミ関係諸国じゃありませんか?
    特に論評する程のものではありません。

  •  李氏朝鮮時代末期から大韓帝国時代に、朝鮮半島を舞台として、大日本帝国、清国および帝政ロシアが繰り広げた三つ巴の勢力争いが、時代と役者を変えて再び繰り返されるのでしょうか。
     「歴史から教訓を学ばぬ者は、過ちを繰り返して滅びる。」という名言がありますが、この時期にロシア外相を韓国に招いたのは、もしかすると、来年3月の韓国大統領選挙で与党(共に民主党)候補が敗北した場合に、将来再び、共に民主党の大統領が誕生するまで、文在寅大統領とその一族を、在韓ロシア大使館に保護するという密約を交わす目的かも知れません。

    • 名無しの権兵衛様

      ロシア公使館に保護された……、
      ドッカで聞いた……気がしました。
      シランけど……(棒)

  • チャップリンの映画「独裁者」の中で、ヒトラーとムッソリーニの会見を思わせる場面に、どちらが格上の席を占めるか、さや当てを繰り広げるシーンがあったのを思いだします。初めこそ、腹に抱えるイチモツを隠しおおせるつもりでいても、唯我独尊の指導者同士がいつまでも仲良しごっこを続けられる道理はないでしょう。

    習近平、プーチン、金正恩の三者を交える会談の場に勇んで出かけた文在寅。揃って記念写真を撮る段になって、習近平とプーチンの間に並ぶつもりが、肩を並べてひそひそ話を交わすふたりの間には割り込む隙間がない。睨みつけてくる黒電話のそばには近寄りがたいから、結局は右隅に控えたら、できあがった写真にはからだ半分も写っていなかったというお粗末になりそうな気配が(笑)。

  • たしかに中露を密着させる2面作戦は良くは無いけど…
    でも、どちらかを取り込んだら、自由主義国の結束は実現できない。
    敵を増やさない事よりも、今は価値観の合う物同士での結束を固める方が重要だと思う。
    だから、中露両面を敵に回しての全面対決姿勢が、今は正解だと思います。

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