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現金商売にこだわるなら、両替手数料は「必要コスト」

今朝の『基軸紙幣をつかまえろ!コロナ時代のカジュアル通貨論』で「おカネ」について議論したばかりで恐縮ですが、関連してもうひとつ、個人的に違和感を禁じえない記事を発見しましたので、紹介しておきたいと思います。神戸新聞に「1円玉を500円分両替するのに400円の手数料が必要だ」とする記事が掲載されていたのですが、これについてどう考えるべきでしょうか。

手数料400円が「高過ぎる」

基軸紙幣をつかまえろ!コロナ時代のカジュアル通貨論』では、コインや紙幣、電子マネーなどに関する雑感を掲載したばかりです。これと少し話題が重なってしまうのですが、おカネやコインに関連して、こんな報道記事を発見しました。

「高すぎる」1円500枚両替に手数料400円 有料化に商店主悲痛

―――2021/2/1 14:00付 神戸新聞NEXTより

これによると、三井住友銀行が1日からの両替手数料改定により、11~500枚の両替を有料化したことで、兵庫区の商店主(86)から「1円玉500円分の両替に400円を取られたら商売にならない」とする悲痛な声が神戸新聞社に寄せられたのだそうです。

神戸新聞はこれについて、三井住友銀行側は「両替有料化はキャッシュレス化促進の一環」と理解を求めているとしつつも、「時代の波に乗れない店主が負担増を避ける方法はないのか」と問題提起をしているのです。なんだか、「銀行は冷酷だ」という印象を抱きがちですが、果たしてそうでしょうか。

記事によると、声を上げたのは商店街で下着専門店を営む商店主。店頭では「699円」、「499円」といった「手製の値札」で、「現金のみに対応する同店では釣り銭の用意が欠かせない」、「細かいお金、とくに1円玉が大量に必要」、「多い日には100枚ほどの1円玉が使用される」、などとしています。

仮に無休だったとすれば、必要枚数は1日100枚として年間36,500枚であり、両替手数料は29,200円です。神戸新聞はこの商店主が「薄利多売の商店には痛い」と述べた、などとしています。

手数料有料化は時代の潮流

ただ、ここで少し立ち止まり、事実関係を確認しておきましょう。

株式会社三井住友銀行の『円貨両替』によると、これまで500枚を超える両替には400円の手数料が必要でしたが、一定の条件を満たした場合、500枚までの両替に関しては、1日1回限り無料でした(※ただし両替機を利用した場合)。

しかし、2月1日以降は、「1日1回限り無料」が適用されるのは10枚までであり、11枚以降500枚までは400円、501枚から1000枚までは800円の両替手数料が必要とされるようです。

ちなみに、大手銀行に関しては、いずれも両替手数料が有料です。図表では、大手5行について手数料を調べてみたのですが、みずほ銀行は三井住友銀行とほぼ同じ手数料であり、三菱UFJ銀行の場合は少し安くなるようです(※詳しい適用条件は各銀行に直接尋ねてください)。

図表 大手銀行の両替手数料(その銀行に口座を持っている場合で両替機を利用した場合)
銀行名 手数料 備考
三菱UFJ銀行 10枚まで:1日1回
無料500枚まで:300円
1000枚まで:600円
10枚までの両替は2回目から200円
三井住友銀行 10枚まで:1日1回無料
500枚まで:400円
1000枚まで:800円
みずほ銀行 10枚まで:1日1回無料
500枚まで:400円
1000枚まで:800円
10枚までの両替は2回目から300円
りそな銀行 500枚まで:300円
1000枚まで:600円
三井住友信託銀行 50枚まで:無料
500枚まで:550円
1000枚まで:1100円
1000枚超の場合は1000枚ごとに1100円

(【出所】各金融機関のウェブサイトより著者作成)

「金融評論家」という立場で言わせていただければ、正直、これでも安いと思います。

おカネ(とくにコイン)は重量もありますし、1枚ずつ偽造チェックなどをしたうえで硬貨をロールに巻くのも大変なコストがかかります。また、紙幣についても細かくチェックしなければなりませんし、ATMに金銭を装填するのにも大変な人件費が必要です。

低金利で運用環境が日々厳しくなるなか、各金融機関としても労働集約的な部分に相応の手数料を徴収するのはある意味で必然でしょう。

両替手数料でペイするかどうかという問題

もちろん、中小・零細事業者にとっては、ちょっとしたコスト負担は避けたいところだ、という気持ちがあるのもたしかでしょう。しかし、企業経営者として、あえて厳しいことを言わせていただくと、「必要なコストを出し渋る」という姿勢については、いかがなものかと思います。

記事にあった店舗の場合、値段をわざと「700円」ではなく「699円」に設定することで「お得感」を演出しているのだと思いますが、言い換えれば、この「699円」という値段設定にこだわる限りは、1円玉を調達するためのコストを負担しなければならない、ということです。

