北朝鮮に派遣されている韓国の特使が金正恩(きん・しょうおん)と何の話をしたのかに関する報道が見当たりません。実は、このこと自体、米国と韓国との関係を推し量るうえでの重要なヒントではないでしょうか?(※追記あり)
目次
2018/03/06 21:00 追記
当初公表版の記事に含まれていた誤植を修正したうえで、記事の末尾で米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の速報記事の紹介を追加しています。
韓国特使の報道がない!
中身のない韓国メディアの報道
すでにいくつかのメディアが報じていますが、昨日、韓国の特使が北朝鮮を訪れ、北の事実上の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)と会談しました。ただ、「会談の時間が4時間に及んだ」、「夕食会が開催された」などの情報はあるものの、肝心の「何が議論されたか」については、ほとんど報道がありません。
私が調べたところ、現時点で日本語メディアのなかで一番詳細に報じているのは、おそらく次の産経ニュースに掲載された、共同通信の配信記事です。
【南北会談】/金正恩氏「平和と安定」協議 韓国特使団と初会談 妹の金与正氏も同席(2018.3.6 07:51付 産経ニュースより【共同通信配信】)
これによれば、北朝鮮の朝鮮中央通信は6日、「金正恩・朝鮮労働党委員長が5日に韓国特使団と会談し、南北関係改善や朝鮮半島の平和と安定を保障する問題について虚心坦懐に話し合った」と報じたそうです。ただ、この共同通信の記事には「北朝鮮の核問題についても言及したとみられる」とのくだりもありますが、この部分については情報源不明です。
一方、韓国側の報道発表や韓国メディアの報道ぶりを見てみると、正直、中身がない代物ばかりです。
金正恩、韓国特使団到着3時間後に会合…金正日とは違った(2018年03月06日09時12分付 中央日報日本語版より)
韓国特使団 正恩氏と4時間以上面会=首脳会談関連の合意も(2018/03/06 08:45付 聯合ニュース日本語版より)
韓国大統領府によると、韓国側の特使団と金正恩との面会は、夕食会を含め、午後6時から合計4時間12分に及んだとしていますが、その具体的な内容については明らかにされていません。これについて聯合ニュース(日本語版は、)韓国大統領府当局者が
「(特使の訪朝は)結果が伴い、失望的なものではないと承知している。一定の合意があったようだ」
と語り、そのうえで特使団と金正恩が「南北首脳会談に関しても合意した」と伝えています。
報道がないのは「報道できない」から?
ただ、今回の特使団の会談内容について、報道がほとんどないのは、「中身がなかったから」なのではなく、「報道できないから」ではないでしょうか?これについて、米ワシントンポスト(WP)が長文の記事を掲載しています。
Kim Jong Un holds first direct talks with delegation from South Korea(米国時間2018/03/05(月) 18:45付=日本時間2018/03/06(火) 07:45付 WPより)
WPも南北朝鮮双方が会談の詳細を明らかにしていないとしつつも、今回の韓国特使団の人選に当たっては、韓国大統領府の鄭義溶(てい・ぎようChung Eui-yong)国家安保室長が「流暢な英語を操り、ハーバード・マクマスター大統領補佐官とも親しい」という要因が考慮されたと指摘しています。
そのうえで、WPは鄭氏が「火曜日に帰国後、ただちにワシントンに赴き、トランプ政権の関係者と本件で議論する予定だ(After returning to Seoul on Tuesday and briefing the president, Chung will immediately travel to Washington to tell Trump administration officials about the meeting.)」としています。
ということは、韓国政府は今回の南北協議結果を、米国に対する一種の「カード」として持って行こうとしている、ということです。
米国政府は韓国に疑いの目を向けるものの…
では、こうした韓国政府の試みは、うまくいくのでしょうか?これについてWPは、米国側が現在の文在寅(ぶん・ざいいん、Moon Jae-in)政権に相当数の北のシンパが含まれていると疑っている、と指摘しています。
Some other officials in Moon’s inner circle, notably his chief of staff, are viewed with suspicion in Washington because of previous activities considered sympathetic to North Korea and hostile to the United States.(米国政府側は、モォン氏の側近グループ、とくに幹部クラスの中には、過去の活動履歴に照らし、親北・反米的な思考を持つ者が含まれていると疑っている)
ワシントンで連邦政府、議会関係者らがひととおり目を通していると思われるWPにこのように書かれているということは、米国政府が現在の韓国の文在寅政権を無条件に信頼しているわけではない、ということでしょう。
しかし、米国政府が文在寅氏を「泳がせている」ことは間違いありません。そして、韓国は私たち日本人が考えるよりも、意外としたたかです。
たとえば、韓国政府は米国に対しては「良い顔」をしようとしてます。一例を挙げれば、当ウェブサイトの今朝の『朝鮮半島情勢を読む際のシナリオ分析の難しさ』で申し上げたとおり、韓国政府関係者は、米国などの外国メディアに対しては、米国の立場に配慮した発言を行っているからです。
このように考えていくならば、米国政府側が韓国に対して疑いの目を向けていることについては、ほぼ間違いないとみて良いものの、米国政府が韓国政府に「言いくるめられる」危険性については、もう少し認識しておく方がよさそうです。
日米はどう対応するか?
