ゼロ対100理論をそのまま実践するハンギョレ社説
これまでに何度となく当ウェブサイトに掲載し、拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』P57~58にも転載した論点が、「ゼロ対100理論」とする考え方です。この「ゼロ対100理論」の存在を実証するような社説が昨日、韓国の「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)に掲載されていたようです。ちょうど良い機会ですので、簡単にレビューしておきましょう。
目次
ゼロ対100理論
当ウェブサイトでこれまで何度となく説明し、拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』P57~58にも転載したのが、「ゼロ対100理論」と呼ばれる考え方です。
ゼロ対100理論
自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使して「相手にも落ち度がある」などと言い募り、過失割合を「50対50」、あわよくば「ゼロ対100」に持ち込もうとする、韓国や北朝鮮に特有の屁理屈のこと。
要するに、本来は自分たちが100%悪いのに、相手にも責任をなすりつけることで、過失割合を減らそうとする行動であり、これこそがまさに韓国・北朝鮮の本源的な狡猾さなのだと思います。
そして、日本は間違っても、この「ゼロ対100」の土俵に立ってはなりません。なぜなら、下手にこの土俵に立ってしまうと、基本的には損をするからです。これについて、次の得失表で考えてみましょう(図表)。
図表 ゼロ対100理論における得失表
ケース | 韓国の得失 | 日本の得失 |
---|---|---|
100%、韓国が勝った場合 | 100の利得 | 100の損失 |
日韓が引き分けた場合 | 50の利得 | 50の損失 |
100%、日本が勝った場合 | ゼロ | ゼロ |
(【出所】著者作成)
いかがでしょうか。
日本からすると、100%勝ったとしても、得るものはゼロです。韓国からすると、100%負けたとしても、失うものは何もない、ということです。しかし、日韓「引き分け」に持ち込んだ場合、韓国は50を得て、日本は50を失います。韓国が100%勝てば、韓国が100を得て、日本が100を失います。
だからこそ、韓国が仕掛けてくる「ゼロ対100」ゲームには絶対に乗っかってはなりません。
韓国が「ゼロ対100」ゲームを仕掛けてきた場合、「有無を言わさず韓国に制裁を加え、韓国にマイナス1万の打撃を与える」といった中国のようなやり方が正しいと申し上げるつもりはありませんが、少なくとも韓国の土俵に乗っかることは正しくないことは間違いないといえるでしょう。
ハンギョレ新聞の社説がわかりやすい!
さて、この「ゼロ対100」理論、最近のわかりやすい事例としては、3月1日に文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が行った演説(『日韓関係改善は隠れ蓑、文在寅氏の真の狙いは南北融和』等参照)に対する韓国メディアの反応があります。
その典型例でしょうか、韓国の「左派メディア」として知られる『ハンギョレ新聞』(日本語版)に昨日、こんな「社説」が出ていました。
[社説]文大統領「相手の立場を考えての対話」、日本も応じてほしい
―――2021-03-02 06:52付 ハンギョレ新聞日本語版より
なんだか、拙著の出版にあわせて「ゼロ対100理論」をわざわざ実践してくれたのかと思うほど、見事な「ゼロ対100」社説です。タイトルでも想像できるとおり、文在寅氏が演説で日韓対話の必要性に言及したことを受け、「日本もこれに応じて対話に応じてほしい」と要求するというものだからです。
リンク先の「社説」は文字数にして1000文字少々と短いものですが、内容もスカスカです。
あえて要約すると、文在寅氏が日韓関係について「日本政府が敏感に感じる問題には直接言及せず、『ツートラック』路線を再確認したこと」自体が日本に対する配慮だから、日本もこれに応じて日韓対話に応じるべきだ、というものです。
やや乱暴に要約すれば、「韓国の側にも落ち度はあるかもしれないが、大統領自身が日本に対し対話を呼びかけたのだから、これでおあいこだ」、「だから日本も対話に応じるべきだ」、といったニュアンスが含まれていると考えても良いでしょう。
「韓日双方が譲歩せよ」とする壮大な勘違い
こうしたなか、ハンギョレ新聞は、こうも述べます。
「1965年の国交正常化後で最悪という話が出る韓日関係を解決するには、どちらか一方の一方的な譲歩では不可能だ」。
違います。
まったく違います。
現実の外交の世界において、譲歩しなければならないのは、基本的には関係悪化の原因を作った側であり、また、関係悪化によって困る側です。日本は日韓関係悪化の原因を作った側ではありませんし、また、日韓関係が悪化しても死活的に困るという側でもありません。
それにもかかわらず、ハンギョレ新聞は次のように主張するのです。
「韓国政府が賢明な解決策を模索するとしても、過去の問題の基本原則である『被害者中心主義』を放棄できない。日本政府は『関係改善の契機は韓国が作らなければならない』という硬直した姿勢から脱し、対話に乗りだしてほしい。」
「(自称)被害者中心主義」を掲げたいのならば、自分の国で解決すれば良い話でしょう。なぜそこで違法に日本を巻き込もうとするのでしょうか。
