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韓国の政府系金融機関が大韓航空に緊急融資へ

本日の「速報」です。韓国メディアによると、経営危機状態にある大韓航空への政府系金融機関による支援が実行に移されるようです。『成就する鈴置氏の予言:ベネズエラ化に踏み出した韓国』で紹介した「予言」は、はたして成就するのでしょうか。

該当する記事のリンクは、以下です。

韓国政府系銀行 大韓航空に1千億円を緊急支援

―――2020.04.24 16:47付 聯合ニュース日本語版より

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に先ほど掲載された記事によると、大韓航空に対し、「政府系」の韓国産業銀行と韓国輸出入銀行が1.2兆ウォン(約1000億円)を緊急融資するそうです。

ただ、『大韓航空「資金ショート」はコロナだけのせいではない』でも報告しましたが、大韓航空はもともと自己資本が薄く、過剰債務・過剰投資・高コスト体質だったと考えられます。そして、例の武漢コロナウィルス蔓延により売上の94%が国際線に依存しているという収益体質が仇となった格好です。

あらためて、大韓航空の財務構造を振り返っておきましょう(図表)。

図表 大韓航空の財務構造(2018年12月期)
項目 金額 総資産に占める比率
総資産 25兆5797億ウォン 100.00%
流動資産 3兆8724億ウォン 15.14%
航空機等 19兆6480億ウォン 76.81%
流動負債 7兆5219億ウォン 29.41%
固定負債 15兆0260億ウォン 58.74%
自己資本 3兆0318億ウォン 11.85%
固定負債+自己資本 18兆0578億ウォン 70.59%

(【出所】大韓航空の2018年12月期年次報告書・連結貸借対照表(P7))

図表は2018年12月期と少し古いデータですが、総資産のうち航空機等の帳簿価額が75%を占めているにも関わらず、調達側(負債+純資産)については、「安定調達」である自己資本と固定負債を合計しても70%少々に過ぎないという状況です。

しかも、各種報道等によれば、大韓航空では毎月4000~5000億ウォンの固定費が発生しており、早ければ今月から来月にも資金ショートが発生しかねないという状況にあるのだとか。

本日の聯合ニュースの報道だと、あくまでも今回の支援は「融資」であり、「増資」ではなさそうです。コロナ騒動がどこまで長引くか、現時点ではまだよくわかりませんが、仮にこのコロナ問題が世界的に終息するまで、あと2~3ヵ月が必要だとしたら、この程度の支援だとまたすぐに資金が尽きてしまうでしょう。

また、コロナ騒動が完全に収束したとしても、経済活動がすぐに元どおりになるわけではないと考えられることから、いずれ抜本的な増資は不可避です。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

成就する鈴置氏の予言:ベネズエラ化に踏み出した韓国』でも紹介しましたが、韓国観察者の鈴置高史氏は、国会議員総選挙で左派が圧勝した韓国で、今後、主要産業の国有化に踏み出すのではないか、といった「予言」を提示されています。

こうしたなか、国有化するなら、大韓航空だと非常にすわりが良いことは事実でしょう。

「ナッツ姫」に代表される同族経営の弊害に加え、資金不足で「ナショナルフラッグキャリア」を救済するという名分も立ちますし、支配者一族を追放して国有化すれば国民から拍手喝采を受けることは間違いないからです。

ただし、調べていくと、現在、韓国で四半期決算が営業損失に陥った会社、財務の健全性が毀損している会社は、けっこうたくさんあるようです。

大韓航空の国有化をきっかけに、左派の文在寅政権にとっては次々と大企業を国有化で手中に収めやすいという環境が出来ていることは、間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • 中国もそうですが、中央集権的な国は対策の小回りが効きやすく動きやすくて良いなあと思う部分はあります。
    彼らの国営に共感はできませんが、米国の戦時法のように、危機時に迅速に対応できるような法整備は検討するべきだと今回のコロナで思いました。

  • ありゃりゃ、焼け石に水だけど…
    アシアナ航空、斗山重工業はわかるのですが、大韓航空までは予想していませんでした。
    これからは左派政権の傘下に加わり、国策企業になることの密約でも交わしたのでしょうか?
    とりあえず、生き残ることを目指したのでしょうが、経営に左派が入り、そこから趙・創業者一族が追い出されることは時間の問題なのでしょう。
    アシアナ航空と合併して、国有化への道が開かれたのかもしれません。

