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NOジャパンからNO安倍へ?

韓国の「NOジャパン」運動が、最近、「NO安倍」運動に切り替わりつつあるようです。要するに、韓国では「我々の抗議の対象は日本や日本人ではなく、安倍政権と極右勢力である」、と位置付けて、日本と安倍政権を切り分けつつ、日本「市民」との連帯を図る、という考え方です。ただ、そのわりには「NO安倍」を唱えている勢力が同時に「日本製品不買運動」を唱えているなど、チグハグさは否めません。ただ、せっかくの終戦の日ですから、日韓関係の「そもそも論」について、少しだけ考えてみたいと思います。

NOジャパンからNO安倍へ?

昨日の『自称元徴用工「安倍氏に首相の資格なし」』でも少し触れましたが、最近、韓国では「日本全体と安倍(総理)を分ける」という考え方が広まりつつあります。たとえば、「我々の抗議の対象は日本や日本人ではなく安倍政権と極右勢力である」、といった具合です。

こうしたなか、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によると、本日、「NO安倍」と題し、安倍政権を批判する集会や行進が韓国各地で大々的に行われるのだそうです。

解放記念日に「NO安倍」 各地で集会・行進へ=韓国(2019.08.15 06:00付 聯合ニュース日本語版より)

記事のタイトルには、「NOジャパン」ではなく「NO安倍」とあります。

聯合ニュースによると、10以上の市民団体が本日午前11時にソウル広場で集会を開くほか、労組の全国組織は午後2時から光化門広場で約1万人が参加する「全国労働者大会」を開催するとしてしています。

さらに傑作(?)なのは、750の団体でつくる「安倍糾弾市民行動」が午後6時から開く「ろうそく集会」です。というのも、これについて聯合ニュースは

韓国で展開されている日本製品不買運動への参加を訴え、『反日』ではなく『反安倍』を主張するとともに、両国の平和のための市民連帯も強調する予定だ

としているからですが、「『日本製品不買』と言っている時点で反日ではないか」という単純な疑問はさておき、「反日」から「反安倍」に照準を切り替えたというのが、なかなか興味深いところです。

もっとも、日本が民主主義国であり、かつ、安倍政権の出身母体である自民党が直近6回の大型国政選挙を連続して制しているという事実を踏まえれば、こうした「安倍と日本は別物だ」という考え方がナンセンスであることはいうまでもありません。

なぜなら、安倍政権は日本国民からの正当な選挙を通じた信任を得ているわけですから、「NO安倍」と主張した瞬間、それは「NOジャパン」と同じ意味になるからです。

いずれにせよ、韓国が「NOジャパン」から「NO安倍」に照準を合わせたとしても、韓国が国を挙げて日本に対するヘイトを仕掛けてきているという本質が変わることはないでしょう。

「慰安婦の日」は韓国が「国として終わっている」証拠

一方、昨日は「慰安婦の日」だったそうで、韓国各地で日本を糾弾する会合が開かれたのだとか。

「慰安婦被害者の日」迎え各地で行事 経済報復を糾弾も=韓国(2019.08.14 17:59付 聯合ニュース日本語版より)

この「慰安婦の日」とは、自称元慰安婦の金学順(きん・がくじゅん、故人)が1991年8月14日に初めて公の場で自身の「被害」を証言した日であることから、昨年から国の公式記念日に指定されたのだそうで、韓国各地でこれにちなんだ集会などが開かれたようです。

ただ、韓国政府が大々的に慰安婦問題を蒸し返すこと自体、明らかに国際的な約束と信義を踏みにじる行為でもあります。

そもそも慰安婦問題には、2つの論点があります。

1つ目は、慰安婦(あるいは朝鮮人の職業売春婦ないし追軍売春婦)が日本に対し、売春の対価の請求権を持っていたとしても、そもそもそれを日本に請求することはできない、という点です。これが「日韓請求権協定」の問題です。

2つ目は、「1941年12月9日から1945年8月15日の期間、日本軍が正式な意思決定に基づき、朝鮮半島で少女のみ20万人を拉致して戦場に連行し、性的奴隷に仕立てた」というストーリーが、朝日新聞社と韓国政府、韓国市民団体などによる完全な捏造である、という問題です。

