確定版・「日韓慰安婦合意の意味」

昨年冬の「日韓外相の慰安婦合意」は、「日本外交にとっては『汚点』であり、道義的には間違いだった」、「しかし、合意に含まれている10億円の拠出は行うべきだ」―。これが私の持論です。ただ、自分で言うのも変ですが、こうした自分自身の従来の説明には、違和感を抱いていたことも事実です。しかし、ジャーナリストの青山繁晴氏の説明を聴いたことで、自分の中の「もやもや」が消え、慰安婦合意の真意がストンと理解できました。本日は、「政治的に成功、道義的に失敗」だった昨年の慰安婦合意について、改めて私自身の理解を述べたいと思います。

東国原・麻木両氏に「イライラする~!」

今になって気付いたのですが、このウェブサイト、最近は随分と外交ネタ(特に韓国ネタ)が続いていますね。昨日も「8割の日本人ビジネスマンが韓国を不要だと思っている」という話題を紹介したばかりです。ただ、どうしてもネタの方が大量に落ちてくるので、これらのネタを捌かなければなりません。というのも、昨年冬の「慰安婦合意」に基づく「基金への10億円拠出」が、どうやら閣議決定されたようだからです。

10億円拠出を閣議決定=元慰安婦支援、日韓外相会談で伝達へ(2016/08/24-07:39付 時事通信より)

そこで、ネタが連続して恐縮ですが、本日はこれに関連して、慰安婦合意を巡る新しい情報を加えて、改めて状況を分析しておきましょう。唐突ですが、最初に「かなりイライラする動画」を紹介しておきます。

【青山繁晴】東国原にブチ切れ!!「お前は何を知っているんだ(怒)言ってみろ!!」(YouTubeより)

リンク先の動画は、どこかのテレビ番組から音声だけ切り取ってきて、静止画像とあわせたうえでアップロードされているものらしく、ジャーナリストの青山繁晴氏が元タレントで政治家の東国原英夫(ひがしこくばる・ひでお)氏(「そのまんま東」という芸名で有名だった人物)、タレントで司会者の麻木久仁子(あさぎ・くにこ)氏と討論しているものです。

※ただし、アップロード日はつい最近(8月14日)ですが、たとえ音声だけであってもテレビ局の著作物を無断流用すると著作権法的に問題があるように思えるので、ご視聴は自己責任にてお願いします。

テーマは、昨年12月28日に行われた岸田文雄外相と韓国の尹炳世(いん・へいせい)外交部長官(外相に相当)との「慰安婦合意」です。リンク先動画(※音声のみ)では、東国原氏や麻木氏が生半可な「知ったかぶりの見識」で青山氏の話の腰を折っており、視聴していると大変イライラします(笑)ただ、安倍総理とも個人的に仲が良いことで知られる青山氏が、慰安婦合意の「真意を語る」という大変貴重なものであり、著作権の制約がなければ、青山氏の発言の主要部分をすべて文字に書き起こしたいくらいです。

東国原氏と麻木氏が妨害した青山氏の貴重な話をかいつまんで要約すると、昨年の慰安婦合意には次のような経緯があったそうです(11:15~13:50)。

●朴槿恵(ぼく・きんけい=韓国大統領)が、3億円(のちに1億円)を日本国民の税金で支払ってほしいと依頼してきたが、安倍総理はこれを断った
●バラク・オバマ米大統領が朴大統領に対し「いい加減にしろ」と叱りつけた
●日本の外務省が、「朴槿恵さんは焦っているから、韓国に合わせてあげてください」と言ってきた
●その時に突然、韓国は20億円と言ってきた
●青山氏は「終わらせなければならないことは間違いないが、政治や外交の前に『人間の生き方』というものがある。ウソはウソと言ってはならない」と安倍総理にアドバイスした
●外務省側はは韓国に「10億円」と投げ返した

