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喫煙について考える:屋内禁煙だけで良いのか

喫煙に関しては、当ウェブサイトではかつて『新宿区歩きタバコの現状報告』や『路上喫煙の害を考える』などで取り上げたとおり、基本的には周囲に受動喫煙を強いるような行為は法で取り締まるべきではないかと考えています。こうしたなか、健康増進法の改正が今年4月1日以降に施行され、原則として多くの施設では専用スペースを除いて屋内での喫煙が禁止され、罰則も導入されます。しかし、肝心の「路上喫煙」については現在のところ明らかに禁止する法律が存在しないがため、4月1日以降は路上喫煙が激増するのではないかと危惧しています。

2020/01/17 17:00 追記

記事のURLの設定にエラーがありましたので、URL自体を修正しております。本記事の本来のURLは 「https://shinjukuacc.com/20200117-03/」ではなく「https://shinjukuacc.com/20200116-03/」です。

年収と喫煙率は逆相関!?

厚労省が数日前、興味深い調査を公表しています。

平成30年「国民健康・栄養調査」の結果(2020/01/14付 厚労省HPより)

これは、平成30年、つまり2018年11月に実施した調査を取りまとめたもので、無作為に抽出した5032世帯のうち3268世帯から回答を得て作成されたものだそうですが、詳細な結果については『平成30年国民健康・栄養調査結果の概要』という全33ページのPDFファイルにまとめられています。

今回の調査のうち、『所得と生活習慣等に関する状況』の節では、世帯所得を次の4つの階層に分けて、所得と健康状態について調べた概要が掲載されています。

  • ①200万円未満
  • ②200万円以上400万円未満
  • ③400万円以上600万円未満
  • ④600万円以上

世帯所得と生活習慣の相関に関しては、「食生活、運動、喫煙、飲酒、睡眠、検診、体型、歯の本数」の8分野について示されています。このうち、「④(世帯所得600万円以上)」とそれ以外を比べ、有意な相関が生じている項目、生じていない項目などがあります。

ただ、総じて「高所得層ほど健康的で、低所得層ほど健康的ではない」という、私たち一般人が抱きがちな印象に合致した調査結果となっており、そのなかでもとくに興味深いのが、「喫煙率」や「検診未受診者の割合」、「歯の本数」などについては世帯所得との間に有意な関係がある、という指摘です。

喫煙率と世帯所得の関係
  • 200万円未満…男性34.3%、女性13.7%
  • 400万円未満…男性32.9%、女性9.6%
  • 600万円未満…男性29.4%、女性6.6%
  • 600万円以上…男性27.3%、女性6.5%
検診未受診者の割合と世帯所得の関係
  • 200万円未満…男性40.7%、女性41.1%
  • 400万円未満…男性29.8%、女性34.2%
  • 600万円未満…男性19.2%、女性36.8%
  • 600万円以上…男性16.7%、女性26.1%
歯の本数20本未満と回答した者の割合と世帯所得の関係
  • 200万円未満…男性30.2%、女性29.8%
  • 400万円未満…男性24.0%、女性22.2%
  • 600万円未満…男性21.3%、女性16.6%
  • 600万円以上…男性18.9%、女性21.6%

有意な相関が認められない項目も

その一方で、世帯所得と明確な関係が認められない項目(あるいは一般的な印象とは逆の相関が生じている項目)もないわけではありません。その代表例は、『生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合』『肥満者の割合』でしょう。

生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合と世帯所得の関係
  • 200万円未満…男性12.1%、女性6.6%
  • 400万円未満…男性15.3%、女性8.7%
  • 600万円未満…男性13.8%、女性15.6%
  • 600万円以上…男性19.2%、女性8.7%
肥満者の割合と世帯所得の関係
  • 200万円未満…男性30.0%、女性18.5%
  • 400万円未満…男性30.8%、女性23.8%
  • 600万円未満…男性31.9%、女性28.1%
  • 600万円以上…男性32.0%、女性27.0%

