昨年、大勢の被害者が出た悲惨な事件で、マスメディアが頑なに「被害者の実名報道」にこだわったのを、個人的には不思議な気持ちで眺めていました。ただ、この「実名報道主義」、調べていくと、マスメディアは都合に応じてコロコロ使い分けているようなのです。その典型例が、東京新聞記者という40代の男が今年9月、厚労省の職員の方に対して働いた暴行事件をめぐって、メディア各社がかたくなに加害者の男の実名を報じないことではないでしょうか。
東京新聞記者による厚労省への暴行事件
「9月4日、東京新聞記者の40代の男が新型コロナウィルスに関する取材を行っていた際、厚労省職員を4時間弱にわたって取材した際に、『ばかにしているのか』と大声を出して机をたたいたり、資料を一時的に奪ったりする暴行を働いていた」――。
これは、以前の『東京新聞記者による厚労省職員への暴行は氷山の一角か』で取り上げた話題ですが、これが事実だとすれば、なかなか驚く行為です。なぜなら、暴行、窃盗などの犯罪が成立する余地すらあるからです。
しかも、東京新聞によると、「厚労省側から業務に支障が生じたと編集局に抗議があった」とされているのですが、コロナウィルス対策という国民の関心が非常に高い業務を担っているからといって、そのような公務員を傷つける行為が許されてなるものではありません。
さらに、東京新聞は「職員の方々を傷つけたことを深くおわびします。記者は取材から外しました。厳しく対処し、再発防止を徹底します」とする「加古陽治編集局次長の話」を掲載しているのですが、これも普段のマスメディアの報道姿勢からすると、不思議な気持ちになります。
なぜなら、通常、何らかの暴行事件が発生した場合、多くのメディアは土足で当事者の自宅や職場に押し掛け、顔写真をバシャバシャ撮り、実名で大々的に報じることが多いからです。
ところが、不思議なことに本件については、加害者の男の実名は報じられていないどころか、「東京新聞社に取材を行ったメディア」というものも見当たりません。これだと、メディアが自身の業界で発生した出来事については徹底して甘いという「ダブルスタンダードだ」と批判されても仕方がありません。
記者の実名を報じたメディアは…?
こうしたなか、昨日はこんな報道がありました。
東京新聞記者を停職処分 取材で暴力的行為―中日新聞社
―――2020年10月31日10時12分付 時事通信より
厚労省で「ばかにしているのか」と机たたいた東京新聞記者、停職処分に
―――2020/10/31 18:39付 読売新聞オンラインより
東京新聞記者を停職処分
―――2020.10.31 15:50付 産経ニュースより
東京新聞の記者を停職2週間に 厚労省の取材で机たたく
―――2020年10月31日 14時43分付 朝日新聞デジタル日本語版より
これらのメディアの報道によると、中日新聞社は昨日、問題の男を停職2週間の処分にするとともに、東京新聞の大場司編集局長と杉谷剛社会部長については監督責任を問い、「譴責処分」にしたのだそうです。
非常に不思議です。
まず、処分が軽すぎること。
次に、加害者の実名は、頑なに報じていないこと。
さらに、ここで引用したすべてのメディアが、判で押したように東京新聞の言い分を、ほぼそのまま垂れ流していることです。
あれ?
ずいぶんとおかしくないですか?
実名報道主義は、どうなった?
マスメディアの報道を巡り、ここでシンプルな疑問があります。
それは、報道する基準(スタンダード)を、自身の都合に応じて恣意的に使い分けているのではないか、というものです。
たとえば、昨年7月に発生した株式会社京都アニメーション(京アニ)スタジオ放火事件では、多くの方々が犠牲となり、傷つきましたが、一部の新聞、テレビはこの事件を必要以上にセンセーショナルに取り上げたうえ、頑なに被害者の方々の実名報道にこだわりました。
とくに、『京アニ事件とマスコミ取材の二次被害が酷い』などでも取り上げましたが、事件から3日後の7月21日、京アニはウェブサイトに、メディア各社に対して「実名報道を控えてほしい」という申し入れを行っていたことを忘れてはなりません。
それなのに、『【速報】京アニ事件「実名報道」蛮行を批判する』で報告したとおり、事件から約1ヵ月後、各メディアからの圧力に負けたのか、京都府警は犠牲者や負傷者の方々の実名を公表し、メディア各社はそれを報じました。
しかも、メディア各社の言い訳があまりにも酷く、たとえば、ある新聞は2019年8月27日付(※最終更新は同8月29日付)の記事で、「おことわり」と題して次のような「言い訳」を挿入しています。
「おことわり ●●新聞は、事件や事故の犠牲者について実名での報道を原則としています。亡くなった方々の氏名を含め正確な事実を報じることが、事件の全貌を社会が共有するための出発点として必要だと考えます。遺族の皆様への取材に関しては、そのご意向に十分配慮し、節度を守ります。」
余談ですが、この新聞社は「節度を守ります」と騙っていますが、京アニの報道発表を無視している時点で節度を守っていませんし、この実名報道を通じ、被害者やその関係者の方々に対して二次被害を与えたという意味では、彼らは立派な加害者です。