    • 名無Uさん 様

      >とりあえず、生き残ることを目指したのでしょうが、経営に左派が入り、そこから趙・創業者一族が追い出されることは時間の問題なのでしょう。

      >経営に左派が入り
      それ破綻への最短コースなのでは(笑
      国も企業も経済オンチ(笑

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     貸した金が大きすぎると、借り手の方が強くなると言います。このため
    今後も韓国の政府系金融機関が、(国営、民営のどちらかは別にして)大
    韓航空に、貸し続けなければならなくなるのでは、ないでしょうか。

     蛇足ですが、大韓航空を国有化すると、トランプ大統領をはじめ、他の
    国から横槍が入る可能性は、ないでしょうか。

     駄文にて失礼しました。

  • 素人考えで申し訳ないのですが、航空会社だと、決済はドルが中心になる気がするんですが、援助はウオンでいいんでしょうか?ウオンで援助しても、最終的にドルに換えるなら、ウオンがますます安くなりませんか?

  • 韓国国民の経済的困窮が深まるにつけ、やはり財閥一族への怨嗟の声は大きくなっていると思います。
    大韓航空の国有化があれば、一般大衆からは喝采されるんじゃないでしょうか。オーナー一族の追放があれば、さらに文在寅大統領の支持率アップ間違いなしでしょうね。

  • 更新ありがとうございます。

    海外線比率が94%ですか。普通の国の航空会社なら考えられないですね。例えば日本なら大手2社とその関連会社やLCCが一番チカラを入れているのが羽田ー札幌便です。国内便です。

    時刻表を見ると、クラクラするぐらいの便数で、なおかつ搭乗率も80〜90%台と高い。需要があるんですね。まさか新幹線使う人はマニアぐらいでしょう(笑)。

    その他羽田ー大阪(伊丹、関西、神戸)や羽田ー福岡などのドル箱路線が日本の航空会社にはあります。

    ここらで十分な利益を出しており、まだまだこの枠が各社欲しいものの、国土交通省にドル箱路線が欲しかったらコレも開設せよ!とローカル線をセット認可されるので、あまり強く要望出来ないという状況です。

    韓国は国内線の固定需要が無いのに、航空会社ばかり増える(笑)。日本と中国をアテにしてたんだな〜。大韓航空に1.2兆ウォン融資しても、焼け石に水。毎月の固定費が高いというのも、乗務員らに高い報酬を払ってたのではないですか。

    労組の強い企業ばかりなんで、「運行止めるぞ!」と言われていたかも。中露の国営?のエアロフロートや中国東方航空みたいになると思いますね。ちっさいLCCは、そのうち潰れるでしょう。

    •  何を以って「普通の国」というのかわかりませんけど、国土の狭い国の航空会社なら海外比率が高くなるのは仕方ないのではないでしょうか?
       KLM、キャセイパシフィック、シンガポール、ガルフエア、エミレーツ、エティハドとフラッグキャリア相当でもこれだけあります。中華航空も国際線が中心で、国内線は別の会社が担ってます。

       人口や経済規模がそこそこ大きい国では高速鉄道との激しいシェア争いがあります。
       台北松山ー高雄間は年間800万人の利用者がいましたが、台湾高速鉄道に敗れて航空路線が消滅しました。日本もかつては羽田ー小牧の路線がありましたが、東海道新幹線との競合に敗れて撤退しました。中央リニア新幹線開通は東京ー大阪間の航空路線も消滅する可能性があります。
       JALやANAの国内線が今も健在なのは羽田ー新千歳、羽田ー福岡という利用者年間1000万人以上というドル箱路線があるからです。東京ー福岡は新幹線もありますが、飛行機:新幹線=9:1と圧倒的です。それは1200キロ以上離れているので、新幹線だと博多駅から東京駅まで5時間、飛行機だと西鉄バス→余裕を持って搭乗準備→飛行機→モノレール→山手線と乗り継いでも4時間弱と、飛行機の方が早く都心に行けるからです(余談ですが、飛行機移動の方が楽しかったですね(笑))。
       逆に言えば国土にこれくらいの長さと移動需要がないと国内線は高速鉄道に勝てません。

