政党の本分とは、魅力的な政権公約を掲げて政権を奪取し、それらの公約を実現することだと思います。それなのに、政策そっちのけで名前にこだわり、たんなる選挙互助会を目当てに政党再編を目指している「人罪」がいるとしたら、やはり私たち有権者は舐められたものだと思います。昨日の報道によれば、立憲民主党は国民民主党に対し、「両党がいったん解散して『立憲民主党』という新党を立ち上げる」といった提案を行ったようですが、肝心の政策はどこに行ったのでしょうか?
目次
政策そっちのけ?「元のさや」を提案
なかなかダイナミックな話です。
早ければこの秋にも解散総選挙があるとみられているためでしょうか、最大野党である立憲民主党と、野党第2党である国民民主党が、合流を目指しているとする話題については、『立・国両党合流、政策そっちのけで「党名」でもめる?』などでも取り上げてきました。
その続報でしょうか、昨日、立憲民主党と国民民主党が幹事長同士の会談を実施。そのなかで福山哲郎・立憲民主党幹事長は平野博文・国民民主党幹事長に対し、両党がいったん解散して「立憲民主党(略:民主党)」という新党を立ち上げる形での合併を提案したのだそうです。
「民主党」復活提案 立民、合流向け国民に 両党解散、新党立ち上げも
立憲民主党の福山哲郎、国民民主党の平野博文両幹事長は15日、両党の合流をめぐり国会内で会談した。<<…続きを読む>>
―――2020.7.15 19:17付 産経ニュースより
ちょっと驚いてしまいました。先日も触れたとおり、両党は肝心な政策のすり合わせもそこそこに、まずは政党名をめぐってもめている、などと報じられています。
しかも、旧民主党は2009年に政権を奪取したものの、その後、公約違反、法律違反、東日本大震災をめぐるハンドリングのまずさなどが積み重なり、わずか3年少々で政権を投げ出した挙句、政党名をコロコロ変えたすえに立憲、国民の各民主党などに四分五裂して現在に至ります。
福山氏の提案は、まさに政党名だけを変更したうえで、完全に「元のさや」に戻ろうと主張するものであり、自然に考えて、最も大切な「有権者の理解」が得られるとも思えません。民主党政権時代の悪印象が強すぎるからですし、これだとまさに、たんなる「選挙互助会」そのものでしょう。
ジリ貧の国民民主党にも選ぶ自由くらいはある
もっとも、産経ニュースによると平野氏は会談後、記者団に「(提案が)百点満点になっているとは到底思えない」などと述べたそうですが、自然に考えてこれは「論外」というものでしょう。また、国民民主党の肩を持つつもりはありませんが、客観的にみて、立憲民主党はちょっと相手を舐めすぎではないでしょうか。
いちおう、上記リンク先の産経ニュースも含め、すでに複数のメディアにも報じられているとおり、国民民主党は17日に開く両院議員懇談会などで立憲民主党側の提案内容について議論するようです。
もちろん、現在、国民民主党側は、支持率の低迷にあえいでおり、このまま衆院の解散総選挙が実施されたら、壊滅的な打撃を受けるのではないか、といった危機感が存在していることは事実でしょう。
しかしながら、立憲民主党側にも、「今すぐ選挙」となってしまうと、金庫に軍資金が残っておらず、旧民主党・民進党時代から金庫に蓄えこんでいる政党助成金の残金が、それこそ「喉から手が出る」ほど欲しい、という事情もありそうです。
そうであるならばなおさら、「合流したい」という事情があることに関しては両党ともに同じことであり、その意味からも、今回の立憲民主党のやたらと高圧的な態度は理解に苦しみます。
民主党政権の良かったところは…?