日本政府はこの2つの論点に正面から立ち向かっておらず、これは2015年12月28日に「日韓慰安婦合意」を結んだ安倍政権も例外ではありません。

ただ、それと同時に、「日韓慰安婦合意」によって、韓国政府がこの慰安婦問題に公式に関与すること自体、かなりの制約を受けると考えるべきでしょう。

ここで、岸田文雄外相(当時)が韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権当時の尹炳世(いん・へいせい)外交部長官とのあいだで口頭で成立させた「日韓慰安婦合意」のポイントは、次の4つです。

いわゆる「日韓慰安婦合意」(2015年12月28日)のポイント
  • ①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感し、安倍晋三総理大臣は日本国を代表して心からおわびと反省の気持ちを表明する。
  • ②韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府はその財団に対し、政府予算から10億円を一括で拠出する。
  • ③韓国政府は在韓国日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を巡って、適切に解決されるように努力する。
  • ④上記②の措置が実施されるとの前提で、日韓両国政府は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、あわせて本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。

(【出所】外務省HP『日韓外相会談』より著者作成)

日本は謝罪し(①)、10億円のカネを払う(②)かわりに、韓国政府は日本大使館前(厳密には「日本大使館跡地前」)に慰安婦像が設置されている問題を適切に解決する義務を負い(③)、そのうえで国際社会において互いに非難・批判しないこと(④)が盛り込まれたのです。

この合意を破るならば、それこそ韓国は「国としてお終い」ですが、現在の韓国の姿を見ていると、まさに「国として終わっている」としか言い様がありません。

すべては韓国側にボールがある

さて、日韓関係が少なくとも1965年の日韓基本条約、日韓請求権協定締結以来、最悪の状態にあることは、明らかな事実でしょう。

とくに、昨年9月以降の展開は急でした。「旭日旗騒動」(韓国政府側が自衛艦に旭日旗を掲揚しないように要求したことを受け、日本は10月11日に韓国で行われた国際観艦式の参加を取りやめた騒動)を皮切りに、

  • 自称元徴用工判決(10月30日、11月29日)
  • 慰安婦財団解散(11月21日に決定を発表、今年7月ごろ解散)
  • レーダー照射事件(12月20日)
  • 文在寅(ぶん・ざいいん)大統領による「日本は歴史に謙虚になれ」発言(1月10日)
  • 文喜相(ぶん・きそう)国会議長が天皇陛下(現・上皇陛下)を「日王」「戦犯の息子」と発言して侮辱(2月8日)
  • 自称元徴用工問題で日韓請求権協定違反が確定(7月19日)

と、これでもかというほど韓国側が不法行為を仕掛けて来ているのです。

日韓関係がこれから改善に向かうのか、破綻に向かうのかはわかりませんが、少なくとも現在の日本の国民感情に照らせば、韓国がすべての不法行為をきちんと謝罪し、清算しない限りは、日韓関係が修復に向かうことはあり得ないと考えるべきでしょう。

その意味で、すべては韓国側にボールがあるのです。

終戦の日に考える:日韓関係破綻に備えよ

日韓の国交正常化以降、日本は本当によく辛抱してきたと思います。

日本国内ではこれまで、

北朝鮮や中国の脅威を考えたら、日本が『大人の対応』をとり、韓国の不法行為を容認してやるというのも仕方がない

という考え方が支配的だったことは間違いありませんが、さすがにここまで不法行為が連続するならば、日本もそろそろ考え方を変えるべきでしょう。具体的には、

北朝鮮や中国の脅威が増すかもしれないというデメリットを甘受したうえで、韓国には日本に対する不法行為の数々を清算させるべきだ

という考え方です。

もちろん、日米韓3ヵ国連携という現実を踏まえるならば、今すぐ日韓断交に踏み切ることはできません。日本国内では憲法改正も実現していませんし、韓国のことは、せいぜい「戦略的に放置する」のが関の山でしょう。

しかし、日韓関係を日本の方から積極的に改善させる必要はありません。

いや、むしろ、日本の側から日韓関係破綻のトリガーを引くことは避けつつも、日韓関係が破断したときへの備えを怠らないことが重要です。

いずれにせよ、今回の終戦の日については、「戦うべき局面で戦わなかったこと」が現代の日本にどんな禍根を残しているかについて、改めてじっくりと考える機会にしたいものです。

(※なお、本日以降、余裕があれば、「韓国との戦い方」についての考察を掲載したいと思いますので、あわせてご期待ください。)

新宿会計士:

View Comments (31)

