昨日はツイッターなどで、共同通信が発した『日本、中国批判声明に参加拒否/香港安全法巡り、欧米は失望も』という記事がちょっとした話題になっていました。英米などが中国に対する批判声明を出そうとした際、日本政府が参加を「拒否」し、これによって日本と欧米で「亀裂を生む可能性がある」、などとした記事です。ただ、この記事には不自然な点が多々あります。というよりも、ちょっと他のメディアで調べればわかるとおり、実際の日本政府の動きと記事の内容には大きな矛盾があるのです。
目次
共同通信の不思議な記事
共同通信「日本が中国批判声明に参加拒否」
昨日、不思議な記事を発見しました。
日本、中国批判声明に参加拒否/香港安全法巡り、欧米は失望も(2020/6/7 06:01付(アップデート版:6/7 20:51付) 共同通信より)
昨日夜時点でリンク先を閲覧したところ、20時51分付で記事が変更されているようですが、これによると次のような趣旨の内容が書かれています(ただし、著作権に配慮し、丸ごとの引用ではなく、大意を変更しない範囲で表現を変えています)。
- 複数の関係国当局者によると、香港に対する国家安全法の制定を巡って米国や英国などが発した中国を批判する共同声明に日本政府が参加を打診され、拒否していたことが6日に判明した
- 日本政府が欧米諸国に追随しないことを決断した背景には、日本政府は中国との関係改善を目指しており、中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向けて中国を過度に刺激しない狙いがあるとみられる
- ただ、米国など関係国では日本に失望の声が出ており、香港を巡る欧米と中国の対立が深まる中、こうした決断は欧米諸国との亀裂を生む恐れがある
(※批評目的での引用は著作権法に反しないとされているのですが、いちおう、丸ごとの引用については避けるというのが当ウェブサイトのポリシーであるため、ここではあえて原文どおりには引用せず、大意を変えない範囲で順序を入れ替えるなどしています。)
なぜ具体的な日付を報じないのか?
何が不思議かといえば、まず、この「米国や英国などが発した中国を批判する共同声明」の具体的な日付が、記事の中では欠落していることです。
おそらく、この「共同声明」とは、AFPBBニュースの次の記事でも触れられている、5月28日付の生命のことでしょう。
香港への国家安全法導入は国際公約違反、英米など4か国が共同声明(2020年5月29日 10:29付 AFPBBニュースより)
そして、この5月28日という日付に注目するならば、日本政府は同じ日、菅義偉内閣官房長官の記者会見の場で、「深く憂慮する」という声明が出されている点に注意が必要です。ここでは時事通信の5月28日午後7時29分付の記事を確認しておきましょう。
国家安全法の香港導入「深く憂慮」 習主席国賓来日に影響も―日本政府
菅義偉官房長官は28日の記者会見で、中国の全国人民代表大会で国家安全法の香港導入方針が採択されたことを受け、「国際社会や香港市民が強く懸念する中で議決がなされたことを深く憂慮している」と表明した。<<…続きを読む>>
―――2020年05月28日19時29分付 時事通信より
もしも「日本政府は中国に配慮している」とする共同通信の報道が事実ならば、この菅官房長官の発言は、いったい何なのでしょうか?中国政府に配慮している日本政府が「憂慮」などと述べるでしょうか。
それだけではありません。
おなじ時事通信の記事によれば、こんな記述もあります。
「秋葉剛男外務事務次官は同日、中国の孔鉉佑駐日大使を外務省に呼び、日本の懸念を伝えた上で、適切な対応を取るよう求めた。」
駐日中国大使を外務省に呼んで「適切な対応を取るように」伝えたということは、日本政府が中国政府に対し、「適切な対応を取る」ように要求した、ということです。
共同通信さん。
これが「中国を過度に刺激しない対応」だとは、なかなかよくわからないのですが…。
そもそも日本は習近平氏の訪日を推進しているのか?
