本日の韓国メディア『朝鮮日報』の記事によると、日本のメディアや政治家らが「反韓世論」を拡散しているのだそうです。こうした言説が出てくること自体、韓国側にとっては、ここ数ヵ月、日本で韓国に対する反発が急激に膨らんでいることの理由が理解できていない証拠ですが、ただ、それと同時に、単純な「嫌韓論」と「韓国ヘイト」に基づく議論には注意が必要でしょう。私自身、こうした一見すると感情的に激高してしまいがちな問題ほど、「熱い気持ちと冷静な頭脳」により対処することが必要だと考えていますし、また、皮肉を１つだけ言うならば、現在の韓国の姿勢は日本国憲法によって平和ボケした日本国民の横っ面をはたくという効果もあるのだと思います。

良識的な議論と良識的なコメント

当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』は、もともとは「新宿会計士」というペンネームを持つビジネスマンが、自分なりの専門知識ないし考え方をベースに、「読んで下さった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に、政治、経済などの話題を紹介する、というサイトです。

もっとも、「読者の皆さまの知的好奇心を刺激するような記事を掲載する」という私自身の理念が実現しているかどうかについては別問題ですし、このあたりは読者の皆さまによる厳正な判断に委ねたいと思っていますが、少なくとも私自身は「そういうサイトでありたい」と思って運営しています。

ただ、最近になって、明らかに好ましい現象が生じて来ました。

それは、数多くのコメント主様から、本当に傾聴に値するさまざまな意見が出て来たからです。

これらのコメントの中には、私自身の主張に賛同しないものも多数ありますが、たいていの場合、賛同しないならしないなりに、「どの点において賛同しないのか」を理路整然と明らかにして下さっているのです。これは本当にありがたい限りです。

どうしても、私は１人でウェブサイトを執筆しているため、独善的な議論、現実を見ない議論、説得力のない議論という罠にはまりがちです。しかし、当ウェブサイトにおいて、こうした罠に陥りそうなときには、たいてい、読者の皆さまから良識的なコメントが頂けるのです。

これは本当に助かります。

「嫌韓」と一線を画した韓国論の必要性

こうしたありがたいコメントのひとつが、当ウェブサイトは「嫌韓と一線を画している」というお褒めの言葉です。

というのも、最近の傾向でいえば、「政治、経済の話題」のなかでも、やはり「韓国論」に対する皆様方の興味、関心が強いようだからです。

当ウェブサイトは「韓国専門サイト」ではありませんが、私自身、母親（故人）が在日韓国人二世だった（※ただし生前に日本に帰化済み）という事情に加え、この国が現在、日本との関係を終わらせようとしていることを踏まえ、どうしても同国に対する記事が増えてしまう点はご了解いただきたいと思います。

こうしたなか、当ウェブサイトが世の中の多くのウェブサイトと大きく異なる点が１つあるとすれば、私自身、「嫌韓」とは距離を置いている、という点でしょうか。

いや、もちろん、韓国のことが「好きか、嫌いか、どちらかを選べ」と言われれば、心情的には「嫌い」と答えてしまうでしょう。人間には誰しも「感情」がありますから、自分のことを嫌っている相手を「好きになれ」といわれても、それは不可能です。

しかし、それと同時に、「韓国は嫌いだから、日韓断交を叫ぶ」、といった短絡的な思考だと、本質を見失います。国際社会においては、どんな「友好国同士」であっても何がしかの争いは発生し得ますし、どんな「敵対国同士」であっても、何かしら協力しなければならない局面が到来することもあるからです。

韓国メディア「日本で反韓世論拡散」

ただ、「冷静な韓国論が必要だ」という建前は重要ですが、やはり、先日の韓国の文在寅（ぶん・ざいいん）大統領による「日本は謙虚になれ」発言を受けて、日本ではどうしても韓国に対して激高する人が増えていますし、短期的には、それもある意味ではやむを得ない話でしょう。

こうしたなか、本日、韓国メディア『朝鮮日報』（日本語版）に、こんな記事が掲載されていました。

文大統領の対日批判発言に日本の5大日刊紙が一斉に批判社説（2019/01/12 09:55付　朝鮮日報日本語版より）

（※なお、朝鮮日報の場合、記事公表日から数日経過すると無料版で閲覧できなくなります。全文を確認しておきたいと思う方は、早めにリンク先をご参照ください。）

リンク先の記事について、私の文責で、要点を抜粋し、日本語表現を整えたうえで、箇条書きにしておきましょう。

• 11日朝、日本の５大全国紙（朝日、読売、毎日、日経、産経）は、示し合わせたかのように、文在寅大統領が10日の記者会見で「日本政府は謙虚な立場を取るべきだ」と述べたに対して、社説で批判した。めったにないことだ。
• 菅義偉官房長官も同日午前の記者会見で、「（文氏の発言は）韓国側の責任を日本側に転嫁しようというものであり、極めて遺憾だ」「協定違反の状態を見直す責任を負うのは当然、韓国側である」と述べた。
• 同日、在日本大韓民国民団（民団）の新年会に出席した、韓日議連に所属する韓国の議員らに、在日韓国人たちが韓日関係悪化に伴う懸念を伝える姿も目についた。
• 日本では、レーダー照射問題や文大統領の記者会見などで韓国に対する世論が急速に悪化しており、自民党では韓国を対象としたビザ免除協定廃止や関税引き上げ措置などの声も上がっている。

