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横断歩道で一時停止しない自動車は「システムの問題」

以前、「新潟県の一時不停止率は全国ワーストだ」とするJAFの調査報告書を取り上げたことがあります。これについては新潟県の県民性が問題なのではなく、単に調査実施地点の問題ではないか、という気がしないではありませんが、その「ワースト県」である新潟の放送局『BSN新潟放送』は11日、ちょっと気になる記事を配信していたようです。

信号のない横断歩道で一時停止していますか?

以前の『自動車の半数以上は横断歩道で一時不停止=JAF調査』では、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が公開した、「信号機のない横断歩道で歩行者が横断しようとしているときに自動車が一時停止しているかどうか」に関する調査結果の話題を取り上げました。

信号のない横断歩道で歩行者に道を譲る自動車は、まだ半数に満たないようです。「信号機のない横断歩道で歩行者が横断しようとしているときに自動車が一時停止したかどうか」に関するJAFの調査によると、一時停止率は全国平均で45.1%と、昨年の39.8%よりは改善されたものの、依然として半数以上の自動車が一時停止に応じていない実態が明らかになったそうです。都道府県別で見れば長野県では84.4%が一時停止していたそうですが、隣の新潟県では一時停止率は23.2%だったのだとか。JAFが2023年版調査結果を公表一般社団法人日本...
自動車の半数以上は横断歩道で一時不停止=JAF調査 - 新宿会計士の政治経済評論

レポートの原文はJAFウェブサイト『信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2023年調査結果)』で読むことができますが、調査対象となったのは一定条件を満たす信号機のない交差点(各都道府県2ヵ所ずつ)だそうです(※ただし、具体的な地点は非公表)。

調査対象となった横断歩道
  • 信号機が設置されていないこと
  • センターラインのある片側1車線道路であること
  • 原則として調査場所の前後5メートル以内に十字路・丁字路交差点がないこと
  • 道路幅員は片側2.75~3.5メートルであること
  • 交通量の目安は1分あたり3~8台程度であること
  • 制限速度は時速40~60km程度であること

新潟県の一時不停止率は全国ワースト

調査手法の詳細などについては当ウェブサイトの過去記事などをご確認いただきたいと思いますが、結論からいえば一時停止した車は45.1%で、一時停止率自体は上昇しているものの、それでもまだまだ過半数の自動車が一時停止をしないという実態が明らかになったといえるかもしれません(図表)。

図表 信号機のない横断歩道における車の一時停止率(全国平均)

(【出所】JAFレポートをもとに作成)

また、都道府県別別にみると、一時停止率が最も高かったのが長野県の84.4%であるのに対し、その隣県である新潟県が23.2%で一時停止率が最も低かったのだそうです。

ただし、この「都道府県ごとの一時停止率の差」については、個人的には少し留保が必要だと思います。素人考えながら、長野県、新潟県ともに面積が大きな県ではあるにせよ、県をまたいだだけでドライバーの意識がここまでガラッと変わるというのも不自然だからです。

べつに新潟県のドライバーの肩を持つわけではありませんが、両県の停止率の差は、本当に県民性の違いなのでしょうか。それよりも、単にJAFによる調査の実施地点の違いによるものが大きいのではないでしょうか?

同じ制限速度の道路でも、直線でスピードが出しやすい場合と、カーブで見通しが悪く、速度が出し辛い場合で、一時停止率にも違いが生じているのではないか、という気がしてなりません。

したがって、「新潟県のドライバーはけしからん」、「長野県のドライバーを見習え」、などと単純に結論付けて良いかどうかは微妙なところではないか、などと思う次第です。

地元放送局「警察の取り締まりに密着」

それはともかくとして、その「ワースト県」である新潟県では、地元の『BSN新潟放送』がこんな記事を配信していたのが目に付きました。

「気付いた時は病室で手術の後でした…」警察の取り締まりに“密着取材” 横断歩道『ワースト1』の現状

―――2024/03/11 10:53付 Yahoo!ニュースより【BSN新潟放送配信】

記事では冒頭で「新潟県内各地で横断歩道を渡っている子どもが巻き込まれる事故が相次いでいる」と指摘したうえで、取材班が警察の取り締まりに密着し、なぜドライバーが一時停止しないのか、その理由を探る、というものです。

たとえば新発田市富塚町で町内会長を務める武田隆さんが市道で黄色い蛍光ベストを着て子供たちの下校を見守っているのだそうです。

というのも、この市道は国道と県道をつなぐ「抜け道」となり、スピードを出す車が多く、武田さんは市内で今年2月に発生した、下校中の児童3人が軽ワゴン車に轢かれて重軽傷を負った事故を契機に、こうした活動を始めたと紹介しています。

