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防衛白書、「韓国との防衛協力と連携」をバッサリ削除

防衛省が本日、防衛白書の最新版を公表しています。これを読むと、「日本がどの国を重視しているのか」、「日本がどの国を仮想敵国と見ているのか」という点もよくわかるのですが、それだけではありません。昨年の防衛白書と比較して、インドや英国などの重要度がさらに高まっている、ということがわかるのです。個人的には、「日米豪」「日米印」「日米英」といった重層的な同盟・連携関係が日本の国防を強くする、という思いを新たにした格好です。

防衛省、防衛白書を発表

防衛省は本日、『令和2年版防衛白書』を発表しました。

防衛白書

防衛白書は、わが国の現状と課題およびその取組について広く内外への周知を図り、その理解を得ることを目的として毎年刊行されています。令和2年版防衛白書で刊行から50周年を迎えました。<<…続きを読む>>
―――2020/07/14付 防衛省HPより

防衛白書は資料編、巻末の索引などを含めて約600ページという大作であり、なかなか一度に読むのは困難です。ただ、中国公船が日本の領海を含めた尖閣周辺海域で不穏な動きを見せているなか、防衛という日本の極めて重要な分野について、現在の政権がどう考えているのかを知る上では有益です。

ハイレベル交流の相手が増えた!

こうしたなか、日本にとって最も重要な同盟相手が米国、最も深刻な仮想敵国が中国であるという点もさることながら、個人的にとくに注目しているのは、米中以外の国を、日本政府がどう考えているのか、という点です。

これについて、防衛白書を比較すると、なかなか興味深い現象が判明します。

それは、「ハイレベル交流実績」です。

防衛白書の「図表Ⅲ-3-1-2」を比較すると、この1年で日本が「ハイレベル交流」(つまり大臣、副大臣、政務官、事務次官、審議官、幕僚長が外国と交流した実績)は確実に増えていることがわかります(図表1図表2)。

図表1 「ハイレベル交流実績」(2019年)

(【出所】2019年防衛白書の『図表Ⅲ-3-1-2』)

図表2 「ハイレベル交流実績」(2019年)

(【出所】2020年防衛白書の『図表Ⅲ-3-1-2』)

2019年版の防衛白書によると、岩屋毅前防衛相のもとでの2018年6月からの1年間におけるハイレベル交流実績が年5回以上だった国は、米国、豪州、フィリピン、ベトナム、インドの5ヵ国でした。

しかし、2020年版の防衛白書によると、2019年4月からの1年間において、ハイレベル交流実績が5回以上だった国は、先ほどの5ヵ国に加え、カナダ、英国、マレーシア、タイにも拡大しているのです。2019年8月に就任した河野太郎防衛相のもとで、積極的な外交が行われている証拠でしょうか。

(※ただし、昨年と今年の「ハイレベル交流」回数のカウント基準期間が微妙に重なっている点には注意が必要ですし、とくに今年は武漢コロナ禍の影響でテレビ会談が増えているため、却って昨年より気軽にハイレベル交流ができている、という可能性はありますが…)。

昨年よりもハイレベル交流の回数が減った国といえば、目立つところでは韓国くらいなものでしょう。

日米豪・日米印・日米英

こうしたなか、良い意味で注目すべき国が3ヵ国あります。

ひとつめは、豪州です。

豪州は日本から地理的に離れていますが、それにも関わらず、今年の防衛白書でも豪州は「米国以外の協力相手国」として真っ先に名前が挙がっており、このことからも、日本が豪州を重視している意図は明白です。また、豪州については具体的に、昨年に続いて次のように書かれています。

オーストラリアは、ともに米国の同盟国として、普遍的価値のみならず安全保障上の戦略的利益を共有するわが国にとって、インド太平洋地域の『特別な戦略的パートナー』である。特に近年、両国はインド太平洋地域において責任ある国として、災害救援や人道支援活動などの分野を中心とした相互協力や、能力構築支援に関する協力を強化している。

もちろん、現時点にといて日豪両国は軍事同盟を結んでいるわけではありませんが、しかし、日本にとって、いわゆる「2+2」会談の実施回数は米国に次いで多いなど、日本が豪州を非常に重視していることは明白です。

将来的には日豪同盟という形で、米国に準じて重要な国になる、いや、もっといえば、「日米豪3ヵ国同盟」に発展する、という可能性もあるでしょう。

ふたつめは、インドです。

昨年の防衛白書は表題に『インドなど』と記載され、スリランカと同じ節にまとめられていましたが、今年はスリランカが『南アジア諸国』のカテゴリーでパキスタンとともに取り上げられており、今回からはインドが単独で節を構成しています。

しかも、豪州とともにインドは日本から地理的に離れているにもかかわらず、そのインドが豪州の次に「協力すべき相手国」に位置付けられていることからも、日本がいかにインドを重視しているかという点は明白でしょう。そのうえで、

