韓国政府発案による第三者弁済が、さっそく行き詰っています。自称元徴用工判決問題の法的性質もさることながら、「財団」の財源問題が浮上しつつあるからです。これについて、財団の理事長に対する韓国紙のインタビューから見えるのは、「韓日の和解」、などではありません。「未来に向けた協力の停滞」と「日韓関係の行き詰まり」です。
目次
自称元徴用工問題の本質と第三者弁済
自称元徴用工問題、すなわち「戦時中、強制徴用された」などと自称する者たちが日本企業を訴え、韓国の裁判所が国際法に違反してこれらの者たちに勝訴判決を下している問題」を巡り、昨年3月に韓国政府が出してきた「解決策」は、何ら本質的な解決になっていない――。
これは、当ウェブサイトで何度となく指摘して来たとおりです。
そもそも自称元徴用工問題自体、「韓国側であることないこと捏造し、法的な根拠なしに日本から謝罪や賠償を強要して来た問題」という意味において、当ウェブサイトの用語でいう、典型的な「二重の不法行為問題」のひとつを構成しています。
日韓諸懸案巡る韓国の「二重の不法行為」とは?
- 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
- 韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」などには、多くの場合、法的根拠がなく、何らかの国際法違反・条約違反・約束違反を伴っている
(【出所】当ウェブサイト作成。詳細は『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)
日韓諸懸案の本質が韓国の日本に対するこうした「二重の不法行為」で成り立っているとの視点に立てば、この問題で日本が韓国に「譲歩する」などということがあってはならないことは自明の理であり、それどころかむしろ、現実の「解決策」がまったく解決にすらなっていないことも明らかです。
韓国政府が打ち出したのは、いわゆる「第三者弁済」と呼ばれるもので、韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が韓国企業などから集めた寄附金を原資に、自称元徴用工問題の被害者である日本企業に代わって、自称元徴用工らに賠償する、というものです。
財源不足は明らかに
これがなぜまったく解決になっていないのかといえば、韓国側の虚偽の主張を否定することなく、かつ、韓国の裁判所の国際法違反の判決を放置した状態で、その判決が「正しいもの」として賠償金を支払うこととしているからです。
また、財源不足も目下の大きな課題でしょう。というのも、自称元徴用工問題の被害企業は続々と増えており、少なくとも大法院(最高裁に相当)の確定判決は、現時点までに12件に達しているからです。
図表 自称元徴用工訴訟の被害を受けた日本企業一覧
時点 | 被害企業 | 訴訟件数 |
2018年10月30日 | 日本製鉄 | 1件 |
2018年11月29日 | 三菱重工業 | 2件 |
2023年12月21日 | 日本製鉄 | 1件 |
2023年12月21日 | 三菱重工業 | 1件 |
2023年12月28日 | 三菱重工業 | 2件 |
2023年12月28日 | 日立造船 | 1件 |
2024年1月11日 | 日本製鉄 | 1件 |
2024年1月25日 | 不二越 | 3件 |
合計 | 12件 |
(【出所】報道等。なお、2018年10月30日の被害企業については、当時の社名は「新日鐵住金」)
報道等によると、現時点までに韓国大法院が日本企業に違法な賠償を命じた判決件数は延べ4社・12件に達しており、これに加えて下級審でもいくつもの訴訟が係属中であることから、賠償をするための韓国の財団で財源が枯渇することはほぼ確実です。
これに加えて韓国の財団が日本企業に対し、求償権を取得してしまうという問題も未解決です。
とりあえず、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が存続する間であれば、韓国の財団はこうした求償権を行使することはない、などとするのが岸田文雄首相の考え方であるようですが、尹錫悦政権が引退するか、何らかの形で倒れるなどすれば、韓国の財団による求償権行使が日韓間の新たな懸案に浮上する可能性は濃厚です。
とりわけ第三者弁済がダラダラと続けば、消滅時効を回避する求償権も多々出てきます。
いわば、現在の日韓関係は、数年後に爆発することが明らかな時限爆弾を、現時点でせっせ、せっせといくつも埋設しているようなものでしょう。
やっぱり出て来た!「日本の呼応が必要だ」論
いずれにせよ、韓国政府による第三者弁済案には、少なくとも次のような問題点があります。
- そもそもの違法な判決の問題を解決していないこと
- 財源不足が確実であること
- 求償権問題が数年後に噴出する可能性が高いこと
こうした「目に見えた地雷」を、どうして日本のメディアも突っつかないのか、謎でなりません。
