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赤坂の不動産屋さん、趣味の放送事業が遂に赤字転落

不動産は本業。放送、映像、文化、テロ活動は副業。そのうちの放送事業はついに赤字に転落…。そんな放送局が出現したようです。本来ならば国民共有の財産である電波利用権をほとんどタダ同然で使わせてもらっていながら、地上波テレビ事業で営業赤字を計上できるとは、なかなか斬新なテレビ局だと思います。いっそのこと、放送免許を返上して、得意の不動産事業に特化すれば良いのではないでしょうか?

赤坂の不動産屋、放送が赤字に

TBSの放送事業がついに営業赤字へ!

「赤坂の不動産屋さん」が副業でやっている放送事業が、ついに営業赤字に転落したようです。

株式会社東京放送ホールディングス(以下「TBSホールディングス」)が11月1日付で第Ⅱ四半期決算を公表していますが、連結損益計算書のセグメント別開示を見ると、放送事業が見事に5億円の営業赤字に転落しています(図表1)。

図表1 TBSホールディングス・セグメント別開示
セグメント 売上高 営業利益
放送 1,062億円(-9億円) -5億円(-26億円)
映像・文化 638億円(14億円) 41億円(5億円)
不動産 81億円(1億円) 43億円(-1億円)
連結 1,781億円(6億円) 78億円(-23億円)

(【出所】同社『2019年3月期・第2四半期決算資料』P11より著者作成。億円未満四捨五入、カッコ内は前期【2018年3月期上期】比増減)

ただ、売上高が9億円減少しただけで営業利益が26億円も減少するのは不自然です。

あくまでも私自身の想像ですが、おそらくその理由は、もともとTBSは放送事業部門の損益分岐点が高く、ちょっとした変動ですぐに営業赤字に転落してしまう脆弱な収益構造だからではないかと思います。

損益分岐点とは?

ところで、売上高と営業利益の関係はそんなに単純ではありません。製造業であれば売上原価がありますし、営業経費には人件費だけでなく、減価償却費だの地代家賃だの租税公課(※法人税等を除く)だの、といった項目が含まれています。

ただ、ここでは非常に単純化して、ちょっとした事例を考えてみましょう。

同じ事業を営んでいるA社とB社があったとします。

売上高はA社が50億円、B社が100億円だったとしましょう。つまり、単純に売上高の規模だけで見れば、B社がA社の2倍である、ということです。

しかし、もしA社が低コスト体質、B社が高コスト体質だったとすれば、どうなるでしょうか?

たとえば、A社の営業経費は30億円、B社の営業経費は80億円だったとすれば、どちらの会社も営業利益では20億円です(図表2)。

図表2 売上高と営業利益の関係
区分 A社 B社
売上高…① 50億円 100億円
営業経費 30億円 80億円
営業利益…② 20億円 20億円
利益率…②÷① 40% 20%

(【出所】著者作成)

ここで、利益率(営業利益÷売上高)を見てみると、A社は40%、B社は20%です。

つまり、売上高に対してA社の場合は営業経費が売上高に対して40%増ったとしても、あるいは売上高が40%減ったとしても、何とか営業赤字に転落せずに済みます。

一方、B社の場合は営業経費が売上高に対してあと20%増えるか、売上高が20%減っただけで、営業赤字すれすれになってしまいます。

これが「損益分岐点」です。

損益分岐点とは、売上高に対する営業経費の割合を示します(※ただし、厳密な損益分岐点分析をするためには「直接原価」と「間接原価」に分解する必要があるのですが、ここでは無視します。詳しく知りたい方はBEP分析などの用語で検索してください)。

人員削減はいかが?

給与水準が高すぎませんか?

