本日は少し時事的な話題から離れ、普段から私が考えている内容の一端を紹介しておきたいと思います。
目次
日本人は正直
日本社会の本質
最近、当ウェブサイトでは時事的な話題が続いています。とくに、当ウェブサイトで深い関心を払ってきた朝鮮半島情勢などを巡る動きがあまりにも急速であるため、どうしても「目先の話題」を取り上げることが増えて来ているのです。
ただ、最近の大きな動きを振り返るとともに、ここで少しだけ立ち止まって、「そもそも論」について少し考えてみたいと思います。それは、「日本社会の本質」について、です。
当ウェブサイトの読者の皆様であれば、多くの方が日本に在住し、日本人として暮らしていらっしゃると思います(私の場合は母親が在日韓国人2世でしたが、生前に日本に帰化しており、ずっと日本人として暮らしてきたという事情もあり、少なくとも私は自分自身を日本人だと認識しています)。
こんな日本社会にどっぷりと浸って暮らしていれば、ともすればわからなくなることがありますが、実は、日本人は世界の中でも、最も正直な民族であり、また、世界で最も治安の良い国です。しかし、多くの日本人は意識していませんが、世界には「平気でウソをつく」ような国もあります。
以前から当ウェブサイトで申し上げたとおり、私は大学生時代、あるいは独身時代、格安航空券を買っては世界各国を歩いてきました。指折り数えると、今まで50ヵ国近い国を訪れた計算です。中には日本と似たような価値観が通じる国もありますが、そうでない国もあります。
「ユーロ圏に加盟しているような国であれば、日本と同様、きちんと約束を守る人たちばかりだ」と思うかもしれませんが、そうではありません。残念ながら、ユーロ圏に加盟するような先進国であっても、平気で観光客を騙そうとする人たちがいる国もあります。
日本人がヨーロッパ旅行をしていると、カフェテリアで席を取ろうとして自分のカバンを置いたところ、そのカバンが盗まれるという事件は良く発生します(とくに某イタリアとか、某イタリアとか、他にも某イタリアとか)。かくいう私もイタリアで液体をかけられたり、サイフをすられそうになったりと、ずいぶんな目に遭いました。
これは、別に日本が良いというわけではなく、また、海外が悪いというわけでもありません。単なる価値観の違いです。
ただし、「価値観が違う国がある」という事実を、私たち日本人はしっかりと認識しておく必要があります。
北欧社会の新鮮な体験
なお、外国の名誉のために申し上げておきますと、日本並みに正直で治安が良い国はほかにも存在します。
たとえば、北欧は非常に治安が良く、また、秩序だった社会です。何度目かの欧州旅行のときに、デンマークからスウェーデン、ノルウェーをレンタカーで廻ったことがあったのですが、どのレストランに入っても、過大請求もなく、また、チップすら受け取ってくれませんでした。
南欧(イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ)の場合は、レストランで過大な額を請求されることも多く、また、少し多めにおカネを渡すと、嬉しそうにチップとして受け取ってしまいます。「お会計は18ユーロ」といわれて、20ユーロ紙幣を渡すと、おつりが出てこないこともよくあります(必ずそうとは限りませんが…)。
しかし、北欧で同じ感覚で、たとえば「お会計は18クローネ」といわれ、20クローネ紙幣を渡して店を出ようとすると、店員さんがあわてて追いかけて、来て2クローネのお釣りを渡してくれるのです。これは私にとっては非常に新鮮な体験でした。
ほかにも、一部の国では、宿泊客がホテルに「マクラ銭」を置いていくという習慣があります。これは、ホテルの部屋を掃除してくれる人たちのために、マクラの上におカネを置いておくというものですが、ドイツや英国に宿泊した時には、清掃員がこのマクラ銭を持って行ってくれませんでした。
