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外国人観光客に配慮して道路標識を変えるべきなのか?

増え続ける外国人観光客に配慮して、道路標識を外国人にもわかりやすいものにすべきだ、といった意見がでてきているようです。もしも「日本人にとってもわかり辛い標識をわかりやすくすべきだ」とする主張であれば、それは正しいものですが、外国人に配慮するあまり日本人に不便をかけるようなことがあったとすれば、それは明らかに本末転倒です。

円安?訪日外国人が史上初めて月間300万人を突破!

先日の『訪日外国人が史上初の三百万人台も…素直に喜べるのか』でも取り上げたとおり、日本政府観光局(JNTO)の発表【※速報値ベース】によれば、2024年3月に日本を訪れた外国人は3,081,600人と、単月として史上最高値を更新したことが判明しました。

1ヵ月で300万人を超えるのは史上初の「快挙」(?)です。

これには、さまざまな要因が考えられるでしょう。

パッと思いつく要因としては、「円安が進むなかで、外国人から見て日本旅行の『お得感』が強まっている」、というものがあります。

たとえば日本への旅行コストが15万円だったとすれば、1ドル=75円の時代だと外国人が準備しなければならないおカネは2,000ドルですが、1ドル=150円の時代になれば、そのおカネは半額の1,000ドルで済む計算です。

この点、あくまでも個人的な印象ですが、日本旅行にやってくる外国人(とくに米国人や欧州人など)が増えている要因は、為替というよりも物価ではないか、という気もするのですが、とりあえずこの点は脇に置くとしましょう。いずれにせよ、同じ物価水準でも円安になれば、外国人から見て日本旅行の「お得感」が強まります。

また、インバウンド産業において、外国人が日本に落とすカネも増えてくれば、日本経済全体も潤うことになりますし、地域振興という効果も得られるでしょう。

だからこそ、政府は訪日外国人観光客を増やそうと躍起になっているのだと思われます。

観光業を推進する2つのメリット

ただし、数年前の『【宣伝】正論2020年5月号に論考が掲載されました』などを含め、当ウェブサイトでもしばしば指摘したとおり、著者自身はインバウンド観光を「積極的に」推進することの効果に関し、あまり肯定的に考えているわけではありません。

まず、観光業を推進するメリットは、少なくとも2つあります。

それは、①「外国人観光客がおカネを落としてくれる」という効果(いわゆる「経済波及効果」)が得られることと、②日本を訪れた外国人が日本のファンになってくれるという効果です。

インバウンドを推進する人たちは、①の効果にばかり注目するきらいがありますが、個人的にはこの②の効果こそ、大変に重要だと考えています。「日本は良い国」、「日本は素晴らしい国」という印象が外国人にも広まれば、それだけで大変な国益となるからです。

たとえば、中国人が日本を訪れ、自由でありながらも秩序が取れた日本という国を直接に体験すれば、日本のファンになるだけでなく、将来的には中国共産党が支配する自国の在り方の異常性を認識する人が増えることにもつながるかもしれません(人間、一度「自由」の味を知ってしまうと、後戻りできないものです)。

また、欧米で「日本は素晴らしい国だ」という認識を持つ人が増えれば、万が一、日本に侵略しようと虎視眈々と狙う国が出現したとしても、欧米を中心に「日本を守るのに協力すべきだ」と考える人が増えること自体が抑止力となる効果も期待できるでしょう。

さらには、2つめの効果に伴う副次的なものとして、欧米人などの歴史認識が変わる可能性もあります。

米国では、広島と長崎への原爆投下は「戦争を終わらせるために必要だった」と信じ込まれている、というのは、わりと有名な話ですが、米国人が直接に日本を訪れて広島の原爆記念館や原爆ドーム、島病院前の記念碑などを訪れれば、原爆投下が誤っていたと気付くケースもあるのではないかと思います。

こうした効果を踏まえれば、インバウンドは政治的・文化的な側面からも、日本の地位を高めることにつながるといえますし、日本に対し、経済面だけでなく、さまざまな効果をもたらすことは間違いないと考えて良いでしょう。

交通機関がマヒ…「みどりの窓口」混乱も!