トランプ政権に不安を抱く
こうした中、先ほども話題に出て来たマクマスター氏を巡っては、すでに複数のメディアから「辞任観測」が報じられています。
【トランプ政権】/マクマスター安保担当大統領補佐官が近く辞任か トランプ氏は「偽ニュースだ」と一連の報道否定(2018.3.2 10:16付 産経ニュースより)
ここでは産経ニュースの記事を紹介しますが、これによるとマクマスター氏が「3月末にも辞任する見通しだ」と、米NBCテレビなど複数のメディアが報じたそうです。トランプ氏はこれらの報道に対し、「フェイク・ニュースだ」と反発しているようですが、実際、トランプ政権を眺めていて、私は不安を隠すことができません。
一例を挙げれば、トランプ氏は昨年12月18日という「北朝鮮攻撃をする最大のチャンス」を、みすみす逃していますし、また、文在寅政権の危険な単独行動を牽制せず、放置しているようにも見受けられるからです。
さらに、私自身、米国は「米国にまで届くICBMを放棄すること」と引き換えに、北朝鮮に核武装を容認するのではないか、との疑念を払拭することができません。せっかく、ワシントンでは「北朝鮮や韓国が信頼ならない国である」という認識が広まっているのに、トランプ政権が司令塔として機能していないのではないかと疑わざるを得ないのです。
一方、私自身は日本が核武装することには強く反対したいと思いますが、それと同時に日本は世界唯一の被爆国であり、本来ならば世界のどの国にも優先して核武装する権利がありますし、北朝鮮が核武装に踏み切るなら、日本も国民を守るために、対抗して核武装に踏み切る義務があります。
言い換えれば、北朝鮮が核武装に踏み切れば、日本を始め、世界の多くの国が核武装に踏み切りかねません。果たしてトランプ政権は事態の深刻さを理解しているのでしょうか?
日本はまず、憲法改正を急げ!
それと同時に、北朝鮮の核武装を放棄するための重要なカギとなるのが、日本の憲法改正です。
各種報道によれば、早ければ3月中にも、自民党は改憲草案を集約する見込みだとしています。しかし、予想どおり、マス・メディアがこれを潰しに来ました。
改憲案に私権制限明記へ 緊急事態条項で方針転換(2018年3月6日 07時00分付 毎日新聞デジタル日本語版より)
毎日新聞日本語版は今朝、改憲案に「私権の制限」が明記されると報じましたが、これは明らかに改憲を潰すための動きでしょう。毎日新聞社といえば、所属していた五味宏基なる記者が2003年にヨルダンの空港でクラスター爆弾を持ち込み、爆発させるという不祥事を起こしたほどの組織です。
「毎日新聞社が爆弾テロを発生させたようなものだ」と糾弾されても文句は言えないと思っていますが、今回の記事も、毎日新聞社が北朝鮮や韓国などの反日国家と連携している証拠に見えてしまうのです。ただ、毎日新聞がこのように報じるということは、憲法改正は日本にとって正しい、ということでもあります。
北朝鮮情勢は、待ったなしです。憲法改正を急ぎ、ちゃんと自分で自分を守ることができる国にしましょう。そのことを、これからも当ウェブサイトでは深く議論していきたいと思います。
追記:WSJの報道
ここからは2018/03/06 21:00時点の追記です。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が速報で、「北朝鮮は非核化を巡り米国と対話の意思を持っている」と配信しました。
North Korea Willing to talk Denuclearization With U.S.(米国時間2018/03/06(火) 06:34付=日本時間2018/03/06(火) 20:34付 WSJオンラインより)
といっても、現時点でリンク先の記事はわずか1行で、しかもこの北朝鮮の意思については「韓国(South Korea)が火曜日の声明文で明らかにした」、というものであり、詳細についてはよくわかりません(時間が経過すれば詳細な記事がアップデートされるようです)。