ただ、せっかくの貴重な青山氏の説明にも関わらず、中途半端な知見しか持たない東国原氏によって青山氏は話の腰を折られてしまい、顛末を最後まで聞くことができませんでした(※ただし、ほかの青山氏のほかの説明等を組み合わせてみると、きちんとした経緯がわかりますが、この点については後述)。そして、青山氏の説明の前後に東国原氏と麻木氏が話しているのですが、いわば青山氏は「慰安婦問題の本質は捏造であると認めない限り、問題は大きくなり過ぎる」という当たり前のことを主張しているのに対し、東国原氏や麻木氏は、外務省的な「事なかれ主義」の議論に終始しており、本当にイライラします。

青山氏自身は、慰安婦合意に含まれる「安倍総理の真の狙い」について理解したうえで話をしているのですが、動画の中で

「歴史の事実を国民に対して安倍総理自身が責任をもって話すべきだ」

(16:10~16:20)と指摘。そのうえで、青山氏は韓国政府が「挺隊協」を含めた民間団体を抑え込むことができず、結果的に米国、欧州、オーストラリアなど、「世界中で慰安婦像が増えていく」(17:20~17:43)という不気味な予言をしていますが、私自身もその見解に全く同意します。

「そうか!」とストンと落ちる説明

ところで、青山さんは先の参院選で見事に当選され、国会議員に就任されました。しかし、青山さんの選挙演説は、今になって再度視聴しても、素晴らしいものばかりです。そして、さすが私自身が「一流のジャーナリスト」と尊敬する人物で、日韓関係を巡る「もやもや」を、すっきりと説明してくださいました。

青山さんの発言をまとめる前に、私自身が当ウェブサイトや前身の「アメブロ」で執筆してきた内容を振り返っておきます。私の主張は、

「昨年12月の慰安婦合意は、朝日新聞社と植村隆と韓国政府・韓国国民の捏造の合作である慰安婦問題を日本政府が公式に認めたことになるため、『安倍外交』にとっては致命的な失敗だ」
「しかし、合意をしてしまった以上、日本政府としては10億円を拠出しなければ、日本側が国際合意違反をすることになる」
「一方、日本大使館前の慰安婦像などは、慰安婦合意があろうがなかろうが、その設置そのものが国際法に違反しているという事実に変わりはない」
「よって、日本としてはさっさと10億円を拠出し、韓国を一方的に糾弾するだけの立場になるべきだし、拠出するからには日本政府にはそうして欲しい」

というものです。しかし、この説明では、どうもすっきりと合意の「真意」について、説明しきれていません。ところが、青山さんの解説を聞いているうちに、実は安倍総理にはもっと深い考え方があった、という点を理解しました。青山さんの様々な発言を、私なりに理解して要約すると、次のようなものです。

「昨年12月の慰安婦合意は、『道義的』には明らかに間違っているものだが、『政治的』には大成功だった。」

これはどういうことでしょうか?

確かに、慰安婦合意をしたことで、日本は「やってもいない少女の強制連行」をやったかのように認めてしまいました。外務省のウェブサイトを見ても、岸田外相は「当時の軍の関与の下に」と明言していますし、英語版でも“with an involvement of the Japanese military authorities at that time”となっており、あたかも日本が「公式に」少女の強制連行に関与したかのような書き方になっています。岸田外相のこの発言で、日本国民を侮辱する慰安婦問題の汚名をそそぐ貴重な機会が失われてしまったのです。

しかし、その一方で、朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領の「反日」が、パタッと止んだことも事実です。これを青山さんは「政治的にはパーフェクトだ」と評していますが、まさにその通りでしょう。私自身が抱えていた「もやもや」を、青山さんは「政治的には成功、道義的には失敗」と、わかりやすく説明してくれたので、心から感謝したいと思います。

当事者能力を欠く韓国政府

ところで、韓国政府は「国家を運営する当事者能力を欠いている」というのが、私自身の持論です。というよりも、韓国政府が抱えている問題が、韓国政府の問題対処能力を超えてしまっている、という方が正確な表現かもしれません。