記事に埋め込まれたYouTube動画で確認すると、たしかにJAFの調査レポートで出てきそうな道です。片側1車線で、ほぼ直線でスピードが出しやすいようにも見えるからです。

記事の情報から地点を探してみると、該当する場所はおそらく次の地点であろうと考えられます。

たしかにこの地点、車線自体は少ないものの、線形は良好で、約800メートル弱のほぼ直線となっています。本来は生活道路であるはずが、国道と県道をつないでいるという特徴から、少なくない自動車がビュンビュンと道を飛ばしているであろうことは想像に難くありません。

「気付くのが遅れた」「そもそも交通ルールを意識していない」

じつは、この手の道路、新潟県に限らず、全国各地にあります。

『BSN新潟放送』の記事にもあるとおり、「道路交通法では『横断歩道では歩行者が優先』と定められていて、歩行者がいる場合、車には停止する義務がある」とされます。

当然、歩行者の横断を妨げた場合は「横断歩行者等妨害等違反」で、違反点数2点、反則金9,000円などのペナルティが課せられる違反です。

しかし、記事にもあるとおり、一時停止する車は(おそらく場所にもよるのでしょうが)非常に少なく、地点によっては非常に危険です。

これについて実際に警察署の取締に同行した取材班は、違反車両の多くが「横断歩道で待つ歩行者に気付くのが遅れた」などと述べているのに加え、そもそも「基本的に横断歩道などあまり意識していないような運転が目立つ」、とする新発田警察署の渡辺寿智署長の発言も取り上げられています。

システム的にどうにかできないものか

正直、これは個別の運転者の運転マナーの問題というよりは、どちらかといえば道路交通システムそのものの問題ではないか、という気がしてなりません。

冷静に考えていくと、自動車は簡単にスピードを出すことができる便利な道具ですが、運転者は加齢とともに動体視力や反射神経が徐々に衰えてくるものですし、なかには安全意識もなしに運転しているような者がいることも間違いありません。

じつは、著者自身もとある街で、わりと大きな公園の近くに信号がない横断歩道があり、ときどき親子連れが道路を渡ろうとしているのに出くわすことがあります。

その道路、制限速度は30㎞ですので、多くの車は速度制限内でゆっくり走っているのですが、なかにはどう見ても50㎞と速度を超過して走っている自動車もいますし、それらの自動車は当然のことながら、横断歩道で待っている人がいても一時停止しません。

このあたりは歩行者の安全を妨害する行為に対する厳罰化とならんで、たとえば道路から制限速度の情報を自動車が受け取り、たとえば自動車自体、「生活道路では50㎞という速度を出すことができない」、といった設計をメーカーに義務付けることなどはできないものでしょうか。

実際のところ、一部の自動車ではすでにナビシステムで制限速度超過を警告してくれるなどの仕組みも採用されているようですが(著者自身が先日運転したレンタカーには、このような仕組みが実装されていました)、こうしたアシスト機能も、社会を挙げて充実を図っていくことも重要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (29)

  • 当方の住む街は交通マナーの悪い地域で横断歩道で歩行者がいても一時停止しないのは勿論、四方向一時停止の交差点でもヨコが止まってるのをいいことに止まらず侵入してきたり(多分確信犯)、まあひどいもんです。
     歩行者も隙あらば横断歩道がない道路を渡ったり信号無視したりが多くて、こちらの方が東京から越してきた友人がびっくりしてました。東京だったら死ぬで、と。
     この数年行政でもPRしてることもあり、横断歩道の一時停止については少しだけ改善傾向です。

  • 100%自動運転の世の中になれば、事故がなくなり、もっとも安全な交通社会になると思ってます。その1歩として、横断歩道や一方通行も含めて、生活道路、通学路、農道、高速道路などで自動制限ができるようになれば、確かに素晴らしいと思います。

    • 少なくとも、エンジン始動に「免許証を挿入する事」と「飲酒運転で無いこと」を義務付けるだけでも、政府はやって欲しいところです。
      (国交省が公明党じゃ難しいかな・・・)

      • いいですね!大賛成です!
        ひき逃げ当て逃げ検挙や、発展すれば「運転情報アーカイブによる取り締まり」にも繋がるかも

      • 運転席にアルコール検知器を組み込んで、検知したら警告が出て発進できなくする機能も追加すればいいんじゃないでしょうか。
        (アルコール消毒等で誤検知する可能性もあるかもしれませんが)

      •  車にカード方式は、危ないと思いますよ!
         カード方式のテレビ、数年で朝見えなくなって暫くしてつけ直すと映ったが、これを繰り返していたら永遠に画面が真っ暗なまま、テレビにカードを入れる方式になってから我が家のテレビ2台とも。
         一番新しいテレビが最悪。
        一番古いテレビは、ビデオを通すと映像が見えるが、五十インチのテレビはそれもダメ。
         カード導入前は、こんなことはなかった。
         これが車だったら朝通勤しようとしたら動かない...とか出先でエンジンがかからない...とか最悪運転中に...何が起こるか分からない。

