米国の同盟国でありながら、中国にも良い顔をする――。それが良くないことだと認識され出したのは、意外と最近のことなのかもしれません。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、「サウスチャイナ・モーニングポスト」(SCMP)の議論をもとに、「ニュージーランドが中国と西側の仲裁者となろうとしている」とする記事が掲載されていました。「米中二股外交」を繰り広げている韓国なりの「共犯者」を求める心理なのでしょうか?
お詫びと訂正(2020/02/14 09:00)
当初、公表予定時刻設定を誤り、しかも下書きの状態で記事を公表してしまいました。大変申し訳ございませんでした。改めて推敲済みのものを公表します。また、誤ったとはいえ一旦公表してしまった記事は基本的に削除しないのが当ウェブサイトの方針ですので、読者コメントの中にはこの下書きの状態で寄せられたものが残っていますが、ご了承ください。
日中両国は価値をまったく共有しない
当ウェブサイトではいつも報告しているとおり、中国という国は、日本を含めた「西側諸国」とは、基本的価値観において相容れる相手国ではありません。というのも、日本は自由・民主主義国であるのに対し、中国は共産党一党独裁の軍事国家だからです(図表)。
図表 日中の基本的価値
基本的価値 | 日本 | 中国 |
---|---|---|
自由主義かどうか | 日本は自由主義国家である | 中国は共産主義国家である |
民主主義かどうか | 日本は民主主義国家である | 中国は独裁主義国家である |
法治主義かどうか | 日本は法治主義国家である | 中国は人治主義国家である |
基本的人権かどうか | 日本では人権が大切にされる | 中国では人権が無視される |
平和主義かどうか | 日本は平和主義国家である | 中国は軍事主義国家である |
(【出所】著者作成)
そして、現在の日本が中国との関係を深めてしまっていることについて、著者自身は憂慮している人間の1人であるつもりです。というのも、法治が機能せず、経済を政治利用するような国と、そもそも日本は関係を深めるべきではないからです。
その意味で、「自由で開かれたインド太平洋」構想、すなわち「FOIP」は、安倍晋三総理大臣の重要な「置き土産」のひとつといえます。日本がFOIPの中心役を買って出ることで、日中関係を「日本対中国の二国関係」ではなく「FOIP諸国対中国の多国間関係」に変容させたからです。
頑なにFOIPから逃れる韓国
ただ、西側諸国に所属することの恩恵をフルに享受していながら、そのFOIPに頑なに参加しようとしない国が、韓国です。
いや、単にFOIPにコミットしないだけならまだ良いのですが(※良くありませんが)、さらにタチが悪いことに、韓国は自国に最も脅威を与えない国である日本や米国に対して公然と噛み付く一方で、自国に最も脅威を与えているはずの中国や北朝鮮に対しては黙り込む悪癖があります。
2010年に発生した、北朝鮮による「天安艦」の撃沈事件や延坪島に対する砲撃事件の際には、北朝鮮に対する報復をほとんど行いませんでした。
しかし、2011年12月には、ソウルの日本大使館前の公道上に、市民団体がいわゆる慰安婦像を設置するパフォーマンスを行いましたが、この日本大使館(※現在は大使館跡地)を睨む像は、現在に至るまで撤去されていません。
まさに「本末転倒極まれり」、といったところでしょうか。
つまり、韓国は自国に対する「真の脅威」に驚くほど無関心であるとともに、「ウソの脅威」をでっち上げることが大好きな国なのです。これこそ、戦略家のエドワード・ルトワック氏が「韓国の態度は無責任ですらある」と批判するゆえんなのでしょう。
そして、米国の同盟国という地位にありながら、経済面では中国との関係を積極的に深め、政治的にも中国の言いなりになりつつあるのが、韓国という国でもあります。朝鮮戦争で米国から国を守ってもらったにもかかわらず、恩知らずなことですね。
だからこそ、もしも米国が「損切り」できる国なのだとしたら、躊躇なく、この「恩知らず国家」を損切りすべきなのだと思いますが、その米国自身も、決して外交が上手な国ではありません。
米国の「東アジア問題専門家」と称する人たちが、「韓国に自由・民主主義のすばらしさを教えれば、よもや米国ではなく中国の側に立つという選択をすることはないに違いない」、などとナイーブに信じ込んでいるフシがあることなどは、その典型例でしょう。
コウモリ国家は仲魔を探す…
米国の同盟国でありながら、中国にも良い顔をする――。
