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議論を嫌うNHKに議論を仕掛けること自体は良いこと

本稿は、ショートメモです。以前、『韓国、財務省、NHK、共産党の共通点は議論の拒否』でも指摘しましたが、結局、利権組織などが最も嫌うのは「議論」です。武田総務相のいう「NHK改革」の意義とは、その中身そのものよりも、NHK改革を巡ってNHKと武田良太総務相のやり取りが発生するたびに国民の間で大きな議論が巻き起こることでしょう。これは、非常に良い傾向です。

当ウェブサイトで先日の『NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか』や『「3年後に受信料700億円還元」で国民を欺くNHK』、『NHK、職員の高給すら是正せず「割増金制度」導入か』などで触れたとおり、最近、NHK問題を巡ってはさまざまな話題が出て来ています。

これまでに何度となく申し上げてきたとおり、当ウェブサイトではNHKを巡り、たとえば次のような疑念を提示して来ました。

  • ①現代の日本社会に公共放送というものは必要なのか
  • ②公共放送を担う組織として、NHKは適切なのか
  • ③NHKの現在の受信料水準は妥当なのか
  • ④そもそも受信料制度自体が妥当なのか
  • ⑤1兆円超の金融資産などはNHKの経営に必要なのか
  • ⑥職員1人あたり1550万円超という人件費水準は妥当なのか

…等々。

もちろん、これらについて当ウェブサイトなりの「答え」を押し付けるつもりはありませんが、それと同時にNHKを巡っては、政府(とくに総務省の審議会など)や国会において、その抜本的な在り方に踏み込んだ議論が不足していると感じざるを得ません。

ただし、これもあくまで個人的な見解ですが、菅義偉政権が「電波改革」に力を入れ始めているという動きについては、注目したいと考えています。現在は携帯電話の通話料などに焦点が当たっていますが、やはり電波行政の「本丸」はNHK問題を中心とするテレビ利権でしょう。

一般に利権構造というものは、大きければ大きいほど、深ければ深いほど、改革は困難です。なぜなら利権に群がる多くの関係者を生じるからです(たとえばNHK以外にも、格安の電波使用料で潤う民放各局、NHKなどに天下り先を確保することができる総務官僚など)。

しかし、少しずつでも動かす努力をすれば、やがて動きは大きなうねりにつながります。非常に逆説的な言い方ですが、NHK改革という動きに対し、NHKが予想外の抵抗を示すことで、逆に国民のあいだでNHK問題に対する関心が高まることは、決して悪いことではありません。

こうしたなか、『「3年後に受信料700億円還元」で国民を欺くNHK』でも触れた「受信料を3年後に還元する」というNHKの案に関し、武田良太総務相が日本テレビのインタビューに応じ、「さらなる値下げが可能」と発言したようです。

武田総務相“NHKはさらなる値下げ可能”

―――2021/1/20(水) 2:21付 Yahoo!ニュースより【日テレNEWS24配信】

日テレによると、武田総務相はNHKが「数字で国民に約束したことは一歩大きく前進したということで評価していきたい」としつつも、「これで国民が納得するわけではない」、「いまここで及第点というわけにはいかない」と牽制したそうです。

この武田総務相の発言をどう見るかもさることながら、今回紹介した『Yahoo!ニュース』のリンクに示されている読者コメント欄に圧倒的に多いのは、「国民が求めているのは値下げではなく、NHKと契約しない自由だ」、という趣旨の意見である、というのも興味深い点です。

『Yahoo!ニュース』のコメント欄が日本国民の意見を代弁しているとシンプルに決めつけるつもりはありませんが、NHKと武田総務相のやり取りが発生するだけで、こうやってさまざまな議論が沸き起こるのは、非常に良いことです。

以前、『韓国、財務省、NHK、共産党の共通点は議論の拒否』でも指摘しましたが、結局、利権組織などが最も嫌うのは「議論」です。

武田氏が「NHKの値下げ」ばかり強調しているかに見えてしまうのは少し気になる点ですが、それでも武田氏が「議論」を仕掛けていることそのものについては、高く評価して良いでしょう。

もちろん、その「議論」をどうNHK改革につなげるか、あるいはつなげないかのかという点も重要ですが、個人的には今後の議論の方向性もさることながら、「NHKのあり方を巡る議論そのもの」が活発になることを期待したいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • NHKを無くすかどうかはさて置いて、受信料制度については、受益者負担はあっても当然だと思います。
    しかし、放送を全て視聴していないにも関わらず全額を徴収されることには疑問を感じます。
    一番納得できる方法は、受信料メーターを設置して、受信した分だけし払うとすればいい。
    それが難しいと言うならば、スクランブル化して、本当に受信料を払ってまで、番組を視聴したいと言う強い意志のある人から徴収する。
    と言った様なところでどうでしょう。
    災害時には、スクランブルを外して公共放送として活用する、この際のコストは、国から補うこととする。
    これで、皆さんに納得できるかと思います。

    • > 災害時には、スクランブルを外して公共放送として活用する、この際のコストは、国から補うこととする。
      > これで、皆さんに納得できるかと思います。

      だからそこなんですよ。公共放送が必要か否かの議論をしなきゃいけないのは。
      少なくとも上記だけでは、おっしゃる「受益者負担」の原則から全く外れています。
      (なので、それくらいなら最初から税金にしろ、という意見に理が生まれます)

      かんたんにスクランブル言う人は、災害時も「一民法」として扱わなきゃいけないという点をあえて無視する嫌いがある気がします...

