日本のマスコミの特徴を一言で言い表せば、それは「ダブル・スタンダード」ではないでしょうか。今年1月28日ないし29日、日テレによるドラマで原作改変を苦に原作者が自ら命を絶ったとみられる事件が発生しましたが、その「社内調査報告書」が今さら出てきたのです。しかも内容は説明責任を果たそうとするものでは到底なく、関係者も多くは匿名です。マスコミが普段、口を開けば「迅速に説明責任を果たせ」だの、「実名を公開しろ」だのと要求していることを思い起こしておくと、なかなかに呆れる話です。
日テレ原作改変問題、今ごろになって報告書公表
当ウェブサイトでは敢えて「正面からは取り上げない」ようにしてきた話題のひとつが、日本テレビによるドラマ原作改変事件です。
「正面から取り上げていない」というのは、『米メディアが「日テレによるドラマ改変問題」を報じる』などを含め、当ウェブサイトでは該当する漫画の名称などについては敢えて伏せているためです(SNSなどで大々的に話題となっているため、調べたらすぐにわかると思いますが…)。
じつは、この「社内調査報告書」<pdf.gif>が先週金曜日に公表されています。
わざわざ話題性が乏しくなるであろうタイミングでも狙ったのか、金曜日の夕を狙って報告書を公表するというセンスもなかなか強烈ですが、ここまで注目されている話題について、「第三者調査」ではなく「社内特別チーム」の調査で済ませたこと、原作者が亡くなってから報告書公表まで4ヵ月もかかったことは、不思議です。
テレビ局や新聞社というものは、口を開けば「説明責任」とやたらと強調するわりに、この日テレの「第三者調査ではなく社内調査で済ませたこと」、「事件発生から数ヵ月も経って公表したこと」は、彼らもまた、徹底的に自分たちに甘く、他人に厳しい業界である、という証拠ではないでしょうか。
他人に実名を求めるわりに自分たちは匿名で
ただ、この調査報告の内容も、ずいぶんと酷いものです。
ページ数は97ページありますが、冒頭に、こう記載されています。
「当調査チームは、原作者、脚本家、番組制作者等が、より一層安心して制作に臨める体制を構築するために、以下の事項を目的として調査、分析及び検討を行った。なお、本件原作者の死亡原因の究明については目的としていない」(同P1)。
要するに、自分たちの「原作改変」によって、原作者の方が自ら命を絶ったという点に正面から向き合いませんよ、という宣言のようなものでしょう。
しかも、調査担当者については、弁護士7名と日本テレビの取締役執行役員コンプライアンス推進室長の合計8名は実名ですが、社内の事務局担当者7名や調査の対象となった関係者の多くは実名が伏せられたままです。
『記者クラブが海保に「速やかに実名を公表せよ」と要求』などを含め、以前から当ウェブサイトでも取り上げてきたとおり、マスメディアは何らかの事件、事故などが発生した際には、その被害者らの実名を公表するよう、捜査当局などに圧力を掛けてきました。
なんとも強烈ですね。
デイリー新潮の解説記事
さて、本件については、報告書自体は90ページを超える長文ですが、これに関してテレビ業界の元関係者の方から、興味深い解説がウェブ評論サイト『デイリー新潮』から出て来ています。
●●さんは「ウソ」であしらい、脚本家には「原作者批判」で敵意を煽る…日テレ「●●●●●●●●」調査報告書で浮上した「プロデューサーの大罪」
―――2024/06/01 10:45付 Yahoo!ニュースより【デイリー新潮配信※引用に当たって記事表題は修正している】
記事を執筆したのはテレビ朝日の元アナウンサーで、昨年11月までテレビ朝日で法務部長を務めた、西脇亨輔弁護士です。
先ほども指摘したとおり、報告書では原作者の方の死因究明を「目的としていない」というのですが、これについて西脇氏はこう驚きの声を挙げます。
「<略>その冒頭を読んで私は呆気にとられた。<略>では一体何のためにこの3か月間、調査を行ったのか。ドラマ制作のなかで貴重な命が失われたから、その原因を明らかにするために調査をしたのではないのか」。
これまでテレビ局の法務部員として社内調査に関わってきた西脇氏は、経験上、調査を始めるときには「最初に調査の目的、優先順位をはっきりさせる」としたうえで、この日テレの調査は「その優先順位を決める時点で、原作者の方の死とは向き合わないことを選択」したようなものだ、と指摘します。