さらに、首都・ローマが世界の有名観光地の中では最も治安が悪い街の1つであることでも知られるイタリアであっても、田舎に行けば治安は良く、人々は純朴です。イタリアに限らず、観光地から離れた田舎街で、身の危険を感じたことはありません。
つまり、「外国ではチップが必要だ」、「外国では観光客を騙そうとする人が多い」、「外国では治安が悪い」というステレオタイプは正しくない、ということです。
世界を日本人的価値観で見てはならない
しかし、「隙あれば外国を騙してやろう」とする国・民族も、間違いなく存在します(別にどこがそうだとは申し上げませんが…)。いずれにせよ、「騙される方が悪い」という発想を持つ国や民族が世界に居て、日本人的な「性善説」に立っている国・民族だけではない、という点については、意識する必要があります。
つまり、「外国から騙されることがあり得る」ということを、善悪ではなく、事実として知っておく必要があります。
そういえば、第二次世界大戦では日本は惨めな敗北を喫しましたが、当時のソ連は日ソ中立条約を破って対日参戦しました。『改めて北方領土問題を整理する』でも指摘しましたが、南樺太と千島が奪われたのは、日本がポツダム宣言の受諾を公布した直後です(『どこまでも卑劣なロシア』参照)。
日本の大本営は、最後の最後まで、ソ連が対日参戦しないと思い込み、よりにもよってソ連に対米講和の仲介を依頼しようとしていたという話もありますが、事実ならば「愚かの極み」です。
ただ、相手がソ連で良かったともいえます。なぜなら、ソ連は結局、日本の敗色が濃厚になり、絶対に反撃を受けないという確証を得てから、対日参戦しているからです。ソ連に占領されたのが南樺太と千島に留まり、北海道が無事だったことは、ある意味で当然だったとも言えます。
もう1つ申し上げておきますと、「中国やロシアと軍事的な不可侵条約を結べば自衛隊が不要になる」などと考える人がいるようですが、これは極めて危ない考え方です。中国にしろロシアにしろ、日本人と同じ感覚で国際条約を守ってくれるという保証はないからです。
あるいは北朝鮮が何度も国際社会との約束を破り、核開発を続けて来たことや、韓国が日本とのさまざまな約束を破り、何度も何度も、歴史問題を蒸し返して来たことも、同じ文脈で理解すべきでしょう。
そのように考えていくならば、世界を日本的な価値観で見てはならないのです。
日本の信頼はどう作られたか?
世界で信頼される日本人
ところで、日本人は実によく約束を守る民族ですし、実に正直な民族です。そんな日本人は、世界からどう見られているのでしょうか?「ただのお人よしの鴨」でしょうか?それとも「単なる金づる」でしょうか?これについて、少し古いニュースですが、こんな話題を発見しました。
日本のパスポートは世界最強、180カ国のビザ免除(2018.03.02 Fri posted at 11:55 JST付 CNNより)
CNNによると、「ビザなしで渡航できる国の数を比較した世界のパスポートランキングで、日本とシンガポールがトップに立った」としています。この「ビザなし渡航」とは、おそらく一般的な「観光ビザ・短期ビザ免除プログラム」のことを意味しているのでしょう。
CNNは「ヘンリー&パートナーズがまとめた2018年2月版の報告書」によると、日本のビザなし渡航国が180ヵ国で、シンガポールと並んでトップだったとしています。ビザ免除プログラムの適用は、わかりやすく言えば、「その国からの入国者が悪さをしない」という確証がある証拠です。
その「悪さ」の典型例は、「不法就労」です。
たとえば、1人当たり国民所得が1万ドルのA国と、1人当たり国民所得が10万ドルのB国があったとします。A国とB国は、単純計算で国民所得に10倍の差がついている格好です。A国出身者がB国にやってきて、1時間働けば、A国で10時間分働くのと同じ給料がもらえるとしたら、どうするでしょうか?
