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「日本主導でG7対中声明」は共同通信虚報のおかげ?

先日の『共同通信「中国批判声明に日本が参加拒否」報道とは?』でも紹介したとおり、共同通信は日曜日、「米国や英国などの共同声明に日本政府が参加を打診されたものの拒否していたことがわかった」と報じました。しかし、実際には週明け以降、むしろ日本政府が主導する形で、中国に対する批判声明を準備している、という報道が相次いで出てきました。皮肉なことに、こうした動きに火をつけたのは、共同通信だったのかもしれません。

2020/06/10 12:35 追記

末尾に安倍総理自身が国会で本日、「『一国家二制度の維持』を前提としたG7共同声明文を日本がリードする」と述べた、とする重要な話題を追記しています。

共同通信「中国批判声明に日本が参加拒否」報道

共同通信「中国批判声明に日本が参加拒否」報道とは?』では、共同通信が「米国や英国などの共同声明に日本政府が参加を打診されたものの拒否していたことがわかった」と報じた、とする話題を取り上げました。

該当するリンクを調べてみると、6月9日午後12時24分付で再度アップデートされていたようです。

日本、中国批判声明に参加拒否/香港安全法巡り、欧米は失望も(2020/6/7 06:01付=アップデート版:6/9 12:24付 共同通信より)

ただ、記事の骨格は現在でも変わっていません。いちおう著作権に配慮し、丸ごとの引用ではなく、大意を変更しない範囲で表現を変更したうえで、共同通信の報道内容を紹介すると、次のとおりです。

  • 複数の関係国当局者によると、米国や英国などが発した中国を批判する共同声明に日本政府が参加を打診され、拒否していたことが6日に判明した
  • 日本政府は中国との関係改善を目指しており、中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向けて中国を過度に刺激しない狙いがあるとみられる
  • ただ、米国など関係国では日本に失望の声が出ており、香港を巡る欧米と中国の対立が深まるなか、日本の決断は欧米諸国との亀裂を生む恐れがある

(※ただし、正確な内容については直接、リンク先の記事を読んで確認して下さい。)

…。

もしこれが事実なら、とんでもない話です。

なぜなら、日本政府が中国に対し「言うべきことをしっかり言わない」こと自体が、中国に対する誤ったメッセージを与えるからです。

ただ、それと同時に、この共同通信の報道には非常に強い違和感があります。

実際、日本政府は中国に対し、5月28日に駐日中国大使を外務省に招いて懸念を伝え、「適切な対応」を取るように要求したという報道もありますし(※次の時事通信の記事参照)、なぜ日本政府がこの英米の非難決議「だけ」、中国に配慮を示したのか、意味がよくわかりません。

国家安全法の香港導入「深く憂慮」 習主席国賓来日に影響も―日本政府

菅義偉官房長官は28日の記者会見で、中国の全国人民代表大会で国家安全法の香港導入方針が採択されたことを受け、「国際社会や香港市民が強く懸念する中で議決がなされたことを深く憂慮している」と表明した。<<…続きを読む>>
―――2020年05月28日19時29分付 時事通信より

自民党議員や官房長官が相次いで共同通信の報道を否定

ただし、本件については菅義偉内閣官房長官が月曜日の会見で明確に否定しています。

日本の対応「米英も評価」 中国の国家安全法導入方針で―菅官房長官(2020年06月08日12時55分付 時事通信より)

時事通信によると、菅官房長官は「米英をはじめとする関係国はわが国の対応を評価しており、失望の声が伝えられるという事実は全くない」と述べたそうです。

それだけではありません。すでに先日も報告したとおり、自民党議員も、即時に反応しています。たとえば片山さつき氏は外務省関係者に確認を取ったうえで、「その声明には独仏も参加しておらず、『突然言われても…』、というだけの話だった」、などと述べています。

片山さつき議員のツイート

香港安全法制めぐる中国批判声明に日本は参加拒否 欧米は失望も(リンク省略)たった今外務次官と話しましたが、G7で香港問題につき中国大使を呼んで抗議したのは日本だけ!外相も官房長官も明確に発言!その声明には独仏も参加しておらず、突然言われても、というだけの話だそう。
―――2020年6月7日 15:26付 ツイッターより

さらには、共同通信の報道内容自体、客観的に確認できるさまざまな情報とも整合していない部分が多々あります(たとえば、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の訪日については茂木外相自身が「具体的調整段階にない」と断言しています)。

いずれにせよ、「米国など関係国では日本に失望の声が出ている」などとする部分を含め、共同通信の記事については虚報と考えてほぼ間違いないと考えて良いでしょう。

共同通信さん、ありがとう!

