あまり多くのメディアが報じている形跡がないのですが、週末、福島県で「PALM8」、つまり「第8回太平洋・島サミット」が開かれ、中国を牽制する「法の支配」、「北朝鮮核問題への日本に対する支持」など、多大な成果が上がっています。
PALM8と海洋国家・日本
PALM8の成果
あまりメディアでは報じられていませんが、5月18日から19日にかけて、福島県で「第8回太平洋・島サミット(PALM8)」が開かれました。
第8回太平洋・島サミット(PALM8)(結果概要)(2018/05/19付 外務省HPより)
開催場所は首都圏の人々には有名な福島県いわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」で、参加した国は日本を含めた19ヵ国・地域です。
PALM8参加国
- 日本
- 島嶼14ヵ国(サモア、パラオ、ナウル、ミクロネシア、マーシャル諸島、キリバス、フィジー、クック諸島、パプアニューギニア、ツバル、バヌアツ、ソロモン諸島、ニウエ、トンガ)
- オーストラリア、ニュージーランド
- 太平洋諸島フォーラム(PIF)
- (新規参加)ニューカレドニア、仏領ポリネシア
地図で見ていただければわかりますが、これらの諸国は太平洋に大きく広がっています。海洋面積だけで見れば中国をはるかに凌駕する地域から主要国が参加した格好です。そして、このサミットでは、次の4点などの項目について、議論が行われました。
- 法の支配に基づく海洋秩序、持続可能な海洋
- 強靱かつ持続可能な発展
- 人的往来・交流の活性化
- 国際場裡における協力
これをどう見るべきでしょうか?
念頭に置いている国は明らかに中国
まず、日本側が「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づきインド太平洋地域の安定と繁栄に深くコミットするとの考えが提示され、太平洋諸国側からは「同戦略の基本理念の重要性を共有」し、「この戦略にしたがった日本の太平洋地域への関与強化を歓迎する」との反応を受けました。
すごくわかりやすく言い換えれば、「インド洋、太平洋などの広大な海洋は自由で開かれた空間であるべき」という意味であり、「どこかの国が一方的・排他的に占領するようなことがあってはならない」、ということです。これは明らかに、南シナ海で勝手に人工島を作り、周辺国を恫喝している中国に対する牽制でしょう。
これと密接に関連するのが『法の支配に基づく海洋秩序』という考え方です。日本政府・外務省は「中国」という国名こそ名指ししていませんが、明らかに中国の行動が国際法に違反しているということを全世界に向けて宣伝する効果がありますし、アジア太平洋地域からの支持を取り付けるという意味があります。
今月、日中韓3ヵ国サミットで日中間の関係改善が演出されましたばかりなのに、安倍政権はさっそく、中国の世界戦略を潰す動きに出た、という言い方もできます。
北朝鮮にもキッチリと牽制、重層的な同盟
次に、PALM側からは北朝鮮の核・大量破壊兵器のCVID(※)に関しても支持があり、あわせて日本人拉致問題の解決にも理解がえられました(※「CVID」とは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)の略)。
一見すると、太平洋島嶼諸国と北朝鮮にはそれほど深い関係がないようにも見えますが、しかし、世界の隅々にまで北朝鮮包囲網を敷くという安倍政権のやり方は、実は、非常に賢明です。北朝鮮の核開発の資金源と輸送路を同時に断つという意味合いがあるからです。
ちなみに、PALMにはさりげなく、オーストラリアとニュージーランドが含まれています。この2ヵ国は、環太平洋パートナーシップ(TPP)にも参加しており、いわば、自由・民主主義・法治主義など、日本と同じ価値に基づき、利益を共有しましょう、という関係にあります。
日本は日米同盟がもっとも大切ですが、それだけでなく、日豪間、日・ニュージーランド間、日・ASEAN間、日・太平洋諸国間、さらには日英間、日仏間などとも、強力な連携が出来上がりつつあるのです。
