米国などのメディアの報道によれば、トランプ米大統領は来年1月か2月ごろ、北朝鮮の独裁者である金正恩との2回目の首脳会談を検討していると述べたそうです。ただ、米国が北朝鮮核問題にどう対峙するつもりなのか(あるいは対峙しないつもりなのか)については、米中貿易戦争とも絡めて考察する必要がありますし、さらに大きな目で見ると、米国が中国、南北朝鮮などの東アジア新秩序をどう考えているのか、という論点ともつながってきます。これについて詳しく論じることは現段階では著者の力量を超えますが、何回米朝首脳会談をやっても、北朝鮮が核放棄に応じることはあり得ない、とだけ申し上げておきたいと思います。
2回目の米朝首脳会談
昨日、複数のメディアの報道によれば、ドナルド・J・トランプ米大統領が、来年初めごろに北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)と2回目の首脳会談を検討していると述べたそうです。
Trump says next meeting with North Korea’s Kim likely in early 2019(2018/12/02 12:51付 ロイターより)
ロイターによれば、トランプ氏は米大統領専用機「エアフォースワン」の機内で、来年1月か2月に米朝首脳会談を実施したいと考えていると述べたそうです。また、その具体的な場所としては3ヵ所ほどが検討されている、としています。
これに加えてロイターは、トランプ氏がこの米朝首脳会談とは別に、どこかのタイミングで金正恩を米国に招きたいと述べた、ともしています。
また、同記事では、トランプ氏が習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席との間で土曜日、「朝鮮半島の非核化」で合意したとしつつ、先月はペンス副大統領がNBCに対し、北朝鮮が非核化に向けた「確固たる計画を示すことが必要だ」と述べた、などと紹介しています。
President Trump says next meeting with North Korean leader Kim Jong Un likely in early 2019(2018/12/02 19:13付 CNNより)
一方、CNNの報道でも、トランプ氏が「来年1月か2月に米朝首脳会談を行いたい」、「候補地は3ヵ所ある」、「トランプ氏が金正恩を米国に招くつもりだと述べた」、などと記載されています。
おそらく、この情報は、トランプ大統領がエアフォースワンの機内で記者団に対して明らかにしたものを、各メディアが報じているだけのものでしょう。
その背景は?
では、なぜトランプ氏が急に北朝鮮との2回目の首脳会談を行うと述べたのでしょうか?
前回(6月12日)の首脳会談後、北朝鮮の非核化に向けた動きは、完全に止まっています。表向きの理由は、約半年が経過する中で、トランプ氏が金正恩に対し、非核化を再度、確認するというものでしょう。
しかし、この報道が習近平国家主席とのアルゼンチンでの「ワーキング・ディナー」後に出てきた、という点については、注目に値します。ここで、ホワイトハウスが公表している声明文を読んでおきましょう。
Statement from the Press Secretary Regarding the President’s Working Dinner with China (2018/12/01付 ホワイトハウスHPより)
私が気になった点を要約し、日本語訳して箇条書きにしておきます。
- 習近平氏は薬物のフェンタニル(鎮痛剤)を規制薬物に指定し、それを米国に輸出した者に法に基づき最高刑を科すことで合意した
- その引き換えにトランプ氏は2019年1月から予定されていた、2000億ドル相当の輸入品に対する関税を25%に引き上げず、現段階では10%に据え置く措置で合意した
- 中国は米国製の農産物、エネルギー、産業などの製品を米国から購入することで、米国の貿易赤字を減らすことで努力する。さしあたり、今すぐ農作物の購入を開始する
- 両首脳は知財保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サイバー窃盗、サービス、農業に関する構造改革交渉を開始することで合意した。90日以内に合意に達しない場合には関税は10%から25%に引き上げられる
- 北朝鮮に関してトランプ、習両大統領は「核のない朝鮮半島(a nuclear free Korean Peninsula)」を実現することで合意した
要するに、いったんは中国との貿易戦争を巡っては一休みとし、その間に米国としては北朝鮮非核化問題に再び取り組む意向を示した、という、トランプ政権の基本戦略が見て取れるのです。
米朝首脳会談が実現しなければ?