つまり、「699円」という値段設定が「700円」よりもお得に見せるためであれば、お釣りとしての1円玉を得るために年間約3万円の両替手数料を負担することも、一種の「販売コスト」でしょう。その必要なコストを今までは銀行側が負担していただけの話です。

逆に、「本来700円の商品を699円に設定してお得感を演じようとしても、年間3万円の両替手数料を上回るだけの利益が出ない」、ということであれば、1円玉を調達するためのコストを節約するために、値段を700円に設定すべきです。

つまり、そもそもビジネスのやり方が間違っている、という可能性を議論すべきでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ちなみに、リンク先記事には、三井住友銀行の担当者による、「これを機に、キャッシュレス決済の導入を検討していただければ」という発言が紹介されていますが、神戸新聞によると、くだんの商店主は「客は高齢者中心で、ほとんどが現金だから」と二の足を踏むのだとか。

この「高齢者が現金しか使わない」、あるいは「高齢者だから現金しか使わない」とする主張の妥当性については、正直、よくわかりません。また、キャッシュレス決済の手数料が高いというのもそのとおりでしょう。

しかし、逆に店頭に現金を置いておくことは紛失・盗難のリスクを高めますし、現金を集計し、銀行に預けたりするためのコストを考えると、キャッシュレス決済が一概に「高い手数料に見合わないものだ」と決めつけるのはいかがなものかと思います。

いずれにせよ、現金商売にこだわる理由はほかにもあるのでしょうが(※本稿では敢えてそれについて触れません)、現金商売にこだわる以上、必要なコストを負担するのは当然のことだと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (34)

  • もちろん両替手数料でベイするなんてことはなくて、単に需要供給曲線を動かして取り扱い量を減らしたいという意味ですね。有料化の流れに乗り遅れると殺到してしまいます。

    ちなみに銀行として、口座をもってもらって採算が取れてる先でかつ両替ニーズがあれば、有料化後も優遇措置が取られます。銀行だって商売ですからね。

    預金だけの一般顧客や現金商売の小規模商店にとって銀行の態度が冷たくなったのは、預金で銀行が利益を上げられなくなったからですね。これも量的緩和政策の副作用です。せめて国が超低金利のメリットで借り入れしていただいて国民に還元してくれるとか期待したいです。

    • 先祖は両替商も営んでいた。江戸時代、両替商は4%の手数料をとっていた(幕府領の場合)。つまり、1貫文という寛永銭を紐で結わえたやつは、960枚なわけ。それで1貫として通用していた。
      金融機関による両替手数料は、明治になってもあったはずで、野村の創業者・野村徳七は大八車に銭を積んで両替稼ぎをやって財をなしたと聞く。

  • 一円玉でお釣りを渡す代わりに、一円切手で渡すようにすればどうでしょう。これならば、両替手数料なんてものはかかりませんし、嵩張ると言ってもたかが知れています。コスト的には圧倒的に(というほどの額でもないけど)有利です。未使用切手は郵便局で買い取ってもらえるはずですし、なんだったら、10枚集めたら十円と交換するサービスを導入しても良いでしょう。
    でも、実際にやったら、一円切手の受け取りを断る人がほとんどでしょうね。つまりはその程度のお得感でしかないということですが、値札を699円にすることがそれほど重要なのであれば、その程度の知恵は欲しいですね。

    • 切手の換金は郵便局でも手数料取られてしまいます。あと、取り引き相手が切手払いに同意しないといけないので余計ハードル高いです(法的には相手に応じる義務はない)。
      まあ、レジ袋無料の時代にお店でレジ袋を購入のと似たような話だと思いますけどね。で、かかったコストは価格転嫁すれば良い話。

    • 郵便局において未使用の切手は交換手数料(10円以上の切手ハガキだと1枚5円、10円未満は半額)を、現金か切手をいただいて、切手ハガキなどと交換は可能ですが、換金はしておりません。
      かつて郵政民営化の際、民営化前のエクスパックやふみカードをしばらくの間換金していた事があるくらいです。

      • 失礼しました。
        ただ、郵便切手は立派な有価証券ですので、代用貨幣として機能させても不思議ではないとは思っています。要は、699円という値付けにそれほど意味があるのであれば、断固死守したいとまで思うのであれば、知恵を働かせということです。
        一円切手ではなく、飴ちゃんでもいいかもしれませんし、なんだったらスタンプでも良いかもしれません。ただ、一円切手という流通が保証された有価証券の方が明快で、より合法的だろうと考えた次第です。その程度の知恵もないなら、両替手数料のことでガタガタ言うな、という言外の意味も込めてますが。