中国・北朝鮮などの無法国家の動きは気になりますが、日本は日本でキッチリと、価値と利益を共有する同盟を構築させていくことが重要でしょう。
仲良くすべき国・警戒すべき国
新聞・テレビなどのマス・メディアの報道を見ていると、日本は中国や韓国と関係を改善すべきだ、ロシアと平和条約を結ぶべきだ、あるいは北朝鮮とも一刻も早く国交を正常化すべきだ、といった論調を見かけることがあります。
私自身、「外国と仲良くすべきだ」という考え方に、総論としては賛成します。しかし、それと同時に国同士の外交は「お友達ごっこ」ではありません。「国益の最大化の手段」です。日本がある国とどこまで仲良くするかは、日本の国益がどの程度まで大きくなるかで判断すべきでしょう。
私が考える、日本が最優先で仲良くすべき国とは、米国であり、ASEAN諸国や台湾であり、太平洋諸国であり、オーストラリア、ニュージーランド、インドなどの民主主義国家であり、さらには英国、フランスなどの欧州諸国です。これを一覧にしてみたいと思います(図表1)。
図表1 日本が仲良くすべき国・地域
国・地域 | 仲良くすべき理由 | 日本との関係 |
---|---|---|
アメリカ合衆国 | 世界最大の経済・軍事大国で自由・民主主義国家である | 70年近い日米同盟が存在し、いまやお互いにとっての友邦である |
オーストラリア、ニュージーランド | 南太平洋の要となる経済大国であり、自由・民主主義国家である | 地理的に離れているが、最近はTPPやPALMなどでの連携が進んでいる |
台湾 | 地政学的な要衝に位置し、中華圏唯一の自由・民主主義国家でもある | 残念ながら日本は台湾を国家として承認していないが、安倍政権成立以来、関係は安定している |
インド | 経済発展が著しく、南アジアにおける大国でもあり、身分制などさまざまな問題はあるものの、自由・民主主義体制を採用している | 安倍総理とモディ首相との個人的な関係が強固であり、新幹線の輸出等を通じて経済関係は強化されつつある |
ASEAN諸国 | すべての国が自由・民主主義国家ではないが、経済発展が著しく、また、中国の東南部に位置しており、地政学的な要衝にある | 安倍政権成立以降、日・ASEANサミットなどが頻繁に開催されるなど、関係は強化されつつある |
英国、フランス | 地理的に大きく離れているが、自由・民主主義国家であり、かつ、核武装国でもある | 外相・防衛相による「2+2会合」などが複数回開催されている |
カナダ | 自由・民主主義国家であり、オーストラリアと並ぶ資源大国でもある | TPP加盟国であり、かつ、G7諸国の一角を構成している |
太平洋諸国 | 政治体制はさまざまだが、日本が海洋国家である以上、海洋諸国とのつながりは重要である | 第8回目となるPALMが開催されるなど、関係は良好 |
(【出所】著者作成)
これらの国のうち、ASEAN諸国や太平洋諸国の一部を除けば、いずれも自由・民主主義を重視する国家ばかりであり、日本が価値を共有することができる相手ばかりです。さらに、軍事・経済大国であったり、地政学的に重要な国であったり、と、日本にとっては重要な利益を共有している相手国です。
私は別に、中国や韓国やロシアとの関係を軽視して良いとは思いませんし、これらの国とも仲が良ければそれに越したことはないと思います。しかし、これらの国が、どうしても日本とは利害が相容れないこともある、ということを、私たちは知っておかねばなりません(図表2)。
図表2 日本が警戒すべき国
国・地域 | 警戒すべき理由 | 日本との関係 |
---|---|---|
中国 | 中国共産党一党独裁国家であり、違法かつ強引な海洋侵略を繰り返しており、また、環境破壊、人権侵害、ダンピングなどの違法な経済活動も多い | 表面上は関係修復モードに入りつつあるが、少なくとも安倍政権は警戒心を解いていない |
