やや陰謀論めいていますが、先日の『イラン司令官殺害:トランプは対イラン開戦を望むのか』などでも報告した米軍によるイランの革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害に関し、個人的には、「米、イラン両国政府が裏で申し合わせて『出来レース』をやっていたのではないか」、との疑いを、最近になって持ち始めています。根拠に乏しい内容をあたかも事実であるかのように断定するのは不適切ですが、ただ、イランが「政府と革命防衛隊の二重権力構造」となっていること、イラン政府が欧州や日本との関係を大事にするあまり、米国を刺激し過ぎることを恐れているという仮説が成り立つことなどを踏まえれば、あながちピント外れではないのではないでしょうか。
新聞・テレビの価値
数日前から当ウェブサイトでも積極的に取り上げている話題のひとつが、イラン情勢です。ただ、これを巡っては、なにやらよくわからないという方が多いのではないでしょうか。
地理的に日本から離れているうえ、言語も文化も日本とはまったく異なります。ましてや、中東に自衛隊を派遣するともなれば、「そんな遠く離れた場所に自衛隊員が出掛けて、何かあったらどうするつもりなのか」とばかりに、一種のアレルギー反応のようなものを見せる人がいるのも当然の話ではあります。
当ウェブサイトでも、いちおうは「政治経済評論」を名乗る以上、さまざまなメディアの報道を読み漁り、ドナルド・J・トランプ米大統領のツイートなども参考にしながら、これらの事件について取り上げることはあります(たとえば『イラン司令官殺害:トランプは対イラン開戦を望むのか』参照)。
やはり自分自身が住んでいる地域でもなく、また、普段から高い関心を持って追いかけているわけでもないテーマに関しては、どうしても調べるのに時間が掛かってしまいますし、せっかく調べたとしても、あまり気の利いた話ができない、ということも往々にして発生します。
当ウェブサイトでは普段から、マスメディア(とくに新聞やテレビなど)について批判的な内容を申し上げることが多いものの、やはり、世の中のさまざまなできごとをわかりやすく解説してくれるという意味では、これらのメディアには大変助けられているというのが実情です。
とくに、外国で発生している事件、事故を巡っては、世界各地に特派員を派遣し、現地語にも堪能な記者がさまざまな情報を集めて来て、それらの情報をわが国の本社に送り、社内外の専門家の見解とともに報道してくれるというのは、まさにマスメディアだからこそ果たせる機能なのだと思います。
河野太郎大臣のブログが有益過ぎる!
ただ、近年だとインターネット環境が急速に普及しているためでしょうか、昨年の『「報道機関」を個人が経営できる時代がやってきた!』などでも報告したとおり、いまや「報道機関」の仕事は、パーツに分解し、分業することが可能です。そのパーツとは、
- ①客観的な事実・情報を、取材、ネット検索などの方法によって集めて来る
- ②集めて来た情報について重要性を判断する
- ③それらの情報に基づいて分析・考察し、記事化する
- ④作成した記事を全国に向けて配信する
という流れです。
そして、あまり言いたくないのですが、今回の中東情勢に関しても、マスメディアの報道などをひととおり眺めてみたのですが、残念ながら①の部分ですっきりと整理できていないメディアが非常に多いと感じざるを得ません。
もちろん、当ウェブサイトも「中東専門の評論サイト」ではありませんので、マスメディアと比べて情報の質や量において圧倒しているとはまったく考えていません。むしろ自分自身でも普段からの情報収集の不十分さをかみしめながらウェブ評論をしているというのが実情に近いでしょう。
(※もっとも、この点について日本のマスメディアを責めるのは酷といえるかもしれませんが…。)
ただ、こうした状況をすっきり整理してくれているサイトを発見しました。
それは、ほかでもない、河野太郎防衛相の個人ブログです。
イラクで何が起こったのか(2020.01.08付 河野太郎ブログ『ごまめの歯ぎしり』より)
河野氏は防衛相という公職に就いている人物ですが、それでもリンク先は防衛省の公式ウェブサイトではないため、丸ごとの転載は控えます。ここでは要点に絞って、河野氏の説明をもとに当ウェブサイトなりにアレンジして箇条書きにしておきましょう。
時系列でみると何となく見えてくる