とくに男性に関していえば、世帯所得が高いほど「生活習慣病のリスクを高めるほどの量の飲酒をしている者」、「肥満者」の割合が高いということが示唆されています(女性に関しては両者には有意な相関は認められません)。

よって、この調査だけでは「高所得層ほど健康的で、低所得層ほど不健康だ」などと短絡的に決めつけるべきではないと思います。

今から約3年前の日経ビジネス記事

さて、今から約3年前の記事ですが、『日経ビジネスオンライン』(現『日経ビジネス電子版』)に、元江戸川区議会議員の田中けん氏のインタビュー記事が掲載されています(※ちなみに調べてみると、田中氏は最近、N国党に入党しているようです)。

「路上禁煙区域」で吸う人の論理(2017/2/2付 日経ビジネス電子版より)

リンク先の記事を読むと、田中氏は駅前で長年、公共の場でタバコを吸う者に「声掛け運動」を続けていたそうであり、ときとして「警察沙汰になった」こともあったのだとか。

正直、私たち一般人の立場で路上喫煙者に対し直接注意をするという行為は、あまり望ましくありません。なぜなら、田中氏が「警察沙汰にもなった」と述べているとおり、要らぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるからです。

ちなみに田中氏自身、路上喫煙者を次の4つのタイプに分類しています。

  • ①そこが路上禁煙区域と気づかず吸っている人
  • ②ニコチン中毒患者
  • ③喫煙場所を見つけることができず、そこで吸ってしまう人
  • ④遵法意識が希薄で、今、自分が吸いたいから吸っている人

田中氏のこの分類が正確かどうかは別として、こうした分類が当てはまるならば、仮にその路上喫煙者が④だったとすれば、「自己中心的で、反抗的かつ時に暴力に及ぶ」(田中氏)というケースもあります。

今年4月1日以降、路上喫煙が激増?

ちなみにこの「喫煙」に関しては、当ウェブサイトでも『新宿区歩きタバコの現状報告』や『路上喫煙の害を考える』などで取り上げているとおり、基本的には路上喫煙のように、周囲に受動喫煙を強いるような行為は法で取り締まるべきではないかと考えています。

厚労省の『受動喫煙対策』というウェブサイトによれば、今年4月1日より全面的に施行される『健康増進法の一部を改正する法律』により、原則として屋内での喫煙が禁止されます(詳しくは特設サイトなどもご参照ください)。

ただ、「屋内の喫煙は禁止」ということは、言い換えれば、「屋外であれば喫煙しても良い」、と考える人が増えるかもしれない、という話ではないでしょうか。

繰り返しになって恐縮ですが、個人的に非常に問題視しているのは、むしろ路上での喫煙です。

とくに、路上喫煙の場合は煙が周囲に流れて受動喫煙を余儀なくされるだけでなく、大人が火のついたタバコをブンブン振り回しながら歩いていると、それがちょうど子供の目の高さにあたるため、万が一、その火が子供の目に入ったら大変なことになります。

しかも、新宿区のように罰則が存在しない条例だと、「どうせ取り締まられないのだから」とばかりに堂々と路上で喫煙する輩が後を絶たないという事態になってしまうことも仕方がありません。

もちろん、この場合も「喫煙者自体が悪い」のではありません。「条例に罰則がないことを良いことに、堂々と条例に違反してタバコを吸う行為」が咎められるべきなのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

個人的には、東京五輪を契機に路上喫煙に刑事罰が導入されるのを期待していたのですが、現在のところはその兆候はなさそうですいずれにせよ、新宿区の場合は路上喫煙禁止条例がありますが、罰則はないので、吸いたい放題です(※自治体によっては罰則があるケースもあるようですが…)。

もし当ウェブサイトをご愛読いただいている方のなかに喫煙者の方がいらっしゃるならば、ますます肩身が狭くなるなかで恐縮ではありますが、できれば路上喫煙は控えて頂きたいと思います。