  •  横断歩道を止まらない事と自転車のヘルメット着用率も全国最下位ということで県民としてはとても恥ずかしい思いをしています。
     基本的に本県のドライバーの運転マナーは悪いと思います。交差点での一時不停止や曲がる直前でウインカーを出す等々・・・。
     この間も横断歩道で歩行者が立っていたので停車しても対向車が止まらない事は日常茶飯事でおそらくドライバーが歩行者に意識が向いていないのだと思います。
     昔、チャイルドシートの着用率が全国最下位で警察が取り締まりを強化したら改善されたようですが、ドライバーも鉄の塊を操縦しているという意識を持って不幸な事故が起こらないように願うばかりです。

    • >横断歩道で歩行者が立っていたので停車しても対向車が止まらない

       横断歩道を横断しながらお礼にお辞儀をする子供達が我が車の前に来た瞬間、対向車が走り抜けた。対向車に気付かなかった登校中の子供達!
       その時は事故にならなかったが、それ以降横断する子供の命を護るため横断歩道で止まるのは対向車が止まっているときか、対向車がいないときとなった。

  • 日本の交通事故死者数は減少を続けてきた結果、相対的に交通弱者(VRU)の死者数の割合が増えてきています。
    今回紹介されたような道路横断中や細街路飛び出し事故の割合が多いので、特にこれらのケースはお互いに気をつける必要があります。
    道路横断の事故は運転者から見て右側から現れる歩行者は視認されにくい傾向があります。従って歩行者の時は左側から近づく車は十分警戒が必要で
    す。そもそも車は左側通行なので、道路を渡る後半で交差するので余計に余裕時間が必要です。
    細街道のケースでは例え検知カメラが歩行者や自転車を認知できる距離が交差点に近すぎ、自動制動が間に合わない可能性があります。
    カーブミラーの利用、一時停止の励行、など心がけが必要です。
    また、万一の場合でも、衝突速度が低ければ、死亡事故が重症事故に、重症事故が軽傷事故に、軽傷事故がヒヤリハットで済むことにつながります。

  •  今(2024)年度 免許更新された方はわかるように今回のテーマは「信号機のない横断歩道での歩行者優先」です

     警察庁では自転車でのヘルメット着用努力をすすめながらより危険性の高い「特定小型原動機付自転車」の規制緩和(義務→努力)(縦割り行政による矛盾)を行なわなければならない

     日本人は比較的リスクマネジメントの意識が薄い方が多いような気がする
    ルールを守ることが自らと家族を守ることにつながると考えられないのでしょうか?

  • 交通法規を守らない運転者が多いのは、自動車教習所やの教習に問題がある、つまり、教習の仕方が悪いのではないか?
    このサイトのコメ主に、教習所経営者がいるようだが。

    • まったくもってその通りですよ。
      交通違反者が生まれる全ての責任は教習所にあります。
      同様に、医療ミスや医療従事者の不祥事は医学部のせいですし、教員の不祥事は教育学部のせいです。
      飲食店で食中毒が発生するのは調理師学校のせいで、警察の不祥事は警察大学校のせい、髪形を変えたらモテると思うのは気のせいです。
      いやー実にシンプルで素晴らしい世界ですね。

      ただ、この論法にはただ一つにして最大の問題があります。

      小学校からスルーしてどこの学校にも通っていない人が犯罪起こした場合、いったいだれの責任にすればいいんでしょう。

      • 理屈は分かったようだが、そこには、自覚が必要だということに気づかなくては。最後の部分、自分で分からないのは、自覚が足りないから。

  • 反対意見です
    複雑なシステムを構築すると、イニシャルランニングともに膨大なコストになるかと
    かつて国交省は、道路にマーカーを埋め込みそれを車側で検知して自動運転、って構想してました・笑
    そんなのよりは遥かに低コストかとは思いますが

    では何か対案が?はとても難しいですが、、
    道路を狭く設計していて離合も出来ない箇所が多い日本では、完全自動運転はかなり先かと思いますし、
    欧州でよく見るハンプも、低コストではあるものの高齢者等への周知次第では却って危険ですし、、

    浅知恵で思いつくのは「ドラレコ通報による取り締まり」ですかね・?
    中国のように街角に監視カメラを網羅させるのは・?と思いますが、
    装着率が高くなったドラレコ映像を根拠に、AIである程度絞り込んだ悪質な違反のみ立件!というのは?
    少なくとも不公平な取り締まり(違反は違反だから、で取り締まる安全な違反等)は減るでしょうし、
    軌道にのれば警察官不足解消→レベルアップにも繋がるかも、と
    併せてIC免許証リーダーの搭載義務も
    ダメムリですかねー

