中国の電力不足に関する「続報」です。台湾国営メディア『中央通訊社』に昨日、中国の電力不足と豪州産石炭を関連付ける記事が掲載されていました。これによると中国国内メディアは「豪州産石炭と電力不足は関係ない」、「中国は豪州以外からも石炭を購入することができる」などと報じているようですが、なぜ「豪州の石炭は電力不足と関係ない」のに「よそから石炭を購入する」という話が出て来るのでしょうか?
台湾メディア「千人以上の船員が海上を漂流」
先日の『地球の未来壊す中国に大規模停電というセルフ経済制裁』や『福島氏「国民生活よりメンツや野望を優先する習近平」』では、中国で大規模な停電、電力制限、電力不足などが生じているようだ、とする話題を紹介しました。
こうしたなか、この「電力不足」に関連し、台湾国営メディア『中央通訊社』(中国語版)が興味深い内容を報じたようです(「はにわファクトリー」様、情報提供大変にありがとうございました)。
中澳煤炭之爭波及貨船船員 千人受困海上數月
中澳兩國爭端日益惡化,中國禁止澳洲煤炭進口做為報復,卻意外波及貨船船員。外媒報導,目前約有70艘載有澳洲煤炭的貨船,因中國禁煤令而無法靠港卸貨,千名船員已受困海上數月。<<…続きを読む>>
―――2020/12/27 14:37付 中央通訊社より
記事タイトルにある「澳」は豪州のことで、意訳すれば「豪中両国の石炭を巡る紛争の影響で千人を超える船員が数ヵ月にわたり貨物船に閉じ込められている」、といったところでしょうか。
記事の内容を要約し、箇条書きにしておきましょう。
- 豪中間の紛争悪化にともない、中国が豪州産石炭輸入を禁止したことで、豪州産石炭を運搬する貨物船約70隻が接岸できず、千人を超える乗組員が海に閉じ込められている
- ニューヨークタイムズ紙によると、これら70隻の貨物船が運搬している石炭は700~1000万トンとされており、また、豪州海事連合によれば、下船できない船員は約1400人と推定されている
- 6ヵ月間海を漂流しているインド人の乗組員は毎晩5歳の息子の夢を見て、泣いて目を覚ましているという
- 豪政府の公式統計によれば、豪州が昨年輸出した石炭は104億豪ドル(約2200億新台湾ドル)相当額だ
…。
なかなかすごい情報ですね。
台湾報道が香港報道と整合
そういえば、以前、当ウェブサイトでも紹介した香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)』の次の記事でも、「現在、5億米ドル相当の豪州産石炭を積載した貨物船が中国の海岸沖に停泊している」とする記述が含まれていました。
China suffers worst power blackouts in a decade, as post-coronavirus export boom, coal shortage hit supply
Provinces across China are struggling with blackouts, as authorities use restrictions to curb energy use and manage supply / Analysts blame the resurgence of manufacturing, a coal shortage and China’s central economic planning for the problem<<…続きを読む>>
―――2020/12/23 22:00付 SCMPより
くどいようですが、もしも中国が現在、自国自身の措置によって石炭輸入に支障を来し、その結果として電力不足が生じているのだとしたら、これこそ本物の「セルフ経済制裁」の実例ですね。
メンツを重視して国民経済を無視する国
ではなぜ、仮にこの「セルフ経済制裁」仮説が正しければ、なぜ中国はそのような行動を取るのでしょうか。
これについて個人的にもっともしっくりくるのは、『福島氏「国民生活よりメンツや野望を優先する習近平」』でも紹介した、福島香織氏の次の説明です。
「電力使用制限の理由がオーストラリア石炭の禁輸措置の影響であれ、あるいは習近平のエコ政策実現のためであれ、習近平政権が経済や国民の生活よりも政権の対外的なメンツや野望を優先しているということは言えそうだ。」
習近平(しゅう・きんぺい)政権の「対外的なメンツ」とは「2060年カーボンニュートラル社会の実現」、「対外的な野望」とは「中国市場からのオーストラリア産品排除」のことを指しているのでしょう。
ちなみに先ほど紹介した中央通訊の記事によれば、次のような記述があります。
「澳洲天空新聞(Sky News Australia)18日晚間播出的節目指出,『澳洲貨船無法在中國停靠並卸貨,中國面臨缺電危機』」(意訳)「豪州『スカイニューズ・オーストラリア』は18日の番組で、『豪州産石炭運搬船は中国に石炭を荷卸しすることができず、これが中国の電力危機の原因だ』と報じた」
「部分中國媒體則引述官方資料回擊,指中國今年從澳洲進口的煤炭僅較去年短少2200萬噸,占全年使用量的0.54%,影響不大。況且,沒有澳洲煤炭,中國還可輕易找到其他國家的煤炭。」(意訳)「一部の中国メディアは、今年の豪州産石炭輸入量は昨年より2200万トン減り、年間消費量の0.54%に過ぎず、影響はほとんどないと報じた。中国は豪州産石炭に依存しなくても、石炭はほかの国から簡単に調達できるとの意見もある」
