知らぬうちに金融犯罪の片棒を担過がされることも！

数年前に猛威を振るったのが、『リサニート城を買う』というスパム・ユーザーの存在です。これは大手ブログサービスに生息していて、次々と名前を変え、ほかのブログ・ユーザーにコメントを残していくという手法で、自身の詐欺的リンクにユーザーを誘導する、という手口で知られていた者です。その後、時代は変わり、Ｘ（旧ツイッター）では最近、「鬱で負債まみれだったけれども成り上り、資産が数十億円になった女社長」が大量に出現するようになりました。ただ、やっていることは、本質的には「リサニート」とまったく同じです。

リサニート（と快便アドバイザー）の思い出

歴史は繰り返すものなのかもしれません。

著者自身は当ウェブサイトを立ち上げる前、今から約８年ほど前までは大手ブログサービスを使用していたのですが、当時、大変困惑していたのがスパム・ユーザーの存在でした。

そのなかでも強烈なものが、『リサニート城を買う』（以下「リサニート」）、です。

この「リサニート」、おそらくは数十から数百のアカウントを持ち、「城を買う」の部分が「海外に行く」になっていたり、あるいは「（女性っぽい名前）＋ちょっとここだけの話」というアカウント名だったり、いくつかのパターンがあったのですが、共通しているのはそのコメントの強烈さです。

タイトル「初めまして」

ユーザー：優香～ちょっとここだけの話～

「面白そうな記事を探していたらここのブログにたどり着きました。私はここのブログのデザインが好きです。暇があれば私のブログも覗いてみてください。」

タイトル「はじめまして」

ユーザー：リサニート城を買う

「季節の変化を感じる今日このごろです。俗にいうリア充というやつでしょうか、羨ましいです。今でも風で飛んでいきそうな私のブログですが、ご覧いただけると幸いです」

タイトル「こんばんは！」

ユーザー：リサ～ニート城を買う～

「引きこもりですが、恐縮ながらコメさせて頂きます。小学校の時に絵日記には特別なことを書かなくてもいいといわれたのをこのブログを見て思い出させられました。気になるニートの生活が見れるブログを書いております。」

タイトル「無題」

ユーザー：優香 ~ちょっとここだけの話~

「以前から読ませてもらってます！今日はコメントを残しますね。いろんな人のブログを見ていると、勉強になることがたくさんありますね！多分、私のブログは相当色濃く、私のキャラクターが出ています。。。良かったら見てね(^_^;)」

タイトル「こんにちは？」

ユーザー：えり１７歳でヨーロッパ３０ヶ国制覇♡

「初コメです？彡色々ブログ巡りをしていたらたどり着きましたこんな風に知らない人とコミュニケーションできるのっていいですよね。私はヨーロッパで仕事しながらブログ書いてます。よかったら遊びに来てください★」

タイトル「風に吹かれて」

ユーザー：ゆり＠女子大生

「たまたま来たのでお邪魔します♪やっぱり他の人のブログはいろいろ面白いですヽ(´▽｀)/お互い記事更新頑張りましょうね！！ヽ(*´∀｀)ノ」

タイトル：無題

ユーザー：快便アドバイザー

「魂のレベルアップを目指すブログ書いていますゆるです(〃∇〃)検索でヒットしたので来てみました(*^o^*)/~人の視点って色々違うので、様々なブログに出会うことって楽しいですよね♪(^人^）次回も来たいです～」

…。

長々と内容のない記事、最後にメルマガに誘導

最後の「快便アドバイザー」は、おそらくはこの「リサニート」とは別人だと思われますが、それにしてもゴミのようなコメントの数々です。

これらのコメントの共通点は、ブログ記事の「内容」には絶対に触れず、「とにかく当たり障りのないことを書いたうえで自分のブログ記事に誘導する」――、といったものです。

騙されてうっかりこれらのブログに誘導されると、今度は「ただのニートだった私が城を買えるようになったわけ」、などといった記事にたどり着き、「その秘密が知りたければ、このメルマガを読んでね♡」、と、さらに怪しげな外部リンクに飛ばされる、というわけです。

ただ、この手の「リサニート」、「快便アドバイザー」らが猛威を振るったのは2014年から16年ごろにかけての時期だったのですが、その後はその大手ブログサイトの運営側も本腰を入れてスパム・ユーザーの駆除に乗り出したらしく、調べたところ、現在でも残っているものとしては、次のような記事くらいです。

ニートが城を買えた理由♡

こんにちは！⏎⏎24歳 ニートです 。⏎⏎会社に入社 しても3年な んて続くわけもなく⏎⏎す ぐに仕事をやめ てしまう⏎⏎ニ ートまっしぐらのリ サです！⏎⏎「ニート 城を買う」 に遊 びに来てくれてありがとう！⏎⏎今 日のブログは こんな人に読ん でもらえると 嬉しいです！<<…続きを読む>>
―――2017-03-07 18:31:27付　アメブロ『リサ 〜ニート城を買う〜』より

