マス・メディアによる世論調査が全面的に正しいと申し上げるつもりはありませんが、それでも、内閣支持率は放っておけば上昇してしまうように思えます。こうした中、かつては日本の政権を担っていたこともある民主党の成れの果てである「国民民主党」に対する支持率が1%台を割り込む惨状が続いています。
大丈夫か、国民民主?
NHKの世論調査
マス・メディアが報じる「内閣支持率調査」とならんで、「政党支持率調査」については、当ウェブサイトでも興味深く情報を追いかけています。
先月下旬、当ウェブサイトでは、なかなか衝撃的な調査を紹介しました。これは、日本経済新聞社の世論調査によれば、参議院の最大野党である国民民主党の政権支持率がゼロ%だった、というものです(『【昼刊】国民民主党、政党支持率ゼロ%の衝撃』参照)。
野党が「もりかけ・セクハラ・日報問題」で大騒ぎし、勝手に20連休を取って国会をサボタージュするという戦略を取ったことに、多くの有権者が呆れ果てている証拠ではないかと思うのですが、国民民主党をはじめとする野党に厳しい調査結果を突きつけているのは、日経だけではありません。
ほかの主要メディアの調査でも、だいたい同じような傾向が出ているようなのです。
こうしたなか、私が本日紹介したいのは、NHKが7月6日から3日間、全国の18歳以上の男女を対象に「RDD」方式で実施した電話世論調査の結果です。そして、「あの」NHKの調査でさえ、政権支持率は浮上し、野党に対する支持率は急落しているようなのです。
内閣支持率(NHK NEWS WEBより)
NHK世論調査 各党の支持率(2018年7月9日 19時27分付 NHK NEWS WEBより)
※ただし、NHKはウェブニュースを消すタイミングが異常に早く、リンク先の記事についてもすぐに閲覧できなくなると思いますのでご注意ください。
これによると、内閣支持率は44%と、不支持率(39%)と再逆転しましたが、これについては別に特記する必要はありません。『【昼刊】叩き続けなければ浮上する政権支持率』などで指摘したとおり、単に「もりかけ問題」がネタ切れになったから、政権支持率が浮上しただけの話です。
新聞、テレビなど、マス・メディアの皆さんが1年半にもわたって「もりかけ問題」を強引に報道してきた目的は、内閣支持率を人為的に無理やり低く抑え込むためだとしか思えませんが、それにしても、さすがに限界があるといえるでしょう。
それよりも、ポイントは野党の皆さんに対する支持率です。
「▼自民38.1%(+2.3)、▼立憲民主7.5%(-1.4)、▼国民民主0.7%(-0.4)、▼公明2.7%(+0.3)、▼共産3.1%(-1.0)、▼維新0.8%(+0.1)」
このNHKの調査が日本国民の意見を正しく代表しているのかどうかはわかりません。しかし、日経や時事通信などが公表する政党支持率調査を見ても、だいたい次の3点で一致しています。
- 自民党に対する支持率が最も高く、立憲民主党の支持率の3~4倍に達している
- 野党の中では立憲民主党に対する支持率が最も高く、日本共産党がそれに続いている
- 国民民主党は自由党、社会党、希望の党などの準泡沫政党なみの低支持率にある
このため、NHKの調査結果が他社の調査結果と比べて大きく乖離しているとは言い難く、RDD方式(無作為に発生させた電話番号に電話をかける方式)で調査する限り、だいたいどのメディアでも同じような調査結果になるのかもしれません。
「仮想支持率」と比較してみた
さて、現時点における最大政党は、衆議院でも参議院でも、自民党であり、衆議院で285議席、参議院で125議席を占めています(ただし、衆参両院議長を会派に含め、共同会派の議席など会派から除外しています)。
一方、衆議院の最大野党である立憲民主党は衆議院で56議席(副議長を含む)、参議院で23議席ですが、参議院の最大野党である国民民主党は、衆議院で39議席、参議院で24議席です(なお、参議院の郡司彰副議長は国民民主、立憲民主のいずれにも不参加)。
つまり、自民党は410議席、立憲民主党は79議席、国民民主党は63議席です。ここで、衆議院議員の会派別所属議員数(2018年5月9日時点)、参議院の会派別所属議員数(2018年7月9日現在)を参考に、ほかの政党についても議席数を求めておきましょう。
- 自民:410議席(衆284+参126)
- 立民:79議席(衆56+参23)
- 国民:63議席(衆39+参24)
- 公明:54議席(衆29+参25)
- 共産:26議席(衆12+参14)
- 維新:22議席(衆11+参11)
- 自由:6議席(衆2+参4)
