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1月の訪日外国人は過去最高水準

外国人観光客の支出額は最大でもせいぜい年10兆円程度か

訪日外国人が1月としては2019年と並び、過去最高水準に達したことがわかりました。また、訪日外国人に占める中国人の割合は2019年と比べて激減しており、日本の観光産業の「脱中国化」は進んでいます。ただ、その一方で、外国人の旅行支出額は年間でせいぜい7~10兆円程度であり、これを最優先で国家の基幹産業に据えるべきというものではありません。日本は製造業や金融業が十分に強いからです。

JNTOデータ、1月としては過去最大に!

日本政府観光局(JNTO)は21日、最新版の訪日外国人データを公表しました。

これによると2024年1月における訪日者数(※速報ベース)は2,688,100人で、コロナ前の2019年1月の2,689,339人と比べ、ほとんど遜色のない水準となりました。1月としての訪日客数としては、過去2番目です。

1月の訪日外国人数
  • 1位…2019年の2,689,339人
  • 2位…2024年の2,688,100人
  • 3位…2022年の2,661,022人
  • 4位…2018年の2,501,409人
  • 5位…2017年の2,295,668人
  • (参考)2021年…46,522人、2022年…17,766人

(【出所】JNTOデータ)

訪日客数の脱中国化が進む

ちなみに訪日外国人のトップは韓国人で、1月だけで857,000人が訪れており、訪日客数の3割を占めているほか、2位の台湾も492,300人で訪日客の2割弱を占めており(図表1)、いずれも単月の訪日客数としては過去最多を更新しています。

図表1 訪日外国人(2024年1月)
人数 割合
総数 2,688,100 100.00%
1位:韓国 857,000 31.88%
2位:台湾 492,300 18.31%
3位:中国 415,900 15.47%
4位:香港 186,300 6.93%
5位:米国 131,800 4.90%
6位:豪州 103,600 3.85%
7位:タイ 90,600 3.37%
8位:フィリピン 56,800 2.11%
9位:ベトナム 44,600 1.66%
10位:インドネシア 41,300 1.54%

(【出所】JNTOデータをもとに作成)

ちなみに2019年1月と比較すると、中国人が338,521人減っていますが韓国、台湾、香港、米国、豪州などがいずれも大きく伸びている様子がうかがえるでしょう(図表2)。

図表2 訪日外国人(2024年1月vs2019年1月)
2024年1月 2019年1月 増減
総数 2,688,100 2,689,339 ▲1,239
1位:韓国 857,000 779,383 +77,617
2位:台湾 492,300 387,498 +104,802
3位:中国 415,900 754,421 ▲338,521
4位:香港 186,300 154,292 +32,008
5位:米国 131,800 103,191 +28,609
6位:豪州 103,600 81,063 +22,537
7位:タイ 90,600 92,649 ▲2,049
8位:フィリピン 56,800 35,987 +20,813
9位:ベトナム 44,600 35,375 +9,225
10位:インドネシア 41,300 32,477 +8,823

(【出所】JNTOデータをもとに作成)

この点、先月の『観光分野の「脱中国化」進む日本』でも指摘したとおり、中国人訪日客がコロナ前と比べてあまり戻って来ていないにも関わらず、ここ数ヵ月は訪日客数が過去最多水準に近づいています。

今回も1月としての訪日者数が過去最高水準にほぼ並んだことで、まさに日本が「インバウンド観光大国」としての地歩を固めつつある様子がうかがえます。

昨年10-12月期で消費額は1.7兆円

では、この観光客の増加によって、日本経済には具体的にどのような影響が出ているのでしょうか。

観光庁が先月17日に公表した『2023年10-12月期の全国調査結果(1次速報)の概要』によると、2023年10-12月期における外国人の旅行消費額は、2019年の同期と比べ37.6%増え、1兆6688億円だったのだそうです。