西脇氏はまた、「報告書には日本テレビと小学館の間での認識の違いや、ドラマ制作過程でのプロデューサーと原作者の信頼関係の破綻が詳述されている」としたうえで、こう述べます。
「特にプロデューサーが原作者に嘘をついたことで信頼が崩壊し、原作者と脚本家の間の対立が深まった」。
そのうえで、報告書では原作者と脚本家がSNSで非難の応酬を繰り広げた際にも、プロデューサーの対応の不備を指摘しつつも、「事態の収拾のための選択肢が限られていたと結論づけている」というのですが、この点についても西脇氏は、次のように日テレに対応を批判します。
「だからもっと手前で対応を、と報告書は続けているが、いや、この段階でもテレビ局側の『選択肢』は色々あったはずだ。プロデューサーが●●さん(※原作者)や脚本家から話を聞いたり二人が直接意見交換できる場を作れば、事態は打開できたかもしれない」。
すなわち、すべてが後手後手、というわけです。
マスコミの腐敗利権
いずれにせよ、今回のドラマ原作改変事件は、日本テレビという組織、あるいはマスコミ業界全体の、「徹底的に自分に甘くて他人に厳しい」という姿勢の証拠といえるのかもしれません。
そして、「自分に甘くて他人に厳しい」のは、べつにドラマに限った話ではありません。
先週の『上川発言報道問題で林智裕氏論考が「社会の停滞」警告』でも触れたとおり、共同通信による「上川陽子発言切り取り報道」事件を巡って、ジャーナリストの林智裕氏が、こんなことを述べています。
「マスメディアには専門的な知識と責任を担保する資格が不要かつ民主主義的な選挙で選ばれたわけでもない。任期はなく弾劾もできない。相応の責任を求められる制度すらない。情報開示の義務もない。これら巨大な権力が責任も問われず野放しにされたままでは、社会は国民主権ならぬメディア主権、法治主義ではなく『報治主義』にさえなりかねないのではないか」。
じつは、この林氏の指摘は、マスコミ業界全体の在りようにそのまま当てはまるものでもあります。
他人にはやたら偉そうに、ガバナンスや説明責任を求めるわりに、自分たちの不祥事に関しては徹底してダンマリを決め込む。
現在のマスコミとは、まさに「腐敗利権」そのものではないか、などと思う次第です。
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本日の朝日新聞の社説は、「テレ東の警察密着番組を批判する」ものでした。ならば、朝日新聞は、人のことを言えた身分でしょうか。
毎度、ばかばかしいお話を。
日テレ:「仲間内で問題が起きないような報告書を書くのに時間がかかった」
まさか。
引きこもり中年 様、
その「まさか」では無いでしょうか。
ある企業が、不祥事の報告書を4か月かけ、さらには関係者を匿名にしても、(少なくとも)日テレは批判することができませんね。
いわゆるテレビが、マスコミとして、情報発信媒体として支持を失ったのは、時代の流れとか、個人の時間の使い方の多様化とか、なんとなく外に責任を求める風潮ですが、それはそうではなく、スクラムを組んで散々やった反日卑日放送の結果であり、自業自得の当然の結果であると指摘しておきたい。
当時悪夢の民主党政権と共に、倒すべき敵としてインターネットで戦ったものだ。すっかり弱体化して、双方ともに叩きがいがなくなってしまったが。
滲み出る特権意識
テレビ局がドラマ化してやってるんだぞと上から目線
実写ドラマの芸能事務所との癒着
事務所の意向で配役や展開を変えるなどよくあることだそうです
近年映画の大ヒットはアニメや漫画原作ばりとなっていますが
実写脚本の質が低いことが原因です
利権でぬくぬくと広告収入得てきたツケです
これもまたマスコミ腐敗の一端に過ぎませんが
>小学館側は「漫画をドラマ化する以上『自由に好き勝手にやって下さい』と言われない限り、原作に忠実にドラマ化するのは当然だ」という認識だったと日テレの調査に対して回答している。
実写ドラマ化の製作費、相当な金額になるんじゃないの。
ドラマ化するにあたって漫画原作者との契約はどうなってるんだろう?
口約束で「漫画に忠実に」で済ませていたのだろうか?