この点、普段から当ウェブサイトでは、「日韓の諸懸案を巡っては結局のところ、次の『3つの落としどころ』しかあり得ない」と申し上げているつもりです。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
- ③韓国が国際法違反を続け、日本が韓国に譲歩しないことで、日韓関係が破綻する
このハンギョレ新聞の社説を含め、多くの韓国メディア、韓国の政治家らが求めているのは②でしょう。あるいは、日本国内でも「対韓配慮論者」は、得てして上記②を主張して来ました。
しかし、当ウェブサイトや拙著などを通じ、「朝鮮半島生命線説」の間違いについては何度となく触れてきたとおりですし、また、数字で読む限り、日本経済に占める韓国の重要性は十分にコントロール可能であり、かつ、コントロールしなければなりません。
当ウェブサイトとしては、上記「3つの落としどころ」については、日本の側は①か③以外に絶対に呑んではならないと考えています。
(なお、上記3つ以外にも、ごく一部の過激な人たちが「日本が韓国に制裁を仕掛けるなどして、韓国を無理やり日本に従わせる」、「韓国を攻め滅ぼしてしまう」などを主張していることは存じ上げていますが、著者自身は国際法に背く選択肢については排除すべきだと考えています。)
この社説自体、丁寧な無視が韓国に効いている証拠
くどいようですが、「被害者中心主義」などと騙り、国際法や国際社会の常識に背く行為をして日本を貶めて来たのは韓国の側です。その(偽の)「被害者中心主義」に日本が配慮しなければならないいわれなど、どこにもありません。
いや、むしろ日本は(韓国の好きな)「加害者」の立場ではなく、「被害者」の立場でしょう。韓国が国際法を破ったり、ウソをついて名誉と尊厳を傷つけられたりしているからです。
こうしたなか、これまで何度となく報告してきたとおり、著者自身の見立てによれば、日本政府は現在、韓国に対して積極的放置・戦略的無視を貫いているように見受けられます。これはこれで、短期的に見れば、決して悪い戦略ではありません。インチキ外交に対しては、無視も有効だからです。
一例を挙げれば、韓国側では自称元徴用工判決問題を巡り、換金が極めて困難な資産をわざと差し押さえ、「売却するぞ~」、「売却するぞ~」と日本政府や日本企業を揺さぶっていますが、これも短期的には無視するのが良いでしょう。どうせ売却出来っこないからです。
実際、ハンギョレ新聞の社説には、こんな記述もあります。
「1月に『日本政府は慰安婦被害者に直接賠償しなければならない』という韓国の裁判所の判決が出た後、菅義偉首相と茂木敏充外相は新任のカン・チャンイル駐日韓国大使との面談を拒否し、チョン・ウィヨン外交部長官との電話会談にも応じていない」。
おそらく「カン・チャンイル」とは「次期駐日大使」である姜昌一(きょう・しょういち)氏のことであり、「チョン・ウイヨン」とは鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外交部長官のことでしょう。
ついでにいえば、菅義偉総理大臣は文在寅大統領、李克強(り・こっきょう)中国首相との「日中韓サミット」にも応じていませんし、つい先日は習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の年内の国賓訪日もキャンセルになった、といった報道もありました(これについては別稿で取り上げるかもしれません)。
つまり、菅義偉総理大臣や茂木敏充外相らが韓国のカウンターパートを相手にしていないのも、こうした日本の「丁寧な無視」戦略のあらわれだということであり、これにハンギョレ新聞が社説で噛み付いていること自体、その戦略が韓国に対して「効いている」証拠でしょう。
いつまでも放置できない:2022年5月に見極めを
ただし、中・長期的には、この状態をいつまでも放置することは許されません。
くどいようですが、「日韓関係の破綻を防ぐ」という目的のためには、「韓国が国際法を守らなければならない」のであり、日本が1ミリでも譲歩するようなことは、絶対にあってはなりません。逆に、「韓国が国際法を守らない」のであれば、日本は「国として」、「日韓関係の破綻はやむなし」と判断しなければなりません。
これについて見極めるタイミングが最初に到来するのは、文在寅氏の任期が満了し、次の大統領が就任してすぐのタイミング、つまりおそらくは2022年5月あたりでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
オマケです。
先ほど引用したハンギョレ新聞の社説には、次のような記述もありました。
「東京五輪は文大統領の言葉のように、韓日、南北、朝日、朝米の対話の機会になり得る。東京五輪が朝鮮半島平和プロセスの再稼動の契機になるには、まず韓日関係を解決しなければならない。両国は東北アジアの安定と共同繁栄に力を集めてほしい」。
どうして勝手に東京五輪を朝鮮半島の政治のために利用しようと呼びかけるのでしょうか。
東京五輪をどう位置付けるかを決める権利は、ハンギョレ新聞にも韓国政府にもありません。
ついでに老婆心ながら申し上げるなら、韓国が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という構想から除外されつつある現状を、ハンギョレ新聞社さんも少しは認識した方が良いと思うのですが、いかがでしょうか?