  • 一連の反日運動が上滑り気味。
    ここは反安倍に的を絞ってと。
    そういった指令が青瓦台周辺から出されたのだと思います。

  • 得意のツートラックの変形版かと。ノージャパンは都合が悪い、それなら、という浅はかな考え。韓国にはツートラックフレームが其処彼処に有りますねぇ。

  • 慰安婦合意に伴う基金設立は日本と韓国で10億ずつ拠出とか何とかのネット書込みもあったのですが、フェイクなんですかね。
    まあ、今回の日本から安倍へのシフトは国際批判をかわすスケープゴートだと思います。日本からお盆休みで観光客も多い時期ですし。
    それにしても、デモで全員が同じプラカードや印刷物を持っているのって違和感がありますね。普通は手作りなんですが。官制デモとしか思えない。

    • 昨日8/14。TBSの「ひるおび」で、コメンテーターが、韓国の大学生は反日デモに参加すると社会活動として単位がもらえるって言ってましたよ。
      曲解すれば、反日活動しないと大学卒業できないとも考えられる。

  • 不買運動を徹底するとスマホも使えない。
    原始生活に戻りたくない、ということなのでしょう。

    戦いの基本は敵の分断を図ること。
    日本国内のATM、共同通信と歩調を合わせているようだが、
    パブコメ95%の力は大きい。
    これだって一時は98%だった。
    どう考えても、安倍総理支持でない人も、対韓政策では安倍総理を支持している。
    (私もそう)
    残り5%が全部親韓でもないでしょう。かならず、「どちらともいえない」が入ってくるからもっと少ないと思う。

    「慰安婦」20万人?
    いわゆる「南京大虐殺」とされるものが、30万人とされているが、
    原爆の犠牲者が20万人と言われていた時期なので、原爆の犠牲者数が国際社会で問題にならないように30万人にした、という説があったが、私的にはこの説明が一番しっくりきた。
    「慰安婦」もこの流れで創作したのでしょう。

  • 韓国や北朝鮮は主張にロジックがあるかどうかは気にしてませんね。
    自分が得かどうかすら最優先ではないと思われます。
    相手が嫌がるかどうかが全てにおいてに優先してるようにみえます。この意味では、北朝鮮はまだ体制護持という目標に素直な面もあるので、韓国にくらべればまだまだ韓国度が足りないと言うべきなのかもしれません。
    そんな「相手が嫌がることが最優先」な韓国にとって、NO アベ運動は日本の社会を分断し、日本の社会を多少なりとも困らせようとするのが目標なのでしょう。
    効果がゼロではありません。反安倍に染まってるは日本人の1割くらいはおり、その勢力を多少なりとも支援することにはなるからです。

    彼らの嫌がらせは自爆テロみたいなものなので、無視すれば被害を受ける。取り押さえても取り押さえた人間が被害を受ける。馬鹿らしいやり口ではあっても、有効に抑える手段はなかなかないですね。

  • 韓国は表面上は民主主義を語っていますが、実は民主主義を理解していないということがよく分かります。では何を理解しているのかというと、やっぱり北朝鮮の金正恩体制なのです。

    韓国人は民主主義、自由主義、資本主義などの言葉は知っていても、意味あるものとして理解できるのは専制君主制しかありません。

    ですから、本当に自主的に国を作るとか、運営するとか、あるいは問題を解決するなどのことになると、まるで専制君主制であるかのような行動をします。

    ろうそくデモをしたり、引きずり下ろした大統領を牢屋に入れたり、文在寅の人事や政策決定の方法などを見ても、政府も国民も全部、韓国が専制君主制であるかのように行動しています。

    自分の国だけならまだしも、日本を見ても、やはり専制君主制としか思えないのでしょう。だから「
    NO安倍」なんですよね。

    そういえば、日本の野党も日本が専制君主制だと思っているようで、安倍総理さえ引きずり降ろせば問題が解決し、世の中変わると思っているようです。民主主義というのはそれだけ難しい概念なのかもしれません。

  • 報道によると、大統領演説の内容は抑制的で、「日本が対話に乗り出すなら、喜んで手を取ろう」ということだそうです。
    約束も守らずに、昨日の発言で更に約束を破って、日本に対話しろと、上から命じているように感じます。
    厚顔無恥で身の程知らずの、韓国人の代表として相応しい発言で、日本政府の対話の前提を満足する内容とは、程遠いので対話が実現する事は、当面有り得ないと改めて思いました。
    期待していたGSOMIAのの破棄は、有りませんでしたので、このまま8月24日を迎えるでしょう。
    次の動きは、輸出制限3品の輸出が承認されなかった事案が発生する時か、差押えを現金化した時でしょうか。
    まあ、韓国が色々とパートナーとしては、不適格で有る事は、間違いないですね。