新宿会計士:

View Comments (59)

  • こういった運動に反対はしませんが、いずれアルコールにも過剰規制が主張されることは間違いないと思います。
    ナチスが健康ファッショだったとはいえ、現今の傾向はそれ以上にも見え、映画から喫煙シーンの除外を求めるなどの行き過ぎたムーブメントには賛同できかねます。
    1年365日密閉に近いマンションなどの無菌滅菌環境は、花粉症とも相関関係が高そうで、我が国のマスク着用率の高さなどからも、日本国民の免疫低下が懸念されもします。
    マスク義務化など、笑いごとではないかもしれませんよ。
    石原慎太郎翁は喫煙者ではありませんが、喫煙にさほど反対していない面もあり、ああいった対応が大人のスタンスに思えますが、国際環境に合わせるとなると、そうも行かないでしょうねえ。

  • 更新ありがとうございます。

    喫煙者に注意する、、勇気要りますネ〜(汗)。大概そういうヤカラは、分かっててやってます。注意したらキレます。その前に目が合っただけで「戦闘モード」に入ってます(笑)。

    私の住む都市の中心部では、路上喫煙禁止で違反罰則が1回1,000円だったと思います。巡回は2人1組で。ひとりなら何をしでかすか、相手が分からんですからね。

    大人しく払う人もいたし、文句タレる人も居る。腕章巻いて、胸にも何か分かり易い言葉を書いてました。そのお陰でほとんど見なくなりました。

    ただ、周辺部やバス停では吸ってる人居ますね。半年ぐらい前に、あまりにもスパスパバス停で吸っている爺さん(私並みか)が居たので、睨みつけました。声も出しました(ズルイが勝てると思った)。爺さん捨てました(笑)。

    ところでマンションによく、以前は「ホタル族」が居ました。アレも自治会の決定でウチは禁止になりました。

    良くベランダで吸う人が居たので、管理会社の職員は双眼鏡で見張ってましたっけ。発見したら電話する。「煙草、止めてください」。

    さすがに今はいませんし、そんな規則だらけの住居は嫌だ、と退居されてます(ややこしい臭い連中が減ってセイセイします)。あと、特に子供達の目線に800度の煙草の火は凶器です!歩きタバコなど今や持ってのほか!と思います。

    ところで生活習慣病や肥満との相関ですが、私は収入少ないですけども、200、400、600万では無く、300、600、800以上が日本のラインではないですか?600万ぐらいで高所得と思う人は本人含めて、居ないでしょう。

    で、収入が多いほど良く食う、良いモノ食う、酒も良いモノ飲む、タクシーや送迎車で運動不足、となっていると思います。私は「自転車乗れば?」とか言われますが、坂がキツ過ぎて話になりません(笑)。電動式にするかな、、(爆笑)

  • 低所得者ほど喫煙率が高いというのは肌感覚でわかります。このご時勢、常識的な人間ほど他人の目(会社関係、家族)などを考慮し、既にやめています。つまり未だにプカプカと人様の迷惑考えずに喫煙しているのは、己の非常識を露呈しているようなもの。ますます喫煙者のイメージは悪くなる一方でしょう。こういうのは韓国と一緒で、「叩いて躾ける」しかありません(笑)。もっと厳格に規制してもらいたいですね。

  • https://ganjoho.jp/data/reg_stat/cancer_control/report/tabacoo_report/tabacoo_leaflet.pdf

    受動喫煙のリスク高いですよ
    だからタバコ禁止くらいでいい

    喫煙者の害のリスクはエビデンスレベル1
    受動喫煙喫煙に関してはエビデンスレベル2
    受動喫煙に関してはまだまだ十分ではないようだが、あると思って行動した方がいい

