無責任なデモに思う
「戦争に反対する大学生の団体」であるSEALDsが解散するそうです。私自身、彼らが解散する目的には、何か税法上の理由があると見ていますが、本日はこれについて考察してみます。また、もうすぐ終戦記念日を迎えますが、戦争反対を唱えるだけの集団には強い違和感を覚えます。おりしも中国の軍拡リスクが高まっていますが、日本に侵略を防ぐだけの覚悟はあるのでしょうか?
国会前のデモ活動への違和感
さて、先月は参議院議員通常選挙という久々の大型国政選挙が実施されたほか、東京では月末に都知事選挙も実施されました。それぞれの選挙に関する雑感は過去ブログにて執筆したとおりですが(参議院選、都知事選についてはそれぞれのリンクをご参照ください)、久しぶりに国内政治について雑感を述べてみたいと思います。
「安全保障関連法に反対する大学生らの団体」として、一躍有名になった団体が「SEALDs(シールズ)」です。この団体、様々な情報から判断する限り、明らかに日本共産党と密接な関係にある(例えば同団体が街宣に利用している自動車が明らかに共産党系の団体のものであるなど)など、突っ込みどころは大量にありそうです。その団体の事実上の代表者である奥田愛基氏(24?)は、今年8月15日にSEALDsを解散することにしたそうです。
「SEALDsを8月15日に解散」奥田愛基さんが心境明かす(2016年07月11日 12時26分 JST付 ハフィントンポスト日本語版より)
どうして唐突に8月15日に組織を解散すると言い出したのでしょうか?
私が確認したところ、この「SEALDs」なる組織は政治団体としての届け出をしていませんし、法人格を持つ団体(社団法人、合同会社・株式会社等)でもなさそうです。しかし、同団体のウェブサイトを見ると、寄付(カンパ)名目で資金を集めているようであり(ただし収支計算報告などはなされていません)、たとえ法人格が存在しなかったとしても、「人格のない社団等」として、法人税法・所得税法に従い、課税所得を計算して納税する義務を負います(法人税法第3条、所得税法第4条)。
私のうがった見方ですが、政治資金規正法上の政治団体ではない以上、SEALDsは「人格のない社団」として納税義務を負うことになりますが、現段階で解散しておけば、受け入れたカンパはウヤムヤにしてしまうことができると考えているのかもしれません。やはり、公認会計士であるという立場上、どうしてもそういう側面から眺めてしまうのは、私自身の悪い癖(?)なのかもしれませんね。
いずれにせよ、彼らが行ってきた国会前での「抗議活動」を見ていて、一番強く感じたのは、「現状を変えたいなら国会前でドラム叩いて大声を上げるのではなく、選挙に行って一票を投じろ」という点です。もちろん、日本国民には日本国内において、日本国憲法のもとで表現の自由が保障されています。街頭デモを含め、法律を守っている限り、政治活動は自由に行って良いのですが、国会前でラッパを吹き鳴らし、太鼓を叩いてスローガンを叫ぶだけの行動に、いったい何の意味があるのかわかりません。
結局、先日の参院選でも自民党を中心とする与党が「勝利」し(※私自身は先日も申しあげたとおり、今回の参院選が自民党の勝利だとは考えていませんが)、「改憲に積極的な勢力」が衆参ともに3分の2を超えました。SEALDsが一生懸命叫んできたにも関わらず、有権者はSEALDsの主張とは真逆の選択をしたのです。この事実はとても重要でしょう。
「護憲派」の無責任
さて、このSEALDsは「私たちは、自由と民主主義に基づく政治を求めます」と述べていますが、彼らの主張を引用しておきます。
「SEALDs(シールズ:Students Emergency Action for Liberal Democracy – s)は、自由で民主的な日本を守るための、学生による緊急アクションです。担い手は10代から20代前半の若い世代です。私たちは思考し、そして行動します。
私たちは、戦後70年でつくりあげられてきた、この国の自由と民主主義の伝統を尊重します。そして、その基盤である日本国憲法のもつ価値を守りたいと考えています。この国の平和憲法の理念は、いまだ達成されていない未完のプロジェクトです。現在、危機に瀕している日本国憲法を守るために、私たちは立憲主義・生活保障・安全保障の3分野で、明確なヴィジョンを表明します。
日本の政治状況は悪化し続けています。2014年には特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認などが強行され、憲法の理念が空洞化しつつあります。貧困や少子高齢化の問題も深刻で、新たな生活保障の枠組みが求められています。緊張を強める東アジアの安定化も大きな課題です。今年7月には集団的自衛権等の安保法整備がされ、来年の参議院選挙以降自民党は改憲を現実のものとしようとしています。私たちは、この1年がこの国の行方を左右する非常に重要な期間であると認識しています。
いまこそ、若い世代こそが政治の問題を真剣に考え、現実的なヴィジョンを打ち出さなければなりません。私たちは、日本の自由民主主義の伝統を守るために、従来の政治的枠組みを越えたリベラル勢力の結集を求めます。そして何より、この社会に生きるすべての人が、この問題提起を真剣に受け止め、思考し、行動することを願います。私たち一人ひとりの行動こそが、日本の自由と民主主義を守る盾となるはずです。」
いかがでしょうか?