私がA国出身者で、A国で貧しい暮らしを余儀なくされていた場合、B国で働けるなら、遠慮なくB国に「出稼ぎ」をしに行くに違いありません。しかし、B国にとっては、A国から大量の労働者が入ってくると、困ったことになります。治安の悪化、雇用の喪失、文化的摩擦などが生じかねないからです。
そこで、通常は就労目的の入国には制限があります。日本もご多分に漏れず、就労目的で日本に入国するためには、外国人に就労ビザの取得を義務付けています。逆に、就労ビザなしに日本に入国して労働した場合は「不法就労」です。
つまり、世界の最貧国出身者に観光ビザ免除プログラムを適用すると、あっという間に日本の労働市場はこれらの国からの不法就労者で占領されてしまいます。他にも、日本にやってきて盗みを働く不届きな人間は、水際で拒否しなければなりません。
逆に言えば、世界180ヵ国から日本人(日本国籍保持者)に対する入国ビザが免除されているというのは、それだけ日本人の信頼が高いという証拠でしょう。
信頼をなくすのもあっという間
この「入国ビザ免除」には、外交慣例上、いくつかのルールがあります。
1つは「相互主義」です。相手国が日本人に対してビザ免除を適用しているのであれば、逆に日本も相手国に対するビザ免除を適用するというのが、この「相互主義」です。日本がこの「相互主義」に基づいてビザを免除している国は、2018年2月現在で87ヵ国です(詳しくは外務省のウェブサイト参照)。
ただ、「相互主義」がすべてではありません。相手国が日本人を観光客として歓迎したいと考えている場合には、相手国が一方的に日本人に対して観光ビザなどの免除プログラムを適用することがあります(いわゆる「一方的免除」)。
私自身も記憶にあるのですが、過去にイランが日本人に対して入国ビザを免除した際、日本も相互主義に基づき、イラン人に対する入国ビザを免除しました。そして、東京だと上野公園あたりにイラン人が大量にたむろし、変造テレカを販売していました。
この「変造テレカ」とは、使用済みの「テレホンカード」の裏に磁気テープを張り、再び使えるようにしたものです。テレホンカードとは、公衆電話で使えるプリペイドカードのことであり、10円分を1度数として、今でも50度数分(500円)と105度数(1000円)の2種類が販売されています。
ただ、変造テレカの蔓延が社会的な問題となったことを受け、当時存在していた「10000円分」、「5000円分」などのテレカは廃止され、また、イラン人に対する「一般旅券」所持者に対するビザ免除プログラムは1992年4月15日以降、停止されてしまいました。
(※余談ですが、この「変造テレカ」、私がむかし働いていた朝日新聞の販売店で所持している者が複数いました。ある者は変造テレカの現物を自慢げに私に見せて来たのですが、そのようなものを所持しているだけでも非常識です。さすが朝日新聞の配達員、といったところでしょうか。)
いずれにせよ、ビザ免除プログラムを獲得した後も、「その国の国民が犯罪を起こしていない」という実績が必要であり、地道に信頼を維持しなければなりません。信頼をなくすのもあっという間なのです。
ソフト・パワーの勧め
さて、海外旅行の話題に戻ります。
私自身、外国に出掛けて痛感したのは、世界中、どこの国に行っても、アニメやゲーム、音楽といったコンテンツは人々を魅了します。そして、これらのコンテンツの多くは、米国製か、それとも日本製です。とくに、ヨーロッパでは「ハローキティ」が大人気で、それこそ街中でキティさんを見かけます。
お隣の国のメディアを眺めていると、全世界が「韓流スター」に魅了されている、といった報道を見かけることもありますが、少なくとも私が見たところ、韓国のスターを街中で見かけたことはありません(もちろん、網羅的にチェックしたわけではありませんが…)。
そのように考えていくと、こうしたコンテンツは、人々から本当に好かれなければ広がっていきません。
それから、『ポルトガルのレストラン「大阪(おさか)」』でも触れましたが、日本食のレストランは、いまや全世界で見かけます(もっとも、中には明らかに「日本人ではない人」が「日本人のふり」をして現地人相手に日本食もどきを提供しているケースもありますが…)。
このように考えていくと、「日本」を象徴するソフト・パワーは、世界中を日本のファンにするという効果があります。長い目で見れば、日本の国益にも寄与します。
中国ですら親日国に?