それが良くないことだと認識され出したのは、意外と最近のことなのかもしれません。
さて、こうしたなか本稿で紹介したいのは、韓国のメディア『中央日報』の日本語版に昨日掲載された、こんな記事です。
ニュージーランド、中国-西側国家の神経戦を終えられるのか
―――2021.02.13 11:56付 中央日報日本語版より
大変失礼ながら、中央日報としての「ホンネ」が見えてしまう記事でもあります。
タイトルからも何となくわかりますが、この記事では、「ファイブアイズ」の一角を占めているニュージーランドが、同時に中国とも良好な関係を維持していて、西側諸国と中国との「仲裁者」の役割を果たすことができるとする議論です。
もともとは香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』(SCMP)に掲載された議論を下敷きにしていると思われる記事ですが、中央日報がわざわざこの話題を取り上げたのは、「米中双方での二股外交を行っているのは韓国だけではない」と言いたいがためではないでしょうか。
中央日報は、ファイブアイズ諸国のうち、米・英・豪・加の4ヵ国がいずれも中国と対立するなか、「ニュージーランドだけは中国との関係が良好」で、これこそが「中国がニュージーランドに期待する理由」だと述べているのです。
この点、ニュージーランドは中国と「仲が良い」のではなく、単に両国間で目立った争点がないだけではないかという気がしてなりませんが、逆に言えば、ファイブアイズ諸国のうち、米・英・豪・加4ヵ国のそれぞれと関係を悪化させる中国の外交センスも素晴らしい(※)と思います(※皮肉です)。
ただし、中央日報が最も強調したいのは、もしかすると、次の一文かもしれません。
「西側国家との関係回復を狙う中国がこの島国とどのような関係を築いていくかに国際社会の関心が集まっている」。
うがった見方かもしれませんが、この一文からは、「ニュージーランドが中国と西側諸国をつなぐ仲介者となるのであれば、あわよくば韓国も同じ役割を果たし得るのではないか」という期待感がにじみ出ているように思えてなりません。
そういえば、相手国は異なりますが、「韓国=仲介者」論は、2018年の米朝首脳会談の時期にもしきりに唱えられたものです。2018年当時は「米国と北朝鮮を韓国が仲介する」というものでしたが、今回の中央日報の議論は、「西側諸国と中国を韓国が仲介する」という発想でもあるのかもしれません。
考え過ぎかもしれませんが…。
共犯者を求める心理
ただし、韓国人の側も、さすがに朴槿恵(ぼく・きんけい)、文在寅(ぶん・ざいいん)の両政権にわたって加速しつつある「対中傾斜」の動きが、一般論として米国の不興を買いかねないものであるという点については、気付く人が増えていることもたしかなのでしょう。
つまり、先ほどの中央日報の記事は、言外に、「ニュージーランドはFOIPに加わらず、中国と西側諸国の橋渡し役を買って出ようとしている」というストーリーを思い浮かべつつ、あわよくば、「コバンザメ」よろしく自分たちもニュージーランドの米中二股外交に乗っかろうとする気配が見え隠れする次第です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
これについて、あまり表現は良くないのですが、敢えてもうすこしわかりやすいことばで言い換えるならば、「犯罪者が共犯者を求める」ような心理でしょう。
ただし、実際にニュージーランドが「仲裁者」の役割を果たすのかどうかは知りませんが、少なくとも現在の韓国が行っているような米中双方に良い顔をする外交が、もはや米国には通じないという点に、この中央日報の記者様は気付いていらっしゃるのでしょうか。
あるいは、百歩譲ってニュージーランドが米中の「仲裁者」たろうとしたとして、それを韓国が参考にできるものなのでしょうか。
結論的にいえば、もしもニュージーランドが「米中二股外交」の「共犯者」となったとしても、それによって韓国の罪が赦されるわけではありませんし、少なくとも韓国の米中二股外交を米国が許すかどうかとはまったくの別問題である、とだけ申し上げておく次第です。
View Comments (23)
>もしもニュージーランドが「米中二股外交」の「共犯者」となったとしても、それによって韓国の罪が重くなるわけではありませんし、
この1文で言おうとなさっている趣旨(単独犯でなく複数犯だからと言って犯した罪が軽くなる訳ではない)を想像しますに、この最後の部分は「韓国の罪が軽くなるわけではありませんし」ではないでしょうか?
