先日の『韓国よ、トンネル以前に約束守れ』では、韓国の野党「国民の力」の幹部が日韓海底トンネルを釜山市長選の公約に掲げた、とする話題を取り上げました。この構想が韓国国内でそれなりの波紋を広げているようで、とりわけ与党「ともに民主党」の幹部は、これに関連し、間接的にではありますが、日本のことを「敵」と規定したようです。
目次
用日派の面目躍如
韓国の日本に対する異常な行動の数々が続いていることを受け、最近、「韓国は反日国だ」と思っている人は増えているのではないかと思いますが、物事はそこまで単純ではありません。当ウェブサイトでもいつも申し上げているとおり、韓国国内の「反日」には、大きく次の2種類が観察されます。
- (A)用日派――歴史問題などを使って日本に罪悪感を植え付け、それにより日本から産業ノウハウ、技術、資本などを安い価格で手に入れようとする勢力
- (B)純粋反日派――歴史問題を使い、純粋に日本を貶めようとする勢力
この両者、行動としては一見すると似ていますが、目的は同じではありません。
(B)の純粋反日派は、ある意味では感情の赴くままに反日をしてくれているので、むしろ彼らが韓国国内で力をつけてくれれば、私たち日本人の側に、「韓国は事実上の敵対国である」という認識が広まるのに役立ちます。
これに対し、(A)の用日派は、「我々も韓日関係は重要だと思っている」、「だからこそ日本はわが国の国民感情に配慮すべき」などと言いくるめることで、日韓関係を韓国にとって都合が良い形に持って行こうとします。
その意味で、日本にとってタチが悪いのは、(B)ではなく、むしろ(A)の方でしょう。
なぜこんなことを改めて申し上げるのかといえば、数日前の『韓国よ、トンネル以前に約束守れ』で取り上げたとおり、韓国国内で「日韓トンネル」なる構想が出て来たからです。国としての約束も守らないくせに、日韓トンネルという恩恵を得ようとするのは、厚かましい限りです。
日韓トンネル構想
「日韓トンネル」構想は戦前からあった
ただし、前稿では日韓トンネルのなにが「ダメ」なのか、ちゃんと説明していない部分もありましたので、少しだけ補足しておきましょう。
私たちの国・日本は四方を海に囲まれた島国であり、陸路でユーラシア大陸に移動することはできません。しかし、「日韓海峡トンネル」、つまり九州から対馬を経由し、韓国南部の港湾都市・釜山に至るトンネルが実現すれば、いちおう、日本から陸路で韓国まで行くための手段が出来上がるわけです。
これは、「絶海の孤島」(?)であるわが国にとっては、一見すると非常に魅力的です。
日本国内でトラックに積み、そのままユーラシア大陸に運んで行ける可能性が出てくるわけですし、また、鉄道による貨物輸送を使えば、物流コストや日数をさらに節減することができる、といった試算もあるようです(※本稿ではそれらの試算の詳細については触れません)。
また、戦前の「弾丸鉄道構想」でも、その延長線上で将来的には対馬海峡にトンネルを掘削するという考えはあったようですが、これは日本から朝鮮半島を経て、日本が経営していた満州鉄道などに連結し、ゆくゆくはユーラシア大陸を横断する鉄道を作る、といった遠大な計画があったやに聞きます。
もっとも、経済合理性に照らすならば、正直、このトンネルに対する必然性があるのかは非常に疑問です。あくまでも現状で判断するならば、仮に日韓トンネルが出来上がったとしても、韓国から先、北朝鮮の領土内を通ることが難しいからです。
なぜ日韓トンネルは「ダメ」なのか?