また、共同通信の記事には、
「中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向け、中国を過度に刺激するのを回避する狙い」
といった記述があるのですが、この点についてはじつに不思議です。
折しも当ウェブサイトでは『茂木外相「習近平氏訪日日程、具体的調整段階にない」』のなかで、BSフジの番組に出演した茂木敏充外相の発言を、毎日新聞がほぼ真逆のニュアンスで報じた、という話題を取り上げたばかりです。
また、その「後日談」として、昨日の『産経、毎日と真逆に「習近平訪日は事実上白紙」と報道』では、産経新聞が「習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の国賓訪日は事実上白紙となった」と報じた、という話題を取り上げています。
この点、政府当局者側からは、習近平氏の訪日の具体的な時期がいつになるのか、あるいは政府が本気で習近平氏の訪日を推進しているのかどうかなどに関しての公式な発言はありませんが、ただ、茂木外相本人は先週水曜日のBSフジの番組で、
- 少なくとも今は具体的な日程調整をする段階ではないのはたしか
- 中国国家主席の訪日は毎年あるものではない。前回が2008年ですからだいたい10年に1回。こうした機会を捉え言うべきことを言うことこそが日中新時代を開く
- 外交日程的に申し上げるとどう考えてもG7サミットの方が先に来る。(また)G20などの場で世論形成を行っていく
などと述べているわけです。
まともな日本語力を持っている日本国民が聞けば、圧倒的多数が
「習近平氏の国賓来日の可能性がまったくなくなったわけではないが、少なくとも現時点で日中両政府が具体的な日程調整が行われているという事実はないし、万が一、それが行われるとしても、その前提としてG7やG20などの場で中国に対する国際世論が形成されることが必要だ」
と解釈するでしょうし、共同通信の記事は、こうした茂木外相の発言内容とはずいぶんと齟齬があるように思えてなりません。
殺到する反論
自民党議員が相次いでツイートで反論
ただ、結論的にいえば、この共同通信の報道を巡っては、誤報ないし捏造報道と考えて良いでしょう。
というのも、日曜日時点で複数の自民党議員が反論ないし内情の説明を行っているからです。その決定的な証拠のひとつが、片山さつき参議院議員による、次のツイートです。
片山さつき議員のツイート
香港安全法制めぐる中国批判声明に日本は参加拒否 欧米は失望も(リンク省略)たった今外務次官と話しましたが、G7で香港問題につき中国大使を呼んで抗議したのは日本だけ!外相も官房長官も明確に発言!その声明には独仏も参加しておらず、突然言われても、というだけの話だそう。
―――2020年6月7日 15:26付 ツイッターより
片山議員は外務次官との話で、「香港問題で中国大使を呼んで抗議したのは日本だけであり、外省も官房長官も明確に発言している」、「その(5月28日の)声明には独仏も参加していない」、といった事実が確認できた、などと明らかにしています。
共同通信の報道を巡っては、おそらく、この説明がすべてなのでしょう。
ただ、これだけではありません。違う視点から興味深いのが、和田政宗参議院議員の次のツイートです。
和田政宗議員のツイート
共同通信の配信記事『日本、中国批判声明に参加拒否 香港安全法巡り、欧米は失望も』
産経新聞はネット版に共同の配信記事をそのまま転載したが、後に削除。
産経の記者に聞いたところ、何かのミスで削除されたのではなく、意志を持って削除したと。誤報とみなしたのではないか
―――2020年6月7日17:34付 ツイッターより
和田議員のツイートではより踏み込んで、「産経ニュースが当初、共同通信の配信記事をそのまま転載したが、のちに削除した」などと指摘。これについては「意志を持って削除した」という産経記者のコメントを紹介したうえで「(産経が)誤報とみなした」可能性を示唆しています。
「酷い印象操作」
さらに、山田宏参議院議員は、次のように「酷い印象操作記事」と批判します。
山田宏議員のツイート
日本、中国批判声明に参加拒否 香港安全法巡り、欧米は失望も(※リンク省略)
酷い印象操作記事。当初各国足並みの揃わない時期未定の共同声明ではなく、速やかに明確な形でわが国が独自の声明を出した。後追いでEUが同様の「深い懸念」声明となったというのが事実。
―――2020年6月7日15:32付 ツイッターより
山田議員もなかば呆れ顔、といったところでしょうか。
さらに、共同通信の元記者でもある青山繁晴参議院議員は、ご自身のブログ記事のなかで、この共同通信の記事について、手厳しく批判しています。
香港をめぐる虚報について その1(2020-06-07 18:51:42付 『On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~』より)
香港をめぐる虚報について その2(2020-06-07 19:35:03付 『On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~』より)
