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N国党をどう見るか NHKと「国民の敵」論

産経ニュースに、今般の参院選で議席を得た「NHKから国民を守る党」(N国党)の立花孝志代表の発言が紹介されています。これによると、立花氏は「NHKのスクランブル放送化」と引き換えに、憲法改正の発議に賛同する意向を示したのだとか。なかなか興味深い考え方だと思います。「N国党」には「ワンイシュー政党だ」といった批判があることも事実ですし、同党がいかなる政党なのかについてはまだ見極めが必要ですが、それでも立花氏が既存政党と丁々発止のやり取りを通じて自党の政権公約を実現しようとする能力があるとすれば、それはそれで面白いと思います。

「N国党」とNHK

以前から当ウェブサイトでは、NHKの財務諸表分析を行っています。

最新版は『NHKこそ「みなさまの敵」 財務的には超優良企業』に掲載したとおりですが、簡単にいえば、NHKは職員1人あたり1550万円という巨額の人件費を負担しつつ、内部に1兆円を超える金融資産を蓄えている、という話題です。

https://shinjukuacc.com/20190627-01/

もっとも、NHKの「職員1人あたりの人件費」水準は、年々引き下げられています。やはり、NHKが公表する財務諸表をねちねち分析する、当ウェブサイトのような意地悪な論者が増えたためでしょうか。

もしかしたら、NHKは人件費水準を引き下げ、その分、いわゆる「フリンジ・ベネフィット」(おカネ以外の経済的利益)の水準を上昇させているだけなのかもしれませんが、この点については現時点でどうにも検証が不可能ですので、あくまでも「仮説」の域に留めておきたいと思います。

それはさておき、産経ニュースに非常に興味深い記事を発見しました。

NHK改革なら改憲賛同 N国党代表がネット番組で(2019.7.24 00:22付 産経ニュースより)

産経ニュースによると、「N国党」、すなわち「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表は23日のインターネット番組で、NHKの「スクランブル放送」を実現する場合には、憲法改正の発議に賛同する意向を示したそうです。

なかなか興味深い考え方です。

個人的には、スクランブル化も憲法改正も、いずれも支持できます。この下りだけを読むと、立花氏の頑張りには期待したいところです。

NHKの問題点

ただ、その一方で、「N国党」をどう見るかについては、いろいろな考え方があるというのが実情でしょう。

当ウェブサイトでは以前から、「国民の敵」を次のように定義して来ました。

有権者や消費者が与えた以上に不当に大きな権力、社会的影響力を持ち、国益を妨害する組織・勢力

いうまでもなく、日本は自由・民主主義国家です。

当然、日本国内で大きな権力や社会的影響力を持っている組織は、有権者の選挙や消費者の選択の結果、そうなっているべきであり、それ以外の手段で不当に大きな権力や社会的影響力を持つことは、社会正義に照らして許されません。

それなのに、財務省は予算の入口と出口を一手に握ることで、国全体のカネの流れを支配しており、増税原理主義という誤った考え方で日本経済に悪影響を与え続けていますし、虚報、偏向報道を通じて有権者の投票行動を歪め続けているマスコミも大きな問題です。

とくに、マスコミの多くは新規参入を阻んでおり、地上波テレビ局や日刊新聞社をあらたに創設するのは、至難のわざです。そして、マスコミは同一資本系列が少数のメディアを独占しており、たとえば在京民放全国ネット5局は、全国紙5紙と同一の資本系列にあります。

そして、これらのマスコミのなかでも特に大きな問題が、NHKです。

民放各社や新聞各社の場合、極端な話を言えば、売上高が低迷すれば倒産しますし、倒産すればその事業から撤退せざるを得ません。

しかし、NHKの場合、視聴率がゼロになったとしても、絶対に倒産することはありません。なぜなら、NHKは放送法という法律で、「放送を受信することができる設備を設置した者は、NHKと契約しなければならない」と定められているからです。

つまり、視聴者としては、NHKがどんなに腐敗していたとしても、どんなに経営努力を怠っていたとしても、テレビを持っていればNHKと契約しなければならず、NHKに受信料を取られてしまうのです。

これなど、「消費者の選択によって、NHKを放送事業から退出させる」ということができないという意味において、明らかにNHKは存在自体が自由・民主主義に背いており、また、放送法の規定は日本国憲法に定める私有財産権を侵害していると言わざるを得ません。

国を動かすのは国民

この点、「N国党」に対しては、「ワンイシュー政党だ」、「ポピュリストだ」、といった批判があることは事実でしょう。当ウェブサイトとしても、現時点では判断材料がなさすぎるため、こうした「N国党」に対して寄せられた批判について、「正しい」とも「誤っている」とも申し上げるつもりはありません。

