姜昌一(きょう・しょういち)氏は果たして日本政府から駐日大使として遇されているのか――。昨日の『違法アップロード者からのピントの外れた謝罪』などでは、当ウェブサイトのコンテンツが動画サイトで不適切に転載されたという話題にかっさらわれてしまいましたが、あらためてこの論点について周辺論点を探ってみると、なかなか興味深い事実が浮かび上がります。日韓両国で大使が不在なのです。
「姜昌一アグレマン」問題
日曜日に掲載した『帰国済み南官杓氏を日本政府がいまだ大使扱い、なぜ?』に関しては、当ウェブサイトではルール違反転載の件(『違法アップロード者からのピントの外れた謝罪』等参照)で注目を集めてしまいましたが、もともとの主眼はそこではありません。
外務省が公表する『駐日各国大使リスト』というページが2021年1月21日時点で更新が止まっていて、駐日韓国大使については22日に来日した姜昌一(きょう・しょういち)氏ではなく、16日に離日した南官杓(なん・かんひょう)氏のままになっている、という事実です。
これについては現時点で確認してみたところ、やはりリストは1月21日時点のままです。
この点、「姜昌一氏の名前が記載されていない理由」については、1月21日時点でまだ姜昌一氏が来日していなかったからだ、という解釈も成り立ちます。しかし、「すでに離日したはずの南官杓氏が駐日大使のままである」という理由については、よくわかりません。
個人的に、あまり陰謀論は好きではないのですが、それでも「じつは姜昌一氏には日本政府からのアグレマンが出ていなかったのではないか」という疑念が、ふと頭をもたげるのです。
もちろん、この「姜昌一氏にアグレマンは出ていない」という仮説には、かなりの無理があることは承知しています。
たとえば、『外交関係に関するウィーン条約』第4条1には、「大使として派遣する者については相手国からアグレマンが与えられていることを確認しなければならない」と明記されています。
【参考】外交関係に関するウィーン条約 第4条1
派遣国は、自国が使節団の長として接受国に派遣しようとする者について接受国のアグレマンが与えられていることを確認しなければならない。
もしも韓国政府が国際法を守っているのだとしたら、姜昌一氏が成田空港にやってきたという事実自体、韓国政府が姜昌一氏について、日本政府からのアグレマンが出ていることを確認したという証拠です。
また、先週の『佐藤正久議員、姜昌一氏の過去の言動に「酷いもんだ」』などでも少し触れましたが、自民党の外交部会では、韓国への対抗措置として、「姜昌一氏へのアグレマンの撤回」を求めていました。
これらの事実を踏まえるならば、現時点で日本政府は姜昌一氏にアグレマンを出していると考えるのが自然でしょう。
国際法や常識が通用しないのが韓国
しかし、それと同時に、最近の韓国は国際法を守らないことが多い、というのもまた確かです。
たとえば、自称元徴用工問題を巡っては、韓国の最高裁にあたる「大法院」が2018年10月と11月に下した判決が結果的に日韓請求権協定に違反しているとして、日本政府は2019年1月、日韓請求権協定に従った問題解決プロセスへの移行を呼びかけました。
しかし、韓国政府はこの一連の協議、仲裁などを一切無視し、結論的には今日に至るまで、韓国政府は国際法に従った問題解決の努力を行っていません。これなど、韓国による国際法違反の具体的な実例にほかならないでしょう。
このように、韓国が国際法を無視して異常な行動を取ってきた国である実績に照らすなら、韓国政府が「日本政府からアグレマンすら付与されていない状態で姜昌一氏を日本に送り込んでくる」ということをやっていたとしても、べつにおかしくはありません。
これに加えてもうひとつ、昨年11月に「姜昌一氏を駐日大使に任命する」との報道が流れた直後、吉田朋之外務報道官11月25日付の記者会見で回答した内容が、興味深いものでもあります(「通りすがり」様、情報提供ありがとうございました)。
次期駐日韓国大使人事
【朝日新聞 安倍記者】今、報道官は、報道は承知というお話でしたけども、韓国側がこういった内定を発表しているわけですが、日本側としては外交上のですね、アグレマンというような、人事の同意というのはしているんでしょうか。
【吉田外務報道官】繰り返しになるかもしれませんけれども、各国への、大使の任命、というか内定、接受国における同意の取り付け、これはアグレマンという形で通常やりますけれども、こういったものの手続きについて、あるかないか、あるいはどうするかについては、最終的にどうなったかということが確定するまで、申し上げないというのが国際標準ですので、申し訳ありませんけれども、お答えは控えたいと思います。