ところで、『BBC世界影響度調査を読む』でも紹介したとおり、客観的な調査によれば、日本は世界的に見て、「良い影響を与えている国」の1つです。
ただ、日本に対して厳しい印象を持つ国は、中国と韓国と北朝鮮です。実際、中国では日本が「世界に良い影響を与えている」とする回答が22%に対し、「世界に悪い影響を与えている」とする回答が75%で圧倒している状況です。つまり、中国では反日が「国是」のような国であることは間違いありません。
ところが、インターネット上では、こんな情報も流れています。
旧日本軍のコスプレで「怒りの人肉捜索」、過激な媚日派が制裁受ける=中国メディア(2018-02-27 22:12付 サーチナより)
「サーチナ」によれば、最近の中国では「親日」、「知日」、あるいは日本に媚びる「媚日(びにち)」と呼ばれる人もいるのだそうです。極端な「媚日」派の人物が「旧日本軍のコスプレ」をして物議をかもしたのだとか(本当でしょうか?)。
ただ、『2017年の日韓観光統計を読む(前編)』でも紹介したとおり、日本を訪れた中国人は、昨年を通じて736万人に達しています。中国国内の偏狭な反日教育と、現実に自分の目で見た日本の姿の落差を認識すれば、考え方を改める中国人は少なからず出現するはずです。
私は、日本人が「世界は善良な国だけではない」と認識することが何より必要だと考えていますが、だからといって、「日本人がずる賢くなる」必要はないと考えています。そのことを、改めて指摘しておきたいと思います。
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本日の記事の補足です。
最近、日本語表現についての誤用のご指摘を多く頂きます。本文中、「母親が生前に日本国籍を取得している」という趣旨の記載が出て来ます。これについてメールで「誤用ではないか」というご指摘を頂きましたが、別に誤用ではありません。
もちろん、厳密に言えば、私の母親の出生年は戦時中であり、当時の朝鮮人は日本人でしたから、厳格に言えば、
・いったん日本人として生まれ、
・戦後、日本国籍を喪失し、
・父親との結婚後に日本国籍を取得し、
・したがって死亡時には日本人だった
という流れですが、「生前に日本国籍を取得した」という下りは間違っていないと思います。
以上、補足でした。
低信頼社会はビジネスが発達しない。だまされるかもしれない状態でビジネスをやるのは効率が悪い。契約書なんかなくても決まったものが決まったとおりに納入されているなら、リスクを考える必要もないし、リスク回避のための余計な労力をさく必要もない。某隣国とかベがつく国とかは自分だけよければという考えだから国全体としての経済があまりよくない。そのうち、内陸国で貿易が難しいネパールとかにも負けるかもね。
< 毎日の更新ありがとうございます。
< お人よしの日本人 今日のコラムの中に「まくら銭」が出ていたので、思わず懐かしい言葉だと感じました。「海外のホテルに泊まったら、必ずルームキーパーさんに渡るよう、まくら銭を置いてこい」と上司に言われたもんでした。朝は慌ただしいので、寝る前に置いてきました。夜戻ると綺麗にベッドメイクしてくれている。外国の契約社会とはこんなものなんだとヘンに納得しました。一度、ドイツ・ケルンで部屋まで重い荷物を持ってきてくれた初老の男性に、チップを渡さず、思いっきり乱暴な言葉を言って、ドアをバタン!と閉められたことがあります。すぐに思い当り、渡すと、とても機嫌よくなりました。日本人は『~せねばならない』という公式に当てはめがちです。本当にありがとう、と思えばチップ不要の国でも渡すのがいいんじゃないですか。まだ私が若い頃は、日本人は少なかったし情報もなかったですね。
< 日本は「お人よし国」であり、世界中から信頼を集めています。ただの「お人よし」ではなく、真摯で真面目で嘘をつかない、約束を守る、トラブルが極めて少ないという意味です。以前、新宿会計士様のサイトで「世界に良い影響を与えている国」「世界に悪い影響を与えている国」という掲載がありましたが、日本は17か国中当事国以外のランキングでカナダ、ドイツに次ぐ3位。悪い評価をした人は24%だけです。ちなみにビリスリーはイラン、北朝鮮、パキスタン。さもありなんでしょう。
< 日本が「悪い影響を与えている」の中で、ダントツに多いのが中国。75%が悪いって(笑)。何処見てんねん。韓国は調査対象外ですが、これも加われば同等以上の最悪評価をしているのは間違いなし。結局、日本が『とにかく嫌い、下外の国』『影響どうのではなく反日姿勢』国は北東アジアの3悪国だけです。この3国がなければ、日本は1~2位でしょう(別に上位を狙っているわけではないですが、結果としてそうなる)これらへは、特に中国へは最低限のお付き合いをする、他の2国は『無視』でいいでしょう。相手にすると腹が立つだけ。損をする。それより遠い英国や東欧、北欧など馴染みが薄かったが、交流により互いが発展できる国へのパイプを太くした方がいいですね。 失礼します。