以上を踏まえたうえで、改めて苦言を呈してきますが、「インバウンドは何が何でも推進すべき政策」ではありません。そもそも論として、経済においては「需要」と「供給」という鉄則が存在し、供給量が一定であるなかで需要だけが増えてしまうと、モノ、サービスなど、ありとあらゆる価格が押し上げられてしまうからです。

その典型例が、公共交通機関のマヒ・機能不全です。

昨年の『「京都市民の怒り爆発」…観光目標数独り歩きのリスク』などでも紹介しましたが、京都市など一部地域では外国人観光客などが、市民の日常生活を支えている「足」である公共バスなどに殺到し、市民生活が脅かされている、といった事例が出て来ています。

(※これについては著者自身も現地の人々に対するヒアリングなどを通じて裏を取っているのですが、一部地域だとこの問題は本当に深刻化しているようです。)

また、先日の『スマホ1台で新幹線に乗れる時代』などでも指摘しましたが、折からの人材不足のためでしょうか、JR各社では「みどりの窓口」を削減しており、有人窓口で切符や定期券などを買い求めるのが大変不便になりつつあります。

もちろん、『えきねっとアプリ』や『スマートEX』、モバイルSUICAといったスマートフォンのアプリを使いこなせる人であれば、べつに「みどりの窓口」がなくても困らない、というケースはあるでしょう(ちなみに著者自身は無駄に新しい物好きであり、この手のアプリにはパッと飛びついてしまうクチです)。

しかし、券種によっては有人窓口などでしか買えないものもありますし(学割定期券を新規購入する場合や子供用SUICA、「ジパング倶楽部」割引切符など)、とりわけ3月から4月にかけての時期は学割定期購入者で窓口が大変に混雑してしまいます(※経験あり)。

こうしたなかで、「ジャパンレールパス」を所持した外国人観光客が指定席を予約したり、指定席券を受け取ったりするのに「みどりの窓口」に並んでいたりするため、一部の駅では混雑が常態化していて、窓口に何十人もの人々が待っていたりすることもあるようです。

現実離れした政策は「ミス」

たとえば学割に関していえば社会全体のシステムの問題、という気もしますし、「ジパング倶楽部」「ジャパンレールパス」など「自動化できない仕組み」の方に問題があるのではないか、といった疑問もないではありません。

しかし、一部地域のバス路線のマヒ、あるいは「みどりの窓口」の大混雑といった問題を見るに、ただでさえ社会全体で働き手が不足し始めているなかで、インバウンドを積極的に受け入れているだけの余裕が、果たして現在の日本経済にあるのか、疑問です。

繰り返しになりますが、産業振興という観点からは、限られた人材は半導体やデータセンター、金融など、日本がすでに得意としている分野の成長を加速のに投入される方が遥かに効率的です。

もちろん、「観光業が儲かって儲かって仕方がない」という状況になり、その結果、観光業に人材が群がるようになるならば、それは自然な話です。しかし、国が「産業振興の一環として」観光業を取り立てて盛り上げるというのは、産業政策としては適切ではない可能性があるのです。

このあたりは本来ならば重視しなければならない原子力、火力、水力などの電源をないがしろにし、再エネ賦課金などの理不尽な仕組みを使用してまで、太陽光という「現実離れした発電手段」を重視している現在の日本の電力政策とも通じる「政策のミス」ではないかと思う次第です。

道路標識を「外国人にわかりやすく改正すべき」なのか?

さて、こうしたなか、もうひとつ発見したのが、こんな話題です。

増加する来日外国人から「日本の標識はわかりづらい」の声! それを受けて「改正すべき」の意見も上がるがそれって本末転倒では?

―――2024.04.22 08:02付 carview!より

『カービュー』というウェブサイトに22日付で掲載された記事によれば、日本にやってきた外国人から日本の道路標識が「わかり辛い」との声が出ているとして、「外国人ドライバー増加に伴い、わかりやすい道路標識が導入される可能性がある」、などと指摘するものです。

いちおう誤解なきよう申し上げておきますが、これは記事を執筆した方が、「日本の道路標識は外国人から見てわかり辛いから改良すべきだ」と述べているわけではありません。むしろ逆です。

このあたり、仮に「日本人にとってわかり辛い標識をわかりやすくすべきだ」とする主張があれば、それは正しいものだと思いますが、「外国人にとってわかり辛い標識を、外国人にとってわかりやすくすべきだ」、などと主張しているのであれば、それは本末転倒です。

しかも、外国人ドライバーが増えることの弊害は、それだけではありません。

記事によれば、レンタカーを空港ターミナル出発カウンター近くの路上や都内のコンビニ駐車場などに放置したまま帰国してしまったケースもあったほか、記事執筆者自身が目撃した事例では、「軽自動車のライトバンに明らかに5名以上乗車して走っていた」というものもあったのだとか。

(※もっとも、悪質な事例だと、そのレンタカーの借主である外国人のクレジットカードに対して実損害をチャージする、といったこともできそうな気がするのですが、いかがでしょうか?)