ただ、著者自身が当時思ったのは、「実名主義を徹底するならば、そのことはやむをえない」というものです。
しかし、当時あれほどまでに「被害者の実名報道」にこだわった各メディアが、なぜ東京新聞記者の暴行事件の「加害者の実名報道」をしないのでしょうか。
この件について、メディア各社が納得のいく説明をしてくれるのかどうか、個人的には期待しないで待ちたいと思う次第です。
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自分に優しく、他者に厳しい。人間性に問題がある方々の典型的な行動ですね。もしかすると組織がそうだから、と言う事が記者に影響している面もあるかもしれませんが。
以前にもコメントしましたが、反社、極左暴力集団であるマスゴミは、徹底して加害者擁護、被害者攻撃主義です。加害者名の実名報道は、明白な場合を除いて、極力伏せます。特に身内の場合は、実名報道することはあり得ません。国民の知る権利を最も阻害しているのが、マスゴミであることは明白です。
安倍元首相や自民党議員だと加害者にされた上に思いっきり攻撃されますね。
加害者擁護、被害者攻撃主義ではありませんご都合主義です。
野党が同じように役人を責めて、自殺に追い込んだケースも有りましたね。国会中継の野党の野次も酷いもので、教育上よく有りません。
マスゴミと野党は、同じ穴の狢です。
同じような、ダブスタ案件です。
拾い始めるとキリが有りません。
毎日新聞から
伊藤詩織さんが「虚偽告訴」「名誉毀損」? 「書類送検」報道を考える
https://mainichi.jp/articles/20201101/k00/00m/040/003000c
山口氏の方は、犯人呼ばわりで山口容疑者として報道されていましたが、伊藤詩織さんは、容疑者として報道するのはおかしいって。
「おかしいのは、お前だ。」でした。
更新ありがとうございます。
さすがマスコミですね(褒め言葉ですが、真逆の意に捉えて下さい 笑)。記者本人は2週間の懲戒謹慎、上司の局長と部長が譴責。甘すぎです。謎の甘さです。世間を舐めてます。暴力+威嚇行為なら馘首が普通。退職金もナシ。そんな暴力団員、雇ってたら会社の品位疑われますよ(品格無いか)。
譴責なんて、1ミリも実害無いです。名前を各社何故晒さないか?明日は我が身だから、絶対知らせない、互助会(笑)。
反社、極左暴力集団であるマスコミは、徹底して加害者擁護、被害者を攻撃します。東京新聞は、ペナルティで官庁出入り禁止にすれば良い。理由は、暴力に訴える記者がそこら中に居るから!
建前的には「(加害者・被害者共に)警察の実名発表とメディアの実名報道は非なるもの。その判断はメディアに委ねて欲しい」的なことを言いつつも、実態はもれなく警察の実名発表=メディアの実名公表なのではないでしょうか?(警察に対して責任転嫁してる?)
メディアによる実名報道の是非はともかくとして、警察・官公庁の不祥事に対しての身内贔屓を批判するのであれば、自らの不祥事に対しても厳しく対処しないと辻褄が合わないんですよね。
*立件でもされない限りメディア関係者による不祥事は、実名報道には至らないのかもですね。
どっかの国と同じですね。
自分がやるのはロマンスだけど、他人がやったら不倫。
東京新聞の社屋で厚労省の職員が同じことをしたら、こんな軽い謝罪で済ませるとはとても思えないのですが。
職員、その家族のプライバシーを身ぐるみはいで、剣よりも強いと言うご自慢のペンであることないことしつこく書き立てるでしょうに。
ペンより強いインターネットの出現で、マスゴミの傲慢なやり口も風前の灯ですがね。
マスゴミのダブルスタンダードは当たり前の話ですので、私個人レベルでは、一々非難したり揶揄したりするのは労力が勿体ないのですが、そこをあえて公的に指摘して議論を呼ぶことは大切なことですね。
私も、東京新聞に当該記者の実名を公表せよとの署名運動を起こすべきなのかもしれません。生来の怠け者ゆえ、新宿会計士様への声援を以て実行に代えさせて頂きます。(我ながらだらしない)
加害者が元JR東労組(赤軍派)のN澤誠だと言う話は公になっていなかたのですか?知らなかった。本当にマスコミの情報統制は恐ろしい。あの世でナポレオンに羨ましがられそうだ。
この件で不思議なのは、あの東京新聞が非を認め(処分は激甘)、厚労省職員側が完全無欠に被害者認定されている点です。
別件では、地方自治体等への取材で、担当者が悪質な記事によって悪者に仕立てられるようなケースもある。逆に厚労省職員とあっては、記者を煙に巻くような対応もできたと思われます、まして苦心した防疫方針に安全圏から寝言ばかりほざいていた東京新聞が相手。
今までなら、事実など無視し新聞社側に都合の良いストーリーに仕立てて流布できたように思います。ブンヤが好き勝手できなくなってきたのかなぁという部分が気になります。それかいくらか世間の雰囲気が読めているのか?
まぁ東京新聞+コロナ関連の取材なので、単純に自分の思惑と違う回答が来てキレて一線を越えてしまっただけで言い訳のしようがナシ白旗降参、て可能性の方が万倍高いですけど。
実名ダブスタ部分は色々考察しましたが消しました。「クズ」2文字で事足りるので。