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【昼刊】「日米同盟解消」と主張する韓国コラムニストのご都合主義

韓国が「最も重要な隣国」ではなくなったのは当然』でも触れたとおり、今年、外務省のウェブサイトから、韓国が「価値と利益を共有する国」という記述が削除されました。しかし、その判断が間違っていなかったのではないかと考えざるを得ない、極めて支離滅裂かつご都合主義的な珍説が、自称「韓国を代表する保守メディア」に昨日も掲載されています。

2018/05/09 11:00追記

中央日報の記事の読み方によっては、本稿の論考の意味が少し変わってくる可能性があります。そこで、末尾にこれについての考え方を加筆しています。

根腐れする韓国社会

珍説を堂々と掲載する中央日報

あまりの珍説に、思わず目を疑ってしまいました。問題の記事は、韓国メディア『中央日報』の日本語版に掲載された、「米朝韓三角同盟論」なる珍説です。

【時視各角】ワシントンの韓米朝三角同盟論(2018年05月07日11時48分付 中央日報日本語版より)

(※コラムの末尾には、「チョン・ヨンギ/中央日報コラムニスト」とあります。名前の漢字がわからないので、本稿では便宜上、同コラムの著者を、中央日報の記載どおり、「チョン・ヨンギ氏」と呼びたいと思います。)

このリンク先の記事、あまりにもご都合主義過ぎて、読んでいて思わず「何でやねん!(※)」とツッコミを入れたくなってしまう代物です(※私は人生の半分を東京で過ごしていますが、実家は神戸にあり、本当に呆れたときには思わず関西弁が出てしまいます)。

コラムは冒頭から唐突に、現在の韓国国内で「米国」や「米韓」という言葉が「冷遇されている」、すなわち反米感情が高まっている、と指摘したうえで、

反米それ自体を悪いということはできない。自由大韓民国の誕生と成長を支えた国は米国であり、この点に対して我々は感謝している。しかし世界のどの国も無視できないほど成長した韓国を思い通りに操ることができるという傲慢な覇権心理が米国にあるのなら反米で制御するしかない」(※下線部は引用者による加工)

と、とんでもない方向に向かって暴走し始めます(※私に言わせれば、「米国に傲慢な覇権心理があり」、「これを反米で制御するしかない」という論調の方が、むしろ傲慢ですが…)。第1パラグラフからしてこれですから、内容については推して知るべしでしょう。著者は第2パラグラフで

反米をする時はバランスも重要だ。反米が行き過ぎて親中一辺倒に向かい、機能している韓米同盟を「崩れてもよい」「平和が訪れるのに在韓米軍は正当か」(文正仁大統領特別補佐官)と言ってワシントンを刺激するのは愚かだ。

と述べており、これによって議論の「バランス」を取っているつもりなのかもしれませんが、全然バランスになっていません。というのも、「行き過ぎた反米はダメ」だが、「バランスのある反米」なら良い、と言っているのとまったく同じだからです。

本来、韓国は1948年に米国から独立させてもらった国であり、朝鮮戦争後も一貫して国を守ってもらっていた立場にあります。さらに、1965年以降は日韓基本条約により、日本から莫大な経済支援を受けて来ました。韓国にとっての「恩人」とは、米国と日本の2ヵ国なのです。

しかし、中央日報のこのコラムからは、米国を「誕生と成長を支えた点に対して感謝している」と言いつつも、感謝が感じられません。むしろ、「韓国は大国になったのだから、その韓国に指図をするような米国に対して反米をするのは当たり前だ」といった傲慢さが滲み出ているのです。

さらに、日本に対する感謝など、ヒトコトも触れられていません。こんな浅ましい記事が韓国という国の代表的な意見だとは、可能ならば信じたくはありません。しかし、それと同時に、これが中央日報という「保守系」を名乗る大手紙に堂々と掲載された記事であるという事実を直視しなければならないのです。

「2種類の反米」の謎

さて、コラムに視点を戻しましょう。

コラム冒頭で指摘した、「行き過ぎた反米」と「親中一辺倒」の考え方を、チョン・ヨンギ氏は「脱線反米」と呼んで批判します。この「脱線反米」とは、

中国が兄、北朝鮮がその下の兄になって東アジア新覇権秩序を作れば、そこに韓国が加入して習近平帝国の保護を受ける

ことを目指すという考え方であり、この考え方には賛同していないらしいということは、よくわかります。しかし、その代替としてチョン・ヨンギ氏が提唱したのは、「天才韓国系米国人女性学者が提唱した『米朝韓三角同盟』」なる意味不明の概念です。

