X

姜昌一氏面会拒否報道は単なる「ガス抜き」の可能性も

菅義偉総理らが姜昌一「次期駐日大使」と面会を見送るとの観測報道については、昨日の『産経「姜昌一が赴任しても菅総理らは面会しない予定」』で速報的に取り上げました。この話題、改めて自民党外交部会の茂木敏充外相に対する申入れと重ねて読むと、その対応の中途半端さが透けて見えます。というよりも、「日韓双方で大使が不在」という状況が生じることを、日本政府が過度に恐れているフシもあります。

「姜昌一氏との面会見送り」の半端さ

昨日の『産経「姜昌一が赴任しても菅総理らは面会しない予定」』では、菅義偉総理大臣や茂木敏充外相が姜昌一(きょう・しょういち)「次期駐日大使」との「面会を当面見送る」と産経ニュースが報じた件について、「速報」的に取り上げました。

《独自》首相や外相、駐日韓国大使との面会見送りへ

―――2021.1.19 19:48付 産経ニュースより

産経ニュースなどによると、姜昌一氏が駐日大使として赴任するために来日するのは今週22日だそうですが、これに対して政府関係者は19日、菅総理や茂木外相らが姜昌一氏との「面会を当面見送る方向で検討に入った」と明らかにしたのだとか。

昨日も指摘したとおり、この報道が事実だったとすれば、措置としてはじつに中途半端です。なぜなら、「面会を当面見送る」とは、この人物が「駐日大使として赴任してくる」ことを前提とした措置だからです。

基本的に、外国から赴任した大使が国内で外交活動を行うには、天皇陛下に信任状を奉呈することが必要です。ということは、この姜昌一氏という人物も、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領からの信任状を天皇陛下に奉呈する心づもりなのでしょう。

自民党有志議員がアグレマン撤回を求める

さて、姜昌一氏へのアグレマンの件につき、自民党の有志議員らがどう動いているのかが気になるところですが、産経ニュースの昨日夕方の記事によると、自民党の外交部会は韓国を非難する決議を茂木外相に提出したのだそうです。

自民外交部会が韓国非難決議「常軌を逸脱」 茂木外相に提出

―――2021.1.19 15:10付 産経ニュースより

記事をベースに非難決議の内容を確認しておきましょう(※ただし、一部、当ウェブサイトなりの表現で補足しています)。

  • (※今月8日の自称元慰安婦にかかる主権免除違反判決について)判決内容は事実の歪曲であり、日韓請求権協定や日韓慰安婦合意に矛盾し、主権免除の原則を否定しており、国際法上、常軌を逸したもので到底受け入れられない
  • ▼文在寅政権への是正措置の要求、▼国際司法裁判所(ICJ)への提訴、▼新駐日韓国大使へのアグレマンの撤回、▼日本政府の資産差押にそなえ日本国内にある韓国の資産凍結や金融制裁など強力な措置の検討、▼国際社会に対する日本の主張の発信強化(を日本政府に要求)

このなかに、いちおう、姜昌一氏へのアグレマン撤回が盛り込まれています。

ちなみに、これらの措置については、外交部会に出席していたとされる青山繁晴参議院議員の個人ブログ『青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road』に先週金曜日付でも、その「草案」の状態のものが掲載されています。

★さらに推敲しました・・・韓国からの次期駐日大使へのアグレマン(合意)撤回、日本からの新しい駐韓大使の赴任先送り、日本国内の韓国の資産凍結、金融制裁・・・これらを盛り込んだ非難決議案が提示されました

(…略…)そこに日本外交としては、画期的なこと、政府への要請が列挙されています。
まず、西暦1965年の日韓請求権協定と2015年の日韓合意で、慰安婦問題を含め、解決済みであることを指摘したうえでー
▽国際司法裁判所への提訴、新たに着任予定の駐日韓国大使のアグレマン(同意)付与の撤回や、駐韓日本大使の赴任先送りなどの断固たる対抗措置の検討
▽日本政府の(韓国にある)資産に手が付けられるような状況に備え、日本国内にある韓国の資産凍結や金融制裁を含む強力な措置の検討
ーという、なかなか強烈な措置を求めることが明記されています。<<…続きを読む>>

