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中央日報が自衛隊中東派遣を「日本にも利益」

今朝の『「米中からの往復ビンタ」、過去の失敗に学ばない韓国』では、「米中二股外交を繰り広げた末に米国からさまざまな要求をのまされた朴槿恵政権の失敗に、文在寅政権が学んでいる形跡はない」という話題を紹介しました。ただ、韓国のメディアにとっては、「失敗する韓国」と並んで、「失敗する日本」像を作り上げて溜飲を下げるという姿勢が見られます。こうしたなか、本日、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された記事を読むと、間接的にではありますが、日本の目指すべき方向性が見えて来るのではないかと思います。

優れた安倍外交と中東派遣

以前、当ウェブサイトでも報告したとおり、日本が自衛隊を情報収集目的で中東に派遣することを決めたことを巡り、安倍晋三総理大臣は昨年暮れから今年初めにかけて、イラン、サウジ、アブダビ、オマーンの各国との首脳・閣僚級との会談を通じて、合意を取り付けました。

いわば、自衛隊の中東派遣を巡っては、ほぼ中東主要国の了解を得た格好です。

中央日報が「クッション外交」

ただ、こうした安倍政権の外交成果については、とくに「ATM」と呼ばれるわが国の左派メディアは、あまり積極的に取り上げている形跡がありません。

やはり、今朝の『コロナウィルスよりも桜を見る会の方が大事な特定野党』や先日の『「桜を見る会」野党とメディアが一生懸命追及した結果』でも報告したとおり、コロナウィルスよりも中東情勢よりも、安倍総理の「桜を見る会」疑惑の方が大切だからなのでしょうね。

しかし、安倍政権の外交を読むうえで、意外と参考になるメディアの記事もあります。

最近、韓国の「保守系メディア」を中心に、「米韓同盟そのもの」の先行きを憂う記事が、しばしば出てくるように思えます。そして、そんな韓国のメディアからすれば、「日本に対しても米国が同盟の負担を求めて来ている」、「日本が米国の要求に戸惑っている」というストーリーこそ、非常に心地よいのだと思うのです。

韓国のメディア『中央日報』(日本語版)に掲載された次の記事も、そうした典型例かもしれません。

米国の勝利に見えるが日本も利益、派兵で光った安倍首相の「クッション外交」

「75分間も電話をしたというが、それは恋人関係であってこそ可能な時間ではないのか」。先月21日夜、トランプ米大統領と安倍晋三首相の電話会談について<<…続きを読む>>
―――2020.01.29 08:31付 中央日報日本語版より

中央日報に限らず、韓国メディアの記事の多くは、日本に関連する話題については認識が大きくゆがんでいたり、不適切な用語を使っていたりすることが多いのですが、読み方によっては間接的に参考になる場合もあります。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

リンク先記事は、中央日報には珍しく2000文字を超える長文です。

中央日報は昨年7月初めに米国が日本に対し、ホルムズ海峡の安全確保のための有志連合結成を要請したことに対し、安倍政権は12月に自衛隊の中東派遣を決定し、これについてドナルド・J・トランプ米大統領と先月21日夜、75分間も話をした、という話題を取り上げます。

前日、ロウハニ大統領は『航行の安全確保に貢献するという日本の意図は分かった』と述べ、自衛隊の中東派遣に理解を示した。安倍首相は翌日、『イランの敵』である米国のトランプ大統領と電話会談をした。双方からOKを受けた安倍首相は6日後の閣議で自衛隊派遣案を決定した。

もっとも、中央日報にいわせれば、安倍政権が決断した中東派遣を巡り、

  • 米国主導の有志連合への参加ではなく独自の派遣
  • 米国と情報交換
  • 武器使用のない調査・研究名目
  • 火薬庫のホルムズ海峡は活動範囲から除外

などが骨子であることについて、

トランプ大統領と伝統的友好国イランの体面をともに配慮した苦悩の結果だ」(※下線は引用者による加工)

と述べているのですが、さりげなく「日本下げ」が入っているあたりはお約束のようなものでしょう。

米国が日本に同盟負担増加を求める?

ただ、個人的に非常に面白いと思ったのは、「米国が現在、韓国に対して求めているような防衛費用負担増を日本に対しても求めるかもしれない」、「日本側がこうした米国の態度にピリピリしている」、という指摘です。

『同盟軽視、秩序破壊』に要約されるトランプ大統領のアメリカファースト路線に日本は当惑している。『日米同盟は永遠と考えていたが、トランプ大統領を見ると必ずしもそうではない。永遠の同盟はない』(五百籏頭眞元防衛大学校校長)という危機感を抱いている。19日に日米安全保障条約署名60周年を迎え、安倍首相がアイゼンハワー元大統領の孫まで招待したのも『危機感の発露』という指摘が出る。