        ただ、どうしても一円玉でお釣りを寄越せとゴネる客が皆無ではないかもしれないので、結局のところ、ある程度は用意せざるを得ないでしょうけどね。

  • 商店・企業側もコスト見ると難しいところもありますね。昨今ペイペイのテスト導入後継続不可とする例も多いみたいです。ちょっと分野は外れますがセルフレジなど単純に費用削減できるのはガンガン導入が進むんですが。

    基本的には買い回り品でも顧客が電子決済可能店よりまだ価格低廉を優先するのが原因だと思います。ジレンマなのは規模次第ですが導入しないほうが安く売れるってことです。
    会社側だとクレジットカード系で売上から1%から高いと3%、他電子決済でも最低1%程度は持っていきますし、ランニングで売掛回収の業務削減や消込の簡素化など費用削減と相殺しても、デバイス費用にシステム開発費などイニシャルもなかなか。個人的にはその程度の導入を楽々とこなせない業務フローの未整備、データ未標準化に別の病根が潜んでる気がします。

    商店だと昨今の情勢で事業継続どころか承継も白紙化も珍しくなく、そこらへんだと今回の例題のように考えるに及ばす、なお店があるのも無理はないのでしょうね。お先真っ暗じゃないといいのですが。
    あと、銀行も時期柄減損ばかりでなく意欲的な投資を今少し評価すればいいのに、と、これは期待です。

  • 商売の形態にもよるのでしょうが、私んちのような小規模小売店だとレジ前に「1円玉大歓迎!!」って告知すれば事足りてます。

    どうしても調達したいときには、郵便局に走ります。
    両替商ではないからなのか、あまりに大量でなければ100枚超でも無料換金してくれます。
    同じ理由で500枚を超える硬貨の入金も郵便局一択ですね。(極論だと、銀行で1円玉500枚を入金すると手数料440円を差引かれて残額は60円に・・。)

    *自販機の100円玉が溜まるので重宝しています。

  • 価値あるサービスを国民に提供した方が、国が豊かになる
    全体で見るのが大事。
    商売人相手に対して、ある程度限度を決めて優遇する銀行は法人税0.01%優遇。
    しない銀行は法人税10%アップくらいだと

    全体でみると国は豊かになる

    合成の誤謬
    分類:経済
    ミクロの視点では合理的な行動であっても、それが合成されたマクロの世界では、必ずしも好ましくない結果が生じてしまうこと。

  • もし1円玉、5円玉も使える自販機があるなら喜んで買いに行くのだけど。

  •  「現金じゃないと困るお客さんがいるから…」
     「まだ現金で良いお店があるから…」
     ~以下ループ~

     私もすでに「真新しいことを始める」事に億劫になってきた感がありますが。キャッシュレスを普及させたいカード会社や行政などは、我が子にスマホの使い方をきく時より、遥かに親切に教えてくれそうです。

     ところで、700円より699円の方が「売り上げが上がる・競争力が強まる」というエビデンスってあるんでしょうか?モノが全く同じであれば1円でも安い方を選ぶのは自明ですし、1円まけて客を僅かでも奪えれば得という理屈はわかりますが。個人的には、その程度の差なら、店の近さや店員の印象の良い方を選ぶので。現金払いならキリの方が良いって700円選ぶまであるかも。

    • エビデンスではありませんがスーパーマーケットでも食料品、生活雑貨は198円、398円等々の値付けであり、切りよく200円、400円というのはあまり見かけません。やはり実感としてそれなりの効果があるのでしょう。コンビニは財布の紐が堅い主婦はあまり利用しないので切りの良い値段が多いようです。
      なにしろ関西のおばちゃんは折込広告を見て1円でも安ければ歩いてそのスーパーに買い物に行くパワーの持ち主ですから。

      • 自分の手間賃度外視しとるさかいな
        やで他人の手間もタダと勘違いしよる
        たまに居てるやろ?

  • 素人考えですが、小銭で支払ってくれるお客には、それなりのインセンティブを与えるという方法もあろうかと思います。例えば699円の商品であるならば、端数の9円を現金で支払ってくれるお客にはその場で数円の値引きを行うとか。

    これまで無料だったサービスでも、その裏に見えないコストが発生していたわけです。この超低金利時代を生き延びるには個人商店と雖も、それなりの知恵を絞らないと生き残っていけないのかもしれません。なかなかに世知辛い世の中になったなとは思います。

    • 安く見せるための198円とかの値段付けは伝統的にありますよね。199円じゃわざとらしいから198円。
      ただ、消費税導入以降実際の支払いは200円以上なので意味ないなぁと私は思うのですが、未だにそういう値付けがあるのは「安く見せる効果」あるんでしょうね。