- 2019年10月以降、イランで米軍が駐留する基地に対する攻撃が多発。米国人に被害はなかったが、米国側はソレイマニ司令官の関与を主張した
- 12月27日、イラク中部キルクークのイラク軍基地にロケット弾30発が着弾し、民間人や米軍関係者などに死傷者が発生。米国は29日、シーア派武装組織カタイブ・ヒズボラの拠点5ヵ所に「防御的対応」として精密攻撃を実施した
- この米軍の攻撃に反発したイラクの民衆が12月31日、バグダッドの米大使館を襲撃し、大使館の建物が損傷。米国務省はデモ隊にイランと関係の深いシーア派民兵組織の制服を着た構成員を確認したと主張し、同日、大使館防護を目的にクウェートから海兵隊を緊急展開した
- 1月2日にエスパー国務長官はイランとその代理勢力が対米国劇を実施する兆候があるなどと警告する一方、現地時間3日深夜0時30分、ソレイマニ司令官の搭乗機がバグダッド国際空港に着陸したところ、米無人機から発射された誘導ミサイルが車に着弾して司令官は死亡
- 3日、トランプ大統領が、戦争を開始するためではなく防ぐための攻撃だと主張したが、同じく3日、イランの最高指導者ハメネイ師は3日間の喪に服すこととその後の報復を宣言し、イランの国連大使は国連事務総長宛ての書簡で自衛権の行使を示唆した
…。
河野氏のブログはまだ続くのですが、これ以降の話題については当ウェブサイトでもある程度フォローしているため、本稿ではあえて省略します。
いかがでしょうか。
マスメディアの報道よりも、この河野氏の説明の方がはるかにすっきり整理されていて、個々に至るまでの流れがスッと理解できた気がします。
要するに、米軍はソレイマニ氏が駐イラク米軍に対するテロ活動などを公然と支援していると問題視していたフシがあり、今回のソレイマニ氏の殺害についても周到に計画されていた可能性が出て来るのです。
やや陰謀論めいていますが…
こうしたなか、個人的にはあまり好きではないのですが、あえて「陰謀論」風に申し上げておくならば、今回のソレイマニ氏の排除は、米国の単独行動というよりも、「共犯者」がいるような気がします。
その「共犯者」とは、ほかならぬイラン政府自身です。
そもそも論ですが、「イラン革命防衛隊」は「イラン軍」ではありません。あくまでも「最高指導者」であるハメネイ師の直轄組織です。
このため、「イラン革命防衛隊」がイラン政府の意向に反し、米国を次々と挑発していたのだとすれば、イラン政府としてはコントロールできなくて困ってしまいます。
そこで、ロウハニ大統領にとっては、ソレイマニ氏の所在に関する情報をわざと米国に流すことで、米軍による攻撃という「不可抗力」によってソレイマニ氏を排除しようとしたのではないか、という可能性が出てくるのです。
もちろん、これには何ら確たる根拠も存在しないため、「仮説」というよりは憶測の類いかもしれませんが、ただ、『米・イラン緊張に見る、軍事制裁と経済制裁の関係』でも触れたとおり、ドナルド・J・トランプ米大統領が「イランはスタンドダウンしているように見える」などと述べた点には強く引っ掛かっています。
そのうえ、昨日は米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、こんな記事を出してきました。
Swiss Back Channel Helped Defuse U.S.-Iran Crisis(米国時間2020/01/11(土) 05:04付=日本時間2020/01/11(土) 19:04付 WSJより)
これは、米軍がソレイマニ氏を暗殺した直後、トランプ政権が中立国であるスイスの駐イラン大使館を通じて暗号化ファクシミリの手段で「これ以上エスカレートしないようにしよう」とするメッセージを送り、イランもこれに応じていた、とする記事です。
WSJの記事によると、これを明らかにしたのは “U.S. officials” 、とあります。複数形になっているため、「米国の複数の当局者」と考えるべきでしょう。
それはさておき、どんなメッセージが取り交わされたのかといえば、
In the days that followed, the White House and Iranian leaders exchanged further messages, which officials in both countries described as far more measured than the fiery rhetoric traded publicly by politicians.