何が言いたいのかよくわからない文章ですが、敢えて要点をかいつまんでみると、「日本国憲法を守れ」という点が主張の骨子にあるようです。文中では「今年7月には集団的自衛権等の安保法整備」「来年の参院選」という用語が出てくるため、この文章が作成されたのは2015年の秋口でしょうか?
まず、前提条件が大きく誤っている点を指摘しておきます。
安倍政権は独裁政権ではありません。ちゃんと憲法に定められた民主的なプロセス(衆議院議員総選挙と国会議員の互選による内閣総理大臣の選出)に従って選出された政権です。この点を誤ってはなりません。安倍政権が強権により憲法を停止し、独裁体制に入ったとしたら、まさに「安倍の独裁」という批判が当てはまりますが、安倍政権は憲法に従い、国政選挙を実施しています。選挙の結果、SEALDsの関係者らが期待する結果が出なかったとしても、それが民主主義です。そして、その結果を受け入れないのであれば、彼らこそが逆に「民主主義を冒涜している」のです。
そのうえで、SEALDsの無責任さに苦言を呈しておきましょう。「東アジアが緊張を強めている」という下りが出てきますが、緊張が高まっていることは事実です。しかしそれは、あくまでも中国が軍事力を用いて国際秩序の現状を変更しようとしているからであり、批判する対象は安倍政権ではなく、中国共産党であるべきです。
戦争は向こうからやってくる
ところで、先日の内閣改造で「右派」と目される稲田朋美氏が防衛相として入閣しました。彼女は毎年のように靖国参拝を繰り返すことでも知られていますが、「そんな右派の政治家が防衛相に就任すれば、中国を刺激することになり、軍事的衝突リスクが高まる」といった言説を見かけることもあります。しかし、これほど無責任な言説はありません。
そして、「戦争ハンターイ」などと無責任に叫んでいれば戦争が発生しないというほど、現実の国際社会は甘いものではありません。わが国が望んでいなくても、外国から仕掛けられれば戦争に巻き込まれるからです。こうした中、既に報じられている通り、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域に、武装船を含めた中国の船舶が大量に出現していますが、この問題を巡って日経ビジネスオンラインにジャーナリストの福島香織氏が、非常に興味深い論考を寄せています。
尖閣に迫る嵐、「終戦の日」の中国に備えよ(2016年8月10日付 日経ビジネスオンラインより)
福島氏は今回の旺盛な中国による尖閣諸島への侵入の背景に、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席による「軍権の掌握」ができていない可能性があると分析されていますが(リンク先記事の3ページ目)、それと同時に今年6月に相次いだ中国による領海侵犯・領空での「ドッグファイト事件」などで、日本政府がこれまできっちりと中国に抗議して来なかったことが裏目に出ていると述べています(同4ページ目)。福島氏は「終戦の日」(8月15日)あたりを狙い、中国側が、たとえば「武装民兵と(中国人民)解放軍が漁民に成りすまして」尖閣諸島に上陸する可能性があると指摘しています。この読みが当たれば、非常に恐ろしい話です。
なお、読者コメントを読んでみても、
「これら中国の一環の行動は武力と物量を背景にした国際法を無視する形での現状変更であり、その責任は全て中国側にあることを国際社会に向けて迅速に広報することです。
南シナ海で起きた事例が、今まさに東シナ海でも発生し、その首謀者は一環して中華人民共和国であり、国際社会に調和をもたらすはずのG20の開催国である中国には資格が疑われると訴えるべきです。
国際法の守護者である日本が、国際法を無視して周辺国との軋轢を生じさせ続けている中国の侵略に耐え続けてがんばっている姿をマスメディアやソーシャルメディアなどあらゆるチャンネルを使ってリアルタイムに見せることです。
また、現在、ぎりぎりの状況で日本の領土領海を守ろうと戦っている海上保安官への支援と国民からの声援を届けなければならないと切に感じています。」
といったコメントや、
「現時点で重要な事は、まずは米国との軍事上の緊密な情報交換だが、それ以外にもG7あるいはG20メンバーや全世界に対して、逐次以下のような情報を繰り返し発信していくことが肝要だ。
・中共が力づくで尖閣諸島を奪いにきていること
・集結する中共の大量の漁船は、漁船とは名ばかりで改造されたものであり、重火器を装備し、船員は訓練された民兵であること。
・漁船の保護にあたっていると主張している海警局の船も軍艦を改造、着色したもので、実質軍艦であること。
・以上の状況から、当海域で今後起こるかもしれない紛争は両国の漁民や海上警察官同士トラブルの域を明らかに超えると予測され、日本側の島嶼防衛対応は自衛隊が実施せざるをえないこと。
また、中共の一方的な行動により万一戦端が開かれた場合は、中共との経済取引等を一定期間制限するなど、今から各国に協力をお願いしておくことも非常に重要だ。」
といったコメントには共感せざるを得ません。
こちらが戦争を欲していなくても、国際社会では戦争は「あちらからやってくる」ということを忘れてはなりません。問題は、「その時」は唐突にやってくる、ということです。我々日本国民は、戦後70年続いた平和が突如として打ち破られる可能性に留意しなければなりません。
万が一、「その時」が来てしまった時に、日本政府、そして日本国民は、慌てふためいてはなりません。覚悟を決めておくことが求められるのです。
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