インドは、世界第2位の人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、極めて重要な国である。また、インドとわが国は、普遍的価値を共有するとともに、アジア及び世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別な戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、日印両国は『2+2』などの枠組みも活用しつつ、海洋安全保障をはじめとする幅広い分野において協力を推進している。

とする文言は基本的に踏襲された格好です。

さらに、個人的に注目したいのは、英国です。

英国は記載される順序こそ、豪州、インド、ASEAN、韓国に次ぐ5番目ですが、記載内容自体も非常に充実しているほか、「ハイレベル交流実績」の回数も増えており、このことも、日本が密かに英国を潜在的な同盟相手とみなしている証拠なのかもしれません。

いずれにせよ、日米同盟が日本にとって最も重要なものであることは間違いないのですが、これに豪州、インド、英国などとの重層的な連携が加わることで、たとえば、「日米豪三国同盟」、「日米印三国同盟」、「日米英三国同盟」、といった具合に、日米を基軸にした同盟が多数成立する余地があります。

中国という「共通の脅威」に対処するうえで、日本はやはり、一刻も早く「自主的に国防出来る体制」を整えるべきでしょう。

日本は韓国のランクをさらに落とした?

さて、個人的に「注目すべき」と考える国が、もう1つあります。

韓国です。

韓国は2018年まで、防衛白書上は豪州の直後、インドの直前に取り上げられていたのですが、昨年は順序が豪州、インド、ASEANの次の4番目に落とされました。しかし、それと同時に日本は韓国について、このようにも述べていました。

日韓両国が直面している安全保障上の課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ、テロ対策や、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障、PKO協力など、広範かつ複雑なものとなってきている。こうした安全保障上の課題に両国が効果的に対応するため、防衛省・自衛隊としては、韓国との間で幅広い分野での防衛協力を進めるとともに、連携の基盤の確立に努める方針である。

つまり、日本の防衛白書上の順序は豪州、インド、ASEANの次の4番目に落とされた格好ですが、それでも日本は韓国との協力を重要だと考えていた、ということです。

もっとも、昨年はこの記述に続き、

他方、韓国側の否定的な対応などが、日韓の防衛協力・交流に影響を及ぼしている

として、2018年秋の「旭日旗騒動」や同年12月の火器管制レーダー照射事件、2019年8月の日韓GSOMIA破棄騒動などを取り上げているのですが、それでも、いちおうは日本は韓国を幅広い防衛協力相手と位置付けていた、ということでしょう。

ところが、今年の防衛白書では、「韓国との間で幅広い分野での防衛協力を進めるとともに、連携の基盤の確立に努める」という記述が、バッサリと削除されてしまいました。この分だと、来年あたり、韓国の記載順序はスリランカのあとに持ってこられるのかもしれませんね。

しかも、先ほどの図表1・図表2でも触れたとおり、韓国は「ハイレベル交流実績」が昨年は1回に減ったというのも興味深いところです。

さらに、図表Ⅲ-3-1-3によれば、仮想敵国(?)である白字(中国、ロシア)、潜在的な同盟相手国である青字(米国、カナダ、豪州、NZ、英国、フランス、インド、その他欧州諸国)が明示されている一方、韓国は名前すら明示されていません(図表3)。

図表3 韓国は?

(【出所】2020年防衛白書『図表Ⅲ-3-1-3』)

旭日旗を侮辱したり、火器管制レーダーを照射したり、日韓GSOMIAを破棄しようとしたりする国の扱いとしては、残念ながらこの程度が妥当なのだと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (41)

  • 『「韓国との防衛協力と連携」をバッサリ削除』というのは、最近の韓国側の対日行動からして当然のことと思います。

    レッドチーム入りを指向する文在寅政権の下、反日国是がいよいよ明確になる状況においては、もはや防衛協力は成り立たないと考えた方がよいでしょう。

    彼らが力をつければ我が国に対して牙をむくのは明らか。

    中国や北朝鮮だけではなく、韓国に対しても今後どう対峙、備えをしていくのかを考えなければならないと思います。
    たいへん荷が重いですが、降りかかる火の粉は払わなければならないかと・・。

  • 更新ありがとうございます。

    日本の防衛白書でこうだと、米国の防衛白書がどうなるか気になります。

    • そもそもなぜ英国が鼻血を出しながら、空母を維持しているのかを考えると作戦展開する可能性のある地域に前進配備した方が、よいという考え方と、なんとなく日本に置いておくとお金出してくれるんじゃないかwとか、実は搭載する機体に困っていて、米軍とのクロスデッキ(米軍機を載せる)を進めるので、在日米軍と歩調を合わせているとか、いろいろ考えられますね。

      • りょうちん様

        ありがとうございます。
        こんなリンク貼るんじゃない!とお叱りを覚悟していましたが良かったです。
        イギリスの良心?だけでは無く、下心?がありそうな内容なんですね。

      • 新参者さま

        時機を同じくして以下のような記事が台湾ステートメディア中央通訊社に出ています。偶然にしては出木杉のように思えます。

        英國擬將伊麗莎白女王號航艦部署亞太 制衡中國
        「Britain plans to deploy the Queen Elizabeth ship to Asia Pacific to check and balance China」
        https://www.cna.com.tw/news/firstnews/202007140263.aspx