ただ、1つだけ事実を申し上げるならば、「N国党」は今回の参院選で、党代表1名を国会議員として国会に送り込むとともに、政党要件を満たした、ということです。このこと自体、NHKの在り方に対して疑念を抱いている日本国民がいかに多いかという証拠でしょう。

もっとも、当ウェブサイトとしては、「N国党」や国政政党に相応しい見識と実力を備えているのかどうかについては、これから見極めが必要だと考えています。

たとえば、「実現不可能な公約を主張し続けるだけ」「自分たちの関心のあることさえ何とかなれば、あとは国の政策はどうだって良い」というスタンスだとすれば、それは極端な話、立憲民主党や日本共産党などの無責任野党と、やっていることはまったく同じです。

しかし、政策を実現するために、複数の政党と折衝し、ときとして是々非々で政策論議を交わすというのであれば、これは非常に面白いことになるかもしれません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ところで、安倍政権は「2020年までの憲法改正」に前向きですが、私は最近、憲法改正よりも先にやるべきことがあるのではないかと思うようになりました。

それは、「電波改革」です。

何があっても、選挙には絶対に行くべし』などでも申し上げましたが、基本的に有権者や消費者が選択していない組織が大きな権力、社会的影響力を持つことは、社会正義に反します。

ただ、日本の場合は「官僚機構が複雑な政省令を書き、情報を握る」、「マスコミ業界が記者クラブを通じてそれらの情報を独占的に受け取る」、「マスコミが野党を意図的に擁護する偏向報道を行い、その結果、選挙で野党が一定の議席を得る」、という構図があります。要するに、

  • 選挙で選ばれたわけでもない官僚が権力をふるうこと。
  • 選挙で選ばれたわけでもないマスコミ記者が国民の代表を騙ること。
  • 選挙で多数を得ていない野党が国会審議を妨害すること。

という流れですね。

ただ、この「官僚→マスコミ→野党議員」という負の連鎖については、真ん中の「マスコミ」を改革することで、ずいぶんと良くなるとも考えています。まだまだマスコミの力は強いのですが、それでもインターネット上で信頼に足る情報源が増えてくれば、おのずからマスコミの影響力は弱まります。

何より、今回、「N国党」が国会に議席を得たこと自体、自民党にとっても「NHK改革が急務であり、民意だ」ということが伝わるはずです。

その意味では、今後6年間の「N国党」と立花氏の行動には注目したいと思います。

新宿会計士:

View Comments (36)

  • 本文に書き忘れたので追記。

    NHKが頑なにスクランブル化を拒絶する理由は、やはり、自分たちの組織のあり方が間違っていることを、自分たちでも理解しているからではないかと思います。

    もし自分たちが「公共放送」としての矜持を持つなら、堂々としていれば良いのであり、スクランブル化を受け入れて、それでも消費者がNHKを選んでくれるという自信を持てば良い。

    スクランブル化を拒絶する現在のNHKの姿勢そのものが、現在のNHKがスクランブル化で消費者から選ばれないと理解している証拠でしょうね。

  • ウチの選挙区では、自民党が盤石そうだったので、NHKから国民を守る党の候補者に票を入れました。比例代表ではもちろん自民党です。N国が信頼に値する政党だとは思いませんが、NHKの問題を国会に反映させて欲しいという願いを込めました。

    まさに「NHK改革が急務であり、民意だ」と言いたかったのです。

  • https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20190722-00135151/
    『NHKから国民を守る党』はなぜ議席を得たのか?

    このコラムを見たら、N国の党首がHELLSINGの少佐に見えるようになりましたw。

    参議院の存在意義を考えたら、ワンイシューの泡沫政党も結構なんじゃないかなと思います。
    今回の「自民党の敗因」を分析していて思ったのは、宮城県での

    消費税 10% vs 消費税 0%の戦いの構図

    に持ち込んで勝利した野党候補の卑劣さです。

    まだ消費税率維持を主張するならマシであったと思いますが、消費税 0%の実現可能性はそれこそ0%です。
    できもしない公約を・自分でも信じていない公約を掲げる候補のゲスさには本当に嫌になります。
    それに比べたら、N国の党首の「怨念」ともいえる唯一の公約の美しいまでの純粋さよw

    「諸君。私はNHKが嫌いだ。」

    とかネタを作ろうかと思いましたがさすがに自粛。

    • りょうちんさんが紹介するので読んでみました。
      古谷経衡は相変わらず文字数だけ多くて中身は薄くズレた評論が得意ですね。
      りょうちんさんとは真逆と言えましょう。

      ネット右翼の古参票や色モノ票を否定はしませんが、外交・安保は評価できても内政を評価できない自民党やノーイシューの野党に比べて、ワンイシューのN国に魅力を感じた有権者の存在を彼は認められないんでしょうかね。

      実は私も小選挙区はN国に入れたクチです。
      衆参同日を回避した時点で自民の改憲意欲を疑いましたし、何があろうと外交・安保の姿勢が揺らぐ心配が無いと思いましたから、自民に投票する意味が無かったんですよね。
      もし衆院選で政権を取りそうな勢いだったらワンイシュー政党には投票しません。

  • 更新ありがとうございます。

    N国党は、大変興味深い政党です。ただ、私の選挙区ではポスターが貼られているところと、人の通行が少ないところは貼られてませんでした(笑)。貼る人の人数不足か?