―――2021-01-15 18:21:53付 『青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road』より

ちなみに青山議員によると、「自由民主党二階派と日韓議連の重鎮である議員」から「日韓請求権協定には、慰安婦問題は含まれていないのではないか」、外交調査会の首脳陣のひとりから「アグレマンの撤回というのは現実にできるのか」という問いかけがあったくらいで、明確な反対意見はなかったとしています。

たんなる「ガス抜き」説

さて、ここから先は、推測です。

産経ニュースが報じた時間から逆算して、自民党外交部会の申し入れは19日の夕方までになされたと考えるべきでしょう。そして、昨日の夜、同じく産経ニュースが「菅総理らが姜昌一『駐日大使』との面会を当面見送る方針」などと報じています。

とても嫌な推測ですが、「日本政府としてはすでに姜昌一氏へのアグレマンを出してしまっていて、今さら撤回できない」などの理由(というか言い訳)に基づき、自民党内の突き上げをかわすために「面会拒否」でお茶を濁そうとしている、という可能性が浮上します。

要するに、たんなる「ガス抜き」説ですね。

ただ、くどいようですが、この人物はかつて、天皇陛下のことを、わざと「日王」だ、「国王」だ、などと言い放った人物でもあります。しかも、『「姜昌一大使が関係改善意欲の証拠」?噴飯物の主張』でも紹介したとおり、この「日王」発言などを巡って、姜昌一氏は次のように釈明しています。

大学教授時代から私は、日本の国王は世俗的な政治権力の意味よりも宗教的側面があるため、日本語の通り『天皇(てんのう)』と呼ぶべきだと主張しており、実際に今もそのような立場だ。ただし政治家であるため、日王と呼んできた」。

要するに、この「日王」呼ばわりは「韓国の政治家として」の信念に基づくものなのでしょう。心ある日本国民の多くは、このような人物が携えて来た信任状を天皇陛下にお渡しすることに対し、憤りを覚えているのではないでしょうか。

ちなみに、青山繁晴氏のブログに出てきた、「アグレマンの撤回は可能なのか」という疑問についてはそのとおりでしょう。『外交関係に関するウィーン条約』第4条には、一度出してしまったアグレマンの撤回については明文の記載が見当たらないからです。

【参考】外交関係に関するウィーン条約 第4条
  1. 派遣国は、自国が使節団の長として接受国に派遣しようとする者について接受国のアグレマンが与えられていることを確認しなければならない。
  2. 接受国は、アグレマンの拒否について、派遣国に対し、その理由を示す義務を負わない。

しかし、アグレマンを付与してしまった場合であっても、『外交関係に関するウィーン条約』第9条1の規定に基づき、姜昌一氏がペルソナ・ノングラータであることを韓国政府にいつでも通告することができる、と読めます。

【参考】外交関係に関するウィーン条約 第9条
  1. 接受国は、いつでも、理由を示さないで、派遣国に対し、使節団の長若しくは使節団の外交職員である者がペルソナ・ノン・グラータであること又は使節団のその他の職員である者が受け入れがたい者であることを通告することができる。その通告を受けた場合には、派遣国は、状況に応じ、その者を召還し、又は使節団におけるその者の任務を終了させなければならない。接受国に、いずれかの者がその領域に到達する前においても、その者がペルソナ・ノン・グラータであること又は受け入れがたい者であることを明らかにすることができる。
  2. (略)

ちなみに『領事関係に関するウィーン条約』第23条によると、ペルソナ・ノングラータであると宣言された場合には、その者に対する任命を取り消すことが必要です(同3)し、接受国(この場合は日本)は派遣国(この場合は韓国)に対し、その決定の理由を示す必要はありません(同4)。

【参考】領事関係に関するウィーン条約 第23条
  1. 接受国は、いつでも、派遣国に対し、領事官である者がペルソナ・ノン・グラータであること又は領事機関の他の職員である者が受け入れ難い者であることを通告することができる。派遣国は、その通告を受けた場合には、状況に応じ、その者を召還し又は領事機関におけるその者の任務を終了させる。
  2. 派遣国が1の規定による義務を履行することを拒否した場合又は相当な期間内に履行しなかつた場合には、接受国は、状況に応じ、1の規定に該当する者の認可状を撤回すること又はその者を領事機関の職員として認めることをやめることができる。
  3. 接受国は、領事機関の構成員として任命された者について、接受国の領域に到着する前に又は既に接受国にあるときは領事機関における任務を開始する前に、受け入れ難い者であることを宣言することができる。この場合には、派遣国は、その者の任命を取り消す。
  4. 1及び3の場合において、接受国は、派遣国に対し自国の決定の理由を示す義務を負わない。