青山議員の批判内容についてはリンク先でご確認いただきたいのですが、「この記事を書いて配信した共同通信は、情けないことにその経緯をほとんど知らない」、「(この記事はしっかりした取材に基づいたものではなく)アメリカのごくごく一部の人物の『雑談』に基づいたものだ」と手厳しいものです。
(※もっとも、青山議員のブログについては頻繁に「アクセスエラー」が生じるようです。アクセスが殺到しているためなのか、工作員の暗躍のためなのか、それとも単純にサーバの能力の問題なのかは存じ上げませんが…。)
どちらが正しいのかは知りませんが…
ここに紹介した4人の自民党国会議員(偶然にも、全員、参議院議員です)のみなさんが揃って共同通信の報道を(人によっては)「誤報」、「虚報」などと批判したうえで否定しているという事実は重いと思います。
もちろん、彼らは全員、与党である自民党の国会議員ですから、政府に都合が悪い記事を批判して「なきものにしようとしている」という可能性を疑う人がいても不思議ではありませんし、共同通信の報道が正しいのか、これら国会議員の情報発信が正しいのか、私たち一般国民が知ることはできません。
しかしながら、客観的に集められる情報を集めていけば、共同通信の記事には不自然な点が多数あること、これまでの政府関係者の発言と明らかに矛盾していると思しき記述もあることなど、これに対する自民党議員の説明(とくにツイッターでの説明)が明快であることを踏まえると、結論的には
「共同通信の記事が不正確である」
という可能性が、極めて高いように思えるのです。
オールドメディアの終焉
さて、共同通信の記事は地方紙などを中心に多くのメディアに採用されているため、もしも共同通信が誤報・捏造報道を垂れ流しているのだとしたら、その影響はかなり広範囲に及びます。
その共同通信といえば、つい先日も、6月4日付で『「口座ない人は反社勢力」と除外/高知市、10万円早期支給窓口で』という記事を配信し、高知市の岡崎誠也市長が即日、この共同通信の記事に次のような反論をした、という出来事がありました。
共同通信社の特別定額給付金の記事に対する高知市長見解(2020/06/04付 高知市HPより)
これについて、詳しくは『劣化著しいマスメディア ポストコロナはSNS時代に』などでも取り上げたとおりですが、それにしても最近、共同通信を含めた既存のマスメディア(新聞社、テレビ局、通信社)、あるいは「オールドメディア」の虚報が酷くなったと感じます。
ただ、これは「オールドメディアの虚報が酷くなった」というよりも、むしろ、「元から酷かったのが、インターネットの発達のおかげで白日の下にさらされるようになっただけ」なのかもしれません。
つまり、従来であればマスメディアは「報道すれば報じっぱなし」だったのが、インターネットが発達したことで、事実関係の誤りについて、政治家や企業、一般人などが、SNSやブログ、ウェブ評論サイトなどを通じて反論できるようになったという背景があります。
それだけではありません。
私たちのような一般人であっても、あるメディアの報道に疑問を抱いたら、他メディア、外国メディア、政府発表などを通じて事実関係を確かめることができるようになったからです(今回の場合も、共同通信の報道内容を時事通信やAFPBBニュースなどの報道で検証可能でしたね)。
そして、こうした作業に対した時間はかかりません。
逆に言えば、オールドメディアが「騙せる」のは、ちょっとした反証すらしようとしない「情報弱者」なのだ、ということであり、インターネットが発達すればするほど、「情報弱者」の人口は減って行くのではないかと思う次第なのです。
View Comments (33)
「習近平11月以降訪日」も「内閣支持率27%」もそうですが、
モリカケ桜よりもう一段ギアを上げて?、事実を伝えるというメディア本来の役割も、
かなぐり捨てて、オールドメディアは倒閣運動に邁進している様に見えます
ここ数日の間に、6月分の定期世論調査が各社であったようですが、
読売 40%
日経 38%
時事 38.1%
新宿氏の記事でもありましたが、27%なんてマッチポンプ以外の何物でも無いと思います
ミナミ様
おはようございます。
その「27%」報道の毎日新聞には2016年から「チャイナウオッチ広告」のスポンサーである中共がついていますからね。今朝調べてみてやっとわかりました。しかし、それでも毎日はリストラが必要なんですね。
共同通信の記者が書いた記事はウソが大体わかるようになりました。
この記事は読んでみてまず内容がとにかく飛び抜けていた。
今回のこの記事でも、情報の出所が曖昧すぎました。韓のホワイト国外しの時の韓メディアと似ていた。
そこら辺から純粋に事実を伝える記事ではないと思いました。
そしたら片山さつきさんの記事を見て、あーやっぱりなと。
こんなの何の罪にもならないんですか。
ろくすっぽ取材しなくても記事が書けるということ。楽な商売。
新宿会計士様、更新お疲れ様です。
「この情報おかしい…」と感じた時は遡って調べるか、しばらく待ってから再度情報を調べるという習慣が必要ではないかと考えております。