    改憲もNHKの廃局もとい、スクランブル放送もお願いしたい。しかし1議席取ったのは泡沫政党としては頑張ったほうです。社民党は何しとんの(嘲笑)?え、1議席?何年やってんねん!

  • 電波改革、憲法改正本当望みます。
    自民党の揚げ足取りばかり流す 自分達に都合の悪い事は報道しない自由
    韓国の優遇撤廃措置は輸出規制じゃないのに規制と言い続ける
    今はネットがあるのでN国党が躍進しましたが、まだテレビで判断してる方も多いと思います。
    NHKが本当にめちゃくちゃなのは新宿会計士様のおかげでよくわかりました。

    選挙はテレビが色々な意見を平等に発信していたら結果は多少違ったのじゃないかなと悔やみます。
    テレビにはもっと自分の将来の事や国の事に関心が持つような公正で正しい情報を発信する存在になって頂きたいです。

  • いつぞや小生のブログでN国党を支持すると表明しましたが、議席をとれて喜ばしい限りです。自民党も野党も見習ってほしいと思います。

    何を見習うかというと、政策を争点にすることです。政策について議論して、日本をより良い国にしていくことです。政党の中では自民党が一番政策について考えているように見えますが、それでも至らぬところが多々あります。それを野党は全く追求しないで、反安倍闘争に明け暮れしています。

    私を含めほとんどの人が、かつての民主党政権は失敗だったと思っているでしょうが、それでも、民主党には政策があり、公約があったのですよね。ほとんど嘘みたいなものでしたが、それでも、国民は期待して投票したはずだと思います。自民党を引きずり下ろすことにだけ乗ったのではないでしょう。きちんとした政策もなしに選挙に出てくるなんて、そもそも政治家の資格なしだと思います。

    今回選挙に勝った自民党にしても、消費税は上げることで決まったようですし、憲法改正はあまりやる気がなさそうだし、このあと一体何をするつもりなのかよく見えません。日本にはまだまだ良くしなければならないところ、疑問を感じるところなどがたくさんあると思うのですが。

  • 小選挙区ではN国党、比例では自民党に投票しましたが、逆にすればよかったですw
    いつもは小選挙区は維新なんですが、うちの選挙区は音喜多っていう風見鶏だったもんで、、、。

    • 私も小選挙区はN国党、比例は自民です
      このコメ欄だけで三人目ですね、そういう投票したのw

      • まぁ比例は死票にほぼならない分票数がダイレクトに議席に影響しますからね。
        意味ある確率の高い一票を博打に投げるのは躊躇う人は多いかと。

        逆に本気でN国党に議席取らせたいなら勝ち目ない選挙区票じゃなくて比例に入れないとしょうがないんですけども

  • 自分は小選挙区は自民党候補、比例区はN国党と書きました
    政見放送等は何も見ずに自民かN国か少し悩みましたが
    先般NHKがネットに触手を伸ばしてきた事に反発を覚えていましたので
    少しでも抵抗してみせたいと思いN国党にしました

  • 売名成ったN国党、今後はパブリックな場でのネタを一部封印して真剣さも出していけば支持も広がっていくのでは。政党要件を満たしたことで発言の重みがはるかに増しますし、潜在的な支持者数はプロ市民など比較にもならないレベルだと思うのでw
    問題は人材の確保と育成ですね。現状無理やり頭数を揃えただけで、大変アレなありさまですからw ワンイシューについては問題を感じません。現代的なシンプルさ で選挙にはむしろプラスまであるし、少なくとも旧来のテレビタレント型ポピュリズムよりははるかに上等な代物だと思います。うっかり政権を取ってしまったら自民と連立組んで実務を丸投げすればいいんですwww
    これからもNの許されざる実態を広く国民に周知していってほしいですー。

  • テレビの地デジ化により活用可能な電波帯域が増えたとのことですが、
    この際テレビの電波放送を一切止めて、
    空いた帯域を携帯電話や広域無線通信インターネットで活用すれば良いのではないでしょうか。
    そして、テレビはインターネット経由での放送に完全移行すれば良いと思います。

    年々視聴率が落ちており、今時双方向通信でもなく夜の何時間かは放送が止まり全く活用されていない、
    そんな非効率なメディアに国民の財産である電波帯域を占有させることは許されないと思います。

    テレビ局が格安な電波使用料で電波帯域を占有していることは、
    現代日本に残る最悪の既得権益の一つです。

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