これを単純に4倍したとすれば、年間で7兆円近い収入です。

参考までに、外国人の出身国に応じた1人あたり支出額について、観光庁のレポートに記載がある21ヵ国を上位順に並べ替えたものが、図表3です。

図表3 国籍・地域別 訪日外国人1人当たり旅行支出と泊数(2023年10-12月期)
出身国 支出額(A) 平均泊数(B) A÷B
スペイン 392,819 14.2 27,663
英国 386,526 14.4 26,842
イタリア 368,783 12.8 28,811
オーストラリア 353,678 12.8 27,631
ドイツ 353,437 15.9 22,229
フランス 342,408 17.1 20,024
その他 339,073 15.9 21,325
米国 324,139 11.7 27,704
カナダ 320,518 14.3 22,414
シンガポール 295,355 8.9 33,186
中国 293,246 10.5 27,928
ロシア 280,062 21.3 13,148
マレーシア 244,107 10.7 22,814
インド 233,787 19.7 11,867
ベトナム 233,319 21.8 10,703
香港 230,748 6.5 35,500
インドネシア 198,353 11.9 16,668
フィリピン 193,192 13.1 14,747
台湾 190,113 6 31,686
タイ 187,213 7.8 24,002
韓国 103,943 3.9 26,652
全国籍・地域 218,201 8.6 25,372

(【出所】観光庁『2023年10-12月期の全国調査結果(1次速報)の概要』データを参考に作成)

訪日外国人が増えることで、国内で落としてくれるカネも、順調に増えている、というわけです。

この調子で増えていけば、今後数年以内に、年間10兆円近くに達するかもしれません。

観光業は最優先で振興すべきものでもない

ただし、普段から指摘している通り、日本は観光産業を主要産業に据えるべき国ではありません。そもそも日本では製造業が非常に強く、日本の輸出額は自動車、半導体製造装置、半導体等電子部品といった高度な工業製品を中心に、2023年実績で総額100兆円を超える額を輸出しているからです。

また、経常収支構造を見てもわかるとおり、日本の産業は①金融機関や機関投資家などが保有する膨大な対外証券投資、②製造業などが海外に作った子会社・合弁会社などを通じて連結ベースで儲けた利益の配当金収入――などで潤っている国でもあります(図表4)。

図表4 日本の経常収支推移

(【出所】財務省『国際収支の推移』データをもとに作成)

もちろん、日本という国が外国人から見て魅力的であることにより、結果的に多くの外国人が観光客として日本を訪れ、日本のファンになってくれるというのは、決して悪い話ではありません。また、そのようになることで、日本にとっては安全保障上の地位も間接的には上昇することでしょう。

さらには、熱心な日本のファンができれば、そうしたファンは日本旅行のリピーターになってくれることも期待できますし、日本の文化、風習などを心行くまで楽しんでいただきたいところです。

しかし、それと同時に大変残念ながら、外国人観光客が現在の倍の年間6000万人になったとしても、これらの外国人による支出額が製造業などの輸出額を上回ることはありません。

このように考えていくと、日本にとって好ましい国(とくに欧米、豪州、台湾など)からの外国人が増えるように努力しても良いかもしれませんが、インバウンド観光産業は製造業や金融業をないがしろにしてまで全力で振興すべきものではありません。

あくまでも「自然体」で良いのではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (5)

  • 日本はこれから観光で生きるしかないとか声大きく叫ぶ人がいますが、論理的に説明されるとなるほどと納得しました。観光はあくまでおまけ的に考えて本業を大事にしなければなりませんね。目先の金儲けに溺れるものは結局は沈むしかない

  • >日本は観光産業を主要産業に据えるべき国ではありません。

    この表現は、このところしばしば採り上げられる、日本への海外観光客が急速に回復しているという話題に関する記事で、決まり文句のように繰り返されていますが、そこまで抑制的に見る必要もないのではと感じています。

    >2023年10-12月期における外国人の旅行消費額は(中略)単純に4倍したとすれば、年間で7兆円近い収入です。

    図表4によれば、2023年の経常収支の黒字は20兆円。ジャパンレールパスみたいな出血大サービスもやってますが、基本、営業努力を怠らねば、既存のインフラだけで、黙ってても7兆円がインバウンドで純増として転がり込んでくるならば、決して微細な金額とは言えないように思えます。

    GDPの規模600兆円と比較すれば、これが近い将来10兆円に増えるとしたところで、そんなのに頼るというのは、たしかに愚かなはなし。肝心要の主要産業をある程度犠牲にしてまで振興するものではないでしょうが、単に金額の規模の問題でなく、景気への波及速度ということを考えれば、案外無視できないようにも思えます。