韓国 | 一見すると自由民主主義国家だが、実態は「反日原理主義」ともいうべき国であり、竹島の不法占拠、慰安婦問題というウソの流布、日本の知的財産権侵害などの不法行為が絶えない | 日本は今年の外交青書上、韓国から「基本的価値を共有」「戦略的利害を共有」などの記載を削除し、単なる隣国に格下げした |
北朝鮮 | 金正恩(きん・しょうおん)一味が支配する独裁国家であり、人権抑圧、核開発、麻薬・贋札製造などの不法行為を行う犯罪国家 | 日本人拉致問題は未解決だが、日朝国交正常化をうたった平壌宣言は生きている状態 |
ロシア | 一見すると自由民主主義国家だが、実態はプーチン大統領の独裁体制にある、非現代的国家で、石油に依存したモノカルチャー経済 | 日本固有の領土である南樺太や千島列島を不法占領中 |
ドイツ | 一見すると自由民主主義国家だが、実態はユーロという通貨を通じてユーロ圏を支配し、外国人を安い労働力として搾取している | 一見すると同じG7、G20などに参加しているが、アンゲラ・メルケル独首相はアベノミクスを公然と批判していることでも知られる |
(【出所】著者作成)
なお、図表2では、さりげなくドイツを入れています。これは、じつはドイツこそがユーロ危機と欧州停滞の元凶であり、全世界にデフレを輸出している国だと私が考えているためですが、これについては機会を見て、いちど、きちんと議論しておきたいと思います。
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日本は1次大戦後から敗戦まで、南洋諸島を委託統治地として領有し南洋庁を設置しインフラの整備や教育の拡大等で経済の発展に寄与しています。今でも親日国が多いのもそのためです。日本が主導するADBは域内国としてしていますが、AIIBでは域外国です。最近ではフィリッピンを始め中国の資金攻勢が強いですが、日本も頑張って欲しいと思います。
< 夕刊発信ありがとうございます。
< 福島県でやっていたのは知ってましたが、まさか、あの『常磐ハワイアンセンター』とは驚きです。炭坑が駄目になった時に観光目的で作られたんですよね。映画化されるずーっと前から名前は知ってましたが、一度二度死にかけながら、まだ元気なんですね。
< PALM8 日本と太平洋島嶼国に豪州、NZという先進国が入ってるのは良い組み合わせです。特に豪、NZとは重層的な繋がりになるので絆が強くなる。この設立目当て、照準は一重に中国。膨張路線国の狼藉を食い止めねばならない。
< 『ドイツをさり気なく入れている』 そうです。私もあの国は統一されてから、針路を変えたと見ています。親日と言われたのは昔日の話、今やメルケル首相は中国におもねり、日本を嫌っています。少なくとも良い感情は無い。ドイツはユーロ危機と欧州停滞の元凶です。だから英メイ首相と安倍首相はじっくり話し合っても、メルケル首相は他国に行く(笑)。完全に敵視してますね。両親が東独出身で、バリバリの左傾だから影響受けてます。今やドイツと価値観が共有できるもの少ないですが、一般国民はまだまだ理解し合えると期待してます。是非、会計士様の論評をお願いします。
< 失礼します。
あんまり知られてはいませんが腐った中華統一戦線ではドイツが軍事顧問団を大量に送り込み尚且つ軍需物資なども援助され日本は間接的に日中戦争時にドイツとも戦ってます。更に意外な事にソヴィエト空軍も日中戦争時に加わっており日本側が零戦を実戦配備するまでは空の戦いは苛烈でした。
ドイツが陸をソ連が空を連合国が資金をと最悪の展開でした、現在の歴史教育だとまるで日本がファシズムに染まり人種排斥を行ったかのように言われ思ってしまいますが実態は違いドイツとは昔も今も仲は良くありません。(その証拠にユダヤ人脱出に手を貸している日本人もいます)基本打算的にドイツと手を結ぶのは危険ですので距離を置き日本はアジア太平洋構想で独自の利益を追求して行くことが会計士様と同じく良いかと思います。
だがユダヤ人現代のイスラエル建国は屑だ、やってる事はナチスと同じだ。
G8の加盟国のイタリアも時々思い出してあげて下さい。