ところが、この共同通信の「日本は中国に配慮して非難声明への参加を見送った」とする虚報のためでしょうか、本日までに複数のメディアが興味深い内容を報じています。ここでは毎日新聞、ロイター、日経新聞、朝日新聞の記事のリンクを紹介しておきましょう。

日本、香港問題で「1国2制度」維持求めるG7声明働きかけ 中国に「深い憂慮」(2020年6月8日 18時04分付 毎日新聞デジタル日本語版より)
政府、香港問題でG7外相共同声明を検討=関係筋(2020年6月8日 22:32付 ロイターより)
香港問題でG7声明 日本提案 「一国二制度」維持を(2020/6/9 2:00付 日本経済新聞電子版より)
香港問題、首相「深く憂慮」 政府、G7外相声明を模索(2020年6月10日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

これらの記事の内容には細かい相違はありますが、いずれも骨格において共通しているのは、香港における中国の「国家安全法制」導入を巡り、日本が主導してG7外相による「共同声明」を準備している、という点です。

ちなみに、複数のメディアが同時に報じたということは、政府が各メディアに「リーク」して書かせた、という可能性がありますね。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ここで個人的には、もうひとつの可能性を考えています。

共同通信の当初報道に対する反響があまりにも多かったため、政府に対して結果的に「火をつけた」可能性がある、ということです。

実際、複数の「まとめサイト」などを眺めていると、共同通信の当初報道に対し、「これだから安部は信頼できない」など、安倍総理に対する批判的な意見であふれかえっていました(※「安部」とあるのは安倍総理のことだと思います)。

もちろん、これらの書き込みをした人たちが、本当に「保守系の人たち」だったのか、それとも一部のメディアから「ネトウヨ」とレッテルを張られているような人たちなのか、はたまた「保守系の意見を装った中国のネット工作員」なのかはわかりません。

(※余談ですが、事実関係を確認せず、短絡的に反応するような人たちほど、安倍総理を「安部」、「阿部」、「アベ」などと書き込んでいるような気がします。)

しかし、政府関係者がインターネット上の書き込みを見て、むしろ「中国に対して強硬な姿勢を示しておかねばならない」と危機感を抱いたのであれば、これはこれで好ましい話でもあります。

共同通信が当初、奇妙な虚報を配信したことが、実際に日本政府が中国に対して強いメッセージを発信するようになったのだとすれば、これはこれで痛快な皮肉というほかないのかもしれませんね。

追記:安倍総理が国会答弁で言明

ここから先は追記です。

安倍総理は本日の衆院予算委員会で、「一国家二制度の維持」を前提としたG7共同声明文を日本がリードする考えを明らかにしました。

香港問題、G7での共同声明をリードしたい=安倍首相(2020年6月10日 10:19付 ロイターより)
首相、香港情勢めぐるG7声明主導を表明 衆院予算委 2次補正予算可決へ

安倍晋三首相は10日の衆院予算委員会で、中国による香港への国家安全法制導入をめぐり、政府として先進7カ国(G7)の共同声明作成をリードする考えを示した。<<…続きを読む>>
―――2020.6.10 10:28付 産経ニュースより

安倍総理自身が国会でハッキリこう述べてしまった以上、共同通信の当初記事がでっち上げようとした、「日本が中国に配慮するあまり、中国に対してきちんと物申すことができない」というストーリーは、完全に破綻・崩壊したと断言しても差し支えないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (33)

  • 日本政府が特定の報道機関の誤報を抗議すると「言論弾圧ニダ、もとい、デス!」と反発されるので、別のニュースで上書き訂正する作戦でしょうか。

    そろそろ、誤報には政府が名指しで抗議できる風土を、「我々国民が」醸成したいものです。

  • やっと過去ログ追いつきましたw。
    5日もネットから離れるともうダメですね。
    主に便器とトモダチになってました・・・。

    しかし、日本の方がいくら秋波を送っていても、ファイブアイズの方からは、まだまだドイツ扱いされているのは事実かなと思いました。
    フランスが反対するのはいつものことで、最初からわかっているのでスルーしていたのでしょうw

    • えっ、便器とトモダチだったなんて。

      お医者さんの不養生ですかね?

  • 日本政府「G7で対中非難するよ!きっかけを作ってくれた人に感謝だね」
    共同通信「ふふふ、計画通り(滝汗)」
    トランプ「G7臨時追加の露豪印韓も共同声明に加わってくれるよなぁ!」
    文在寅「ええっ…?」
    習近平「韓国さぁ…判ってるんだろうな?」
    文在寅「あ、あはは」

    韓国政府「文大統領はアフリカ歴訪の予定があるため、残念ながらG7は欠席する」

    • 自転車の修理ばかりしている 様へ
          名無しの権兵衛より
       私は、文在寅大統領閣下の側近中の側近の方との間で、秘密のルートで常に通信連絡を取り合っています。その中で得た情報を「自転車の修理ばかりしている」様にだけ特別にお伝えします。ただし、内容については韓国大統領府の最重要機密ですから、誰にも言わないでくださいね。
       韓国大統領府も、「中国による香港への国家安全法制導入をめぐり、日本政府が先進7カ国(G7)の共同声明作成をリードする」という情報をいち早くキャッチしたそうです。
       この情報に接した文在寅大統領閣下は、すぐさま習近平総書記に電話して、この情報を伝達(告げ口)するとともに(残念ながら習近平総書記は既に知っていましたが)、「韓国はG7の正式メンバーではないので、共同声明には加わらないことを約束する」旨を伝えたそうです。
       さらに、「中国への内政干渉を主導するような国(日本)を訪問するのは取り止めて、是非、韓国への早期訪問をご検討いただければ、この上ない幸せでございます。」と伝えたところ、習近平総書記は「前向きに検討する」と応じ、文在寅大統領閣下は、その日は一日中上機嫌だったそうです。
       