日本人にとっての利便性を低下させるのはいかがなものか

インバウンドのレンタカーとはすこし話題がズレますが、著者自身も都内の地下鉄で、車内の案内から日本語が消えたという事例を目撃することがよくあります(図表)。

図表 日本語が表示されていない地下鉄車内

(【出所】著者撮影)

インバウンドを振興するのも結構ですが、ここは日本ですので、日本人にとっての利便性が極端に低下するようなかたちでの配慮はいかがなものか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (21)

  • 道路標識、電車内の案内等など、「配慮」しようとする精神の事を「植民地根性」と言います。
    JR東海(新幹線)のような毅然とした対応を高く評価したいですな。

  • 管理人様の意見に全面同意します。観光客が多いフランスやイタリアですら自国語を無くして外国語のみの標識なんてやっておりません。
    国交大臣が長らく公明党の固定ポストとなっており同党の中国韓国との癒着も考えると、これ以上のインバウンド促進は有害とすら思えます。

  • またまた何も知らない、何も調べることをしない人々のお話ですね。
    道路標識の国際協調については以下がよく纏まっています。

    https://www.mlit.go.jp/road/sign/sign/douro/s_world.htm

    まずは現状把握。
    道路標識の国際協調を語るならば、
    当該分野の国際的な歴史経緯実情を正しく把握することこそやるべきことの第一歩です。

  • 電車の電光掲示板について
    英語表記→分かる。国際標準。まぁ読める。
    簡体字表記→許容。まぁ読める。
    ハングル表記→テメェはだめだ。ひとっつも読めん。

    • 難読な駅名はアルファベットで分かりやすかったりすることありますね。

  • 先日、ターミナル駅止まりの電車で、乗客全員が降りた後、キョロキョロしながら不安そうに白人男性が一人座席に座ったままだったので、この電車は当駅止まりだからと降りるように言い、何処へ行きたいのか?と訊くと、空港と言うので、乗り場を教えてあげたことがありました。白人男性なので、英語だろうと拙い英語で話しかけたのだが、キョトンとしているので、後から考えると、英語圏の人ではなく英語が分からなかったなかな?とも思いました。勿論、日本語訛りの発音が分からなかったかもしれません。
    言いたいことは、英語が分からない観光客もいる、では、世界各国の言語で対応出来るようにするのか?ということにもなります。一番多い隣国人だけを優遇しておでん文字を街中に溢れさせるのか?
    結論は、旅行先の国の言葉の片言や世界共通言語の英語の片言や、或いは、スマホの翻訳アプリを準備して行くのが異国観光の仕方だろうと思われます。
    街中(まちじゅう)、おでん文字や変形漢字で溢れさせるのは、逆に、日本の品位を問われて、観光客が来なくなる可能性があります。その国特有の情緒が無くなって。
    我々が、アメリカへ行って、どこへ行っても、日本語が溢れていたら、ここは一体何処?確か、アメリカへ来たはずだが、と興醒めになるのではないか?

    • ≫我々が、アメリカへ行って、どこへ行っても、日本語が溢れていたら、ここは一体何処?確か、アメリカへ来たはずだが、と興醒めになるのではないか?

      ここの部分で常々思うところがあります。
      常識のセンスで想像してもらいたいのですが、もしアメリカにおいて習得が難しいとされる日本語表記が日系人が多く住む場所に限らず、街中や地方にまで溢れていたとしましょう。
      意味が理解できない言語が本来の英語表記のサインが読み取り難い状態にまで占有していて、アメリカ国民はそれを見て瞬時に何を思うでしょうか?
      教育が行き届いている階層だけではなく、文字も満足に読めない階層にまで、あらゆる階層の人々が侵略されていると敵意を抱くことでしょう。その表記が日本語であることは他の人々から聞いたり、自身で調べるでしょう。
      同様のことが日本において起こっていると考えることはできないでしょうか?

      https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240119-OYT1T50289/

      中国に対して親しみを抱かない割合がついに86.7%にまで及びました。
      街中に簡体字が溢れた結果として、中国に対して反感度が上がる。対して、街中に繁体字がほとんどない状況で台湾に対する好感度は概ね良い。
      自分は中国や韓国に対して反感度を上げていくための深謀遠慮として、わざとこんな不便なこと(街中に簡体字やハングル文字を溢れさせる)をやっているのではないか、と勘繰るところがあるのです。

  • 今でも翻訳アプリとかありますし、今後は現地言語表示(日本語看板や説明書き等)をスマホカメラでQRコードとかのように読み取って即座に翻訳表示するアプリなんかも標準化されていくと思います。

    その上で、以下は私見になりますが…
    観光案内や説明表記などは準国際公用語たる英語表記だけで充分
    但し、禁止表記や迷惑行為に対する注意表記はやらかしそうな人向けの言語で書いても良いかなぁ…とは思います。
    ※まぁこれやっても「俺達の自由を尊重しろ」(◯人系)、「見えなかった・知らなかった・日本人ごときが俺達に・・」(◯人系)とか言われそうで効果は薄い気もしますが( ´Д`)=3