とあります。意訳すれば、
「米・イラン両国の指導者らは、表面上取り交わされている激しいレトリックよりもはるかに慎重なメッセージのやり取りをした」
といったところでしょうか(※こういうときは、得てして「表面上はお互いを罵っているが、裏ではあらかじめ何らかの合意ができていた」というケースが多いような気がします)。
さらには、イランによる「報復攻撃」のミサイル(『イランが米軍施設にミサイル発射』等参照)についても、人的被害が一切出ていないことから、WSJは
Washington and Tehran seemed to be stepping back from the brink of open hostilities—for now.(意訳)米・イラン両国は、いまのところは、表面上の憎悪という瀬戸際の状況からは一歩引いているかに見える。
などと述べているのですが、もっといえば、じつはソレイマニ氏の殺害自体が米、イラン双方による申し合わせではないかとの疑念を抱かざるを得ないのです。
その「リーダー」とは、誰か?
ただし、これらの文章を読んだ限り、米国は良いとして、イランの側の「リーダー」が誰なのかについては気になるところです。
おりしも『イランのミサイル発射・続報とウクライナの航空機墜落』で「速報」しましたが、1月8日にテヘラン国際空港を離陸したばかりのウクライナの航空機が墜落するという事故が発生したのですが、これについては昨日、イラン革命防衛隊がミサイルと誤認して撃墜したと認めたようです。
ここでも米WSJの記事リンクを紹介しておきます。
Iran Blames Downing of Ukrainian Jet on Human Error(米国時間2020/01/11(土) 09:59付=日本時間2020/01/11(土) 23:59付 WSJより)
タイトルにもあるとおり、イラン当局は「あくまでも人的エラーにより発生したものであり、わざとではない」と述べているのですが、WSJによるとウクライナ航空は
「これはまったく容認できない。交戦状態にあって、撃墜したいのならば、空港を閉鎖してからにするのが筋だ」
などと激しく反発しているそうです。
もっとも、なぜこの段階でイランが誤射を認めたのかについては、WSJは次のように分析しています。
Iran’s move to publicly disclose the mistake of shooting down the jet reflects an attempt to maintain its international credibility, particularly with European countries, many of whom are trying to provide it relief from sanctions and keep the 2015 nuclear deal alive.
つまり、2015年核合意が依然有効だと考えている欧州諸国(とくに英独仏)からの信頼を損なうことをイラン政府が恐れていて、それで今回はイラン革命防衛隊の過ちを認めたのだ、というのがWSJの見立てです。
ただ、今回、民間航空機を撃墜した主体が「イラン革命防衛隊」であるということは、言い換えれば、イラン政府とイラン革命防衛隊がうまく連携できていない証拠にも見えてしまうのです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ところで、わが国にとってはイランは「遠く離れた国」だから「無関係」、では済まされません。
というのも、イランの核開発では北朝鮮から技術者が藩消されているとの情報もあり、また、あくまでも個人的な観測ですが、核開発において必要な物資が日本から流用されているという可能性もあると思うからです(『対韓輸出が急減しているのは「低価格フッ化水素」か?』等参照)。
これに加えて日本はイランの伝統的な友好国(?)であり、昨年はイランのロウハニ大統領が日本を訪れて安倍晋三総理大臣と首脳会談を実施していますし、また、欧米の植民地支配という苦い記憶のない日本は、中東外交において強い存在感を発揮し得る領域でもあります。
場合によっては、今回のソレイマニ司令官殺害に関しては、スイスだけでなく、日本が米・イラン両国のパイプ役になっていた可能性も、検討する価値はあるように思えてなりません(※いや、さすがにそこまで行くと、完全な陰謀論になってしまうかもしれませんが…)。
いずれにせよ、安倍総理の中東歴訪が始まったばかりというタイミングでもありますので、紹介する価値のある話題を発見すれば、引き続きフォローしたいと思います。
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同じ疑いを私も持っていました。
更に言えば、ウクライナ航空機の撃墜事件も、イラン革命防衛隊を弱体化させるために、革命防衛隊に入り込んだ誰かが意図的に仕組んだのではないかとさえ。あまりに哀しい出来事なので、憶測を口にするのを控えておりましたが。
イーシャ 様
革命防衛隊は精神指導者をトップに強固に結束した組織であり、それは考えにくいと思います。今回の事件は、対空防衛網を強化してる中で起きた、文字通り事故でしょう。
ソレイマニの指揮下にあった衛星組織が暴走気味だったのと、革命防衛隊が今回引き起こした事故は、完全に別の次元の話と思います。
匿名 様
やはり無理がありますか ...