「最終的にどうなったかということが確定する」が何を意味しているのかはよくわかりませんが、これは「信任状を天皇陛下に奉呈すること」なのだとしたら、「日本政府が姜昌一氏に対して天皇陛下の御前に立つことを許すまでは、姜昌一氏が駐日大使と確定したわけではない」とも読めなくはありません。
いずれにせよ、現在判明しているのは、少なくとも日本政府は1月21日の時点で姜昌一氏を駐日大使としては扱っていないという事実です。
その姜昌一氏は現在、日本で2週間の待機期間を過ごしているとのことですが、姜昌一氏を巡って次の本格的な動きがあるとしたら、2月第1~2週以降、ということでしょう。
相星駐韓大使がまだ赴任していない理由
こうしたなか、日韓の大使が同時に交代するという局面で、興味深い話題がもうひとつありました。韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によると、「韓国の外交消息筋」が26日、「相星孝一駐韓大使が来月初旬にも韓国に着任する見通しだ」と明らかにしたのだそうです。
新駐韓日本大使 来月初旬に着任か
―――2021.01.26 14:17付 聯合ニュース日本語版より
もっとも、韓国メディアが「韓国の外交消息筋」の話として伝えるときには、結果的に情報が事実でなかったというケースもたびたびありますので、この点については注意が必要でしょう。
それはともかく、聯合ニュースによると、冨田浩司・前駐韓大使(現・駐米大使)は26日に韓国を離れ、日本に一時帰国したそうですが、その後任者である相星氏はまだ韓国に赴任していません。イスラエルで26日から31日まで、国際線の全旅客機の発着が停止されているためだそうです。
この報道が事実なら、相星氏の韓国への赴任が遅れているのは武漢コロナ禍による不可抗力であって、べつに日本政府が意図的に遅らせているわけではありません。
ただし、仮に聯合ニュースの記載どおり相星氏が2月初めにイスラエルを発ったとしても、そのまま「旧正月(2月12日以降)」前に韓国に着任できるものなのかはよくわかりません。
もし相星氏が日本に一時帰国するならば、2週間の待機期間を経て再び韓国に赴任し、さらに韓国の国内ルールで2週間の待機期間を経なければなりません。この場合、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領への信任状の奉呈は、下手をすれば3月初旬にまでずれ込むかもしれません。
あるいは、相星氏がイスラエルから日本を経由せず、直接韓国に入国するのだとすれば、日本国内における2週間の待機期間を省略することは可能ですが、その場合であっても韓国の国内ルール上の2週間という待機期間を省略することはできないはずです。
このように考えると、「相星氏がイスラエルから韓国に直接入国することにより、2月12日以前に着任はするけれども、実際に駐韓大使として活動できるのは2月中旬から下旬以降、下手をすると3月以降にずれ込む」という可能性は高そうです。
結果として、日韓両国で大使が不在
さて、外務省のウェブサイトには、『在外公館長名簿』というページがあります。
現時点で閲覧すると、更新されたのは1月22日時点であり、「駐韓特命全権大使」の欄には相星孝一氏、「駐米特命全権大使」の欄には杉山晋輔前駐米大使、冨田浩司前駐韓大使という2人の名前が確認できます。
駐米大使に2人の名前が掲載されているのは不思議だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。外務省はページ冒頭で、「同一公館に在外公館長の名が2名記載されている場合は、前者が帰朝発令済の者、後者が新任公館長を示す」ときちんと注記しているからです。
つまり、現時点においては、日本政府の官職上は冨田氏が駐米大使ですが、現在、杉山氏がまだ米国に留まっている、ということでしょう。それなのに、駐韓大使に関しては、冨田氏がさっさと離任してしまい、後任者である相星氏が赴任していないというのは、何か理由でもあるのでしょうか。
いずれにせよ、経緯はともかくとして、現在は駐韓日本大使館には大使が不在であり、駐日韓国大使館に姜昌一氏が到着しているものの、日本政府は彼を大使として取り扱っていない、という状況にあります。
つまり、現時点では結果的に、日韓両国で大使が不在だということです。
この状況がいつまで続くのかはわかりませんが、駐韓日本大使館に至っては大使館の建物自体が再建されていないみたいですし、こうした状況自体が現在の日韓関係そのものを象徴しているような気がするのは、気のせいでしょうか。
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最終的に確定するのは、当然天皇陛下が信任状を受け取られた後でしょう。
ただその前に、外相宛に信任状の写しが提出されると思います(事務処理上の都合)。その時点で「次期大使」になるのじゃありませんか。
でも、次期大使に名前が無いんですよね?
