珍しく韓国メディアと意見が一致した

日本や米国に対して無理な要求をする韓国内の左派政治家の主張を読んでいると、「結果的に日本の国益に合致する」と思えるものに出会うことがあります。「昨年冬の慰安婦合意撤回」、「THAAD配備中断」といった議論は、実は日本にとっても悪いものではないのです。

結果的に賛同できる意見

珍しく、ブログ主としては全面的に同意できる記事が、「中央日報日本語版」に掲載されていました。

安哲秀氏「屈辱的な慰安婦合意は撤回…THAAD国会批准経るべき」(2016年08月15日14時36分付 中央日報日本語版より)

リンク先の記事は、韓国の「国民の党」の元代表・安哲秀(あん・てつしゅう)氏がツイッターに投稿した主張を取りまとめたものだそうです。記事から日本の外交・安全保障に関連する部分を抜粋しますと:

慰安婦問題について

  • 政府は屈辱的な慰安婦合意を撤回するべき
  • 慰安婦問題に対する日本の謝罪と賠償なしに未来指向的な関係を作りがたい
  • 政府は原点から元慰安婦女性と国民の声に傾聴しなければならない

 

高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備について

  • THAAD配備は理念論争ではなく徹底的に国益の観点で見るべきであり、得るものよりも失うのが多いと判断される
  • 国家の未来に対し波及効果が大きい事案であるだけに必ず国会批准の手順を踏まなければならない

というものです。私自身としては、このどちらについても、日本にとっては良いことだと考えています。

慰安婦合意は韓国の都合で撤回されるべき

まず、慰安婦問題についてです。

既に日本国内では、ウェブサイトを中心に多くの日本国民が連携し、いわゆる「従軍慰安婦問題」が朝日新聞社と同社元記者・植村隆による捏造であるという事実を突き止めています。慰安婦問題に責任がある関係者をまとめると、図表1の通りです。

図表1 慰安婦問題の責任者

関係者その者の行為備考
植村隆戦時中に日本軍が朝鮮半島で少女を強制連行したとする捏造記事を執筆した本人「私は捏造記者ではない」とする書籍を刊行している
朝日新聞社植村隆の執筆した捏造記事を新聞に掲載し、捏造を世界中に広めただけでなく、2014年8月まで一切訂正しなかった英語版記事などでは未だに訂正を行っていない
歴代の韓国政府慰安婦問題を「日本に対する外交的優位性」を確保するための手段として悪用してきた政権が交替するたびに日本に新たな謝罪・賠償を求めている
韓国国民北朝鮮とのつながりも指摘される挺隊協をはじめとする韓国の「民間団体」が世界中で日本の名誉を傷つけている慰安婦像は今夏オーストラリアにも建立されるなど、世界中に拡散しつつある
日本政府・外務省朝日新聞社、植村隆、韓国政府・韓国国民の不法行為を看過し、反論すべきタイミングを逃し、問題がここまで大きくなるまで放置した昨年12月には日本が10億円を支払うなどの「解決」で日韓外相が合意

この中で、もっとも罪が重いのは、記事を捏造した植村隆と、それを積極的に放置・拡散した朝日新聞社であることは間違いありません。しかし、この問題を「日本に対して精神的な優位に立つために」、何度も蒸し返し、利用してきたのは歴代の韓国政府であり、また、北朝鮮とのつながりも指摘される挺隊協をはじめとする韓国の民間団体も、この問題を使い、現在進行形で日本を貶めていることも事実です。そして、こうした状況を、現在の日本政府・外務省は、やめさせるどころか、積極的に放置しているようにも見受けられます。

特に、昨年12月に日韓外相が行った「慰安婦合意」は、貶められた日本の名誉を回復させようと手弁当で一生懸命頑張っている、有名・無名の日本人たちすべての努力を水泡に帰しかねないものです。本来この問題は、「朝日新聞社と植村隆と韓国政府・韓国国民による捏造であり、事実無根」として、交渉を拒絶すべき筋合いのものです。また、百歩譲って強制性を認めたのだとすれば、「日韓基本条約やお詫び基金等によって、とうの昔に解決済みだ」と突っぱねるべきでした(図表2)。

図表2 慰安婦問題に対する「あるべき対応」

対応概要評価
対応①「問題は最初から存在しない」慰安婦問題とは植村隆による捏造記事から火が付いた問題であり、全責任は朝日新聞社と植村隆と韓国国民と韓国政府にあり、日本国民・日本政府には全く責任はない最も正しい本来の対応。また、ウソをついて日本を貶めた以上、朝日新聞社や韓国政府に制裁を加えるべきでもある
対応②「すでに解決済み」百歩譲って「強制連行の問題」があったとしても、そのようなものはそもそも日韓基本条約の段階で解決済み次善の策だが「強制連行」というウソを否定しないという点で対応①に劣る
対応③「お詫びの一時金」相手が怒っていることは事実なので、お詫びのための一時金を支払い、それで問題を解決させようとする1990年代の「お詫び基金」や昨年の日韓合意などがこの典型例。愚策。
対応④「韓国の気が済むまで謝り続ける」日韓友好のためという大義名分を優先し、韓国国民が「気が済んだ」というまで、日本が韓国に対し、ずっとお詫びし続ける韓国が目論む解決策だが、日本国内でも外務省や極左メディア内にこのような考え方の者がいる模様。