  • 韓国のこの、何も考えて無さそうに見えるところが、かえって脅威に感じられます。

    韓国が国際世論戦で日本より強いと言われている理由は、恐らく思考バイアスの掛け方がうまいのだろうと思います(数打ちゃ当たる的なものも含む)。
    同じ価値観や思考を持つグループは集団で扇動されやすく、最初にYES/NOと答え易い話から始めて同意を得て、思考バイアスを掛けます。
    憲法9条の例で言えば、最初に戦争反対かと話を始めて、安倍が改憲して戦争を始めようとしている、だから戦争反対なら憲法9条を死守すべし、という具合です。

    NO安倍と言い出したのも、彼らは日本人を扇動しようと手を変えてきました。これは成功しそうにないので、それが分かれば、また変えてくると思います。
    そのうち、韓国に譲歩しなければ戦争が起こるぞ、安倍のせいで戦争が起きてもいいのか、などと言い出す可能性もあります。

    結局何が言いたいのかというと、単純化された(頭が良くないように見える)話の方が、集団への思考バイアスという意味では効果があります。はまると怖いです。
    放射能もその手の話です。
    日本側も馬鹿にせずに、そういった扇動に動じないように意識を高めておく必要があります。

    逆に判断に予備知識が必要な正論から始めると、相手は瞬間的に判断できず、無意識に面倒だと思います。
    その点で不利になります。
    従って、次の記事のように、河野外相が「サンフランシスコ講和条約の見直しにつながる」という論点を持ち出したのは正しいと考えます。

    https://www.jiji.com/jc/article?k=2019081400838

    条件反射で、それは駄目だと判断できるからです。

    • 韓国はオオカミ少年の中の超精鋭ですから、発言を耳に入れること自体がナンセンスです。
      ましてや発言内容を理解しようと努力する民族(日本人優しすぎ)

      見てもいけません。近づいてもいけません。
      でもいつも相手から寄ってくる。

      穏便に済ますには引越すか気配を消すくらいしか……

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     結局のところ韓国は、「日本が韓国の都合を忖度しないのは、けしから
    ん」ということではないでしょうか。だから「日本の総理は、安倍総理で
    はなく、(韓国の都合を忖度する)別の人に換えろ」と言いたいのでしょ
    う。もしかしたら、「(議員内閣制だと、最低でも議員の過半数を占める
    政党を作る必要があるので、大統領制にして、鳩山由紀夫を大統領にすべ
    き」か「鳩山由紀夫を与党の党首にしろ」と言いたいのかもしれません。

     駄文にて失礼しました。

  • 「NOジャパン」から「NO安倍」に切り替えた韓国の皆さん。勘違いしてみえるようですが、
    安倍政権の貴国に対する姿勢は、多分、私たち日本人が長い間、切望していたものです。

    これまでの日本政府は、米韓同盟と日米同盟で、自国の安全保障を人質にとられて、なすすべもなく、あなたがたからの、いわれないヘイトに耐えてきました。
    しかし、あなたがたが選んだ現政権のなりふり構わない親北政策で、それが大きく変わろうとしています。
    何度もご説明したかと思いますが、あなたがたが「報復だ(何の報復なのですか?)」と騒いでいる日本の措置は、報復ではなく、あなたがたの杜撰な輸出入管理から、日本の輸出入管理を自衛するものです。
    徴用工問題や慰安婦問題はこれから、国際司法裁判に向かいます。その判決前に実害が出た時点で、官民ともで対応がとられるとは思いますが、貴国からの攻撃に対して、日本も自衛権をもつのですよ。
    あなたがたのやりたい放題に悶々としてきた私たち日本人は、こちらのWeb主様がこうおっしゃるように覚悟を決めております。

    >「北朝鮮や中国の脅威が増すかもしれないというデメリットを甘受したうえで、韓国には日本に対する不法行為の数々を清算させるべきだ」

    あくまでも、あなたがたからですが、「GSOMIA破棄だ」「韓日国交断絶だ」と言われるのであれば、甘んじて、それをお受けする覚悟もできております。
    貴国には、ここに至った日本人の深い怒りと覚悟を知っていただきたいですね。

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