つまり、豪州と中国の両国の言い分が正面から対立しているのです。
福島氏の言葉を借りるならば、「どちらを信じるかは見る人に任せる」、ということだと思いますが、いずれにせよ、どちらの主張が正しいかについては、さほど時間をおかずに明らかになるでしょう。
もっとも、個人的には中国メディアの「豪州産石炭の輸入停止と電力不足は無関係だ」というのなら、なぜ「中国は豪州以外からも石炭を調達できる」などと強弁する必要があるのでしょうか。
こういう細かいところで馬脚を現しているあたり、個人的には興味深いと思ってしまう次第です。
View Comments (14)
>もっとも、個人的には中国メディアの「豪州産石炭の輸入停止と電力不足は無関係だ」というのなら、なぜ「中国は豪州以外からも石炭を調達できる」などと強弁する必要があるのでしょうか。
こういうところが宗主国様の面目躍如たるところですね。
小中華を詐称する国に対し、外国勢力から痛いところを突かれた場合、一連の発言の整合性は気にせず、とにかく「大声で速やかに反論することが肝要」だと身を以て範を示したのではないでしょうか(笑)
国民が求めるものは、娘の連れに求めるものと同じ・・。
野心よりも安心。そして安全なのだと思うんですけどね。
*豪州産石炭の代替先は、北朝鮮産なのかな?やっぱり。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(なにしろ、素人考えなので)
もし中国の電力不足が、豪産石炭輸入禁止と無関係としたら、電力不足になった原因が別にあることになります。それが分かっていないになら、いつ再発するか分からないので、そちらの方が問題ではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
>「豪州産石炭と電力不足は無関係」
もしそうだとしたら、外部的な原因でなく、もっと深刻だと言ってる様なものでないのか・・・
真偽の判断は難しい
(やはりあなた次第と言うところではないでしょうか?)
>もっとも、個人的には中国メディアの「豪州産石炭の輸入停止と電力不足は無関係だ」というのなら、なぜ「中国は豪州以外からも石炭を調達できる」などと強弁する必要があるのでしょうか。
「豪州産石炭の輸入停止と電力不足は無関係だ」なぜなら「中国は豪州以外からも石炭を調達できる」
単なる理由の説明と受けとることも可能です
また中国のオーストラリアからの石炭輸入比率が8%と言うことを信用すれば
無関係とはいえないまでも関係性薄いとも言えます
中国のプロパガンダとみた場合は台湾国営メディアの報道を使うと言う巧妙さがみえます
理由にかかわらず、サプライチェーンから中国をはずす勢いに弾みがつくであろうことが重要です。
イーシャさま
>理由にかかわらず(中略)勢いに弾みがつくであろうことが重要です
陸揚げ不能になっている貨物を買い取り、船員たちに人道支援することで、中国のメンツをなおいっそうに潰す行動が可能と思います。戦略的に実行できないものでしょうか。
もちろん、この動きを阻止すべく禁輸をさっと解き石炭など貨物を陸揚げしてしまう可能性は大ながらも、それは誰にも好ましいこと、本来そうであっただけ。失敗に終わった中国政府の嫌がらせという史実が記録に残るだけです。記事はそれを狙っているのでしょう。
更新ありがとうございます。
豪州産の石炭を止めて、いきなり他国から手配出来るもんなのでしょうか?北朝鮮産?或いは自国産を増産?ま、人民の事よりも習近平が政権のメンツや世界制覇という野望を優先しているという事でしょう。
「一部の中国メディアは、今年の豪州産石炭輸入量は昨年より2200万トン減り、年間消費量の0.54%に過ぎず、影響はほとんどない」オイオイ、どんだけ使ってんだよ!だから半島のPM2.5とかが猛毒並みに漂ってんの!属国でなかったら、皆、許さんヨ!
豪州は本気で怒っていると思う。日本の友邦国が増えて良かった。
いつもお世話になっております。
中共江南の不作(長江流域の洪水)・疫病(武漢コロナ)・失業者
(1億4千万人程度、これって農民工も入っているのかな、都市戸だけだったら笑っちゃう)
後一つ宗教団体(既存でもキリスト教でも可)の発現が足りない
中共の歴史で一番の醍醐味であり、ご自慢の易姓革命の条件は整いつつある。
始まりまで、後〇〇〇日かな~
日本で中共の不動産購入が多くなっているのは、これが原因かな。
中共では農民であっても、保有期間が決まっているから、日本のような
個人所有できないんだよね。
日本にこないで。
支那も朝鮮も、似た様な事(不買)して、自分の首を絞めていますな。
お互いにどこまで頑張れるか。まあ、朝鮮は、既にへたれていますが。
採炭業者もアホじゃないので契約が結ばれるまでは増産はしないし、増産には設備や人員の手配が必要なんで、今日明日にできるとも思えない。
稼働率を上げるだけで代替可能な量でもないだろうし。
ついでに言えば、今回のこのやりようを見て誰が中国と積極的に契約したいと思うだろうか。
契約しても、気分次第で反故にされるのを見せつけられたのに。
ただでさえカーボンニュートラルで石炭業界全体が撤退戦中なのに、そんなリスク負えるかな?