ところで、北朝鮮の核開発問題を解決するために、一番手っ取り早いのは、日米両国に対して中国とロシアの協力が得られることです。
極端な話、トランプ大統領、安倍総理、習主席、プーチン大統領の4人が並んで、「北朝鮮の非核化で合意する」と共同宣言すれば、その瞬間、北朝鮮は核放棄をせざるを得なくなります。4ヵ国が金正恩の亡命先を準備してやれば、なお理想的です。
逆に言えば、中露両国が北朝鮮の非核化で協力してくれないからこそ、ここまで事態が膠着しているのです。今回も米朝首脳会談で出てきた「核のない朝鮮半島」という構想も、「中国が北朝鮮の非核化に向けて米国に協力します」、という意味だと単純に捉えるべきではありません。
また、現時点の少ない情報だけですべてを判断するのは尚早ですが、ひとつだけ明らかなことがあるとすれば、米朝首脳会談が何回行われたところで、北朝鮮が自発的に核放棄に応じることはあり得ない、という点です。
トランプ大統領がどこを「落としどころ」にしているのかは、今ひとつ見えない点ではありますが、おそらく国際的な通商ルールを守らない中国に対しては「徹底的にやる」というのが、トランプ氏、あるいは米国の国家としての意思であり、それと北朝鮮の非核化のどちらの優先順位が高いかという問題に過ぎません。
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あえて私自身の憶測で申し上げるならば、米国は国家としての意思に基づき、中国(やロシア)を弱体化させ、これらの国が抵抗できなくなった状態で、じっくり落ち着いて北朝鮮(と韓国)を処分しようとしているのではないでしょうか?
もちろん、米国が国家意思として、中国やロシアに対峙しようとしている、といった「大がかりな話」について議論し、証明するには、現時点の私には力量が不足しています。しかし、米国の動きを見ながら、日本がどう動いていくのが望ましいかについては、十分に議論することはできます。
ここでは、「北朝鮮の非核化(というよりも北朝鮮という独裁体制の崩壊)が日本の利益である」、という点だけ、指摘しておきたいと思います。
View Comments (9)
おはようございます。
朝鮮半島をどうしていくかは朝鮮、韓国のみをみるのでは誤った判断をしてしまいがちですね。
日米露中(日本ペロチュー♡)朝鮮半島処分、賛成です、
というか国際情勢の流れはそちらに向かいつつあるように思います。
安倍さんが導いている?
ただ、米ロ中に日本はベロチューされすぎて、処分後の責任を日本に押し付けてしまわないか心配なところも。
韓国では日本式漢字「半島」は半分の島ということで侮辱であると認識があるとか。
島国も日本を罵倒するときに用いられますね。
Peninsula(半島)の語源はペニスからきているという俗説もある。島に準ずるからPeninsula?
記事にPeninsulaをみつけて考えてみた。
朝からすみません。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/11/30/2018113080046.html
【コラム】もしソウルに北の特殊部隊が侵入したら
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/11/30/2018113080047.html
【コラム】北の砲撃におびえた8年前の夜、韓国国会の明かりは消えていた
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/11/30/2018113080049.html
【コラム】没落する国家の条件
韓国の朝日新聞なにか焦ってますねえ・・・。殺伐としたニュースの中、ほのぼのニュース。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/12/02/2018120280024.html
韓米首脳の30分会談、米は「略式」と発表も青瓦台は「正式」主張
そんなことに気をつかっている場合だろうかw
< 更新ありがとうございます。
< 北朝鮮は核の廃棄には 、絶対動かないです。それを持つ限り体制保持の命綱だからです。また中露、ましてや韓国は陰に隠れて北に物資を提供している。いくら海上ルートを遮断しても、陸繋がりの為、いくらでも『密輸』は出来る。韓国など統一朝鮮で、核大国を夢想している。
< さて米朝会談ですが、やっても今の枠組みでは決定的な言質を金は与えず、ノラリクラリ逃げる。経済制裁を喰らっている中国としては、ここで米国に一発食らわしたいと思うのは当然ですが、正直に言ってあまり得策ではない。今より親北のカラーを減らすと見る。