後で思ったのですが、民間航空機かどうかはトランスポンダーの信号でわかるはずなのに、革命防衛隊にはそうした識別能力はないのでしょうね。
マレーシア航空17便撃墜事件のときと同じで、攻撃相手の確認もできない、破壊力の大きな兵器の使用は、無差別大量殺人と同じです。
イランがウクライナ機撃墜を認めたとたんに,イラン国内でハメネイ師を非難するデモが発生したというニュースを聞いて,イランの国内情勢の複雑さに気付きました。
落ち着いて考えてみれば,シーア派の長老達が指導する原理主義運動というのは,イラン国民に厳格な戒律遵守を要求するものです。ふつうの人達は,そんな堅苦しい生活を長期間要求されたらまいってしまいます。陰では体制への不満が結構たまっているのでしょう。飲酒は禁止(守られていないが),革命前ミニスカートをはいて歩いていた女性達も暑い夏でもベール(ヒジャブ)を着用して外出しないといけない。ストレスもたまりそうですね。
外圧より,内部崩壊を工作したほうがいいかもしれません。
やはり大方の予想通りイランの仕業でしたね。状況証拠から疑いようもない話でしたが。
さて、ソレイマニ暗殺の合意論ですが。これはないと思います。
確かにソレイマニの行動は行きすぎていた。昨年度の11月のハメネイの指導を半ば無視するように、米軍基地への攻撃を死傷者を伴う形で12月に行った。だが、この時攻撃を行なったのは親イラン派の武装組織とのこと。
アルカイダがCIAの手に負えなくなったように、ソレイマニの工作によって生まれた組織は彼のコントロールから外れてきていたのではないかと思います。
ここからアメリカが殺害に踏み切った経緯、掴んでいたとされる情報が一番な謎ではありますが、少なくともソレイマニは関係諸国すべてにとって危険な男でありましたから、
イランも表向き報復を謳いながらも、ホッと一息ついてるのではないかと思います。 20年かけてネットワークを作り上げたソレイマニの後釜が、すぐに同じような活躍が出来るとも思えませんしね。
初めての書き込みですが、失礼します。
イラン革命後、イランはイスラム宗教指導者と、その影響下でのイラン政権の二重構造になりました。スンニ派、シーア派、ヒズボラなど複雑に宗派が分かれ、一概には語れない事をご了承頂いた上での意見です。
イランを語るときは、イスラム宗教指導者(革命防衛隊)とイラン政府(国民的)を分けて考えるべきだと思います。イラン国民は、必ずしもイスラムに信心している訳もなく、経済的困窮から、再三反政府デモを起こしています。最近は、弾圧で死傷者も出ています。
日本政府が親しいのは、イラン政権です。昨年末、ロウハニ大統領は、日本に訪問、安倍総理とも会談をしました。その後、安倍総理とトランプ大統領と1時間以上の電話会談。
既にイラン政府は、アメリカとのパイプを持ったと考えます。
宗教指導者のホメネイ師は側近のソレイマニ氏〜後継者を失いました。彼は、各周辺国の工作活動や各地でテロを起こしていただけではなく、中国共産党の胡錦濤一派とも繫がり、共に金融機関を経営し、金の流れ(経済)を牛耳っていたとされる人物でした。ソレイマニを失ったことで、求心力は低下するかもしれません。
アメリカ(日本も)は、これを機に、宗教指導者や革命防衛隊を、イラン政府(国民や国軍)が倒すことを期待していると思います。そして、それは、イラン政権も同じかも…?
昨日は、ウクライナ機を撃墜したのはイランだとの記事でしたが、今朝の記事では「革命防衛隊が撃墜した」と出ています。
イラン国内では、ウクライナ機の撃墜を受けて、国民が、激しい反政府デモを始めています(イラン国民も沢山亡くなったから)。
出来レースとは言えませんが、米国とイラン政府の思惑が、もしかしたら一致しているとは言えそうですね。
> ただ、今回、民間航空機を撃墜した主体が「イラン革命防衛隊」であるということは、言い換えれば、イラン政府とイラン革命防衛隊がうまく連携できていない証拠にも見えてしまうのです。
かつての大日本帝国の軍部独走を想起させますね。
いわゆる文民統制がどの程度効いていたのか、其れを含めて考察すると、より事実に近付ける気がします。
クロワッサン 様
皇軍は一応国軍でもありましたが、革命防衛隊はヒトラーに対する武装親衛隊に近いです。
さらに革命防衛隊出身の政治家もいるような有様ですから…
ロハニは穏健派で強硬派の革命防衛隊とは距離を置いていたようです。よって、国軍は文民統制のもと運用されているかもしれませんが、革命防衛隊は意思決定のプロセスが不明で、何をしでかすかわからない連中というのが正直なところでしょう。
その傘下の親イラン武装勢力の動向となれば尚更…
ソレイマニが幕僚長クラスの要人ながら、忙しなく現地に出向いてたのもこの辺が原因かもしれませんね。
クロワッサン様
>かつての大日本帝国の軍部独走を想起させますね。
⇒ 革命防衛隊は、昔の関東軍みたいですよね。
満州事変とか起こした時のそれと似ている。
イラン革命防衛隊とは、乱暴な組織ですなあ。
空港封鎖もせず、管制塔と連携もせず。
現地ミサイル部隊・指揮官の独断で発射!