もちろん、将来的に南北朝鮮が再統一されるなり、北朝鮮が改革・開放路線に舵を切るなりすれば、陸路で中国、ロシアの領域などに入って行けるようになるのかもしれませが、現時点でそれを期待して日韓トンネルを事業化するのは、非常にリスクが高い行動です。
ましてや、韓国も北朝鮮も、中国もロシアも、「約束を守らない国である」、「リーガルコストが無限大になりかねない」という共通点があるからです(※ちなみにこの「リーガルコスト」こそは、日本が南北中露各国とうかつに関わってはならない、最大の原因でもあります)。
戦前だと、大日本帝国が朝鮮半島全域と満州国、さらには現在の中国北部などを抑えていたため、少なくとも日本の勢力下にあった地域に関しては、わけのわからない法律破りに日本企業が悩まされるという事態は避けることができたかもしれません。
しかし、仮に「日韓トンネル-南北朝鮮鉄道-シベリア鉄道・中国鉄道」というルートが出来上がり、そこに貨物輸送の生命線を握られてしまうような事態が発生すれば、南北朝鮮、中国、ロシアが日本に対し、「物流を止めるぞ」などと脅して理不尽な要求をしてくるという可能性は非常に高いです。
それに、トンネルは作ってしまえば維持管理にもコストが掛かります。いわば、資産ではなく負債に化けてしまう可能性がある、というわけです。
したがって、現在の東アジア情勢が続く限りは、日韓トンネル(あるいは宗谷海峡トンネル、間宮海峡トンネル)などの形で南北中露などと陸路をつなぐことに関しては、地政学的にも経済的にも、まったく賛同できないのです。
余談ですが、船便や航空便の場合、採算性が悪化すれば、すぐに撤退することができます。おりしも韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に昨日、こんな記事が掲載されていました。
韓国と日本・ロシアを結ぶ国際フェリー 就航から5カ月で廃止
―――2021.02.03 20:32付 聯合ニュース日本語版より
これは、日本と韓国、ロシアの3港を結ぶ韓国のフェリーが2月1日、廃業届を出したとするものです。やはり、武漢肺炎の影響で旅客数が激減したためでしょうか。
いずれにせよ、現状、日本と韓国を陸路で結ぶのはリスクが高過ぎることだけは間違いないでしょう。
用日派vs反日派
自分で「用日派」であると認める
さて、本題に戻りましょう。
問題の「日韓トンネル」発言をしたのは、韓国の野党「国民の力」の金鐘仁(きん・しょうじん)非常対策委員長ですが、韓国国内でも日韓トンネル構想に批判があったためでしょうか、この方は昨日、火に油を注ぐような発言をなさったようです。
金鍾仁「海底トンネル、親日と関係ない…日本を利用できなければ」
―――2021.02.03 17:41付 中央日報日本語版より
韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、この金鐘仁氏は釜山市長選の公約のひとつである「日韓トンネル構想」について、「海底トンネルと韓日は関係がない」、「日本は韓国の目的のために利用できるという考えをすべき」などと述べたのだとか。
おもわず「正体見たり、用日派」、と言いたくなります。
この「日本は韓国のために利用できる」発言については、中央日報の読者コメント欄を確認しても、多くの読者から非常に強い反発が出ているようです。当たり前でしょう。
ただし、韓国の「保守派」と呼ばれる勢力は、「日本を都合よく利用してやろう」という「用日派」的な考え方をしているという点については、当ウェブサイトではかなり以前から指摘して来た話でもあります。
ハンギョレ新聞が勢いづく!
もっとも、韓国の保守派(用日派)がこうやって堂々と「日本を利用する」という表現をすること自体、悪いことではありません。なぜなら、日本国内では「用日派」の危険性が強く意識されるきっかけのひとつになり得るからです。
また、韓国国内でも「純粋反日派」が「用日派」を「お前たちは親日派だ」などと批判し、勢いづかせるうえで良い契機でもあります。その証拠が、「左派メディア」として知られる『ハンギョレ新聞』(日本語版)に掲載された、次の記事でしょう。
「韓日海底トンネル」にとんでもない「イデオロギー論」
―――2021-02-04 04:02付 ハンギョレ新聞日本語版より
ハンギョレ新聞のこの記事は、どちらかというと、日韓トンネル構想に対する批判が「行き過ぎだ」とたしなめているものではあります。しかし、金鐘仁氏の日韓トンネル構想が韓国国内の「純粋反日派」にかなりの力を与えたであろうことは、容易に想像がつきます。
というのも、記事では金鐘仁氏の「海底トンネル」公約を巡り、与党「ともに民主党」の党内で、「韓国と日本の間に海底トンネルを作れば日本に一方的に有利であるため、『親日公約』だ」という主張が出ていると指摘するからです。
日韓トンネルが一方的に日本に有利だと主張する根拠はよくわかりませんが、韓国国内で左派・純粋反日派からこの手の批判が出て来ること自体は、日本にとって必ずしも悪い話ではありません。
韓国与党が間接的に日本を「敵」と表現
ちなみに、ハンギョレ新聞によると、「ともに民主党」の政策委員長が2日、KBSの番組に出演し、次のように述べたのだそうです。