つまり、日本は合法的に、姜昌一氏の駐日大使としての赴任を拒絶することができるわけです。

何でしたら、レジデンストラックなどの運用も停止されているなかですので、姜昌一氏が日本にやってきたとしても、14日間のコロナ待機期間中にペルソナ・ノングラータを発動すれば良いのではないでしょうか。

いっそ兼館でいかが?

なお、姜昌一氏の駐日大使としての受入を拒絶すれば、相星孝一駐韓大使についても同様に韓国から受入を拒絶される可能性が出て来ます。もしかして外務省の役人あたりが考えているのは、こうした事情なのかもしれません。

つまり、もし日本が姜昌一氏を拒絶し、韓国も相星孝一氏を拒絶すれば、一時的に「日韓双方で大使が不在になる」という状況が生じるわけです。

ただ、口の悪い人に言わせれば、「これを機に日本も駐韓大使館を撤収し、いっそのこと北京の日本大使館、あるいはウラジオストクの日本総領事館あたりと兼館でも良いのではないか」、といった意見も出てくるのかもしれませんね。

新宿会計士:

View Comments (13)

  • 外務省は韓国大使のポストがなくなることを心配しているだけなのでは?
    首相などは自分達は面会しないのに、侮辱された天皇陛下に面会して頂くのは大変失礼ではないでしょうか。

  • 韓国駐在大使職の韓国側拒絶による有力外交官僚の職としては「朝鮮半島対策室」を設け、その「室長(仮称)」として、大使級として遇せばよいと思います。北朝鮮情勢も合わせて日本にとっては大変重要で大切な仕事です。礼服着てワイン飲んで嫁同伴で華麗な社交界デビューという大使の通常の仕事とは異なるかも知れませんが何も仕事がない無任所役職ではありません。長く勤めれば勲章や栄典も他の大使と同様に与えれば良いでしょう(南北朝鮮からの栄典は期待できないが)。

  • いろいろとお騒がせな人物のようですから、日本政府としては次なる舌禍事件を待っているのかもしれません。

    あくまでも個人的な願望的推論に過ぎませんが。(笑)

  • 更新ありがとうございます♪

    兼館大使は、相手国が中国、ロシアなので変な依頼をして間に入られるのは、余計に事態をマズくしますネ。

    姜昌一氏が訪日すれば、韓国人は異常なシツコサで、日本に居座ると思います。なので、まずアグレマン取り消し。

    ダメなら、次いでこれまでの行動、反日心情からのペルソナ・ノングレータで成田か羽田か関空で追い返す。火病起こそうが得意の日本語で捲し立てようが、帰国させる。天皇陛下に謁見させてはなりません。

    お互いに大使無しで何が困るんですか?韓国の日本大使館も無いのに。釜山領事館はとりあえず、置いておくべきかなと。いずれ無くしましょう(笑)。

  •  外務省は手足。官僚に決定権はありません。
    最終的には政治家(首相・外務大臣)が決定すること。
    その為に、高位官僚の人事を内閣人事局に一元化したのだから。

     自民党外交部会も身内の茂木大臣に申し入れるのではなく、何故、国会決議案を提出しないのだろう?
    決議できなくても獅子身中の虫を炙り出す良いチャンスなのに。

    姜昌一の取り扱いは菅政権の能力を見極める良いリトマス試験紙なると思います。

  • よく判らないのですけどね。K国側にとって日本との国交が命綱であることは易く理解できますが、日本側にとってK国との国交にいかほどの価値があるんですの?ねえ、二階さん。

    C国とのそれはともかく、K国への企業進出なんて、まともな企業であれば、とっくに撤収済みだと思っておりますのよ。それとも、何ですの。K国国交はC国のそれとセット販売とか・・・。

    A国?在韓米軍って、どのぐらい残っているのかしら?