- 社民:4議席(衆2+参2)
- 希望:5議席(衆2+参3)
ここで、やや乱暴な仮定を置いてみましょう。各政党が保有している議席数を1000で割った数値を、そのまま政党支持率だったと仮定するのです(これを「仮想支持率」とでも呼びましょう)。
- 自民:41.0%
- 立民:7.9%
- 国民:6.3%
- 公明:5.4%
- 共産:2.6%
- 維新:2.2%
- 自由:0.6%
- 社民:0.4%
- 希望:0.5%
するとどうでしょうか、世論調査で自民党の支持率が41.0%、立憲民主党の支持率が7.9%、国民民主党の支持率が6.3%だったとすれば、だいたい各政党が国会に保有している議席数と支持率が見合っている、といえるのかもしれません。
実際、さきほどのNHKの支持率調査で見ても、自民党が38.1%、立憲民主党が7.5%、共産党が3.1%、自由党が0.3%、社民党が0.4%などとなっており、だいたい現実の世論調査と政党が保有している議席数がざっくりと一致している、という言い方ができるかもしれません。
しかし、この「仮想支持率」と現実の支持率が、大きく乖離している政党が、国民民主党と公明党、そして日本維新の会です。この3つの政党は、いずれも、「仮想支持率」が現実の支持率を上回っている(つまり支持率以上に議席を得ている)という共通点があります。
さすがに63議席は多すぎでは?
なかでも国民民主党の議席数が63議席というのは、政党支持率に比べて多すぎます。もちろん、上で示した「仮想支持率」という議論は、試算としては少し乱暴ですが、それでも1%前後の支持率しかない政党が、衆参両院の議員定数707議席(衆465+参242)の10%近くを占めているのです。
どうしてこんなに議員数が多いのかといわれれば、通常、世論調査のタイミングと選挙のタイミングは一致しないからです。
昨年10月の衆議院議員総選挙では、「民進党右派」が「希望の党」に合流して小池百合子東京都知事の看板を使って選挙戦を勝ち抜いた議員が含まれています。また、参議院には解散総選挙がありませんので、5年前に民主党から出馬して当選した議員が国民民主党に所属しているのでしょう。
立憲民主党も油断できない
いずれにせよ、マス・メディアの「政党支持率」調査を信頼するならば、今すぐ衆議院の解散総選挙が行われれば、自民党が相変わらず圧勝し、立憲民主党が最大野党、それに公明党や日本共産党が続く、といった構図が出現すると予想できます。しかし、国民民主党は壊滅状態でしょう。
こうなってくれば、当然、国民民主党が次回総選挙に向けて「政党名ロンダリング」を行う可能性は相応に高く、場合によっては私たち日本国民も賢く見抜かなければなりません。
ただ、野党の皆さんにわかっておいていただきたいことが1つあるとすれば、時が経てば経つほど、私たち日本国民は、新聞・テレビなどの影響を受けなくなる、という点です。野党、とくに立憲民主党に対する支持率が異常に高い理由も、新聞・テレビなどの報道によるところが大きいと私は考えています。
ちなみに、今週日曜日に「Yahoo!ニュース」に掲載された毎日新聞の記事によれば、内閣支持率が回復した理由は「無党派が移ろうから」なのだそうです。
<安倍内閣>支持率回復基調の理由 移ろう無党派(2018/7/8(日) 11:20付 Yahoo!ニュースより)
記事自体は大したことを主張しているようには思えません。ただ、記事文中で私が呆れるのは、
「野党はモリ・カケばかり。もっと重要な課題がある」
というくだりです。「もりかけ問題」を散々煽ったマス・メディア自身が、そんなことを言い放つのもおかしな話だと思います。毎日新聞は
「立憲民主党の政党支持率は5月13%、6月11%と野党の中では健闘している。/しかし、森友・加計問題で首相に「責任がある」と答えた人の政党支持率をみても立憲民主党は17%に過ぎず、自民党の23%、「支持政党はない」の47%に及ばない。/立憲民主党がどんなに厳しく森友・加計問題を追及しても、そればかりでは支持は広がらない。」
などと主張していますが、この期に及んで野党のハシゴを外すというのも、実にイジワルで不誠実な新聞です。しかし、それどころか、立憲民主党自身も、国会審議を人質に取り、「もりかけ問題の追及」を続けた結果、国民のマス・メディアに対する信頼性を道連れに、自滅に向かい始めてはいないでしょうか?
国民民主党、立憲民主党という、かつては日本で政権を担っていたこともある民主党の成れの果てが、果たしてどこに向かおうとしているのか。私は、生暖かく見守っていきたいと思います。