こうしたなかで、「やっぱり出て来た」のが、こんな話題です。
「徴用被害第三者弁済に120億ウォンさらに必要、韓日企業が出なくては」(1)
―――2024/05/27 08:51付 Yahoo!ニュースより【中央日報日本語版配信】
「徴用被害第三者弁済に120億ウォンさらに必要、韓日企業が出なくては」(2)
―――2024/05/27 08:51付 Yahoo!ニュースより【中央日報日本語版配信】
わかりやすくいえば、「日本の呼応が必要だ」、とする主張でしょう。
韓国紙『中央日報』(日本語版)が27日に配信した記事によれば、問題の韓国政府傘下の財団の沈揆先(ちん・きせん)理事長が23日、中央日報とのインタビューに応じ、同財団で少なくとも今後、約120億ウォン(約13.8億円)が必要となるとして、「財源が大きく不足した状況」だと述べたのだそうです。
日本人の多くがこの記事を読むと、おそらくは「知らんがな」、という反応を示すのではないかと思いますが、こうしたツッコミについてはとりあえず控えることとして、記事の続きを読んでみましょう。沈揆先氏は、次のように述べたのだそうです。
「第三者弁済が別れ道に入ったようで心配だ。解決策の成功に向け韓日企業の参加が本当に切実な状況」。
誰ですか、「いやぁ、本当に心配だなぁ(棒)」、という反応をしたのは。
なぜ「日本が自発的参加」?意味がわかりかねるが…
それはともかくとして、沈揆先氏が述べた現在の同財団の財政状況としては、ポスコが財団に寄付した約41.1億ウォンのうち、すでに約38億ウォンは「被害者」(※原文ママ、以下同じ)11人に支給するか、受領を拒否した4人に供託金として出する化しており、現在余った金額は約3億ウォンに過ぎないのだそうです。
これに対し、「今後、最低でも120億ウォンが必要」とは、昨年12月から今年1月にかけて大法院が下した9件の判決にかかる「被害者」52人に対して支払う判決金と遅延利子に充てるためのもので、同財団の調査の結果、「90%以上が第三者弁済を受け入れている」、などとしています。
しかも、自称元徴用工らに充てる賠償金の財源は「すべて寄附金で調達する」というのが同財団の原則であり、これについて中央日報はこう述べます。
「韓国と日本の企業の自発的参加以外にはこれといった代案はない。1965年の韓日請求権協定の恩恵を受けた韓国企業が積極的に出なければならないという指摘が出る理由だ。専門家らは韓日を行き来しながら活発に経済活動をする両国企業の自発的な参加の必要性も提起する」。
どうしてここで「両国の」、となるのでしょうか。
意味がわかりかねます。
そもそも韓国が一方的に発生させた歴史捏造に伴う無法な賠償判決、国際法に照らしても違法であり、日本企業の立場としては、1銭たりとも拠出する必要はありませんし、また、拠出してはなりません(最近だと株主代表訴訟なども頻発しており、日本企業としても迂闊な方法はとれません)。
そんな中央日報の記事に出てくる韓国側のホンネは、これかもしれません。
「また、第三者弁済という迂迴的解決策が出てきた背景が、裁判で敗訴した被告戦犯企業が判決にともなう賠償を拒否したためということを考慮すれば、日本側の参加がないことに対し韓国側の不満は大きくなるほかない」。
使い古された手です。
「ほんの少しでも良いからおカネを出してほしい」、と要求し、日本側が「じゃぁ、これっきりだからね」とおカネを出した瞬間、韓国の側が「そらみたことか!日本が過去の犯罪を認めておカネを出した!日本はもっとカネを出せ!」となることは火を見るより明らかです。
また、仮に「韓国側の不満が大きくなった」としても、私たち日本国民が韓国を満足させるために動かなければならない、という理由はありません。これ以上韓国に無用な譲歩をしたら、日本国民の側の怒りは止められなくなり、またしても自民党が政権から放逐される憂き目にあうかもしれません。
(※「悪夢の民主党政権」を覚えている身としては、個人的に、それだけはもう勘弁してほしい、などとも思う次第ですが…。)
記事から見えるのは「日韓関係の停滞の未来」
ちなみに沈揆先はこうも述べたそうです。
「日本は日本で事情があるとはいうが、日本企業が参加してこそはじめて第三者弁済が韓国国民から支持を受けられる。大法院判決の趣旨は結局日本企業が賠償しろということなので、韓国国民として日本企業の参加を要求するのは当然のこと」。
控え目に申し上げて、こんなことを言って来る相手と「手を取り合い、ともに未来に向けて発展していける」関係が構築できるわけがありません。
記事の中では「第三者弁済は両国和解への一等功臣」なる表現も出てくるのですが、そもそも第三者弁済は「和解」ではなく「対症療法」であり、かつ、将来的に必ず破裂することが確定している地雷を埋設する行為でもあります。
いずれにせよ、ここまで強烈な記事を見かけたのは久しぶりです。韓国がいう「韓日協力」の本質が何者なのかを知るうえでは、ある意味で非常に参考になるサンプルといえるからです。