(例のタグ騒ぎと同じ)
昔とは比較にならない位情報アクセスは容易なので、調べれば真偽も判る上、間違った情報であれば反論も参照情報付きで出てきます。
オールドメディアしかアクセスできない方は日々減少しているので、影響力も漸減。
ここまでして反アベを叫びたいメディアの裏には、何が潜んでいるのでしょうね。
挙動不審、もとい、虚構通信、もとい、共同通信の酷さは、最近特に目に余ります。
青山議員のブログは、一応復旧したようです。
イーシャ様
毎度の事ですか…としかコメント付ける気がしません。
よくこんな整合性の取れない記事を流せるなと思う所ですが、特定アジアからお金や利権が落ちてくるのであればそうなる余地は十分にある程、堕落していると考える次第です。
イーシャ様
>ここまでして反アベを叫びたいメディアの裏には、何が潜んでいるのでしょうね。
共同通信社は中・韓・北・露(ウラジオストク)と、「特A」指定したい地域に海外支局を構えています。
「四支親中の主」の存在は否めないのかもですね。
そうでなくても、「今日、どう?」って個別のロビー活動で弱みを握られてるのかと・・。
新宿会計士殿、毎日の更新有り難う御座います。
私は共同通信のこの記事を昨日遭遇し、心底怒りを感じ、思い切り気分が悪くなりました。
今朝は普段よりも数時間早く目覚めました。新宿会計士殿が日々更新する時間なのでのHPを拝読しました。やはり共同通信の捏造であったのと、日本の議員からも反論もあったとの説明を頂き、気分が晴れました。
真実を求める為に、朝鮮半島と中国本土からの嘘と騙しの手口を暴き、証拠の提示と理論的な説明を積み重ねる新宿会計士殿の活動に、心から感謝致します次第です。
有り難う御座います。
記事更新ありがとうございます。やはりそんな顛末でしたね…伊達に某まとめ百科で共謀通なんて言われてるだけの事はありますが…特に〇〇政府関係者、〇〇政府筋と言うソースの時はひとまず疑って読んだ方が良さそうですね…
このコロナ禍でしたので尤も記者様型は3蜜を避けるなために取材をさけ、最低限のネタ(と妄想?)をもとに記事作成されてるのかも知れませんが(^^)
共同通信は日本が韓国をホワイト国から外す判断をした時も、いろんな飛ばし記事を出してて個人的に「気持ちわりいな。なんだこの会社?なんでこんな飛ばし記事連発してるのになんのお咎めも、制裁もないんだ?」って思いました。
アメリカの高官が激怒とか、ホワイト国除外見送りとか自分らの妄想みたいな記事を何度も出してましたね。
飛ばし記事製造機みたいな会社なので信じないが正解です。
多分記者はちゃんと取材したわけではなく、ネット上で拾ったキーワードを入力して、勝手に自分らの好きそうな記事を作るAIでも使ってるのでしょうか。
それにしてもお粗末な飛ばし記事ばかり作ります。
既にロイター、共同、毎日が英語版で世界に向けて配信済み。茂木が出てきて日本政府としてデマ記事だと否定できるかどうか。共同通信だからで済ませられるレベルではない。
以前から気になっていたのですがロイター記事はひどいです。ロイターのアジア記事は信用しないほうがいいです。ブルームバーグは若干ましな気がします。日経は共同記事の転載はそう記していますが、どのような記事が共同ソースか一定以上の傾向があるとみて取れます。そこでこんな新聞標語を思いつきました「気をつけよう、その見出しの印象操作」
たしかにロイターはかなりひどいですよね。前は名前をいれてましたが、今はロイタースタッフです。まあどこの発信かは書いてほしい。かなり劣化がひどいです。ちなみに共同通信はもとよりアレですが、そもそも誤報をやるとイエローカードがたまる仕組みをつくってほしい
捏造は論外だとしても、報道した後で誤報だったと判明することもあると思うのです。
表現の自由を損なわない範囲で罰則規定を設けるのなら誤報そのものにではなく、「明らかな誤報であるにもかかわらず訂正が十分でないこと」に対するものであるべきだと考えます。
JAROに倣って「誤報訂正審査機構」とかの新設により指導を徹底すればいいと思います。
不履行に対してのペナルティは、「メディア名の公表と記者クラブへの一週間出入り禁止」とかでいかがでしょうか?
更新ありがとうございます。
共同通信の昨日の記事は、飛び抜けてましたね。目にした途端驚きと、怪しいナ、と思いましな。そこまでして与党、安倍政権の脚を引っ張るのは、1社のみならずメディアはほぼ全部、イカレてる現れでしょうか。
国会議員からスグ反論が出ましたので、ほっとしました。悪意ある共同の捏造ですね。
>そこまでして与党、安倍政権の脚を引っ張るのは、1社のみならずメディアはほぼ全部、イカレてる現れでしょうか
人の往来が途絶えてメディア報道の品質劣化が世界規模で同時進行しているような気がします。インターネットをののしって「あんなものはエコーチャンバーだ」いう発言が大昔にありました。洞穴に向かって大声で勝手にわめいているだけ、聞こえているのは自分の声だけと、そう指弾しているのです。現在の世界メディアは「洞穴反響装置」に堕ちてしまっているとか思えません。
>5月28日付の生命
生命は大切だけど、ここは声明ですね♪