つまり、A社とB社を比べると、売上高は倍も違うのに、営業利益は同じです。B社は高コスト体質だとも言えますし、A社が筋肉質だともいえるでしょう。

ちなみに「TBSホールディングス」(持株会社)の有価証券報告書(2018年3月期、P9)によれば、持株会社の従業員数は83人(※就業人員)であり、平均年齢は51.5歳、1人あたり1632万円だそうです。凄い話ですね。

ところで、TBSホールディングスの連結損益計算書を見ても、人件費についてはよくわかりません。

というのも、人件費はおそらく、売上原価と販管費に紛れているからです。

2018年3月期の売上高、売上原価、販管費、営業利益は次のとおりです。

  • 売上高…3620億円
  • 売上原価…2482億円
  • 販管費…949億円
  • 営業利益…188億円

販管費に含まれる人件費は200億円ですが、TBSの従業員数は5552人であり、単純計算すると1人当たり400万円(!)に過ぎません。さすがにこれはあり得ないでしょう(※それ以外に臨時雇用者数は平均して3000人程度いるようです)。

このため、おそらく売上原価にも人件費が紛れていると思うのですが、残念ながらTBSの連結財務諸表上、売上原価に配賦された人件費の金額の開示はありません。

ただし、販管費に含まれる人件費が約20%であるということから類推して、売上原価に含まれる人件費が20%(つまり500億円弱)だったとすれば、TBSホールディングス全体の人件費は700億円程度ということであり、逆算で1人当たり1400万円、といったところでしょうか。

不動産業が本業ですか?

ところで、先ほどの図表1に示したTBSホールディングスの3つのセグメントを眺めていると、間違いなく、放送事業は「お荷物」になっています。分かりやすく言えば、現在のTBSとは不動産業を本業としつつ、趣味で放送、映像、文化、テロ事業を営んでいるようなものでしょう。

ここで、もう少し興味深いデータがあります。

少し時点は異なりますが、先ほどの図表1(2018年4~9月の営業利益)に、2018年3月末時点の従業員のデータを貼り付けて割り算してみましょう(図表3図表4)。

図表3 セグメント別1人当たり半期売上高
セグメント 半期売上高(①) 従業員数(②) ①÷②
放送 1,062億円 4,949人 2,146万円
映像・文化 638億円 3,074人 2,075万円
不動産 81億円 110人 7,376万円

(【出所】TBS決算開示資料等から著者作成※ただし従業員数については臨時雇用者を含む)

図表4 セグメント別1人当たり営業利益
セグメント 半期営業利益(①) 従業員数(②) ①÷②
放送 -5億円 4,949人 -103,455円
映像・文化 41億円 3,074人 1,332,466円
不動産 43億円 110人 38,890,909円

(【出所】TBS決算開示資料等から著者作成※ただし従業員数については臨時雇用者を含む)

これで見比べて頂ければ明らかなとおり、放送事業の従業員1人当たり半期売上高は2146万円であり、単純に2倍すれば年間4300万円程度でしょうか。しかし、営業利益で見れば従業員1人当たり10万円少々の損失を生んでいるのです。

また、映像・文化事業に関しては、一応はプラスの営業利益を計上しており、つまり採算が取れているということです。しかし、不動産事業に関しては、1人当たり7376万円の売上高、3889万円の営業利益をもたらしています。

私がTBSホールディングの経営者だったとしたら、放送事業の従業員数を半減させて、もっと採算を改善しようと思いますけれどもね(笑)

テレビ事業は歴史的使命終えた?

YouTubeを見ていた方が面白くないですか?

さて、数日前に『YouTuberがテレビを滅ぼす?ぜひ滅ぼして下さい』という記事の中で、ユーチューバーと呼ばれる人たちの動画を紹介しました。

私が紹介した動画は、ほんのひと握りであり、YouTubeを検索して頂ければ、面白い動画がいくらでも出て来ますし、それらの動画がオンデマンドで見放題です。「日帰りでハワイに行く」という動画のバカらしさ(※誉め言葉です!)、私は決して嫌いではありません。

また、今だと「自撮り棒」という便利な道具もあるようですし、その気になればスマートフォンで自身を撮影し、それをYouTubeやニコニコ動画などでライブ中継することもできます。

考えてみれば、地上波テレビの大掛かりな中継車のガソリン代や減価償却費、豪華なスタジオセットにひな壇にずらりと並ぶ芸人の人件費など、たかだか30分だか1時間だかの番組を作るのに数百万円から数千万円のコストがかかります。