    福島の微量放射性物質についてあれだけ騒いでいるのだから、タバコについてもリスク避ける行動に出ましょう

    タバコと収入の関係についてはおそらく学歴が影響しているではないかと。

  • まず、一度たりとも喫煙をしたことも、したいと思ったこともない、という立場の意見であることをお断りしておきます。

    世の中には煙草の煙が死ぬほど嫌いという人もいるかもしれませんが、私はそうではなく、飲み会で喫煙者が隣にいても「においが残りそうだな」と思うぐらいで忌避することはありません。安易に健康に悪いと言うつもりもありません。

    しかし、歩き煙草に遭遇すると気分が悪くなります。同じ路上でも、立ち止まって喫煙している場合はそれほど気になりませんが、歩きながら喫煙している状況というのが駄目ですね。
    普通に単なる迷惑行為だと思っています。

    この手の話は賛否両論出ると思うので、自分がどう思っているか、についてだけ書いてみました。
    ちなみに、受動喫煙による健康被害については極端な環境でない限り否定的です。

  • 更新ありがとうございます。
    喫煙/禁煙にしても、本日話題のウィルスで騒ぎすぎる人たちにしてもケミカル、メディカルを自己都合で心地よく分かり易く恣意的に解釈し過ぎでるのではないのかなと勝手に妄想しております。※個人の感想です。
    ただ、私のような喫煙者は世間に甘えすぎな面を、禁煙論者は他人に求めすぎな面を出し過ぎないように面白い議論が展開できればと勝手に妄想しております。
    現状、LKの患者さんが全員副流煙を含むたばこ物質由来であるわけでもないし、新型コロナウィルスも強毒性でかどうかも、強い感染力を持っているかも科学的に証明されてもなく、感染したからって直ぐ肺炎を発症するわけでも(他の原因由来の肺炎もたくさんあるし)なさそうな感じなので、たばこにしてもウイルスにしても科学的に正しく怖がる事で時節と遊んで暮らそうかと思います。※個人の妄想です。

    最後変な方向に行っちゃいました。お目汚し失礼致しました。

  • いつもありがとうございます。
    当方集合住宅ですが、ベランダの喫煙には非常に迷惑しています。最近ではそれにとどまらず、公園や公開空地に吸いに来る馬鹿者が多く、辟易する毎日です。
    自分の家で吸えないものを公共の場で吸う、まして子供の来るところでと言う神経がわかりません。
    まあ体に悪いからうまい、というのはよくわかりますが、危険負担は自分だけにしてもらいたいものです。
    火事も減るのではないでしょうか。

  • 元30年喫煙者としては、喫煙の自由は許容されるべきとは思います。しかし、それも場所によりけりですね。不特定多数が往来する路上での喫煙は言語道断で厳に慎むべきです。というより、これを機会に「脱喫煙」を勧めたいですね。私の経験では、喫煙をやめて「失った」と感ずるものは殆どなかったですから。世間一般から疎まれてまで喫煙を続けるメリットはありませんよ。禁煙が難しいのは経験からも分かりますが、そんなことすらできない程度の自制心では、何事も為せません。まあ、酷な言い方かもしれませんが。

  • 喫煙者です。
    東京で、タバコ吸える所を探すのは、かなり大変です。
    大概駅前のパチンコ屋が、頼りになります。

  • 世界で一番タバコに厳しいとされるニューヨークでは、公共の施設以外の屋外は全て喫煙所でした。喫煙者は、ホテルやレストランから一歩出て喫煙しておりました。私の知る範囲では、他の欧州の国々も似たようなものです。屋内の受動喫煙が非喫煙者にも有害である、という考え方に基づいているそうです。もちろん歩きタバコは禁止ですが、日本の都市部の方が遥かに厳しいと思います。

    喫煙は健康に悪いから禁止すれば良い、という考え方は、問題をより複雑にします。多くの喫煙者は、場所を指定すればそこで喫煙します。私は、喫煙所または喫煙室を整備することが最善の方法と考えます。ゴミを減らすためにゴミ箱を撤去するような、本末転倒な世論が形成されないと良いのですが...

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