この韓国政府の発表内容が事実であれば、まさに文在寅氏が「念願の朝鮮半島問題の運転席に座った」格好であり、北朝鮮が韓国に対して恩を売った形だと言い変えても良いでしょう。
いずれにせよ、事前の報道では、北朝鮮を訪問した特使らが米国を訪問する予定だとしており、詳細については早ければ今週中にも明らかになると思います。
View Comments (5)
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信有り難うございます。
本日新聞の3面にて韓国大統領府の提供した写真を見て驚きました。
右側手前の席が空いています。
筆記具と資料が写っていますので顔出しNGの人間(以下NGちゃん)がいるのしょうか。
北朝鮮側に本当にNGちゃんが居るなら写真撮影前に普通椅子と資料を片付けますよね。
アメリカにNGちゃんの存在を漠然と教えてどうしたいのでしょうか?
は。まさか正座して徹底的にアメリカ情報担当の質問責めに遭いたいとか(笑)
韓国情報院のトップが特使として北朝鮮に行ってこれでは、刈上げ将軍に「心から同情します(笑)」
無能な部下に無能な交渉相手。
4時間こんな相手とお付き合いする時間が有れば刈上げ将軍としては他の有効な事に使いたいところですね(笑)。
< 本日も夕刊配信ありがとうございます。
< 歴史好きの軍国主義者様
< 本当ですね〜。右側手前席が空いている。この枠外には勿論何人かの副官らがいるのでしょうが、テーブルにレコーダーのひとつも無い。ペラのレジュメとペンだけ。分厚い資料も全く無い。これで何の話をしたのか。大した話無かったんじゃないの。
< 後ろの植物に仕掛けがあるな。集音マイク、小型カメラ、ファイバー等。もし、こじれた時写真右側半分90度だけ炸裂する爆薬を置いてるかもしれない。冗談でなく北朝鮮ならやりかねない。
< さて南北高官会談は『虚心坦懐に話し合った』(中央日報)、『晩餐会が開かれた』『4時間12分に及んだ』『◯◯が首席した』ばかりで内容が報告されてません。多分、非核化や条件付での米朝会談は、触れられなかったんでしょう。
< 当然韓国は、北朝鮮にいい顔する。『対北朝鮮会談を行うよう、米国を引っ張り出す』と。で、明日ぐらいに米国ワシントンに出向き、日本には大使館経由で『北朝鮮は核破棄について会談する用意がある』と得意の二枚舌報告。矛盾してるから後日『条件無しとは聞いてない。もう一度確認する』で時間稼ぎ。米韓演習など忘れたふりしそうです。
< 米国政府の中にも北朝鮮、韓国の行動を訝しむ人は多いでしょう。しかし、トランプ大統領は動きがあまりにスローだ。12月の闇夜の絶好のチャンスを見逃したし、迅速な行動力がない。高官とも上手くいってないのか、『司令塔として機能してない』(新宿会計士様)。
< ちょっと思い出しただけで、トランプ政権になってから、引っ張ってきたシンパの人も含め、多数辞任、解任、任意で辞めてます。昨年2月のフリン大統領補佐官、7月スペイサー報道官、同フリーバス首席補佐官、同スカラムチ広報部長、8月バノン首席戦略官、9月プライス厚生長官、そして韓国系米国人のビクター チャ駐韓大使候補、ジョセフ ユン北朝鮮担当特別代表。またマクマスター安保担当大統領補佐官も辞任の噂が出てます。よほど求心力がないのか、人望がないのかですね。
< 今、日本が米国に求めるのは経済制裁という『兵糧攻め』一本で壊滅まで持って行くのか。それともサージカル アタックするのか。確かに中国、ロシア、韓国、中東ルートを断線すれば更に干上がります。しかし、韓国は絶対裏切る。糧秣、原油、鉄鋼を送り続けるでしょう。そのうち核は完成する。そのタイミングで中距離のミサイル(IRBM)までなら黙認するなどと、米国が言いだしたりしたら、日本は人質だ。そんなことのないよう重ねて米国の任務遂行の言質を取りたい。