正直な話し、人権重視のNZが、セクハラ外交官問題で揉めてる韓国と一緒の立ち位置に居ようとは思わないでしょう。
つまり、韓国の仲間に入らないっ!て事です。
韓国は中国と同じで、他国を見下し過ぎですわ!
彼の国が共犯者を求めるのは責任転嫁の為でしょう。
エドワード⋅ルトワック氏。
https://www.mag2.com/p/money/252055
上記の記事が面白いです。
更新ありがとうございます。
その前にこの論壇の13日朝9時投稿、というのがちょっとおかしいなと思います。9時なら何回も辿り着いてましたし、その時刻には無かったように思います。
それはいいとして、韓国がニュージーランドの行為に何を期待しているのかはだいたい分かりますが(笑)、無駄な努力というもんです。NZは地勢的に豪州を除き、周りは島嶼ばかりですよ。南海の孤島です。
産業、経済活動が活発なアジア、欧米とは隔絶された空間です。
韓国はNZに変質者の外交官を送り込み、その犯人は帰国後、また別の国に飛ばしましたね。コレについて誠意ある謝罪、二度と起こさぬ約束も、聞いた事がない。「ヤラれたNZ人も悪い。どっちもどっち」の理論ですか?
それとファイブアイズの中でも、一番見劣りする国家がNZです。韓国はアレだよ、スグ自分より上か下かで態度を変える。間違ってもNZは大英帝国の傘下の一角。ワルしながら悪仲間を増やそうとする邪な朝鮮とは違います。
めがねのおやじ様
>韓国はNZに変質者の外交官を送り込み、(中略)、どっちもどっち」の理論ですか?
「どっちもどっち」なんて、考えてないんじゃないかと。
都合の悪い事実は,きれいさっぱり忘れたふり。そのくせ、
それで生まれた「恨」は子々孫々語り継ぎ、千年経っても忘れない。
これまさにウリジナル。こんなことやれる国ほかにないと信じてるからこそ、
あんなウリ流外交を平気でやらかすんでしょう。
世界中の国から「どっちもどっち」とやり返されれば、
とても保ちません(笑)。
日韓関係を、米国が、そして世界がどのように眺めてきたかを見れば、全く逆だと思います。
韓国がどんなに好き勝手なことをしても、
> 世界中の国から「どっちもどっち」と
見做してもらえることが分かっているから、嘘デタラメをまき散らし、横暴の限りを尽くしているのです。そして、日本も世界もそれを許しています。
被害者が幕引きしてしまった件
・リッパート駐韓大使襲撃事件
・韓国海軍レーダー照射
忘れ去られ、不問に付されている件
・日本・パラオ友好の橋事件
・ヘーベイ・スピリット号原油流出事件
・ラオス セピアンセナムノイダム決壊事件
忘却されつつある件
・駐ニュージーランド韓国大使館、セクハラ事件
・インド ビシャカパトナム化学工場ガス漏れ事件
恐らく忘れ去られる件
・イランによる韓国タンカー拿捕事件
まあ、世界中で好き勝ってしながら、なぜかそれがまかり通ってしまうのですから、そりゃあ韓国としたら、自らを祝福された民族と思い込むのも不思議ではありません。
というか、私は朝鮮人は神に祝福されていると本気で思っています。どんなに非道いことをしても「どっちもどっち」で済まされている国民が他にあるでしょうか。
阿野煮鱒様>私は朝鮮人は神に祝福されていると本気で思っています。
同意します(笑)。当方もそう思います。
しかし当方はこうも思うのです(笑)
・幸福と不幸は総量が釣り合っている。
・神というのは気まぐれだ。
> 朝鮮人は神に祝福されていると
零落した妖怪に取り憑かれているかと。
犯罪者が共犯者を求める心理はその通りなのだとしても、自陣に巻き込むのは”自らより大国”でなければ隠れ蓑には使えないのにね・・。
コバンザメの方が大きいと、どうなるのでしょうね?