じつは、韓国の日本大使館前に韓国の民間団体が慰安婦像を設置していることや、毎週のように日本大使館前で大音量の抗議集会が開かれていることは、韓国に駐在する各国の外交官の間では有名な事実なのだそうです。そうだとしたら、これらの行為は紛れもなく「大使館の尊厳と静謐の維持」を課したウィーン条約第22条第2項に違反する行為であり、各国の外交官は「韓国政府には民間団体の所為を取り締まる能力すらない」ということで、物笑いのタネになっているはずです。

考えてみれば、「挺隊協」は単なる民間団体(ただし北朝鮮の影響力が強い団体)であり、民間団体が設置した違法構築物を撤去することすらできないということは、朴槿恵政権の問題対処能力が「その程度しかない」という証拠です。もし安倍総理が、「どうせ朴槿恵政権には慰安婦像の撤去などできっこない」ということをわかりきって岸田外相に「日韓合意」を指示したのだとしたら、安倍総理も相当に老獪(ろうかい)な政治家です。

そして、「各国に駐留する外交官」の中には、当然、韓国の「軍事的同盟国」であるはずの米国の外交官も含まれています。米国の次期大統領に当選するのが、民主党のヒラリー・クリントン候補なのか、共和党のドナルド・トランプ候補なのかは、現時点ではわかりません。しかし、外交官も職業的専門家ですから、ホワイトハウスの新しい主人である時期大統領に対し、各国の概況が外交官からレクチャーされるはずです。当然、韓国政府が「当事者能力を欠く」という情報についても、次期政権にしっかりと引き継がれるのではないでしょうか?

私の見立ては、こうです。

昨年冬の「慰安婦合意」は、いわば日本人が「やってもいない少女の強制連行の罪」をひっかぶる代わりに、韓国政府の無能さを、米国をはじめとする同盟国に「嫌というほど見せつける」という、いわば「肉を切らせて骨を断つ」戦略です。事実、高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の在韓米軍への配備を巡り、中国が韓国に対して事実上の経済制裁を課し始めているのに、韓国は「反日を煽って国内の目を逸らす」という常套手段が使えない状況にあります。しかも、今年の8月15日には、安倍総理をはじめとする日本の主要閣僚らが中韓に配慮して「靖国参拝」を見送ったのに、韓国の議員らが島根県竹島に上陸するなどの「日本に対する挑発」を行っており、韓国の外交はますます窮地に立っています。

日本が韓国政府の設立した財団に約束通り10億円の資金を拠出してしまえば、少なくとも朴槿恵大統領の任期切れ(2018年2月)までの約1年半、韓国は日本に逆らえません。さらに万全を期すために、日本政府が韓国に対し、2018年2月を期日とする、ほんの少額の通貨スワップ協定(例えば10億円など)を締結「してやる」のも一興でしょう。その一方で米国の次期政権の出方を見る必要はあるものの、日本は数年以内に、米国に対して「韓国切り」を決断させる程度の外交力を見せてほしいものです。

安倍総理は「卑劣」なのか?

私自身、今回の慰安婦合意が「政治的には成功、道義的には失敗」だという青山さんの主張には賛同しますが、いったん合意をしてしまった以上、徹底的にこれを政治利用しなければなりません。

安倍総理は愛国者であり、就任1周年を迎える2013年12月には現職総理として、小泉純一郎首相以来、実に7年ぶりの靖国参拝に踏み切ったほどです。ただ、国際政治の世界は現実には冷徹であり、国民を喜ばせるだけでなく、時として「断腸の思いで」合意を断行しなければならないことがあります。その意味で、私は安倍総理の「慰安婦合意」が「卑劣」だとは思いません。外務省をはじめとする歴代の日本政府の無為無策を考えるならば、トータルして日本の国益を最大化することができれば「儲けもの」という言い方をしても良いでしょう。

私は昨年12月の「慰安婦合意」が「日本外交の汚点の一つだ」とする従来の考え方を変えるつもりはありませんが、青山さんの説明を聴いて、ようやく安倍総理の真意が理解できたように思えます。そうであるならば、「慰安婦合意が日本外交の汚点である」という点をよくよく理解したうえで、安倍政権には今後、日本の国益を最大化するように動いてもらいたいと思います。

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