< もし、中距離まで看過するなら、日本も同等以上の精密誘導式の核ミサイルを北朝鮮、韓国照準で保持するぞと。安保理事会で米国は日本の核保持に賛成してくれないと核競争がまた始まる、これも合わせて強く申し伝える(NOでも背に腹はかえられぬ、口説き落として、持つ)。なお、日本の核ミサイル保持は現状の憲法改正法案とはリンクしません。核は使わないが自衛、防衛上保持するのであり、国家存亡の危機だからです。改憲は勿論、論議し憲法第9条第2項を撤廃、軍力を保持することを明記します。
< 以上、失礼します。
めがねのおやじ様
当方の駄文にコメント賜り有り難うございました。
>< ちょっと思い出しただけで、トランプ政権になってから、引っ張ってきたシンパの人も含め、多数辞任、解任、任意で辞めてます。昨年2月のフリン大統領補佐官、7月スペイサー報道官、同フリーバス首席補佐官、同スカラムチ広報部長、8月バノン首席戦略官、9月プライス厚生長官、そして韓国系米国人のビクター チャ駐韓大使候補、ジョセフ ユン北朝鮮担当特別代表。
確かにご指摘の通り優秀な人材が辞めているのですよね。
フリン氏とバノン氏が居れば、知恵負けは無いので、この状況でも、もう少し安心できるのですがね。
思い起こせば選挙中にトランプ大統領は日本や韓国が核武装しても構わない。と断言していたハズです。
これを盾に北朝鮮の核技術や核兵器を韓国内に移されるとアメリカは韓国を制裁出来ないと思います。
ましてや日本が自国に核兵器の攻撃を受ける覚悟をして独自制裁は絶対ムリです。
核兵器を持った韓国の無茶苦茶な要求を日本がはね除けるのは絶望的に厳しいと思います。
そうなってしまえば、管理人様、めがねのおやじ様、当方含めてここの住人は皆韓国様に取って許すべからずの犯罪者でしょうね(笑)
と言う事で韓国が核兵器を持たせる機会を決して与えてはなりません。
皆様の身の安全に関わります(笑)。
安倍大統領補佐官に頑張って頂きましょう(笑)。
めがねのおやじ様
NGちゃんネタでフォローですが、もし本当にNGちゃんが実在の場合、一人有力候補(笑)が浮かびました。
めがねのおやじ様がトランプ大統領から人が居なくなった事へのコメントからインスピレーション貰えたおかげです。
心から感謝します。
さて当方が浮かんだNGちゃん候補とは、北朝鮮の治安組織、国家保衛省のトップから1月中旬に解任されたと韓国統一省が明らかにした金元弘氏です。
独断で確率つけるなら30%。
もし今回の会談に北から韓国に核兵器の技術や兵器本体を動かす議案が出ているならほぼ100%。
名前が出せない人間でかつ上記議案において北朝鮮が再度核兵器を取り戻したり、再開発する事をどう保証されるかを検討するのに情報のプロである金元弘氏の会談への参加が必須と思います。
よってNGちゃんが金元弘氏ならば大分前から南北グルですね。
皆様の見解はいかがでしょうか?
答え合わせはアメリカの情報担当者が厳しくやってくれるでしょう(笑)。
写真1枚でも情報の管理は大事ですね(笑)。
皆様の知的好奇心の刺激になれば。
長文失礼しました。
産経「北が機先を制し「満足のいく合意」」と公表
http://www.sankei.com/world/news/180306/wor1803060027-n1.html
金正恩「文大統領の意志を伝え聞いて意見交換し、満足のいく合意を得た」
金正恩氏は担当部門に実務的措置を速やかに取るよう指示した。
金正恩が小躍りして喜んだ文在寅の親書
んじゃ、北に厳しいことは一切書かれてはいなかったということです。
これでは特使報道など出しようがありません。
北にべったりの文在寅が丸見えになっただけです。
トランプはこれで心置きなく軍事制裁出来るはずなんですが。
それにしてもホワイトハウス内がグタグタで、こちらも誰が担当者なのか見えてこない。