プログラムを遂行しながらジョージタウン大学で韓半島の核をテーマに博士論文を書いている韓国系米国人キム・ジュウン氏(34)が鋭い洞察をした。若くて天才的なこの女性学者は、文在寅-トランプ-金正恩の連鎖首脳会談で韓国・米国・北朝鮮が新三角同盟を構築しようという大胆なパラダイムを提示した。キム・ジュウン氏の理論によると、三角同盟ができれば北朝鮮は体制の保証、それ以上のものを得るため永遠に核兵器廃棄を実践するという。米国は東アジア地政学的競争で中国を決定的に抑える機会であるため、北朝鮮を引き込むのに積極的になるだろう。韓国は同盟が拡大・強化し、米軍撤収の心配を払拭しながら(保守勢力が歓迎)、北朝鮮とは経済交流以上の民族的一体性を深めることができる(進歩勢力が歓迎)。理念葛藤を解消し、国民統合へ進む最適な環境だ。

要するに、

  • 北朝鮮は体制の保証と引き換えに永遠の核兵器廃絶を実践する
  • 米国は東アジア地政学的競争で中国を決定的に抑えるため、北朝鮮を引き込む
  • 韓国は在韓米軍撤収の失敗がなくなり、北朝鮮とは民族的一体性が深まる

という、「三者が一挙に得をするプラン」なのだそうです。こんな珍説を唱える人間が「天才学者」だと主張するチョン・ヨンギ氏の発想には、どうもついていけません。

ご都合主義はここに極まる

実は、北朝鮮が核兵器の「完全、検証可能、不可逆的な方法による廃棄(CVID ((CVIDとは、 “Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement” の略語。)) )」に応じることと引き換えに、米国(と日本)が北朝鮮を国家承認し、北朝鮮に経済支援を与えるのではないかとする説は、別に珍しいものではありません。

ただし、この場合は国際政治の力学から見て、朝鮮半島における米中両国の対立が深刻化していく効果が生じます。とくに、現在の文在寅(ぶん・ざいいん)政権下では、親北化が極端に進み、これに危機意識を抱いた中国が、さまざまな形で韓国に介入してくるおそれがあります。

中国が朝鮮半島とどう関わるかについて、チョン・ヨンギ氏はどう考えているのでしょうか?ここで、あまりにもご都合主義的、非現実的かつ支離滅裂な議論が唐突に出て来ます。

韓・米・朝にとって良い三角同盟では、日本と中国は疎外感を感じるかもしれない。これは中朝同盟と日米同盟が解消する必要がある。

何と、朝鮮半島問題を解決するために、中朝同盟と日米同盟を解消しなければならない、と述べているのです中朝同盟はともかく、日本と米国がお互いに日米同盟を解消することはあり得ません。それをするくらいなら米韓同盟が消滅し、日本が朝鮮半島の最前線になる方が現実的です。

チョン・ヨンギ氏は

文大統領は今まで歴史にも地図にもない道を歩んできた。東アジア新三角同盟構想を整えて22日の韓米首脳会談に出せば、もう一つの道が開かれるだろう。キム・ジュウン氏の親米・親北構想が脱線反米勢力の親中一辺倒より創意的ではないだろうか。

として、この「三角同盟構想」が「脱線反米主義」に対抗し得ると述べているのですが、どちらにせよ「親北」であるという点は共通しています。

私たち日本人は、こんな論説が自称「韓国を代表する保守メディア」に堂々と掲載されていることに、もう少し危機感を抱いた方が良いのかもしれません。それだけ韓国社会が「根腐れ」している、という証拠だからです。

日韓は価値も利益も共有せず!

韓国が「最も重要な隣国」ではなくなったのは当然』でも紹介しましたが、外務省は今年に入り、ウェブサイト上、韓国について「戦略的価値を共有する日本にとっての最も重要な隣国」という表現を削除しました。日本政府の扱いとしては、韓国は「単なる隣国」に格下げされた格好です。

もちろん、韓国国内にも心ある人はいますし、冷静に韓国が生き残っていくためには、日本と米国との関係を最も大切にしないと理解している人もいます。しかし、こうした冷静な意見は、現在の韓国社会ではかき消され、本日紹介した中央日報のコラムのような珍説が、韓国では主流になりつつあるのです。

そのように考えていくと、日本が現在の韓国を「日本と価値も利益も共有していない国だ」とみなすことは、韓国の態度自体がもたらしたものです。また、日本が韓国に振り回されないよう、日本政府が少しずつ、韓国との関係を「グレードダウン」し、距離を置いてきたことは当然のことでもあります。

もしかすると、韓国はこれから北朝鮮と統一国家を形成するのかもしれませんし、北朝鮮が「突然死」し、結果的に朝鮮半島全体が中国の属国のような状態になってしまうのかもしれません。しかし、どのみち韓国の多数意見は、日本との友好を望んでいないということについては間違いないでしょう。

追記:論考の意味について

(本項は2018/05/09 11:00追記分です。)

韓・米・朝にとって良い三角同盟では、日本と中国は疎外感を感じるかもしれない。これは中朝同盟と日米同盟が解消する必要がある。

という文章を引用しましたが、この下りは「中朝同盟と日米同盟を解消すべき」という意味ではなく「中朝同盟と日米同盟が『三角同盟』の疎外感を解消すべき」と解すべき、と考えることもできる、と思い直しました。

要するに、「米朝韓三角同盟」の外側に、「中朝同盟」と「日米同盟」が並ぶ、という構造ですね。日米同盟の解消を求めているのではなく、日米同盟を「三角同盟」の補完に位置付けるべきだ、という主張です。

ただ、この下りをそう解釈したとしても、もとの文章は今ひとつ、意味が通じません。ベースとなる論考が支離滅裂すぎるためでしょうか?