  • 更新ありがとうございます。

    神戸新聞は、神戸震災以後左キチの天下になりました。理由は本社が倒壊し。輪転機が壊れて提携関係にあった、京都新聞に印刷も人の応援も頼んだ為です。言わずと知れた京都新聞はアカい方達や京都独特の「イケズ」集団の集まりです。

    その前は中日新聞と提携してました。提携先、もっと選べよ(笑)。二、三日前に神戸新聞の記事内容についてコメントされてる方がいましたが、事実、本当に左巻きで「社会的弱者」の肩を持つフリをするのは上手いんです。私も8年前迄取ってましたがね。今や見向きもしませんわ。

    兵庫区の衣料品店、でだいたいどの辺かどういう店構えか、客筋まで分かります。年寄り相手にどうしても「下ヒトケタ9円切り」にして安さを出したいのでしょう。あの辺、「年寄りしかおらん」も分かります(笑)。昔っから老人と工員の街やん(笑)。

    大手銀行もなるほど三井住友銀行が多いです。比較的、両替の手数料の安い三菱UFJや、りそな銀行なんて探し回らんと無い。みずほなんて市内3つしかない(爆笑)。三井住友なら旧神戸、太陽神戸、さくらとかの吸収された負け組銀行群と、住友は昔からたくさんありましたので仕方ないですネ。三井は微妙(苦笑)。

    衣料品店さん、良い考えがあります。商店街なら貴方だけじゃなしに、1円玉が不足する店、10店舗集まりなさい。10人で一人1円10個まで無料なら、100個貯まる。家の婆さんにも手伝って貰い、200個あれば大分マシになるでしょう。1店舗3人出したら、毎日行く必要が無くなります。

    私は現役時、万券、5000円札、千円札、その他僅かな2000円札や旧紙幣や五百円札、貨幣は棒金500円玉50枚ロール巻(25,000円)、100円玉棒金(5,000円)、、1円玉棒金(50円)まで、毎日金庫空けて(大口)棒金の数を数えてましたっけ。銀行さんと警備員が来たらホッとしてお茶タイム(笑)「今日も業務終了!」。気持ちは家に帰ってました。

    とにかく、新聞屋の言う事は信用しない。ひょっとしたら、その衣料品店の主人も、記者が珈琲飲みに行くと何時も会ってた人かもしれない。そういうのをネタで記事にする事が多いんです。間違ってもスタ◯やド◯ールでは無く、新聞、雑誌を置いてる個人店ですよ。

    【気をつけよう。新聞屋のデマと大衆の小さい声。】

    • 追伸

      来年以後も爺さんが衣料品店商売を続けるなら、9円切りではなくて、「下ヒトケタ0円」にするしかないネ〜。電子マネーやクレジットなど導入考えてないでしょ?ならやっぱ600円!900円!やわ。小銭、客も要らんやん。

    • めがねのおやじ 様

      神戸の実状を知りたくて、コメントをお待ちしていました(笑)
      知りたかったこと
      ①神戸新聞は中立?
      ②商店主がなぜメガバンクを使うの?

      納得しました。 有難うございます。 特に分からなかった②については 「負け組銀行群」を引き取ったのですね。 関西は三和、UFJの流れで三菱UFJが強いのかな?と勝手に思い込んでいました(失笑)

      そういえば、三菱UFJは4月からコンビニATMの手数料を大幅アップするみたいですよ。 

      • 福岡在住者様

        レスありがとうございます。すみません、書き漏れがありました。確かに三和銀行は地域密着で関西には強かったです。同窓生が三和で支店長してましたから(とびきり頭良かったです。私など高校3年間後方集団 笑)。彼が言うには「ライバルは住友銀」でした。

        でも東海銀と先に一緒になったのが躓きのもとでした。三菱、東京銀行となら上手く行けたかもしれません(中京の方ゴメンネ)。最後に質問のお答えを。

        ① 神戸新聞は朝日の劣化版。読む気しません。
        ② 商店主がメガバンクを使う理由は、兵庫県は50年前迄、都市銀行の「神戸銀行」がありまして、細かい網で中小企業や零細まで抑えてました。その後太陽神戸→太神三井→さくら→三井住友と屋号は変わってます(もちろん旧籍の方など居ません。居れません)。

        その為、信金や信組はあまり育ちませんでした。零細業でも大銀行か無尽、相互銀行だったんですね。今、残っているのは兵庫県では神戸市、姫路市、明石市、洲本市、豊岡市等に本店を置く信金がありますが、失礼ながらパッとしません。以上失礼します。

  • そう言えば神社の方も年末にツイートしてました

    初詣でお賽銭箱に大量に小銭が入ってくるけど、最近ではほとんど銀行に手数料として取られてしまって手元にはほとんど残らないそうです

    お賽銭なのに手数料を取るなんてなんだかバチ当たりな気もしましたが笑

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