「海底トンネルを通じて私たちが得る収益は、日本に車で行くということしかないが、日本は、我が国と北朝鮮を経て、中国、ロシア、欧州にまで行くことができる道が開かれる。私たちが得る収益がおよそ5であるならば、日本が得る収益はおよそ500以上になるだろう。これこそ、キム・ジョンイン委員長がおっしゃった利敵行為に近いことだ」。
そもそも現状において、韓国から北朝鮮に入国できないじゃないですか。見事にツッコミどころだらけですね。乾いた笑いしか出ません(※「キム・ジョンイン委員長」とは金鐘仁氏のことでしょう)。
それに、「利敵行為」という表現には、素直に驚きます。
「ともに民主党」といえば、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の出身母体であり、韓国の与党です。その与党の関係者が「日本を利すること」を「利敵行為」と述べたということは、間接的に「韓国の与党は日本を敵だと考えている」という証拠とも受け止められかねません。
日韓友好を象徴するはずの日韓トンネル構想が、韓国与党関係者からの「日本は敵」という発言を引き出したのだとしたら、じつに皮肉な話といえるかもしれませんね。
View Comments (30)
保守派/用日派の日韓トンネル構想に対し、進歩派/左派から「利敵行為」というお墨付きが出ましたので、共に民主党あるいはその後継政党が与党に有る限り、海底トンネル計画は絵に描いた餅のままです。保守勢力が再び与党に返り咲く可能性は限りなく低いので、トンネルの実現は心配しなくて良いでしょう。
ニュースサイトで閲覧しましたが、驚くほど素直な発言ですね。
バカなんじゃないかと疑っていましたが、確信に変わりました。
進歩だろうが、保守だろうが、韓国人は韓国人なんだなと改めて痛感しました。
用日派も「敵だけど利用しよう」と言うだけで、「日本が敵」なのは、共通しています。
反日が進行し過ぎて、日本について意見を言う時に「日本は敵」というような、枕詞を付けなければならない様に、なっているんです。
枕詞言葉が付いていない話は、日本に関係改善を促すジェスチャーらしいです。
日韓トンネルが技術的に可能かも知れないが経済的にペイするとは到底思えない。仮に完成したとしても、青函トンネルで明らかなとおり莫大な維持管理費用がかかることを忘れてはならない。
韓国側は資金は日本に出させることが前提になっているようで、全く馬鹿馬鹿しい話。釜山市長とやらの一方的な政治的用日利用は苦々しい限りである。
元マスコミ関係の匿名様。相手にしてはいけません。つけ込まれます。
>韓国側は資金は日本に出させることが前提になっているようで、全く馬鹿馬鹿しい話。釜山市長とやらの一方的な政治的用日利用は苦々しい限りである。
心配性のおばさま
ご忠告ありがとうございます。気をつけます。
日韓トンネルというのは韓国の政治家が地元に利益誘導発言して支持を得る、日本で言うところの我田引鉄みたいなものでしょうね。
日韓トンネル論の韓国政治家にとって利点です。
①とにかく大きな話ができる
②日本がすぐに反論してくるわけじゃないので、「ホラ話」の寿命がそこそこ長い
③反日論、用日論を絡めると韓国人は誰も反論出来なくなる
特に③の効果が絶大なのは笑っちゃうレベルです。日本に建設費だけ払わせて利益だけ得られるという用日論が痛快過ぎて、反論が「日本の利益にしかならない」「日本の韓国侵略の野望の足掛かり」とか無茶苦茶な話になっちゃうのです。そもそも日本が損得勘定でやるわけがないという当たり前の現実が彼らには見えない。言い出しっぺは意図的でしょうけど、マトモな反論ができない「敵対勢力」の人たちのサマには笑っちゃいます。
件の政策委員長先生様に百阿僧祇歩譲って、北朝鮮をはじめすべての国境を無条件、無償、安全に陸路通過できるとして。
日本企業が陸路で欧州まで荷を出すと思っているんですかね……トラックドライバーは遠洋漁業より帰れない仕事になるのか。さらに言えば今現在現実に、韓国人は車で欧州まで行けているわけですか。なんかスゴイですね。
……あ、北朝鮮が調教済みの国内向けに「我々の宇宙船は、夜間の温度が低い間に太陽への着陸を成功させた!」ってヤツと同レベルですねコレ。
朝鮮人が「敵を利用する」と明言してくれる方が、撤退を迷っている企業に決断を促すきっかけになってよいと思います。
「朝鮮人売春婦の出稼ぎルート建設なんて お・こ・と・わ・り」ですね。
日本の国民の税金を使うという話になると、まず現実的に実現は不可能だと思います。
日本国民の理解は、得られないと思います。
国民の一人として、絶対反対。
イヤハヤ呆れるしかないですわ!( >Д<;)
韓国の利が5で日本のそれは500…
欧州まで車で行けってか?過酷過ぎて「水どう?」でもやらないゾ!…多分
それに日本が被る数多の弊害については触れられてもいませんねー!自覚がないのでしょうねー!
いや、数多で済めば御の字か!そんなもん出来た日にゃあ日本は滅亡あるのみですねー!
断交なり宣戦布告なりして阻まないと!ですね
ところで真っ赤な親分から指令でも受けて煽ってますのん?
日韓海底トンネル構想は大日本帝国時代の大東亜超特急ー 弾丸列車構想の残滓である、と言えば片付くのではないでしょうか。
それにしても、あっさり日本を仮想敵国でなく、本物の敵国認定してくれましたね。文大統領はバイデン大統領との電話会談で日米韓の協力を強調したとかですが、米国向けの嘘っぱちということが公式にも明確になりました。