地上波テレビ局が、バカ高い人件費を支払うだけの付加価値を、果たして本当に日本社会にもたらしているのか、私たち有権者はじっくりと考えてみるべきだと思います。

(※もっとも、私個人的には、NHKと民放を含め、現在の日本の地上波テレビ局がすべて潰れたとしても、日本経済にはまったく打撃はないのではないかと思っていますが…。)

オマケ:NHKは「第二のTBS」、TBSは「元祖テロ組織」

そうそう、ここで本論を締めるつもりだったのですが、もう1つだけ追加で紹介しておきたい論点があります。

NHK、取材音声ファイルをアレフに誤送信(2018/11/2 20:30付 共同通信より)

「誤送信」とありますが、これは「誤送信」ではありません。普通に考えて、取材音声ファイルをテロまがい組織であるアレフ(オウム真理教の後継団体)に送り付けるとは、明らかに「第二の坂本弁護士事件」でしょう。

もちろん、国民から「受信料」という名目で事実上の「NHK税」をむしり取りながら、こうした不祥事を発生させるNHKは、解体・廃局、職員は全員解雇が妥当だと思います。

ただ、そこで思い出したのですが、そもそも坂本弁護士事件は、TBSとオウム真理教によるテロ事件です。そして、TBSは過去の坂本弁護士事件を、日本国民に対してきちんと説明し、謝罪したのでしょうか?

私はNHKが「第二のTBS」に成り果てたと考えているのですが、NHKを「第二のTBS」と呼ぶならば、TBSは「元祖テロ組織」と呼ぶのが相応しいと思います。

新宿会計士:

View Comments (13)

  • 「意見の異なる人を執ように攻撃するトランプ大統領のもと、アメリカでは、社会の分断がかつてないほどに深まっています。意見は違っても、議論することでまとまり、多様で活力のある社会を作ってきたアメリカでは今、議会の中間選挙を前に『対話が成り立たなくなっている』と言われています。(アメリカ総局記者 籔内潤也) 」
    と報道し、「社会の分断」をトランプ大統領の所為にしているNHK
    https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2018_1031.html
    は、
    アメリカの大手メディアや民主党側には全く責任が無い
    とでも言う心算なのでしょうか?

    • 「SNSによる情報発信が『社会の分断』を招いており、CNN等のフェイクニュースメディアに情報発信を独占させれば『社会の分断』は防げる」旨、主張しているように視えます。

  • どおりで最近のテレビはおもしろくないわけだ。赤字ともなれば番組制作経費も抑えられ、ますますおもしろくなくなりそう。かつて映画産業が有名俳優陣をかかえて全盛期だったときがあった。しかし、テレビに客を奪われ、いまはみる影もない。同じく、テレビはインターネットに客を奪われ、衰退は必然だろう。テレビ局のいくつかは消え去る運命にあると思う。

      • 途中で送信していまいました、失礼

        今の日本映画は、斜陽になってから入った監督が主流になって来たので伸び伸びしています
        今は邦画が勢いを取り戻していますよ、ハリウッ系は行き詰まっている感じですが
        マダマダ、"万引き家族"みたいなのも有りますが
        嘗ての"進歩的文化人"系が、日本の映画界から減少したお蔭だと思います

        • なるほど、人材がいれかわって隆盛となってきましたか。昔は旗本退屈男とか映画しか楽しみがなく、多くの人が映画館に行きました。学校にも映画鑑賞会がありましたし、日本ニュースとかで映画のニュースもありました。考えてみると米がパンやパスタの登場で消費が減ったのと似ています。テレビもネットのような他の娯楽が増えれば視聴率は下がります。視聴者が1割減ったら、広告料金も1割下げないといけませんからね。テレビ局は斜陽産業でしょう。そのうち、テレビ局社員の給料も下がってくると思います。そしたら、NHK社員の給料も下げないといけないでしょう。実際、地方局はすでに苦しい状況のようです。機材が安物の場合が多いですから。