契約書については、
『放送前には締結に至らなかった』ことが、
報告書(P20)に明記されています。
さらに、その内の『原作利用許諾契約書』が
締結されていなかったことも、
報告書(P69)に明記されています。
したがって、
>口約束で「漫画に忠実に」で済ませていた
と言えます。
当方が報告書を一読して感じるのは、
テレビ局側に、原作および原作者を尊重する
姿勢が希薄なこと、下世話な表現で言えば、
「他人のふんどしで相撲を取っている」意識が
ほとんど無いように感じられることです。
なお、この点については、報告書P78に
出版社側の見解として、
『当調査チームの質問に対して、あくまで個人の見解
とした上で(略)「原作を利用する以上、必要最低限の改変とすべきだと
いうことをドラマ制作者側が認識すべき」といった回答をしている。』
と記載されています。
当方は、これが当たり前、当然だと考えますが、報告書では、
「振り返るべき重要なポイントではないだろうか。」
との記載にとどまっていて、このあたりに、テレビ局側の驕りや
図々しさを感じます。
情報ありがとうございます。
いい加減な業界ですね。
>事態の収束のために日本テレビとして取り得る選択肢はほとんどなかった
原作者含めた関係者とよく協議し、事情内情を公告し、ファンや視聴者に謝罪し、スポンサーに違約金を支払い、放送を途中でも中止し番組に穴をあけ、放送免許の是非を問われれば良かった"だけ"かと思います。
それが現実的ではない・前例が無いから選択肢に無い、というのは当然推察できます。しかしそれが現実的ではないのがおかしいのです。非常に重い処分を受けるのは想定していないから対処が出来ない、まして全員がなぁなぁにして誰か1人だけが"極端な選択"をして帳尻を合わせる、などという話は普通なら通りません。
「罰を受けたくないから誤魔化したけど仕方ないでしょ」が大人が作った調査報告書とは。
この報告書からわかるのは、
今後も日テレの漫画原作ドラマは改変しますよ宣言です。
が、漫画原作のファンは改変されたドラマをみたいと思うかといえば、違うと思います。
ということは、漫画原作ドラマは漫画ファンを取り込むことを狙ってないとなります。
つまり、日テレは
漫画原作を使うことで、必ず面白さを確保でき、
かつ、原作者を無視して自分たちの作りやすいやり方でドラマを改変する事で
楽に安く大量に作ることを目的としてると言われても仕方がないです。
今後日テレの漫画原作ドラマは、漫画ファンは見るべきではないとこの報告書は語ってます。
八神くんの家庭の事情は酷い改変だった
あれは酷かった。
自分は漫画が好きで全巻揃えて持ってました。
ので、ドラマ化の報で絶対見るべしと思ったらあの内容。
漫画家もドラマの件では文句を言ってました。
ただ、あそこまで内容変えたら漫画ファンは裏切られたと絶対にみないのになぜ、題名をかえてオリジナルドラマにしなかったのか不思議です。
ただ、今想像するなら
ドラマ化権を買ったはいいが、いざ実写化しようとしたら難しく実写化しやすいように改変改変で全く別物になってしまったのかなと。で、わざわざ権利を買ったのだから題名だけ同じにしたのかも。
あくまで想像ですが。
で、今回の事件。解決方法は先に脚本完成させて原作者のOK出るまで訂正してから撮影に入るだけでだいぶ違うと。
で、撮影後も脚本と内容がかわるなら原作者チェックをOK貰わないと放映できない様な契約で。
現場はとんでもなく苦労するが、それが当たり前なんだと思います。
それが嫌ならオリジナルドラマを1から作るのがスジでしょう。
イヤな見方ですが…
今年も募金詐欺的全日放送番組で荒稼ぎを目論んでいるので、広告主(予定)へのミギレイ宣言ヤッテル感出し的アリバイ文書としてはコノ時期がリミットだった、だけかと
暗澹たる気分にナテシマウ…
引っ掛かったオタクさま
なるほど。性懲りもなく、あれまだやるとは。。
日本テレビ経営としてよほどの利権があるんでしょうね。
ちょっとググッたらYahooニュースで殆ど全件といっても過言ではないレベルの非難の嵐。
日本テレビ経営陣。大した鈍感力。メンタル強くて感心します。
小さな反抗かもしれませんが、日本中の全ての人がテレビからの取材などをお断りするような世の中になって欲しい。テレビ業界と係わると碌なことが無いと思う。
ネット上では、徐々に浸透しているようですが、これ以上テレビ業界と係わって不幸になる人が出ないようになればいいなと思います。
小学館ではありませんが、今期やっている漫画原作ドラマでも原作者様から苦言呈されてますね日テレ。
そこまでして芸能事務所側サイドに沿ったドラマ作りたいならオリジナルでやればいいのにね。
自己愛は地球を救う?