無いですね。
従って、駐日各国大使リストにある注(下記参照)による限り、姜昌一氏に文在寅大統領が手交した(らしい)信任状の真正な写しは、まだ外務省に提出されていない(1月21日現在)ということになります。写しの提出を次期大使本人が行う必要はないと思われるので、おそらく姜昌一氏は来日早々にも信任状の写しを外務省に提出しただろうと想像されます。
内容的には、一刻を争って更新しなければならないようなリストでもないと思われるので、外務省HP掲載のリストが更新されていないのは、単にタイミング(週一更新と決まっているとか)の問題であるのか、それとも他意があるのか、現時点では判断できません。
次期大使の定義:
> (注:既に本邦に着任し、信任状の「真正な写し」の外務省への提出は済ませたものの、信任状を天皇陛下に捧呈していない大使)
門外漢様
>でも、次期大使に名前が無いんですよね?
もしも、彼の立場が自称(別身分で入国)であれば、日本側もそれに準じた対峙しかできないんですよね。
仮に、信任状が空手形(カラテガタ)であれば受理以前の問題。
菅総理は得意の空手型(カラテ・カタ)で毅然と対峙して欲しい。
「姜は、姜は?(今日は、今日は?)」の議論は、明日も明後日も続きそうです。
m(_ _)m
新宿会計士様、読者の皆様お疲れ様です。
これだけ大問題となっている日韓関係の悪化を放置し、何らの有益な仕事もしなかった冨田浩司・前駐韓大使が米国にご栄転するということにこそ、私は強い怒りを覚えます。日本のまともな社会(マスゴミや一部教員を除く)では当然のことである「結果責任」を、日本の官僚(外交官含む)が一切とらないということこそ(切腹する必要はありませんが)、日本が良くなることを邪魔する諸悪の根源ではないかと思います。
一点だけ。
日韓関係の現状は、韓国にとっては大問題であるかもしれませんが、果たしてわが国にとって大問題と呼ぶべき状況でしょうか?
杉山前駐米大使の交替時期が予定されており、その後任として冨田氏が予定されていたのであれば、冨田氏にとって駐韓大使というポストは単なる腰掛に過ぎません。見方を変えれば、現在の日本政府にとって、駐韓大使というポストはその程度の重みしか持たないと考えることも可能ではないかと思います。
理系初老 さま
アメリカ大使への異動は、適材適所が理由だと思います。
今の韓国相手に、大使が関係改善の責任を云々することは、適当とは思いません。
武藤元大使ら過去の大使の方が、現在の日韓関係に責任が重いと思います。
そもそも日韓関係の悪化は相変わらず日本に寄生したい韓国にとっては大問題だと推測しますが、日本に擦り寄ろうとする韓国を切り捨ててせいぜい国交だけを維持しておく状態に持ち込むことが国益に適う日本にとっては日韓関係の悪化こそ今や望むところだと思いますが。
そういう意味では、冨田前駐韓大使に限らず、日本の駐韓大使はもっと積極的に日韓関係を破壊するのに貢献すべく暴言の一つも吐くべきですね。
例えば先日首が飛ばされた前外交部長にに呼びつけられて怒鳴りつけられた時に、逆切れして「日本と韓国のどちらが国力が上だと思ってるんだ!この世間知らず!」と怒鳴り返すぐらいのパフォーマンスは日本を代表する駐韓全権大使して是非とも行って貰いたい。
(「民衆の歌」の旋律にのせて)
Do you hear the people sing ?
Singing the song of Agrement ?
It is the music of the people who will NOT give it again !
When the beating of their “han”, echoes the beating by the laws .