  • ところで、高給取りの正社員のリストラ費用だという線は?>営業利益の大幅減少

    • りょうちん 様

      いつもコメントありがとうございます。また、鋭い視点のご提供、ありがとうございます。

      ただし、本文で説明すればよかったのですが、従業員に対する早期退職勧奨制度(いわゆるリストラクチャリング)に伴う費用は、一般に営業外費用ないしは特別損失に含まれる項目であり、販管費には含まれません。

      この点、TBSホールディングもいちおうは上場会社であり、会計監査を受けているため、リストラ損失を販管費に混ぜているということはないと思います。

      引き続き当ウェブサイトのご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

      • なるほど理解しました。
        ご専門の方には当たり前なのでしょうが、なかなか素人には難しいですね。

  • < 更新ありがとうございます。
    < TBSはたかが、売上高3620億円、従業員数5,500人。この程度の会社が今まで踏ん反り返っていたんだな。たかがというのはメディアとしてはまあまあ大きいかも知れませんが、日本の大企業なんてもっと桁違いの大手がある。

    < 業種にもよるが、売上3,620億円なんてゴマン(5万は無いが 笑)とあるよ。で、本業が赤なら他業種、特に利益の出る不動産業に資源を投入するでしょう。

    < 利益の出無いメディアに力を入れるのは、株主への背任行為だ。詰まらん番組辞めて、従業員10人ぐらいで回すミニ局を目指せばどうか?左傾偏向報道辞めたら、少しは情弱でまともな人が返って来るよ。どうせフツーの人は誰も見ないからケケケッ。

    < まっ、映像発信はユーチューブとかに任せる。キミタチは電波権返却して、不動産業に転換しては如何か(笑)。社名はTLC(東京 リーシング カンパニー 爆笑)。

  • テレビ業界の衰退は正に無能経営の結果でしょうね。

    そもそも番組制作の最前線ではプロパー社員など片手で数えられる程しかおらず、多くの社外スタッフは毎日のコンテンツ作りだけで精一杯なので新しい試みなどもなくコンテンツのクオリティは60年代からたいして変わっていないのです。(「笑っていいとも」等が最たるものでしょう)こんなことが続けば視聴者は飽きるのですが、娯楽が少なかったのでそれで何とかなっていました。

    しかしYouTube等の台頭によって若い世代からテレビから移民が起きたのです。それも当然で、インターネットには興味のあるコンテンツだけを抽出できるという特徴があったからです。
    可処分時間を好きなことだけに集中させる、そんなことが可能なら誰だってインターネットで時間を使いますよね。
    インターネットにアレルギーを持つ高齢者等は未だにテレビに依存しているのですが、先の短い多くの高齢者と先の長い少ない子供、パイが減り続けるのは必然で行き着くゴールは一つだけでしょう。

    幸いな事に(?)テレビにも良質なコンテンツも確かに存在しています。しかしそれは多くの雑に作られたコンテンツに比べてごく一部です。そして制作している全てのコンテンツに高額な制作費用(特に人件費と機材費)が発生していれば採算が合わなくなるのも当然でしょう。
    あるいは不動産だけでなく様々な業界に手を出してお得意のプロパガンダで売りつければ複合企業として何とかなっていたかもしれません。

    インターネットには雑なコンテンツも多いのですが、良質なコンテンツも確かに存在します。しかも機材の発達と廉価化により安価にコンテンツの制作が可能で企画から制作まで一人でできてしまう。金食い虫のテレビが敵う訳がありません。「もの凄い」良質な寿司を一口か、「程々」美味い回転寿司でお腹いっぱい食べるか、私は後者を選びますよ。ええ…

    既に一部がそうなっていますが、YouTubeにアップされたコンテンツをそのまま流している恥知らずな番組が存在しますよね、もはやテレビはインターネットで注目されたコンテンツを後追いする増幅装置という立ち位置に今後なっていくと私は考えています。

  • 民放が無くなても問題無いけど、有料配信のHuluとかNetflixが主体に
    なるよりは地上波でイイかな?って思う
    YouTubeを持ち上げ過ぎ、収益形式が違うだけで所詮は営利企業
    何時、どんな形で変節するか分からない
    地上波が駄目なのには何の異論も無いけど、対比としてネットを持ち上げるのは危険