このあたり、中央日報の記述があながちピント外れとはいえません。

実際に、トランプ大統領自身、韓国だけでなく、ドイツや日本を名指しして、「カネを食う怪物」と批判した、という話題もあります(※情報源が中央日報であるという点については割引く必要はあるかもしれませんが…)。

トランプ大統領、1回目の国防総省ブリーフィング当時に「日本・韓国・ドイツは金食う怪物」(2019.10.22 16:09付 中央日報日本語版より)

実際、トランプ氏自身のこれまでの発言などに照らせば、トランプ氏が日本に対し、さらに大きな負担を求める可能性は十分にあるでしょう。

コスト負担にはさまざまなあり方がある

もっとも、米国から「日本はもっと国防のコストを負担すべきだ」といわれれば、それはそれで、逆に歓迎すべき話でもあります。

国防のコスト負担とは、べつに在韓米軍の駐留費用を負担することとは限りません。

たとえば、日本国憲法に「自衛権の発動を妨げない」という記述を書き加え、「自衛隊」を「日本軍」に格上げして自主防衛できる体制を整えること自体、「国防コストの負担」であり、米国にとっては大きな心理的負担の軽減になるでしょう。

また、同盟のコストを払おうとしない韓国に代わって、在韓米軍の移転先を日本国内に用意するというのも国防コストの負担ですし、また、米国と共同でさまざまな防衛装備品を開発する、共同訓練を増やす、というのも良い国防コストの負担です。

じつは、その意味では日本はすでに米国に対し、「コスト負担」を申し出ています。

それは、米国自身が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」というスローガンです。

この構想は、安倍晋三総理の「セキュリティ・ダイヤモンド」構想や麻生太郎総理の「自由と繁栄の弧」構想を下敷きにしたものと考えられ、いわば、日本が提示したフレームワークに米国が乗っかった格好だと言っても良いでしょう。

その意味で、あくまでも日本の「同盟の軸足」は米国に置きつつ、自主防衛の能力を増やしていくという方向性自体は、非常に正しいと言えるのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (5)

  • 更新お疲れ様です。
    中央日報が比較的まともな分析をしてる一方で、朝日系のマスゴミは、中東派遣に対し真逆のこと書いてますね

    あ、忘れてました。朝日新聞さんは不動産会社でしたね。

  • なんだ、2017年の就任直後の内輪での話ですね。

    トランプは軍事の完璧な素人ですので、当時、このような認識を持っていたり、放言をするのは想像に難くありません。

    しかし、シンゾー・ドナルド関係になってからは、少なくとも日本に対してここまで悪し様にいうことはなかったと思います。
    たぶん、同盟国としてはアメポチとまで揶揄される米国追従の優等生である日本の藪をつついて、反米路線に転換するのを恐れた軍政関係者が、必死の思いで「レクチャー」したのではないかと思われます。

    一方ドイツに関しては口撃は止まないですねw
    もっとも、トランプの「NATO(同盟国)はGDP2%の防衛費を支出すべきだ」という主張はまったく正しいのです。
    日本はその半額しか出していませんから、これは責められてもしかたがありません。
    トランプも軍事費の支出の増大は本当にキライで、数々のお金のかかるプロジェクトを葬っています。
    こんどは、アフリカ方面軍を引き上げるとか言い出しました。フランスに押しつけるようです。
    まあアフリカの混乱はヨーロッパの国がどうにかしろというのは普通の感覚ではあります。

    • りょうちん様>アフリカの混乱はヨーロッパの国がどうにかしろというのは普通の感覚ではあります。

      同様の論理で言うならば中東の混乱は種を蒔いたイギリスと世界中の植民地主義を破壊した日本が責任を取るべきでしょうね(笑)

      責任割合はイギリス5割日本が8割という所ではないでしょうか。

      え?3割程多い?
      もちろんアメリカの取り分ですよ(笑)

      以上です。駄文失礼しました。

  • 更新ありがとうございます。

    韓国は昨年の5倍の米軍負担!渋るなら、丁度良いわ。日本にシフトしていただく。大手を振って軍備を進めれるもんな(笑)「サンディエゴより米軍負担も安く済む」安倍総理、上手いこと言いますね〜(笑)。

    韓国のしょうもない平沢基地とか烏山基地なんて、北朝鮮がロケット弾仕掛けたら、スグ飛んで来そうな場所は駄目です。

    沖縄か岩国か大村か新田原ぐらいが良いんじゃないの?日本はすでに米国に対し、「コスト負担」を申し出ているそうで、ココでも韓国外しは進んでます。

    二股外交してるようなアカンタレは滅びゆくのみだ。

    安倍総理の「セキュリティ・ダイヤモンド」構想や麻生副総理の「自由と繁栄の弧」構想に乗っかった米国の「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、完全に一致してます。

  • 「苦悩の結果」というのは別に日本下げじゃあないでしょう。問題の解決が「容易ではなかった」と言っているだけですから。
    むしろ悩みもせずにテキトーにやってる文政権を批判する文脈なのだから、安倍首相を評価していると読むべきでしょう。