  • インバウンドが多いのは韓国、中国、台湾の順だったかな?
    なら日本語、英語以外にハングル、簡字体、繁字体くらいで表示すべきだろう。
    駅員の負担軽減のため。

    • そんな景観を損ねるような発想は、古い。
      駅員が、翻訳アプリスマホを持てばいいだけのこと。
      更には、駅員の代わりに、翻訳機能付きの液晶パネルを置いて置けばいいだけ。
      グーグルが、スマホに話しかければ、目的地までの経路をすぐに表示するアプリを提供している時代に、発想の古いことを。
      駅の表示板に、それだけの言語の表示をするとすれば、幾ら掛かると思いますか?
      このコメ主のような古い発想しか持てない人が、未だに組織の管理職をやっているから、日本のDX化が進まないのだろう。

      • すべての観光客が最新の機器を持って使いこなせる前提でモノ言ってるね。
        もしそうなら看板類に外国語表示は全く不要ということかな。

        • スマホレベルを最新と言っているようじゃ。
          今は誰でも持っている。持っていない者がいるとして、そんな極々少数を基準として、社会の仕組を古いままに固定しろと仰るんですか?
          だから、こんな古い考えに拘る管理職がいる組織は昭和のままですわ。

      • いかに看板類に助けられてるかを自覚してないんだね。
        JRで渋谷から山手線で新宿行くのにどっちのホーム使えばいいか看板見ないの?山手線だからどっちに乗ってもいずれ新宿に止まるけど。
        毎日使ってれば別だけど、たまにしか使わなければ必ず看板のお世話になるね。
        自分の降りる駅、駅名が書かれた看板で確認しないの?またはアナウンス。
        たった2日前に実際にあったことだが、ある地下鉄駅の出口の番号はわかっていたのに、その出口が地下鉄構内のどこにあるのかがわからない(おおきな駅なので)。うろうろして看板の矢印がなかったらお手上げだったね。

        • 看板を無くせ、とは全く言っておりません。
          今でも、日本語に英語表記が付加されている看板もあります。それで良い。英語日本語が分からない国の人達には、翻訳機能付き案内ロボット、と言っても、表示パネルが大き目のものを駅の改札口付近や要所に配置するのも、一案だろう、と。
          何にしても、古い発想のままでは、社会は変化出来ないということ。

          • マイクロソフト、グーグル、アップル、アマゾン、メタ、みんなアメリカ発祥。
            でも世界の小切手の75%はアメリカで発行、使用されている。
            アメリカでは紙の小切手を封書で郵送して決済してる人が多いのだ。
            こういう人たちに「遅れてるね」と言って何か益があるのか。
            「うるせーな」という返事が返ってくるだろう。

          • アメリカ合衆国っていうのは西部劇のままの古くさ~~い習慣を捨てない(捨てられない)ですね。選挙は絶対に火曜日だし、人殺しに重宝なピストルを所持するのは必要不可欠な人権だし。
            小切手を使い続けるのも、ヤード・ポンド・インチを変えない(られない)のも、昔からの成熟した社会システムを変えるだけの民度がない(知的レベルの低い人が過半なんじゃないかなぁ。)からでしょね。
            だから、コンピュータ、ソフト、SNS・・・いろいろなツールを開発してきているけど、USAの民衆の習慣までは変えられないんですね。

  • 小田急の駅構内の案内なんか、中国語が簡体字と繁体字の両方で表記されているから、5通りの表示。駅名や列車の種別は、ほとんど漢字なんだから、中国語表記自体がいらないだろう。

    外国人に地名や駅名の読み方が解かるようにするなら、ハングルよりもキリル文字だろう。ロシアだけでなく旧ソ連圏やモンゴルでも使われている文字だから、使用人口はハングルよりも遥かに多い。

  • 日本と日本文化が好きな外国の方が
    ”はるばる”訪れてもらうのは嬉しいですが、
    その一方でそんな外国の方さえも混雑で困惑する
    オーバーツーリズムの弊害が発生しています。

    その原因である、
    人数は眉を顰めるほど多くて一位でも
    日本での消費額は西洋や他のアジアの国に比べ
    極端に少なく、また、多くの人が訪れる今でさえ
    嘘捏造で謝罪と賠償のインネンつけるような国の
    おでん文字をなぜかこれ以上増やせと主張する
    おかしな韓流方面の汚れた工作画策には閉口します。

    日本の文化的景観も阻害する
    必要以上にゴリ推しされた
    おでん文字の増殖に正しく歯止めをかける
    必要を感じます。

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