(たぶん、40歳くらいの少佐)
こんな国が核を持ったら、
「誤射」で核がニューヨークに飛んで来るぞい。
ぴょんやんの部隊指揮官が、こうでない事を祈りましょう・・
う~ん、アメリカとイランの出来レースで、対米強硬派で浮いてしまったソレイマニ司令官は暗殺された、と…
やはり、自分は懐疑していますが…
それから、河野防衛大臣の『・2019年10月以降、イランで米軍が駐留する基地に対する攻撃が多発。米国人に被害はなかったが、米国側はソレイマニ司令官の関与を主張した』のところは、『イラクで米軍が駐留する基地』だと思います。
イラク南部はシーア派を信奉する人々が多く住み、イランがイラクに介入するための土台となっています。
イランとイラクの関係を、北朝鮮と韓国の関係に当てはめて考えてみてください。韓国国内には北朝鮮に共感する左派(従北派)が多く住んでいます。左派は米軍基地や米大使館にちょっかいをかけ、反米活動を繰り広げています。イラク国内に住むシーア派の活動家もこれと同じです。
イラク戦争でイラクをおさえたアメリカとしては、『いい加減にしろや、シーア派の者ども』と言ったところでしょう。イラクや周辺国のシーア派シンパを動かす司令塔となっているのが本国イランであると、誰でもすぐに想定するでしょう。そして、その司令塔であった革命防衛隊のソレイマニ司令官が今回除かれたことになります。
イラクはイラク戦争敗戦後に、欧米諸国からスンニ派・シーア派・クルド人の共同統治体制を承認されました。
現イラク大統領はクルド出身のバルハム・サリフ。首相は去年12月までシーア派出身のアーディル・アブドゥルマフディーが務めていました。
このアブドゥルマフディーが問題で、韓国で左派の文在寅が大統領であることと同じ意味があると考えてください。去年10月にイラクで大規模な反政府デモが起こり、400人以上の死者、1万5000人の負傷者が出たと報道されています。
この責任問題をめぐってアブドゥルマフディーは窮地に立ち、イラクのシーア派の指導者が首相辞任を促しました。これで、アブドゥルマフディーは12月に辞任を表明し、現在、暫定首相の地位にあります。現在のイラクは、アメリカとイラン両者の利害・権益が全面衝突する局面に入っています。
https://www.trt.net.tr/japanese/shi-jie/2020/01/09/abudourumahudeiirakushou-xiang-irankaragong-ji-nozhi-rasewoshi-qian-nishou-keteita-1337380
この報道を信用するならば、アブドゥルマフディー首相は事前にアメリカに米軍基地攻撃を伝えていたことになります。
米軍基地に死傷者が出ていないことも、これで納得できるのですが…
ウクライナ機撃墜事件については、イランが誤射を認めることは想定していませんでした。イランが認めなければ、真相は長い間、闇の中にあったでしょう。
イラン・イラク戦争中に、アメリカはイラン航空655便を誤射で撃墜しイランに謝罪していますから、イランも認めやすかったのでしょう。
更新ありがとうございます。
>米、イラン両国政府が裏で申し合わせて『出来レース』
小生もその疑いが高いと確信しています。
イラン革命防衛隊司令官暗殺は米国、イラン穏健派、イラク十二イマム派が主体で起こし、
恐らく周辺諸国(スンナ派)の動揺が少ないことからTOPには司令官排除方針は知らされていた可能性が高いと思ってます。
この暗殺を契機に将来、イラン革命防衛隊が実効戦力から転がり落ちハメネイ師から軍事戦力がそぎ落とされれば米国・イランの和平に繋がっていくのですが、まだまだ予断を許さない状況に変わりはないと思います。
しかしイラン政府、及び宗教界は理性的行動ができているので突然の破局とはならないと確信します。
韓国とは違い、芯があると感じます。
タイミング的に、年末のイラン大統領の訪日、首脳会談で、当件が重要な議題になったとも考えられるかもしれません。