There is a relation to start when tomorrow comes !
聴こえているか、アグレマンの歌が?
もう二度と与えるなという声が!
「ハン(韓、恨)」の高まりは、法で叩きかえせよ。
関わりを改めよ、明日から!
外務省のサイト、米国大統領はドナルドトランプ。韓国外相はカンギョンファのままのようです。
情報更新の重要性認識しているのでしょうか。
適時開示の観点から疑問を感じました。
外務省サイト更新について
地域/アジア/韓国/歴史 の項目を見ると、
以前は「3世紀に氏族国家が誕生、そしていきなり李氏朝鮮末期に飛んでいた」のだけれども、
いまは、淡々と「三国時代、歴代政権を箇条書き」しています。
なにか意図があるのかも知れないし、あるいは項目ごとに担当者が異なるのかも知れない。
もう一度、撒き餌しておきますね。
アグレマンの話になると言い掛かりをつけてくる匿名氏。
アグレマンを出してもらわないと恥を掻く、ご本人ではないでしょうか。
だからこそ、北米のサーバを経由したりして正体を隠さねばならないのでは ?
日本からも本国からも「そのまま帰れ」と言われる小者感が、
嫌韓サイトといいながら粘着してくる匿名氏と妙に重なるのです。
素朴な疑問なのですが・・・
姜昌一氏が成田で取材に応じたという報道がありました
https://m.youtube.com/watch?v=5gILgGxUyls
流石に取材場所を偽ったりはしないだろうから、氏が入国したのは事実なんだろうと思うのです♪
で、入国には入国の許可が必要な訳で、仮に大使としての赴任に日本政府が同意していないとすると、氏は、韓国政府職員として公用パスポートと公務目的で取得したVISAで入国するか、一般人として普通のパスポートと短期滞在で取得したVISA(査証免除が生きていればVISAなし)で入国したんだと思うのです♪
そうだとすれば、氏は日本国内に長期間の滞在はできないのだから、いずれ帰国することになるんじゃないでしょうか?
帰国が報道されるかはわかんないけど、そういった報道があれば、氏の大使就任を日本政府が拒否したっていう傍証になるのかなって思うのです♪
さすがにアグレマンも出してないのに、日本が発給する外交官ビザで入国することは無いでしょう。そもそもアグレマンが出てなければ日本側が外交官ビザを出さないでしょうし、ビジネストラックで大使面して来ようとすれば、目的外入国で入管で止められると思う。韓流アイドルとやらがビザ免除で入国しようとして追い返されるみたいに。
更新ありがとうございます。
韓国政府の不誠実さ、嘘つき、他国に告げ口行為、被害者ヅラは、皆さまとっくに辟易されている事と思います。韓国政府は国際法に従った問題解決の努力を全く行っていません。
私は姜昌一氏が、日本からアグレマンを出して貰ってないのではと思います。韓国政府が「送り込んだらこっちのモノ。日本は手緩い。きっとアグレマンを付与するだろう」の状態に落とそうとした!
日本は「彼は昨日の彼ならず」です。韓国よ、いつまで見くびっているのか?しかし、、、もしアグレマン出してたら、ショック大きいゾ〜。ま、その時は別途考えますヨ(笑)。
つまるところ、外務省のHPに新任大使の名前がないのは(米大統領、韓国外相が旧来のままということも併せて)、外務省の怠慢というところでしょうか?
すいません、これは「ぴ」さんへの返信でした。
前任者はどうかと見てみると
「1. 南官杓駐日大使は2019年5月20日(月)11:00皇居において、日本の徳仁天皇に信任状を提出しました。
(中略)
3. 本日の信任状提出は、5月9日(木)の赴任から11日後に実現されたもので、今後、南官杓大使は日本国内において、駐日本国大韓民国特命全権大使としてすべての外交活動が可能となります。」
と駐日本国大韓民国大使館ホームページにあります。
そのまた前任の李洙勲氏はwikiによると着任は2017年10月31日、信任状奉呈式は12月21日です。
今の段階でまだどうこう言えないですね。
信任状捧呈式の挙行は国事行為なので内閣の助言と承認に基づくわけですが、閣議決定はこれからでしょうか?
内閣の承認が下りなかったらどうなるのかな?と楽しい想像をしてみます。