       

      • 名無しの権兵衛様

        ええっ、習近平さん来ないんですか!せっかくアパホテル(南京虐殺否定本つき)を予約していたのに。送迎車両はトヨタの新型コロナ・プレミオをレンタル済みです。会食は残念ながらWEB飲み会になりますが、台湾大皿料理を気分だけでもシェアしましょう。香港風にアフタヌーン飲茶もいいですよね。お土産はくまのプーさんキャラクターグッズからお好みのものをお選びください。

        お・も・て・な・し。

        • 自転車の修理ばかりしている 様へ
           習近平総書記は、「日本訪問を取り止め、韓国への早期訪問を検討するよう」要請した文在寅大統領閣下に対して「前向きに検討する」と回答しただけで、日本への訪問取り止めと韓国への早期訪問の実施を最終決定した訳ではありません。
           この程度の見返りで、日本への訪問を取りやめ、韓国への早期訪問を約束するような習近平ではありません。「私に対して、日本よりも先に韓国を訪問して欲しいと、本当に願っているのであれば、それ相応の見返りを持ってきなさい。」というのが習近平の本心です。

  • 最近の共同のフェイクは本当にひどいですね。もう報道機関ではなく、アジテート組織なのではと感じます。

    >「保守系の意見を装った中国のネット工作員」
    >(※余談ですが、事実関係を確認せず、短絡的に反応するような人たちほど、安倍総理を「安部」、「阿部」、「アベ」などと書き込んでいるような気がします。)

    こちらですが、中国語で「安倍」「阿部」「安部」はすべて発音が違いますので、中国の工作というよりは発音文字しか持たない、日本に影響を与えたい近隣国の工作のように感じております。

  • newspickに確認したら共同通信にいってくれと言われました。訂正記事はださないと。おそらくyahooニュースなんかもそうでしょう。まとめサイトがこういう対応するから誤報や捏造報道はなくなりませんね。悪意があります。ところでnewspick課金してるんだか。

  •  「日本国内では、共同通信を忖度して、その記事通りに動くべきだ」
    と言ったら、最近は休みの山田君、座布団一枚、くれますか。
     もっとも、仲間内では近いことを言っている可能性もありますが。

     蛇足ですが、もし共同通信が、
    「この記事通りに動かないで、共同通信に精神的苦痛を与えた」
    と言ってくれれば、座布団9枚を出します。

     駄文にて失礼しました。

  • 作用には反作用が生じます。
    共同通信のフェイクニュースが、中共政府の意志と関係があるのか、
    共同通信の自発的な中共への忖度や、安倍倒閣運動の一環だったのか知りませんが、
    もし中共の意図でのフェイクニュースだったなら、完全に裏目に出た訳です。
    中共が夜郎自大的に、北欧や豪州などで外交官が放言するなどして、
    無駄に全方位的に敵を増やし、反感を買っていますが、
    アホとしか言い様が無いと思います。

    鄧小平時代とか、貧乏な時は外交上手の国という印象が一般的だったと思いますが、
    今はただのバカですね。まさに「大国の自閉症」

  • 共同通信は本事案に関する他媒体からの書面での取材に対し、
    配信記事に関してはコメントしない、トカナントカ回答したそうで…

    「取材をつくして」このテイタラク、よくも恥ずかしげもなく報道機関などと自称できるもんだと呆れてシマウマ

  • 更新ありがとうございます。

    共同通信、ありがとう。貴社(ホンネは嘘捏造報道メディア)のヘタクソな企み、昔なら通用したやり方が、今やもう通用しない事が分かったかな?

    この記事はハナからオカシイな、そんな事があるのか?と半信半疑で、掲示板では「アベはダメだ」「なぜ日本が入らないんだ、阿部」とか、安倍総理を非難するにしても、もう少し言いようが違うんです。

    だからコイツラの騒ぐ時は静かに見守ろうとおもいました。そしたら、やっぱり『香港における中国の国家安全法制導入を巡り、日本が主導してG7外相による共同声明を準備』!やったネ。どや見たか?共同と野党、親中、反日不逞人。

    複数のメディアがドバッと発信(笑)。政府にしてやられましたな。感想は?(笑)

  • この件に関しては、青山繁晴氏が詳しく解説しています。

    青山繁晴の道すがらエッセイ
    香港をめぐる虚報について その4

    ぜひ一読を。

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