       韓国で需要の高い路線はソウルー釜山が筆頭で、次がソウルー光州です。KTXではソウルー釜山は2時間ちょっと、ソウルー光州が1時間半で、高速鉄道は駅を出ればそこが都心である事が最大のメリットです(光州松汀駅は都心から離れてますが)。そのKTXの弱点は価格ですので、格安の高速バスと競合してます。
       そうなると空港が都心から遠くてバスへの乗り換えが必要、値段も高い、乗るまでも降りてからも時間がかかる航空便は歯が立ちません。
       大韓航空とアシアナ航空の海外比率が高いのはKTXや高速バスとのシェア争いに勝てなかったので国際線に活路を求めた事が背景にあります。そして羽田・成田ー仁川ではANAやJALとも競合するので、日本の地方空港へ就航を増やしました。日本の地方には需要も大してないのに政治家と地元の利権で建設して閑古鳥が鳴いてる空港がたくさんありますので。
       大韓航空にせよアシアナ航空にせよ、自ら生き残るために国際線中心に活路を求めたのです。それはグローバル化や東アジアの経済交流活性化の流れに乗って成功しました。日本の航空行政のまずさにもつけ込む形で。
       ですから、大韓航空やアシアナ航空が国際線を軸にしたのはおかしい事ではなく、むしろ当たり前の事です。その方針は間違ってるとは思いません。

       でもこの方針は東アジアの経済交流がなんらかの理由で停滞すればすぐに経営危機に落ち入るという欠点があります。それがここ1、2年で集中し過ぎたのは不運でした。まあ、十分な時間と利益があったのに体質を改善してこなかったのは落ち度ですから同情はできませんけどね。

      • とある福岡市民様

        ご意見ありがとうございます。
        「普通の国」と私が言ったのは、韓国は九州・沖縄諸島と四国を足したぐらいの面積しか無く、さらに離島航路が無い(済州島ぐらい)ので、まるまる半島のみ。これでは国内航空など、育つはずも無し、という事です。

        国内線を育ててから国際線です。香港やシンガポールなど都市国家の事は、私の頭にありませんでした。またガルフやエミレーツはリゾート等、観光資源が韓国とは比較にならないほどあります。

        新幹線ですが、韓国はタダノリ可能(笑)のKTX以外にもバス路線がある。安く上げるなら、それに乗るでしょう。日本にも長距離バスはありますが、東京ー長崎や熊本、大阪ー新潟、鹿児島など多方面にありますが、本数自体は少ないです。着いたらカラダが固まってしまいますもんね(笑)。

        「日本不買」と言い出した昨年からジリ貧、中国路線も低空飛行、更に今回のコロナで倒産・統合企業も出るでしょう。韓国は国内のインフラに先ずは力を入れるべきでした。道路と鉄道です。

        ところが見栄えも良く、インバウンドで収益見込めるから国際線航路にシフトした。日本の地方空港にも進出した。けど、韓国LCCが撤退して国際線がゼロになるような日本の地方空港は、国際線を止めるべきです。

        検疫や税関職員も必要になるから、無駄ですね。「国際線が就航している」という田舎のプライドだけです。

        持論ですが、日本の国際線長距離は成田、羽田、関空というハブ空港だけで良い。あとの札幌や中部、福岡、那覇はそれを補完する東南アジア、豪州中心で良いと思う。

        ましてや第3種の空港など、中国、韓国からの片乗り入れなら、止めてもいいと思う。年間4,000万人も幻に終わりました。数の多寡だけ追う時代ではないと存じます。

        • めがねのおやじ 様

          > これでは国内航空など、育つはずも無し、という事です。

           そうでもありません。競合相手がなければ国内線は育ちます。
           ソウル金浦ー釜山金海の航空便は約40分、空港から都心までのバスやタクシーを考えばソウル都心から釜山都心までは3時間弱でしょう。一方、KTX開通前のソウル駅ー釜山駅はセマウル号で4時間以上かかってました。これですと鉄道は飛行機の敵ではありません。
           そのため速さと快適さを求める人は飛行機、安さを求める人は高速バス、セマウル号はその中間(悪く言えば中途半端)、と住み分けができてました。これが国内線の育つ下地となります。

          > 国内線を育ててから国際線です。

           韓国の国内長距離移動は飛行機が優位に立ってましたし、ソウルー釜山、ソウルー光州のように需要の高い路線もありました。実際にアシアナ航空が設立されてから16年は大韓、アシアナが共存できてます。
           それをぶち壊したのはKTXです。KTXはドル箱路線のソウルー釜山、ソウルー光州の速さと快適さを求める客層をほぼかっさらっていきました。かつては「飛行機か高速バス。鉄道は敵ではない」状態が、「KTXか高速バス。飛行機は敵ではない」という事態に変わったのです。
           KTXさえなければ大韓、アシアナ両社は今も国内線で共存できたと思います。