    • 東日本大震災の時には、別にNHKだけを死ぬ気で見てたという事実はありません。
      なにしろ民放だって全部、右ならえで、競って震災関係の番組やっていたんですから。

      当時はスクランブルも関係ないアナログ放送でした。
      今はB-CASがない機器は受信できませんが、別に民放に課金によるスクランブルが掛かっているわけではなく、そもそも、B-CASでデコードする機能の無い機械では受信自体が出来ません。
      本当に役に立つ災害インフラは、アナログのAM/FM放送だけでしょうね。
      また当時ですらネットインフラの復旧は早く驚きました。
      電話は輻輳で使用できず、メッセンジャーで安否をやりとりしていました。

      • 大変興味深いご意見です。
        災害インフラに求められる耐久性とは放送設備のみならず受信設備をも総じて言う訳ですね。
        インターネットは元々がネットワークの寸断に対応した設計であるが故に災害時の有用性は言うまでもありませんが、受信機が普及しているとはいえデジタル放送化は災害時広域放送の有用性を損なってしまったともいえる、と。B-CASの導入にNHKが関与した経緯をみれば不合理以上に害を為しているとも考えられます。
        ラジオもデジタル放送化の波が押し寄せているとは聞き及んでいますが、考えさせられるご意見でした。

        • 先の投稿を一部訂正します。
          B-CAS及び後継のACASはコピーガードに用いられており、災害時の放送はB-CASカード無しでも受信できるようです。この場合、テレビを設置していてもB-CASカードを廃棄していれば受信機とは見做されずNHKとの契約も不要なようで。
          そんなものを家に置いておいたところで災害インフラと言えるかどうかは疑問ではありますが。
          然るに災害時インフラにもなり通常時は視聴ができるテレビ→NHK受信料を払う、となる訳で、やはり不合理感が否めません。

  • >「国民が求めているのは値下げではなく、NHKと契約しない自由だ」
    あたしも同感なのです♪
    NHKは見なくてもテレビを使うことはあるのに、買ったらNHKとの契約が義務になるのはおかしいと思うのです♪
    受信料が高い安いってのが論点になるのもおかしな義務があるからで、どんなに高くてもその価値があると思う人は契約すると思うのです♪
    あと、契約者以外の人が見れてしまうってのも、NHKの判断でスクランブルをやっても良いし、その手間の方が大きいと思うならやらなくても良いと思うのです♪

    >①現代の日本社会に公共放送というものは必要なのか
    あと、この論点だけど、だんだんと無くても良いかな?って気になってきてるのです♪
    国民に対して提供すべき公的な性格の情報ってのはあると思うし、そういった情報を作成する公的な組織は必要だって思うのは、変わらないのです♪
    ただ、その情報を流す手段がテレビ放送である必要も、テレビ放送に限る必要もないと思うのです♪
    公共放送ってのが、そういつた情報の作成だけじゃなくて、伝達手段としてテレビ放送を前提にするってものなら無くても良いかなって思いつつあるのです♪
    (ラジオは、ちょっと横に置いてます)

  • 「見ないのに受信料を徴収するのはおかしい。」「スクランブル化して見たい人だけ契約すべき。」というのは、国民の総意と言っていいんじゃないでしょうか。
    武田大臣もNHKへ受信料の低減や経営改革を迫っているように見えますが、これはやってます感を醸し出しているだけ、ポーズみたいなもんです。

    「国民が納得するわけない」などと発言していながら、公平負担と言う名の下に割増金制度の導入しようとするあたり、むしろNHK寄りじゃないでしょうか。
    国民が納得するというのは、無駄かつ贅沢すぎる財務体質を変え、冒頭の「総意」に踏み込むことですからね。

    主務官庁として、肝心の公共放送の在り方や“あまねくの呪文(放送法第15条)”を見直しする気などおそらくないでしょう。

  •  N国は、本件の一般化の呼び水になってくれたのか、それとも陳腐化・低俗化して後退させたのか……NHK問題を推しだして議席が取れてしまうというのを証明したのは有意義でしたが、それも単に世間が問題視した後だから乗っかれただけという気も。
     なんかNHKはけしからん!つまらんのに高い!という程度の認識の方はゴマンと居るでしょうが、新宿会計士様が毎度列挙される内容まで踏み込んでいる方は世間でどれ程いるやら。
     与党がガス抜き程度でも議論しだしたのは良き(ガス抜きで終わらなければ)。野党も「手ぬるい」などと真っ当な追及をすればチャンスになります。

  • なによりNHKが公共放送を標榜するならば、NHKがニュースや特集としてこの問題を取り上げ、議論せねばならない筈です
    自身の問題から目を背け、論題を恣意的に選択する組織は公共放送の名を騙っているに過ぎません

  • NHKの番組作り自体、全体的に民放に寄せて来ている気がするんですね。そりゃあ公共放送としての意義は問われて当然ですね。