    • 失礼しました
      訂正します

      誤:レベルアップ
      正:低能警官の淘汰

      いつも真面目な警察官には感謝してます
      新宿会計士様、いつも勉強させていただきありがとうございます
      珍しく「うーん、結論と方向性は賛成だけど手段は、」と思いましたので稚拙ながら反抗しました
      これからも楽しみにしております

    • >併せてIC免許証リーダーの搭載義務も
      ダメムリですかねー
       および飲酒検知装着の搭載義務
       以前から検討はされています
      一部の不埒者を対象にした装置の搭載義務は「一般ユーザーが不埒者のために不利益(車両価格の上昇)を受ける」と言うことでかなりの反対があったと記憶してます 

      • 車両価格上昇の懸念は確かに有りますね。特に輸出向けと国内向けをわざわざ作り分けしないといけないので管理コストもかかる。
        同じモノを作ってソフトウェア上で切り替える事は今も行ってますが(例 走行中のドアロック)複雑化するとそうカンタンにはいかないでしょう。

        更に問題になるのは既に生産された車両をどうするのか?移行期間決めて適応型以外は公道走行禁止としないと効果は出ませんが、それらは物流コストに跳ね返って来ますね。
        蛇足ですが自動車産業を持つ国からは新たな非関税障壁と見なされて報復措置を取られる可能性も。

        • 勉強になります!
          あえてネガティブ発言しますが、、
          飲酒検知は切り離して考えた方がいいかと
          理由は、
          ・おっしゃる通り高価になり過ぎる、同乗者・消毒液に誤反応してしまう
          ・吹き込み型でも、エアポンプや同乗者などで安価手軽に対策されてしまう
          挙動不審車を通報、でも多少の効果はあるのかな、と思いました

          最近の車はSIMが搭載されており、ICリーダーなら数千円で調達できます
          既に車にはポテンシャルはほぼあるかと
          あとは国民の納得感と、おっしゃる通り移行期間ですかねー
          やってみればいい、では済みませんかねー笑

          高齢者に免許返納を!よりも飲酒や一時停止違反も喫緊課題だと思いました
          若輩が反抗ばかりですみません

          あと、発展すれば「ナンバーレス」や「不必要な定期車検廃止」も可能かと
          そうなれば国交省関連の既得利権も削れますし!

  • 歩行者のいる生活道路を抜け道として使ってるってことなら、単純に許可を受けた車以外は侵入禁止にしちゃダメなのかな?
    その区画に住んでる人は許可すれば、生活には困んないだろうと思うのです♪

    • 歩行者優先の法律をも守らないドライバーが、侵入禁止の生活道路のルールを守るとも思えませんが・・・

      •  警察の取り締まりで捕まれば効果てきめんですよ、時に免停ギリギリの場合。

  • 以前、善光寺から越後高田までの北国街道を歩いて旅しました。旧街道は曲がりくねり車道と交差していて、横断歩道のない箇所も多くありましたが、そのようなところでも長野県内では停車してくれました。最初は止まってくれるのかと、びっくりしたものです。私の住んでいるところでは考えられなかったので。ところが県境を越えて新潟に入った途端、横断歩道のないところは勿論、あっても止まってくれる車は皆無に近くなりました。ここまで違うのかとその変わりように呆然としたものです。「県をまたいだだけでドライバーの意識がここまでガラッと変わる」ということが身に染みて判りました。
    この意識の差がどこから来るのか、長野が教育県と言われているのも関係するのかなとも思ったものです。

  • 実際の交通事故発生件数を調べてみると、

    都道府県データランキング 交通事故
    https://uub.jp/pdr/q/a.html

    新潟県の交通事故発生件数は全国29位で、長野県は13位。
    人口10万人当たりでも、新潟県126.7件、長野県235.2件。

    信号機のない横断歩道での一時停車率が新潟県と長野県では約4倍の差がありますが、実際の交通事故発生件数では、そのような差は見られません。
    交通事故防止の観点では有用な統計データとは思いますけど、結果ばかりが先行しているのはいかがなものか?、とは思います。
    最下位の新潟県だけでなく、全国のドライバーが注意すべきことではないでしょうか?。

    昔は信号機のない横断歩道では、黄色の横断中の手旗がありましたけど、最近はありません。歩行者が手旗で明確な横断意志を示して貰えれば、横断歩道での一時停止不履行も減ると思います。
    何でも自動車に装備するのは誤作動のリスクもあります。当方の使用車にも自動ブレーキ機能が装備されていますが、実際に動作しているかは、稀に鳴る警告音でしか判断出来ません。今の所、実際に急ブレーキが動作したことはありません。

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