さて、いつも当ウェブサイトで申し上げているとおり、国会議員の「本業」とは、高い給料をもらったり、官僚をどやしつけて王様気分を味わったりすることではありません。「法律を作ること」です。
また、日本は議院内閣制の国ですから、政党政治の王道として、有権者に対して政党としての政権公約を提示し、それによって自分たちの政党に清き一票を投じてもらい、自分たちが約束した政権公約を達成することで、有権者に対して報いるのです。
したがって、政権を取ったことがない政党は、まずは現状の法律や政策課題などについて猛勉強し、実現可能な政権公約を打ち立てて政権を取ることを目指すべきですし、もし政権を取ることができたならば、今度は全身全霊をかけて、その政権公約を達成していかねばなりません。
ところが、民主党は2009年8月の衆議院議員総選挙で、麻生太郎総理が率いる自民党を打ち負かし、地滑り的な勝利を収めて政権を奪取したにも関わらず、3年3ヵ月の政権担当期間を通じて、首相がコロコロと交代しただけでなく、さまざまな失策を重ねました。
たとえば、
- 八ッ場ダムの建設中止(※違法行為)
- 沖縄県普天間飛行場の移設合意をひっくり返す
- 政権公約にない消費税の増税法案を可決
- 東日本大震災・福島第一原発事故のハンドリングを失敗
- 米国、中国、韓国などとの関係を損ねる
…、といった具合です。
もちろん、細川護熙連立政権時代に入閣経験があった者もいたものの、その一方で初めて入閣したという政治家も多く、初体験のために稚拙な点があったとしても、ある程度は仕方がない話でもあります。
しかし、鳩山由紀夫元首相、菅直人元首相、野田佳彦前首相らを筆頭とする政治家らがなしたことは、「政権を担当するのが初めてだった」という以前に、政治家としてあまりにも不勉強であり、人間としてあまりにも不誠実でした。
首相以外の「人罪」として、ひとつだけ具体例を挙げると、被災地に視察に入り、現地の知事に暴言を吐き、その姿が地元メディアに報じられたことで多くの人々から批判された、故・松本龍復興担当相がわかりやすいでしょう。
民主党政権には、この松本龍なる者のように、人間としての常識、知性すら疑われる「人罪」が、あまりにも多すぎたのです。
なお、当ウェブサイトの持論ですが、民主党政権で良かったことを2つだけ挙げると、
- 国民新党から入閣していた自見庄三郎金融担当相がインチキ会計基準である国際財務報告基準(IFRS)の強制適用を見送ると表明したこと
- 「首相なんてどうせ誰がやっても同じことだ」という言説がウソであるということを、身をもって証明したこと
でしょう。
安倍政権が強いのは民主党政権のおかげ?
実際、2012年9月に自民党総裁に返り咲いた安倍晋三総理が率いた自民党は、2012年12月の総選挙で圧勝し、麻生太郎総理らとともに第二次安倍政権を組閣し、それ以来、この「安倍・麻生連立政権」は今日に至るまで続いています。
安倍政権が強い理由は、おそらく少なくとも2つあります。
1つ目は、なんといっても安倍、麻生両総理という「最強クラスの総理」が2人いる(※)ことに加え、菅義偉内閣官房長官以下、要所要所で有能な人材をうまく閣僚として配置している、といった事情があることは間違いありません。
(※ただし麻生総理の現在の正式な肩書は「副総理兼財相」ですが、当ウェブサイトではあえて「麻生総理」と呼称しています。)
ただし、長期政権の弊害でしょうか、なかには閣僚としての資質に疑問を感じざるを得ない者もいますし、安倍政権が外交、経済などの分野で百点満点の成績を収めているとはいいがたい気がしてなりません。
しかしながら、それでも安倍政権が長続きしている2つ目の理由は、民主党政権があまりにも酷すぎたことと、その後、民主党(やその残党である民進党、さらにその残党である「希望の党→国民民主党」、立憲民主党など)が国民の多数から信頼されていないことにあります。
「消極的支持」が多いゆえんでもあるのです。
本分に立ち返るなら支持する…かも?
さて、『野党が正しい政策を掲げるならば、全面的に歓迎すべき』などを含めて以前から何度も申し上げているとおり、当ウェブサイトとしては、たとえ野党であっても、正々堂々と正論を主張するならば、それについては是々非々で評価・判断すべきだと考えています。
もちろん、彼らがそれを主張したところで、それらを実現していく能力があるのかどうかという点は別問題ですが、それでも正論を述べること自体は正しいことです。なぜなら、国民に支持される政策を野党が主張し、それによって議席をかっさらわれかねない事態が発生すれば、与党にとっても緊張感が走るからです。
昨年の参院選で「NHKから国民を守る党(N国党)」が躍進したのも、「この党に投票すればNHKという組織の在り方に正面から切り込んでくれる」という期待感を抱いた有権者が多かった証拠でしょう(同党がその期待に応えているかどうかは別問題ですが…)。
つまり、「NHK改革」を政権公約に掲げれば有権者が支持してくれるということがわかっただけでも、少しはN国党に存在意義があった、というわけです。
同じ理屈はほかの政党にも成り立ちます。
たとえば玉木雄一郎・国民民主党代表は、消費税の減税を野党の統一政策に掲げようと提唱していますが、もしもそれを掲げることで、国民民主党が躍進するようなことがあれば、自民党に対しても程よい緊張感をもたらします。