リード文の「⏎」は、改行を意味します（無駄に改行が多いのもこの手の詐欺ブログの特徴です）。

もしリンク先記事を読む方は、騙されてうっかりリンクを踏んでしまったりしないようにご注意ください（※なお、少なくともこの記事に関しては外部リンクがすべて死んでいて、うっかりクリックしても安全であることを、いちおうは確認済みです）。

内容がない記事が長々展開された末に、最後はメルマガに誘導――。

正直、まともなリテラシーをお持ちの方であれば、「こんな低レベルな記事に騙される人がいるのか」、などと思うかもしれません。

しかし、現実には詐欺に騙される人は後を絶ちませんので、やはりブログ業者としては、この手の詐欺ブログについてはひとつひとつ地道に根絶していく努力が必要でしょう（※もっとも、今回紹介した『リサ～ニート城を買う～』に関しては、一種のアーカイブとして保存しておく価値はあるかもしれませんが…）。

最近増えて来た「鬱で借金まみれから成りあがった女社長」

さて、どうしてこんな古い話題をいきなり出してきたのかといえば、どうしても紹介しておきたい論点があるからです。それが、最近Ｘ（旧ツイッター）に湧く、「鬱で借金まみれだったが成り上がり、資産を35億円持っている女社長」です。

ユーザー名とアカウント、プロフィールを列挙すると、こんな具合です。

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…。

とりあえず、こんなところで十分でしょう。

これらの者たちの特徴は、「鬱病で借金まみれ」などの悲惨な経歴を持ち、そこから大成功をおさめ、資産を数十億持っていて、Ｘ上で現金を配布している、などと称している点にあります。

知らぬうちに金融犯罪に巻き込まれてしまう（かも）

もちろん、現実に「現金配布」などをすることは絶対にありません。

以前の『ツイッターで「お金配ります」は新たな金融犯罪の温床』あたりでも触れましたが、この手のアカウントの特徴は、「フォローする」、「いいねを押す」などを条件におカネを配る、と称している点にあり、まずはアカウントの転売などを目的としているものである可能性が指摘されています。

もちろん、アカウントの転売はＸのルール違反なのですが、それでも多数のフォロワーを獲得しているアカウントは高額で売買されているという実態もあるようですし、手っ取り早くフォロワーを獲得することだけがビジネスになっている可能性があるのです。

また、もうひとつ考えられる可能性は、「金融犯罪の受け子」を募集している、というものです。

わかりやすく具体例で示しましょう。

仮にこの「金融犯罪の受け子」をＡとします。

Ａはある日、「このアカウントをフォロー・いいねしてくれたら、10万円差し上げます」と謳っているＸの「お金配り」アカウントを発見し、そのアカウントを実際にフォローしたところ、「あなたに10万円を送金したいので、銀行口座を教えてくれ」とするメッセージをＤＭで受け取ります。

Ａが自身の銀行口座情報をＤＭで返送したところ、Ａの口座に100万円が着金し、それと前後してＡのＤＭ宛に、「あなたに10万円送るつもりが、ひとけた間違えて100万円を送ってしまった」、「申し訳ないが90万円を現金で新宿駅まで持ってきてくれないか」、などとするメッセージが届きます。

Ａが指示通り、口座から90万円を現金で引き出し、それを駅に持って行って、指示された待ち合わせ場所に現れた人間に手渡したところ、「口止め料」と称してさらに追加で10万円をもらったとしましょう。

Ａとしてはアカウントをフォロー・いいねしただけで、振り込みで100万円もらい、90万円を相手に返金したとはいえさらに追加で10万円をもらって、ホクホク顔です。ほとんど何もしていないのに、20万円をもらうことができたからです。

ある日いきなり逮捕されることもある…かも！？

この取引のなにが問題なのか、理解できる人は、相当の金融ツウです。

じつはこのＡがもらったおカネは、金融犯罪――端的にいえば、「振り込め詐欺」の被害金であり、Ａは知らず知らずのうちに金融犯罪の共犯者にさせられていたのです。そして、犯罪者一味が本当に欲しかったのは「フォロワー」や「いいね」ではなく、Ａが所有する銀行口座情報です。

「オレオレ詐欺」でＢさんに「あなたの息子が事故を起こした」、「示談金100万円をＡという人の口座に振り込んで欲しい」と騙し、Ｂさんが犯罪者一味の指示通りにＡの口座に100万円を送金。銀行口座の動きから、Ａは手元に10万円を残し、残り90万円を引き出した、という実績が残ります。

そして、この90万円は現金で犯罪者一味の手に渡ってしまうため、そこから先を追いかけることはできません。しかし、警察としてはＡの口座にたしかに100万円が着金している事実を確認していますので、まずはＡが振り込め詐欺の容疑者として検挙されるはずです。

Ａが20万円をもらってホクホクしていたら、Ｂさんからの被害届けで警察当局が動き、ある日いきなり警察関係者がＡの自宅に踏み込んできて、逮捕されてしまう、というわけです。

このあたりは新時代ならではの犯罪であり、間違っても騙されないようにしたいものです。