        報道機関「香港01」サイトを探しましたが、当方には記事が参照している記事は見つけきれませんでした。

    • 普通に考えれば、やはり配備先はシンガポールでしょうね。
      イギリスとしては、太平洋への関与を強めることによって、TPPへのスムーズな加盟というのも目論んでいるのかもしれません。イギリスのような老獪な国が、単純な理由で虎の子の空母を遠くに送るとも思えませんし。

  • >図表1 「ハイレベル交流実績」(2019年)

    図表1のかっこの中は、2019年じゃなくて、2018年ですね♪

  • 国防に関する話題をありがとうございます。

    >「韓国との間で幅広い分野での防衛協力を進めるとともに、連携の基盤の確立に努める」という記述が、バッサリと削除されてしまいました。
    韓国のこれまでの言動を見れば当然のことと思います。
    韓国の仮想敵国は日本とされているようですので、艦船や航空機などの装備は韓国に必要のないものを欲しがっているように見えます。
    自分の国の置かれている状況を何も考えていないように思われます。
    地政学など学んでいないのでしょうか。それとも理解できないのか。

    国際社会は「なめるか なめられるか」だと言われているようです。
    いまの日本のように自衛隊員の手足を縛ったまま国を守れというだけでは近隣になめられ続けると思います。
    憲法を改正して自衛隊を国軍にすれば、隣国(複数)はもっと大人しくなるのではと思っています。

    • 閑居小人 様

      > 地政学など学んでいないのでしょうか。それとも理解できないのか。

      それこそが、文大統領を初めとする韓国人の知性学的リスクなのです。

  • いつも楽しみに拝見しています。

    韓国は、インド・太平洋構想にも一帯一路にも入らない位置なんですね。

    少し可哀想?

  • 図表3では、韓国は記載されていないというよりチャイナの一部になっているように見えますね。

  • 防衛白書における韓国の位置づけの変化は、各国との積極的なハイレベル交流に伴う相対的なものかと思いきや、直接交流自体も減退してたんですね。ムリモナイデスケド・・。

     
    防衛のレーダーマップに韓国がいないね。
    ハイレベルで見つからないのは、期待(機体)が小さくなったからなの・・?

  • 昨年は日韓の「協力の基盤がない」と声に出して言っていたのに、今年は何もなしですか。
    つまり、「もはや関係ない」ということでしょうか。

    ところで、さっそく駐韓大使がルーチンワークに駆り出されていますね。風物詩です。

    韓国国防部、在韓日本大使館の武官を呼び抗議=防衛白書の「竹島領有権」記載受け
    https://news.yahoo.co.jp/articles/898ebb7495820bb52c8696458c60510981eba1f3

    >岩屋毅前防衛相のもとでのの2018年6月からの・・・

    そういえば、そういう人もいましたね。とても懐かしい。(笑)
    使う側からするとリスクが大きいので、もうしばらく入閣はないでしょうな。

    •  武官=駐在武官、防衛省から外務省に出向し外務事務官として相手国の日本大使館に勤務する自衛官。相手国内で、他国の駐在武官や当該国の国防当局などから情報収集に当たるのが主な任務。

       駐在武官は佐官クラスが派遣され、韓国には陸海空からそれぞれ1佐が派遣されている(3名体制は他に中露印豪)。

      • あ、失礼。
        呼び出されたのは大使じゃなかったんですね。
        タイトルのみで脳内補完していました。

      • 戦後の日本では、「駐在武官」ではなく「防衛駐在官」と称しているようですよ

  • 更新ありがとうございます。

    防衛白書2020年度版、なかなか結構な内容で(笑)。
    日本の属するインド洋・太平洋ダービー(笑)は同盟国の米国をトップに、①米国、②豪州、③インド、④ASEAN、⑤韓国(暫定)、⑥英国(実質4位(笑))、、、との表明ですね。

    これで韓国が違反薬物摂取の為、出走取消しになるので、⑥カナダ、⑦台湾、⑧ニュージーランドがあるべき姿と思います。まだまだこれ以外にも特に欧州には友邦国はあります。来年の白書には韓国の記述は無くして戴いて結構ですヨ。

    英国が空母をアジアに配置とか。香港を持ってる時は、堂々としてたもんなぁ。やはり世界を牛耳っていた大英帝国を思い出したか?そう、英国は極東とは切っても切れない縁です。

     イギリス艦隊司令官のキッド中将は「イギリス空母の搭載しているF-35戦闘機は日本の整備拠点で面倒を見てもらう」という事なので、整備は三菱重工サン始め、あの東海地方ですネ~(韓国はわざわざ日本をとばして米国で点検してたネ)。母港はシンガポールか?まさか佐世保?(笑)無いわな。

     
     「クイーン・エリザベス」でも「プリンス・オブ・ウェールズ」どちらでも良いです。日本海と東シナ海で日米英豪台加NZ印の合同演習をお願いします!

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