著者が立憲民主党に失望しているのは、まさにこの「(一見すると)実現可能・現実的(に見える)政権公約」がいっさい彼らから出てこないからであり、その意味では、日本共産党の次に日本から消えるべき政党は、まさに立憲民主党だと思う次第なのです。
いずれにせよ、武漢コロナ禍をめぐる安倍政権のハンドリングが世論の批判の対象となっているといわれますが、やはり、現在の野党の体たらくを見ている限りでは、安倍政権が危機的な状況にあるとは考えづらいというのが率直な感想でしょう。
View Comments (24)
もはや党名大喜利にしか興味を持たれない連中。
でも「こんなのに政治を任せちゃダメ」と記憶に留めるため、民主党の名だけは残して欲しいですね。
イーシャさま
「じゆうみんしゅとう」にしても、日本市民には選挙権が無いから、駄目でしょうか。
だんな 様
そういうあからさまな選挙妨害になる名称は、選挙時に却下されるでしょう。
日本市民には、そろそろ母国へお帰りいただきたいですね。
民主党の名を残さない場合には「無能記憶連帯」がいいかもしれない。
またつまらぬことを言ってしまった。
秋の解散総選挙は、充分に有ると思います。
新宿会計士さんは、政策によって野党を支持すると言いますが、それを誠実に実行出来る事が、担保されていません。
過去からの振る舞いが、その場の良い政策で無かった事になる訳では有りません。
それを自民党が取り込んで、実行する方が現実的だと思います。
盃の中の嵐 ですかね。
自由民主党には「綱領」が有ります。🐧
https://www.jimin.jp/news/policy/130443.html
党名大喜利で盛り上がっている「#新党」は「綱領」を定めるのでしょうか?🐧
議員個々の能力や、日本人の為の政党ではないという立ち位置からも一般に公開する「綱領」なぞは夢のまた夢でしょう。🐧
コロナが無ければ今頃「解散風」が台風レベルで吹き荒れているのではなかったのではないでしょうか?🐧
自民党と日本国民からすれば、「内なる敵」を殲滅掃討するのに丁度良い塩梅に「内なる敵」が図らってくれているのですから。🐧
更新ありがとうございます。
また引っ付いたりすんの?(笑)。野党のリフォームですか?でもね、柱や壁自体腐りきってるから、すぐガタが来ますよ(笑)。更地にして、解体する。
つまりひとりずつ行きたい党、自民、維新、公明、共産に行って貰う。枝野、玉木、辻元、原口、岡田、野田、菅チョクトらは引き取り先無いだろうし、反日グループ結成か、れいわに入れて貰うか、で次期落選ッと。
いつものように、離合しながら衰退ですか…成長しませんね。
今までの活動の結果を総括できないようでは、主たる動きは変わらないと考えております。
(個々の議員自体はともかくとして)
大喜利になりがちな本件ですが、無暗な党名変更は民主嫌いでなくとも党名を変えるたびにロンダリングだの看板だけだのと思われるのは明白ですし、元民主議員が集まるなら元の「民主党」にするのが最善手かと思います。筋が通るだけまだいくらか追加の批判は少ないでしょう。元に戻っただけかよと呆れられるのはどうにもなりません。
それ以上を望むなら党名だけでなく、言い出しっぺの福山氏自身や民主党時代の執行部を引退かせめて表舞台から下げるくらいはしないと無理でしょう。処罰・引責という面よりも、彼ら自体が知名度はあっても不人気の元というマイナス要素なので。こういう提言を「ネトウヨが福山氏の能力を恐れているからやめさせたいんだ!」とか妄想するのはもうやめにして。
まぁ結局最後は政策です。諦めましょう。
余談:そいや悪夢民主党の執行部って具体的に誰だっけ、と[民主党 執行部]でググったところ、上位に現在の国民"民主党"・立憲"民主党"・自由"民主党"執行部が出てきて、悪夢民主時代のものがヒットしませんでした。ならばと[旧民主 党執行部]、とすると今度は前身の98年までの旧民主党がヒットします。これがロンダリングか……
日本の野党の病状と支持者の深刻さは、今の立憲民主が野党支持1位なことにあると思います。
新宿会計士様が仰る通り、立憲民主は政策を実行しようとすることで支持を集めているように見えません。
ですが支持母体と反政権的な方々の意向は、支持率からいって今の立憲民主が最も良いということになります。
安倍総理4選は自分は無い方がいいと思っていますが、与党がどうあれ今の野党の方向性の延長線では、与党がよほどのことをやらかさない限り政権奪取なんてありえません。
取ってもサイレントマジョリティー、いわゆる無党派層的にメリットが全く見えない。自分たちの暮らしをどう変えていくか、種々の困難にどう対応していくかという話まで今の野党連合ではいけそうにない。
危篤状態を脱する為に、病巣である癌(立憲部分)を取り除いて残されたのが、ヒョロヒョロになった国民民主。
治療の後遺症でヒョロヒョロの国民民主に、再び癌を体に戻してどうするのか。
自民党は(2Fと石破氏)を放出する云々---の他ブログ記事に面白い記述が有りました。尖閣や対日戦略によっては有り得る話かなと思えるからです。もしそうなら、「2F +自民親中G+石破氏」は新党を作り旧民主党勢力を取込むか、又は旧民主党勢力が再統合し「2F +親中G+石破」を土下座でお迎えし、新党党首に据えるか、有りそうな話だと思います。尖閣+中国内の水害+米中対立中国不利+中国経済底無し沼+主要国の中国包囲網などが危険要因が嵩み、中国が暴発する可能性がある中では、「2F +自民親中G+石破」は自民党内でもはや存在意義は無いも同然ですから、外に出てくれれば良いと思っています。