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日本としては、「2015年の合意を誠実に実行しろ。話はそれからだ」とだけ返しておけばいいので、話は簡単です。合意においては、ソウルと釜山の公館前に不法に設置された少女像を撤去するための努力義務が課せられていたと記憶しているので、まずはそこからですね。
文在寅政権には絶対に実行不可能なので、日本としては放置しておけば良いのです。あとは勝手に自爆してくれるでしょう。
ハンギョレ新聞の社説から抜粋
>心から問題を解決しようとするならば、ボールを相手を渡し責任を問うのではなく、膝を突き合わせなければならない。手のひらは打ち合ってこそ音がするものだ。
一人で手を叩けば良い話。
それができないのは、北と手を繋いでいるからだ。
心から問題を解決しようとしていない証。
毎度、馬鹿馬鹿しいお話を。
韓国メディアが「菅総理は、文大統領の呼びかけに応じろ」と言い出しました。「バイデン新大統領は、文大統領の心情を忖度しろ」と言い出しました。「北朝鮮の偉大なる将軍様のご息女様は、韓国にお言葉をください」と言い出しました。
おあとがよろしいようで。
人の足を踏んづけたまま「日本に解決させてやるニダ」ですね。
無視が効いているという考え方は、良くないですね。
叩いていれば、もっと効果が有ったかもしれません。慰安婦問題を拗らせているのは、日本政府が無視していることが、原因だと思います。
だんな 様
韓国としては、日本が譲って呉れるなら大勝利でしょうが、叩いてくれてもそれをネタに騒ぎ立てられるので悪くは無い。
日本としては、叩くだけじゃなく叩き殺してしまえば一件落着ですが、後処理が面倒かも知れません。
無視なら、韓国が次の手を考えなければいけません。ICJなんて言い出したりしてますから、案外効いてるような気もしますけどねえ。
>新任のカン・チャンイル駐日韓国大使との面談を拒否し・・・
外務省の大使一覧は未だに姜昌一氏は次期大使のままで、新任されていないようです。別に誰も困りませんが、政府・外務大臣・外務省が腰砕けにならないよう祈るばかりです。
文大統領には「国として約束したことを、行動で示せ」の一言に尽きますねん。いつも口先ばっか。
日本政府の「要求に」モオンジェイン大統領は早く立法府として対処しろ、ということだと思いますね。日本は韓国政府の立法権に内政干渉できないのですから、青瓦台は自分の撒いた種から育った木を切り倒して対処するしかないでしょう。米国にいくら日本が動かないとうそをついても、誰もそれにちょっかいを出してくれません。
それにしても、国際条約を破棄するなら差し押えを現金化する、韓国の売春婦タカリに対する慰労金協定も破棄するならしてお金を日本に返すなど、きちんとした国としての結果を出して、米国に韓国は日本とは仲良くできないと訴えれば良いと思いますが、なんか女々しい国ですよね。
呼びかけに応じるなら変化球で。
またもや大規模なシステム障害を起こした某銀行に、ペナルティとして業務停止を求める動きが出るはずです。
ただ、業務停止の影響が日本国民に及んでは、本末転倒。
そこで、韓国内での業務を、貸付資金の回収以外、停止させるのはどうでしょう。
業務停止地域を限定する分、期間は長目に5年くらい。
もちろん、信用状の発行も停止。
まさか、戦犯企業の三菱系銀行に頼ろうなんて、恥ずかしいことはしませんよね ? 韓国さん。
これを、日本の呼応と受け取ってもらえば、よいのではないでしょうか。
更新ありがとうございます。
韓国は今、絶対絶命のピンチなんでしょうネ〜。「日韓関係を修復したい。しかし、それは理解しているが、悪いのは日本だ!」としたい。無理やろ(笑)。
東京五輪なんて、南北統一や日韓関係改善、米韓関係改善、そして米朝首脳会談の前段階などにはさせません。自分とこの都合だけ考える朝鮮人の小狡さ、飽き飽きします。
コロナ対策中の大会本番なんだから、変な国の菌が集まっては困るんですヨ。来てもそれぞれアクリル板で仕切り個室状態、開会式が終了したら、その足で羽田迄送り(強制送還とも言う)ます。
>「韓国政府が賢明な解決策を模索するとしても、過去の問題の基本原則である『被害者中心主義』を放棄できない。日本政府は『関係改善の契機は韓国が作らなければならない』という硬直した姿勢から脱し、対話に乗りだしてほしい。」
は?
被害者中心主義を放棄できない?
そもそも被害者とは?…は置いといても
じゃあ、このままでいいじゃん!
は?
日本政府は『関係改善の契機は韓国が作らなければならない』という硬直した姿勢から脱し、対話に乗りだしてほしい。」
だからぁ硬直してるのは日本じゃないの!
だんな様が言われるように、日本政府が手厳しく叩いておかないからいまだにこんな世迷い言を吐けるのでしょうね。悪いのは日本政府です。
文氏の最大の目標は北との対話なのだから、そして何度も対話しましょうと話をしているのだから、南朝鮮のマスコミは、『(わざわざ日本に下げたくもない頭を下げてまで東京オリンピックを利用しなくて良い様に)金正恩は文大統領の呼びかけに応じよ』、『少しは南の立場も考えろ』と直接言えばいいのに、と思いますねぇ。