私が見たところ、朝鮮日報の記事は韓国紙にしては珍しく、感情を抑えており、事実関係を淡々と伝えようと努力しているように感じられました。

ただ、この記事を読んだ人は、あたかも「日本の５大メディアなどが反韓感情を拡散しようとしている」、「菅義偉（すが・よしひで）官房長官を初め、日本の自民党の政治家らがこうした反韓感情を利用しようとしている」、という印象を抱くかもしれません。

つまり、「韓国が日本に対して何らかの『非常識なこと』をしたから日本が怒っている」のか、「たいした問題ではないのに、それを日本のメディアや政治家が大いに煽り、その結果、日本の反韓感情が高まっている」のか、この記事を読んだだけではよくわからないのです。

国際プロパガンダに要注意！

もちろん、当ウェブサイト自体、日本語で執筆されていますし、当ウェブサイトの読者の大部分は、おそらく日本国民です（※日本国内に居住しているとは限りませんが…）。

当然、当ウェブサイトの読者の皆さまにとっては、ここ最近の韓国側の非礼の数々が日本の世論の怒りに火をつけた、ということは、わざわざ当ウェブサイトで説明しなくても、「当然の前提」として理解されているに違いないと思います。

ただ、これを外国から見たら、どう思うでしょうか？とくに、何ら地理的、歴史的な知識がない人がこれを見ると、「なんだかよくわからないが、隣国同士もめてるらしい」と感じるのではないでしょうか？

私たち日本国民は、いきなり「南北スーダンの国境紛争」や「クリミア半島の帰属問題」について話題を振られても、私のような「国際情勢オタク」でもない限り、おそらく大多数の人は「よくわからない」と答えるでしょうし、わざわざ調べようとも思わないでしょう。

実際、世界の人々のすべてが国際法や軍事に詳しいわけでもないでしょうから、今般、日韓関係が悪化している件についても、「日本は韓国に対し、過去に残虐非道なことをやっておきながら、ちゃんと反省もしていないことが原因に違いない」とばかり、韓国の肩を持つ人もいるはずです。

だからこそ、日本にとっては当たり前となっている認識についても、「当たり前だから議論する価値はない」などと考えるべきではありません。

実際、以前も当ウェブサイトで紹介した「レーダー照射事件に対する韓国側の反論動画」を巡っても、韓国政府は全世界に向けて８ヵ国語で紹介しているそうです。

• 韓国語版
• 英語版
• ロシア語版
• 日本語版
• スペイン語版
• フランス語版
• 中国語版
• アラビア語版

もしかすると、韓国では、「どんな間違った主張であっても、ウソも100回言えば真実になる」と本気で信じられているのでしょうか？

ちなみに、いずれの動画も（なぜか）広告が入っていて、再生回数に応じて広告料がYouTube側から韓国政府に支払われるという仕組みだそうです。個人的には、あの低クオリティな動画で広告料まで取るとは、ハッキリ申し上げて下劣だと思います。

ただ、こうした努力が行われていることと比べると、やはり、残念ながら日本は国際プロパガンダ戦で明らかに劣位にあります。

朝日新聞が捏造した「慰安婦問題」が、いまや英ＦＴや米ＷＳＪなどを含め、日本以外のほぼ全世界のメディアから「旧日本軍による戦時性的奴隷の問題 “the issue of the wartime sex slaves so-called ‘comfort women’ ”」と報じられていることを、忘れてはなりません。

韓国のウソの宣伝戦は、まさに日本人の名誉にかかわる大問題なのです。

「私は韓国に感謝します」（皮肉ですが）

もっとも、少し世の中のウェブサイトに苦言を呈しておきますと、いくら韓国の行動が常軌を逸しているからといって、また、いくら韓国のことが嫌いだからといって、韓国のことを「バ韓国」（ばかんこく）と罵るべきではありませんし、韓国の人たちのことを差別的な用語によって罵倒して良い、ということはありません。

韓国が常軌を逸しているからといって日本が常軌を逸して良いという話ではありませんし、韓国が国際法を破るからといって日本も同様に国際法を破って良いわけではないのです。

私自身、悪質な韓国の「日本貶めプロパガンダ」と戦うためには、あくまでも「熱い気持ちと冷静な頭脳」が必要だと考えています。

また、いつも申し上げているとおり、日韓関係の問題は、日本の国内問題の「合わせ鏡」です。

結局、日本国憲法前文にいう「平和を愛する諸国民の構成と信義に信頼する」という欺瞞に満ちた美麗字句によって、日本国民の思考が停止し、「軍隊を放棄すれば平和になる」という誤った理論が、「日本が誠意を示せば韓国は理解してくれる」という歪んだ現実を生んでいるのです。

このように考えていくならば、韓国が日本に対して常軌を逸した行動を取ってくれていることは、ある意味、平和ボケした日本人の横っ面をはたいてくれる効果がある、という言い方もできるのかもしれませんね。

その意味で私は文在寅大統領閣下含め、現在の大韓民国に対して、深く感謝申し上げたいと思うのです（※もちろん皮肉ですが…）。