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(そう自分に言い聞かせないと、韓国と同じく、自分は間違えない存在と自惚れそうなので)
(前にもコメントしましたが)超大国でもない限り、コウモリ外交自体はしかたがないことではないでしょうか。ただし、韓国はコウモリ外交の域を逸脱しました。環境が変わって、コウモリ外交が維持できなくなれば、その修正を図らなければなりません。そのため、韓国は他の国(それはNZかもしれませんし、他の国かもしれませんが)に、その修正をやってもらいたいのではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
ニュージーランドには、対中国では、特に軍事的な役割は期待されてないと思うのです。その上、英連邦の一角として文化的にも米英との関係が深い訳ですし・・・
だから、対中国の軍事的な緩衝地帯というか前線基地としての役割を期待されている韓国とは、同列にはならないと思うのです♪
ニュージーランドが多少親中になったとこで問題は少ないけど、韓国が前線基地や緩衝地帯としての役割を放棄しつつある現状では、獅子身中の虫を抱えるよりも、損切りした方が安全だと、あたしには思えるのです♪
韓国は、以前からヨーロッパを盾に、二股外交しようと考えていたのが、ニュージーランドに変わっただけです。
ニュージーランドが、態度を示せば、別の国(カンボジア)とかに変わるだけだと思います。
>単にFOIPにコミットしないだけならまだ良いのですが(※良くありませんが)、さらにタチが悪いことに、韓国は自国に最も脅威を与えない国である日本や米国に対して公然と噛み付く一方で、自国に最も脅威を与えているはずの中国や北朝鮮に対しては黙り込む悪癖があります。
韓国は、価値観を共有しないのだから、FOIPにコミットしない方が、良いと思います。
また、韓国にとって中朝は脅威ではなく、竹島問題を抱える日本が脅威なんだと思います。
追加です。
「共犯者」では有りません。
この場合の韓国人の論理では、ニュージーランドが悪いという話になっても、同じ事をしている韓国を悪いとはならないからです。
ニュージーランドは、軍事的にも経済的にもけして大国とは言えないものの、存在を無視されるほどの小国でもない。ANZUSも形式的に存在はしているものの、もはや3か国軍事同盟としては実質的に機能していない。米中を重要な貿易相手国としてはいるが、どちらかに死活的に依存しているというわけでもない。さらに、もしも米中が軍事的に衝突するという事態になったとしても、ニュージーランドが巻き込まれる可能性は高くない。このように考えると、ニュージーランドが米中の間に立って仲介を行うというアイディア自体は、必ずしも悪いものではないと思います。
ただし、ニュージーランドにとって、わざわざ火中の栗を拾いに行くだけの価値があるかどうかを考えると、いよいよ軍事衝突不可避の情勢にでもならない限り、自ら積極的に手を挙げるほどの価値はないと思います。どちらか一方(おそらく中国)から仲介を依頼されれば、もう一方に繋ぐくらいのことはするかもしれませんが。もっとも、仮に仲介者の役割を失敗したとしても、ニュージーランドが失うものはそう多くはなさそうですし、かつてレイキャビクで米ソ首脳会談が行われたように、ウェリントンあたりで席貸しを依頼されれば受けるかもしれません。
現時点で、米中関係が以前のような関係になってくれることを世界で一番熱望しているのは韓国だろうと思います。安保はアメリカに、経済は中国にべったりと依存し、美味しいところ取りだけをさせてもらえる夢のような時代だったからです。ゆえに、韓国としては、可能でさえあれば、自国こそが仲介者として振舞いたいと考えていることでしょう。かつての美味しい時代に戻れるのみならず、米中両国に恩を売ることすらもできるからです。
しかし、ハイギョ程度の知能があれば、自国にそんな振る舞いは不可能であることくらい理解できるでしょうから(まだ期待しすぎ?)、ニュージーランドに動いてもらい、あわよくば尻馬に乗りたいくらいの浅ましい考えであると思います。
皆様よくご存じの通り、冒頭にあげた仲介者としてのニュージーランドの利点を、韓国は一つも満たしていません。それでも、あるいはだからこそ、韓国は誰かが動いてくれて自分たちにとってだけ都合のいい世界にならないかと、今日も夢想にふけっているのです。