    新政権がどうなるかは判りませんが、当分混乱は続きます。A国には、K国どころか、C国の相手をする余裕もないのじゃないかしら?。

  • これで確定しましたね。
    菅さんも茂木さんも外交を任せられる人材ではない。

    それと先日のコメント欄に「アグレマンを出すことを拒絶するのは余程のこと(国交断絶の手前など)で普通は出来ない」という意見を書いておられる方がいらっしゃいました。それは事実だと私も思いますが、今回の姜某を駐日大使として出して来たことに対して「こんな反日人間を出して来るような舐めた真似を続けるならば日本は韓国と断交しても良いんだよ」と韓国に明確に理解させる=韓国の頬っぺたを引っ叩いて痛みを感じさせる上では、アグレマン拒絶は良い手段だと思いますよ。

    何しろ韓国は日韓国交の根幹中の根幹である日韓基本条約の大前提である請求権に関する合意を、自称徴用工裁判や自称慰安婦裁判の判決で全く無視したのです。日韓の現状は国交断絶の一歩手前でも何ら不思議はないのですから、その現状を韓国に思い知らせ、外交では控え目な行動しか出来ない日本がそこまでやることによって韓国の非常識さをアメリカを含めて世界に理解させるには、無礼な反日分子を大使として送り込もうとするふざけた真似に対するアグレマンの拒絶はシンボリックで実に良い手段だったのです。

    菅も茂木も状況を認識できない馬鹿としか言いようがない。

    安倍さんが何とかしようとしてかなり成功しつつあった日韓外交の正常化もこれで遠からず元の木阿弥(つまり「歴史問題」という様々な口実を使い吸血寄生虫として日本の血を啜るのを許す状態)となってしまうでしょう、実に残念なことですが。

  • アグレマンを出した後で撤回だの面会見送りだの、ナニを今更という感想しかありませんね。

    駐韓大使と駐日大使の相互同意をルーティン的に行ったツケでしょうか。
    もし、熟慮に熟慮を重ね、先を読んだ上での対応(自演)なら拍手ものですが。

  • 迷王星 様へ
     全く同感です。本来なら、茂木外相から菅総理に姜昌一氏へのアグレマン拒否を上申すべきでした。
     茂木外相は「21世紀の日本を『多様性のある多民族社会』に変えることが必要」だとして「定住外国人への地方参政権の付与」を主張していますが、日本国民が尊敬する天皇陛下を「日王」と蔑んだ人物に対して、茂木外相自身が、天皇陛下との面会を許可する結果になってしまうことを、何とも思わなかったのでしょうか。東京大学経済学部に「合格」し、ハーバード大学への留学経験もあるようですが、日本国外務大臣としては「失格」と言われても仕方が無いと思います。
     安倍総理なら、アグレマンを拒否したでしょうが、菅総理はコロナ対策で余裕が無かったのでしょうし、もともと外交や皇室に対する強い信念・理念を持っておられるようにも見えません。
     ソウル中央地裁が、12月11日に予定していた判決を1月8日に延期したのは、日本政府のアグレマン後に判決を延期するという意図があったのかも知れません。日本政府がアグレマンを出した日付は確認できませんが、恐らく1月8日より前だと思いますし、日本の外務省が、ソウル中央地裁判決が日本政府敗訴の可能性があるという情報を、茂木外相や菅総理にきちんと伝えていたのか、非常に疑問です。
     今回の姜昌一新駐日大使への「面会拒否」は、自民党外交部会からの「突き上げ」に対する「ガス抜き」ではなく、日本国民からの「突き上げ」に対する「ガス抜き」というべきだと思いますが、それでは、3月以降に延期されたソウル中央地裁「慰安婦判決」第2弾に対する「ガス抜き」は、どうするつもりなんでしょうか。 

  • アメリカからどう見えるかを考えたらこのくらいに落ち着くんじゃないかな。
    駐日大使を叩き出したら関係悪化を日本のせいにしてくる。(そして成功する可能性がある。)
    日本の選択肢はアメリカもやった「アグレマンの引き伸ばし」より穏当な手段が無難。

    過激な手段をうまく活用できればいいんだろうけど。
    そんな能力が日本の外務省にあるとは思えない。

1 2