私自身、昨年の「慰安婦合意」については、北朝鮮の核実験の情報を事前に掴んだ米国からの、相当に強い圧力に屈する形で、日韓両国政府が無理やり締結したものだと見ています。もしそうだとしたら、「政治的妥協色」が強くなることも仕方がないのですが、それにしても「日韓強制合意」を回避するために、もう少し他に方法はなかったものなのでしょうか?返す返すも悔やまれます。

この点、安氏は、昨年12月の合意を「撤回すべき」と表明していますが、実は、韓国側からこのような意見が出てくること自体、私としては歓迎したいと思います。慰安婦問題を「日韓合意以前」の状態に戻すことができるならば(しかも韓国側の責任で)、日本としては反撃のチャンスが出てくるからです。

おそらく、韓国国内で、朴槿恵(ぼく・きんけい)政権が成立させた「慰安婦合意」は、遅くとも次期政権で間違いなく反故にされるでしょう。その時に、この合意を進めた日本の外務省がどのような対応を取るかが見ものです。ですが、我々日本国民としては、韓国がこの合意を破ろうとした場合、、むしろ積極的にそれを破らせ、「合意違反」を機に、一気に過去の韓国の不法行為を糾弾すべきでしょう。

THAAD配備も撤回を!

次に、THAADについて、です。

韓国軍は7月、米軍と共同で、2017年末を目途にTHAADを配備すると発表しました。これを受けて、中国は韓国のTHAAD配備をやめさせるために、現在、韓国に対して猛烈な「嫌がらせ」を仕掛けてきています(これについては当ブログの過去エントリー「中国による「小出しの対韓制裁」の意味」もご参照ください)。中国が韓国にTHAAD配備をやめさせようとする最大の理由とは、ミサイル防衛システムの導入により、地域の軍事バランスが中国にとって不利な方向に崩れるからです。あわよくば、中国としては韓国を脅し、なだめすかしてTHAAD配備を中断させようとしているのでしょう。

現在、韓国はゆっくりと、しかし確実に、中国に取り込まれつつあります。少なくとも経済面では、すでにGDPに占める対中輸出の比率は10%を超えていますし、金融面では日本との通貨スワップ協定が打ち切られた現在、中国との通貨スワップ協定の重要性が高まっています。また、日米が参加を見送っているアジアインフラ開発銀行(AIIB)に、早々に出資を決めるなど、経済・金融面で、韓国の「対中シフト」は明らかです。

一方、軍事面では、依然として在韓米軍の韓国の国防に果たす役割が大きいのが現状です。北朝鮮が核兵器の開発を公言しているという事情もありますが、在韓米軍が撤収すれば、対北防衛体制は直ちに崩壊しかねません。これまでも、韓国は北朝鮮による軍事的挑発に対して有効な反撃を加えていません。本当の脅威(北朝鮮)に盲目的で、自国に何ら脅威をもたらさない国(日本)を威嚇する韓国には、自力で国家を守る意思も能力も存在しないと言わざるを得ないのです。

こうした状況で、THAAD配備が土壇場で撤回された場合、今度こそ本当に、米軍の韓国からの撤収が現実味を帯びてきます。あるいは、現在の米国は、韓国が「中華圏」に取り込まれた後を見据えて、キューバのグアンタナモ基地のように、韓国内の米軍基地を「中華圏における軍事拠点」とする運営を目指しているのかもしれませんが…。

いずれにせよ、韓国内でTHAAD撤回論が出てくることも、長い目で見れば日米同盟の相対的な重要性を高めることにつながるため、歓迎したいと思います。

韓国の左派の主張は日本の国益に合致する

意外と知られていませんが、韓国内の「左派論客」の主張は、よく読むと、実は面白いのです。そして、韓国の独自性と極端な反日を柱とする韓国内の左派の主張は、日韓の離反を招くため、結果的には日本の国益にも合致するのです。

朴槿恵政権の「次」が誰なのか、まだわかりませんが、金大中(きん・だいちゅう)、盧武鉉(ろ・ぶげん)両元大統領のような「左派政治家」が大統領に就任するようなことがあれば、今度こそ日米・日韓関係が断絶し、韓国は中国の勢力圏に入ることになるでしょう。そして、意外と「その時」は遠くない未来にやってくるのかもしれません。

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