          > 韓国は国内のインフラに先ずは力を入れるべきでした。道路と鉄道です。

           日本同様、韓国も高速鉄道と高速道路の整備に力を入れてます。その結果がKTXの開通と高速バスの充実です。
           しかし大韓、アシアナにはかえって大打撃を与えるものでした。航空関係全般を考えるなら高速鉄道や高速道路は整備しない方がいいのです。
           おそらく両社は社風が違うでしょうから、おいそれと合併できなかったでしょう。すると生き残る道は「一方に国内線、もう一方に国際線を集約する」または「両方が国際線を増やして海外との競争に打って出る」の二つ。韓国は後者を選んだ、それがこの1、2年は裏目に出た、というだけの事です。
           見栄えがどうのという問題ではありません。それしか活路がないからです。

          > またガルフやエミレーツはリゾート等、観光資源が韓国とは比較にならないほどあります。

           そうでもありません。ガルフエアの本拠地マナーマ、カタール航空の本拠地ドーハ、エティハドの本拠地アブダビは別に見るべき所はないです(笑) エミレーツの本拠地ドバイだって今でこそ「バベルの塔」を思わせる高層ビル群が林立する「砂上の楼閣」ですが、元はただの砂漠でしたからね。

           中東の航空会社の客層はアジア、アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリアを移動する人達です。東アジアとヨーロッパをビジネスや観光で行き来する人、インド、東南アジア、アフリカから中東への出稼ぎ労働者と帰省客、聖地メッカへの巡礼客などなど。特に中東への出稼ぎを乗せる飛行機とイスラム暦12月のチケットは入手が困難です。
           ガルフエアとエミレーツは空港と航空便を整備し、トランジット客を呼び込む方法を取ります。これが利用客増加だけでなく、自国の空港がハブ空港になって欧米の大手航空会社の路線を多数就航させる事にも成功します。
            しかし成功するとライバルが増えるのも資本主義の習い。他の国もオイルマネーを元手に参入します。アブダビはガルフへの出資をやめてエティハドを作り、カタールもカタール航空を作ります。トルコ航空改めターキッシュ・エアラインズも参入し、日本では「飛んでイスタンブール。そこから飛ぶのがルール」なんてキャンペーンを5年前にやってました。

           航空客を奪い合う激しい競争が始まると、他社というか、他国を出し抜く消耗戦になります。大人気だったガルフエアも、今はやや落ち目です。
           ドバイは港湾を整備して香港・シンガポールのような中継貿易を始めたり、投資を呼び込める環境を整備して中東の金融センターを目指したり、大規模な埋め立てをやってリゾートを建設してますが、これはトランジットだけでは先細りするのを見越した動きなのでしょう。ドバイには石油もありませんから。

           韓国が中東の事情を知っていたかどうかはわかりません。しかし仁川空港が東アジアのハブ空港を目指して、ある程度成功を収めていた時期があります。
           ただ、成功していた時期に大韓航空は高コスト体質を改善し、韓国政府や仁川空港はトランジットにとどまらない次の一手を打つ必要がありました。それに失敗したから今があるのでしょう。

          > 「国際線が就航している」という田舎のプライドだけです。

           これは日本の事ですかね?その通りだと思います。今後は航空路線の整理や観光客の質を改善していく時期になると思います。

        • 新宿会計士様

          めがねのおやじ様にちょっと長めのコメントを出しましたが、投稿されませんね。メモも残ってないのでどこかにあったら戻してもらえませんか?

      • 仁川国際空港がまさにその方針でしたね。今はハブ空港からハブられ空港になりかかっていますが。

        • アレ様

          仁川空港、「ハブられ」ですか。上手いッ金浦もあるし(笑)。無駄です、ソウル近くに二つもなんて。

          ま、他所の国ですからどうでもいいですが、日韓のビザ免除復活はナシでお願いしたいです。コロナは早く止まって欲しいが、良いタイミングで入国禁止に出来ました。

  • 大韓航空を絶対トばさせない:出血しながら輸血へ
    大韓航空を絶対飛ばさせない:飛行機が飛べない。ムン リターン

    ややこしいw

  • 大韓航空への支援に対して、韓国政府はオーナー一族の資産処分を条件にしていたと思います。
    渋っていたようで救済はアシアナかと思っていたのですが、手放したんでしょうね。
    これで国有化への障害は無くなりました。

    しかしいくら注ぎ込もうが、借金の返済が出来るだけで、最終的に国有化するにしても、損を増やすだけの会社であることは変わらないですよねえ。

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