米国大統領と最も親密で、高い信頼を得ている安倍総理が、何らかの役割を果たした可能性もあるかも。
別の記事にも投稿しましたが、再度似た内容で投稿します。
今のイランは、文化大革命時の中国に少し似ています。即ち、カリスマ指導者としてのホメイニ・ハメネイと毛沢東、その親衛隊である革命防衛隊と紅衛兵、親衛隊を指揮する革命防衛隊司令官と四人組、世俗政府を率いるロウハニと周恩来・鄧小平。違いは、革命防衛隊が国軍から独立し、国軍同等の武力を持つ点でしょうか。イランのイスラム革命政府が40年以上も継続できている理由にはこの武力をもった革命防衛隊の存在が大きいでしょう。中国文化大革命の場合、文革派・紅衛兵は独自の武力を有しておらず、軍部への影響力も限定的でした。そのため、カリスマである毛沢東の死と共に、軍部を背景にした鄧小平ら実権派の奪権を簡単に許してしまいました。
ですから現イランの世俗派が、革命派から権力を奪おうとすれば、革命防衛隊の無力化が必須のハズです。それには司令官一人を亡き者にするだけでは十分ではありません。同時に大きな失態(例えば、多数の民間人を乗せた旅客機を撃墜のような)を犯させその責任を追及すれば、司令官を失った直後の革命防衛隊は混乱し、国軍に吸収するなど無力化も可能かも知れません。米国にとっても、中東各地におけるテロ組織の黒幕である革命防衛隊を除去できれば、米軍の血・米国の税金を費やすことなく中東を安定化させられます。
確かに上記は、米国とイラン世俗派にとってWin-Winのシナリオでしょう。そして現在、ソレイマニ司令官殺害、ウクライナ旅客機の撃墜とそれへの革命防衛隊関与説の流布、ハメネイ師辞任を求めるイラン国民のデモ発生など、上記シナリオ通りの現実が次々と展開しているのも確かです。ですが、米国・イラン世俗派の共謀なんて本当に有り得るんでしょうか?仮に共謀が本当だとすれば、イラン世俗派は米国の軍門に下ったとみなされ、将来、誇り高いイラン国民から非難を受けることになるような気がします。
小生は革命派と革命防衛隊が一枚岩ではなくなっている可能性が高いと考えています。革命防衛隊が経済的にもイランを支配しつつあることはご存じだと思いますが、経済制裁でパイが縮小する中で革命派(宗教勢力)の経済利権との相反がひどくなっているのではないでしょうか。
パーレビ国王に対する宗教界の反発が単に教義上のものだけでなく、国王が行った土地改革が宗教勢力の持つ荘園に手を突っ込むものであったことにも由来したことは彼らの行動を考えるうえで忘れてはいけないと思います。
積極的な共謀はともかく、現場主義のスレイマニの性格を利用し、彼が国外に出て陣頭指揮をとらざるを得ない環境づくりをして、アメリカによる暗殺のチャンスを増やす、この程度の消極的協力はしたのではないかと思います。
名無し様
イランの内情に関し貴重なお話、ありがとうございました。
私はイランに関して殆ど知識はなく、革命防衛隊が経済的に自立できる力をもっていること等もこの事件後初めて知りました。また、革命派と一枚岩で無くなっている可能性については考えてもみませんでした。もしそうだとすれば今後の展開が一層興味深くなってきます。これからは、イラン問題については、そのような視点からも見ていきたいと思います。
さらに、イラン宗教界は「荘園」を持っていたのですか・・・何やらこれも、中世日本の貴族・寺社が広大な荘園を私有し、武士がその荘園の管理人として力を付けていく過程を思い出させる話ですね。
で、人口規模が何千万人にもなれば、国全体が一枚岩なんてことは有り得ないわけで、イラン内部がそのように分裂していてもおかしく無いでしょう。スレイマニ革命防衛隊の暴走が極限に達し、それを世俗派のみならず宗教界からも憂慮され、その除去の必要性が切迫している状況(例えば核兵器が完成まじか)だったとすれば、敵対勢力との「消極的協力」も有り得たのかも知れませんね