よって、オリジナルの文章については訂正しないつもりです。

新宿会計士:

View Comments (4)

  • < 昼刊発信ありがとうございます。
    < ジョージタウン大学で「天才的な韓国系米国人学者」という大風呂敷ですが、先に一言言うと、『韓半島問題』の論文如きで、博士号取れるの?(失笑)。韓国系教授かな。このキム・ジュウン氏の「韓米北三角同盟」を読めば、『ああ、大した事ないな』とか『やっぱりノーベル賞など無縁やな』というのが良く分かります。反日受けている日本人の立場ではなく、ごく普通の地球人として見ても、この方は思考が完全に飛んでます。この論は誰が見てもオカシイ。逆に【なんでそうなるねん?】とツッコミを入れたいところ満載。こういう人を見かけると私など【アタマ大丈夫か?】と思うし口走ってしまうんです(笑)。
    < ちなみに私はいろいろな地に住みましたが、どこに赴任しても関西弁なので、特に関東方面で一部の地方出身者には『抵抗がある』と言われました(笑)。
    < 明治時代は米国が日本に朝鮮を統治するよう、勧めた事実はありますが、朝鮮戦争以前から保護して貰った米国の恩を忘れ、35年間統治しインフラも遺し日韓条約で南の国家予算2年分を支払った日本を侮蔑し、仇敵の北になびき、韓人を朝鮮戦争で殺戮したシナには一言も発せぬ韓国は、救いようがありません。
    < でも中央日報がその程度なら、ハンギョレやら左傾紙はもっと酷いでしょう。という事は韓国人平均はよく『日本人は嫌いだが、認めるところは認めよう』『一番嫌いなのがチョッパリで二番がチャンケ』という書き込みを見かけますが、これが普通なのです。日本は悪人を小さい頃から刷りこまれ、何でも日本のする事は邪魔する、足引っ張る。ハケ口にされただけ。
    < チョン・ヨンギ氏は『中国が兄、北朝鮮が次の兄~』(だったら三男が韓国か?)という一節があります。海洋国家の日本人にはまるで理解できない。米国を兄と思いますか?中国が次兄?半島は?誰も日本人でそんな意識持った人はいない。国家間同士でその窮屈な考え方は歪んでいる。もちろん英国と豪州、NZなどは宗主国関係ですが、開かれた民主主義国、自由主義国同士です。特亜3国とは全く違う。
    < 米国は日本の最重要なパートナーです。東南アジアも台湾もカナダも豪州も欧州も皆自由主義民主主義国家の仲間です。でも親や兄弟ではありません。主従関係ではない。
    < なにを韓マスメディアが喚こうが、韓国は完全に終わった国。もう北に吸われるか中国の属国になるかしかない。何故か?一人で生きていけない国だから。こっち見るな! 以上。

  • ・北朝鮮は暫時の体制保証と引き換えに核兵器という強力なカードを失う
    ・米国はコウモリ国家に加えてならず者国家を抱え込むことで疲弊する
    ・韓国は在韓米軍を温存することで中国の経済制裁が持続する

    ダメだっちゃ
    三方一両損だろどう見ても
    こういうの、おんちゃんが育った土地の言葉では

    「ほでなす」

    といいます。または「ほでなし」
    ホーデンHoden(独)は「睾丸」のことですね

    「アホか」

    くらいのニュアンスですが、なぜ「タマなし」なんでしょうね
    加えて仙台人の祖先がドイツ人なのが不思議です

  • 「韓・米・朝にとって良い三角同盟では、日本と中国は疎外感を感じるかもしれない。これは中朝同盟と日米同盟が解消する必要がある。」
    既存の同盟が解消するのは「良い三角同盟に対する疎外感」であって、同盟関係そのものを解消するよう提言している訳ではないような。。
    スタートが世迷言なので些末な話ですけど。
    更新楽しみにしています。無理のない範囲で続けてください。

    • コメント大変ありがとうございます。また、ご指摘感謝申し上げます。

      ご指摘どおり、そのような読み方をすることもできます。私自身も今朝方、自分で読んでみて、そう気づきました。ただ、本文に「追記」で記したとおり、かりにそう解釈したとしても、中央日報の文章自体の支離滅裂さはあまり変わりません。

      よって、今回はあえて記事の訂正はしないでこのままにしておこうと思います(笑)

      引き続きご愛読ならびにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。