そして、インタビューから見えるのは、「韓日の和解」、などではなく、「未来に向けた協力の停滞」と「日韓関係の行き詰まり」であることだけは間違いないといえるでしょう。
View Comments (18)
いやぁ、本当に心配だなぁ(棒)
解決済みなのだから放っておけばよい
仲良くしようとするからいけない
関係をもたなきゃ それでいい
どうせお隣さんは中国に飲み込まれるから
皆様の「放っておけばよい」との考えに、全面的に賛成致します。
尹政権になって、前政権に比べれば、対応はまだしもになってきましたが、LINEヤフー問題でも明らかなように韓国民の感情ベースでは、まともに相手にする対象ではありません。
戦略的放置もしくは段階的縮小を続ければ良い、と考えます。少子化で国力はどんどん低下していくでしょうし。
taku様
それがねえ、突き放そうとすればするほど、絡んでくるんですよ。
思うに、アチラの人間には「日本人は朝鮮半島支配の野望を常に心の奥底に秘めている」という、牢固たる思い込みがあるんだろうなと。
そこを「賢い」わが民族がうまく利用して、瞞くらかしてやれば、ツンツンしているように見えても、本音の「ツンデレ」部分は引っ張り出せる。
まあ、そんな算盤弾いてるような気がするんですがね(笑)。
伊江太さん
コメントありがとうございます。
アチラの人間は、単に「被害者は神さま=絶対的有利なポジション」という牢固たる思い込みがあって、日本(「加害者と被害者という歴史的立場は千年の歴史が流れても変わらない」と宣った大統領もいましたね)との関係強化は絶対に損にならないと考え、絡んでくるんじゃないでしょうか。
右派と左派が、交互に「強面と優しい顔」を使い分け、ちょっと優しい素振りを見せて、「尹政権を助けなきゃ」なんて考える阿呆(=岸田政権?)をおびき出そうとしているのではないか、と。
早く日本国民の多数派が、そのことに気付いてくれることを期待しています。一部のどうしようもない”進歩派”はどうでもよい。
詳しい部分の記憶は曖昧ですが、集まった基金の9割以上はポスコの寄附金だったと思います。
つまり、寄付受付先の韓国企業は基本、知らん顔なんですよね。
詐称徴・・・自称徴用工の人々を気の毒に思うならいくらかの寄付は集まりそうなもんですが、まあほんとに不思議な話です。(棒)
日本の現政権の対韓外交問題の線引き位置には異論はあるものの、金を払うか払わないかの一線では大丈夫そうなので、そこの心配はそれほどないですけどね。(金の話だけじゃないんだけど)
なーんかまた岸田が余計なことしそうな気がする…
ゴミ集団・経団連が日韓未来基金とやらに2億出したようですが、韓国側はまさかこれを転用するんじゃあるまいな(なにしろ何をやるかわからない国ですから)
時期的に日中韓首脳会談開催の韓国への手土産らしいですが、まーた余計なことをしてからに…。
韓国側の狙いは、無理筋をそうでなくする魔法の実現。
具体的には、日本側の呼応で生じる”追認効果”ですね。
(日本側は、自国の非を認めた故に呼応したのだ!)
だから、呼応しろ!とは、非を認めよ!と同義の言葉。
渡した手切れ金も、彼らには手付金でしかないのです。
・・・・・
日本にでき得ることは、
「すでに解決済みの事象を蒸し返すな!」と ”大きな声で” 繰り返すのみです。
心配なことが一つだけ
自民党へのお灸として政権交代が起きたら・・・・・・
ドジョウ総理が最初にしたことは韓国への巨額スワップ(増額)と訪韓でした。
今回政権交代したら
・通貨スワップ増額 1000億ドル
・戦時売春婦、戦時出稼ぎへ無制限賠償
でしょうか
笑い話にはできません
左翼とは別名活動家です。
我々より強力です。法律を守りません。
本当に強力です
くどいようですが、日韓スワップを再開して韓国に何かメリットがあったのでしょうか?
聞くのは経済危機のニュースばかりですが・・・
経済危機があれだけ叫ばれてもニュースどまりで
現実のものとなってはいないのは すでに
日本の通貨スワップ再開のおかげと考えます。
それなのに、
朝日吉田の捏造もとにした
自称従軍慰安婦や、
そのオカワリクレクレの
自称徴用工などで
日本に不当な謝罪と賠償タカり続ける
韓流式には呆れます。
アジア通貨危機で韓国経済ウォン崩壊の際は
アラングリンスパン議長の回顧録に
詳述されているように米国が助けました。
そのかわり、サムスン現代などの財閥資本過半を
外資にゲットした米国の経済植民地状態で
今に至ります。
リーマンショックの際は、
もはやめぼしいものは残ってなかったので
日本の韓流政党民主党政権をこれ幸いと
巨額売国野田スワップで日本に押し付け、
韓国はウォン崩壊気にすることなく
恩仇ウォン安誘導で海外市場で日本製品駆逐して、
韓国経済劇的回復、日本は派遣切りなどで
多くの労働者 国民が途泥の苦しみを味わったのが
まさに悪夢の・・・ の構図です。
韓国としては、
二匹目のドジョウウッシッシ狙いで、
日韓スワップ増額でウォン崩壊免れて
ウォン安誘導での日本経済蹂躙に向けて
日本の傀儡集団使っての画策がさらに
激しくなってくることでしょう。