< 北はどうするか。日干し、全滅までは我慢出来ないでしょう。米中露日の枠組みで金一族を第3国に逃して、中露の支配下に置く、という絵も描けます。あるいは統一朝鮮、中国の属国で。米国は本当に半島は、要らないと思っているでしょう。
小生、現在の安倍内閣は概ね安心して見ていられます。特に外交でブレないところや、国益最優先を見せるところなどはなかなかのものだと思います(アベノミクスについては及第点に届かずと思っています)。しかし、5年後はどうでしょうか? 安倍晋三の後継者と目される方々もいらっしゃいますが、その脇を固める人材も揃っているのでしょうか? 小生はそこが心配なのです。つまり、少なくとも安倍晋三レベルのリーダーとその仲間達が常に現れ、日本国民はそのような人材を常に選び続けることができるのか? 日本国民がどの程度の慧眼を有しているのか、安倍首相の退陣後にそれが明らかになると思います。
その点、韓国は楽でしょう。どこを見回してもそんなリーダーはいませんし、次期大統領最有力候補がソウルの朴元淳市長です。話を上げればきりがないのですが、今年の夏に彼がし「底辺層の生活を実体験する」との考えでビルの屋上の小屋で一月ほど暮らしたそうです。まず馬鹿なのは、確かにそこで暮らしている人はいますが、どう考えても違法建築です。もともとそこは人が住むところではないのです。ビルの屋上に建て増しするよう設計しているビルなどありません(それなら最初から建ててます)。それからソウルの夏は異常に暑く、今年は35度以上が何日も続きました。エアコンなしではとても眠れません。ビルの屋上とて同じことです(この話を聞いた文在寅大統領が扇風機をプレゼントしたそうです)。恐らくその部屋にもエアコンが設置されているでしょう(エアコンがある時点で何処が底辺層なのでしょうか)。他にもいろいろあり過ぎて詳細は書きませんが、こんなバカな輩が次期大統領になれば韓国はさらに落ちていくでしょう。赤化統一も一段と加速されるでしょう。
駄文にて失礼します
毎々の執筆、ありがとうございます。
トランプ大統領と金総書記の会談が行われる「予定」ですが、
結果的に何ら進展しないでしょう。核も廃棄されず、開発もやめないでしょう。
個人的には、結果的に文大統領が追い詰められる結果にしかならないかと。
要請に従って会談をしてみたが、米国は何ら得られるモノが無く、
北朝鮮も米国から同じ主張をされて平行線(要するに前回の内容の再確認と何らかの追加)
ではないかと思われるためです。
期限を切ることもしないのではないでしょうか。
結果、米国から韓国への信頼感がますます悪化するだけかと。
ただし、これで韓国から北朝鮮への物品横流しが発覚すれば、
セカンダリーサクションも有り得るかな。
失礼しました。
(疲労が溜まっているので、トンチンカンになってたら申し分けない)
米の態度こそが北朝鮮の存続に関係すると考えられる。(?)
超背景には、陰謀論うんぬと言うのがある。(?)
陰謀論の超背景には、"わたしのほかに神があってはならない。"(唯一全知全能)統一概念がある。(?)
統一的であるはずが、神を信じるグループと共産に分かれてプロレスをしている。(?)
どちらも日本を(も)攻撃する。(?)
欧米は全能全能者の勢力範囲と言う事になる。(?)
内部は一応上手く行っている様だが外部(植民地にあたる部分)と差し引きするとどういう評価になるのか?
生き物は年をとって死ぬが、宣伝がうまいので憧れの対象。(特に若者に)(?)
地域としては少ないが、唯一でも共産でもなく、影響の少ないところの方が、マネーは少ないのに、安定していて平均的で自由度がある様に思える。
ぐもんこうする人さん
ノストラダムス的暗示文章は、今どき流行らないように思われます。
「文章は短く、そしてもっと改行を!」
https://shinjukuacc.com/20181125-01/comment-page-1/#comment-16700
についてご考慮くださるよう、よろしくお願いします。
愚塵さん
そのように努力して見たいと思いますが、皆さんのように賢明で論理的な文書が、
自分に書けるかは、?です。
>ノストラダムス的暗示文章
色々と考えてしまいますね。例えば当たるのか、外れるのか、50%なのか、
流行っている界隈はあったりしないだろうなとか・・・
ご指摘、ありがとうございました。
※訂正
全能全能者->全知全能
改行場所がまたイマイチですね。
読みやすい文章は無理かもしれませ。
あしからず。