    製造業、貿易業、金融業などの業績向上は、まずそこではたらく給与所得者のサラリーの増加というある程度時間を要する過程を経て、初めて景気に反映されます。しかし、インバウンドによる収入は、本来景気回復の恩恵を最後に受ける、観光業、小売業などのほとんどが中小、零細業者の懐に、直接潤いをもたらします。

    そう考えると、「日本に来たいなら来ても良いよ」と、おおように構えているよりは、海外観光客誘致の方策を、政府、自治体レベルでもう一段工夫しても良いような気がします。まあ、儲かるなら、お上など当てにせずとも、民間がドンドンやる案件でもあるんでしょうが。

  • 「外国人の旅行消費」は「国内の日本人の家計消費」より期待できるのか。
    同じ10兆円を増加させるのに、どちらが容易なのか?
    冷静に検討するべきでは。

  • 海外旅行客に日本旅行を混雑を抑え楽しんでもらうためにも
    また観光地に生活する日本人のためにも、
    オーバーツーリズムの弊害をコントロールすることは必要で、
    すでに海外で人気のある国25か国では
    入国税を導入しているとのことです。

    シミュレーションとして
    たとえば一人一律4000円の入国税を導入したします。
    図表3でお示しいただいた
    訪日外国人1人当たり旅行支出をもとにして
    入国税の割合を算出すると、
    ほとんどの国が旅行支出額の1%台にとどまり
    韓国を除くアジア4国でも最大2.1%までで、1
    負担感は大きくありません。
    そして
    バランスを欠いて大量入国の韓国さんの場合は、
    彼らの支出額の極端な低さから3.8%になります。(^^)
    さらに2%台の 
    インドネシア、タイ、フィリピン、台湾、についても、
    UNCTADの非先進国は割引の3千円とすれば1%台になり、
    見栄を張って希望での先進国入りした韓国さんだけが
    堂々の3.8%となり、とても良い効果が期待できます。

    まあ、
    韓流政党で知られる立憲民主党さんとかは
    反対どころか 韓国さんだけは免除せよ!などと
    とんでもない主張をしてしまいそうですが・・・(^^);

  • 観光というものは、余暇に行うものなのだから、その産業が国の主要産業になることは無い。国の中の観光に適したある地域が、観光都市になることはあるだろうが。然し乍ら、その都市の中でも、観光だけで生業が成り立ち、観光業で食べているというのは、ごく一部の地域だろう。
    京都は観光名所が多い都市だが、観光業で生計を立てているのは一部の地域だろう。
    何しろ、京都には、名だたる大企業が多い。京セラ、村田製作所、村田機械、島津製作所、等々の本社がある。京都は最大の観光都市だが、観光だけで食べている訳ではない。ましてや、他の都市や県が観光だけで食べられる訳がない。
    よって、観光立国なんてことはあり得ない。

    今、外国人観光客の数が、コロナ禍以前戻り、外国人観光客消費額7〜8兆円と倍増の勢いというのは、観光客数が最も多く消費額が最も少なかった中国人観光客が激減し、他の地域からの客が増えているからだろう。
    観光業のGDPに占める割合は、コロナ禍が始まる直前で、約5%程。国民の国内観光消費が24兆円程、外国人観光消費が4兆円程。合わせて、28兆円程であった。

    ところで、図表3を読んでみると:
    (国名の前の記号 : ●欧米豪、◯アジア・ロシア)

    泊数について、
    20泊以上 : ◯ロシア、◯ベトナム
    15〜20未満泊 : ●ドイツ、●フランス、◯インド、◯その他
    10〜15未満泊 : ●スペイン、●英国、●イタリア、●オーストラリア、●米国、●カナダ、◯中国、◯マレーシア、◯インドネシア
    5〜10未満泊 : ◯シンガポール、◯香港、◯台湾、◯タイ
    5泊未満泊 : ◯韓国

    1泊当たり消費額について、
    3万円以上 : ◯シンガポール、◯香港、◯台湾
    2.5〜3万円未満 : ●スペイン、●英国、●イタリア、●米国、◯中国、◯韓国
    2〜2.5万円未満 : ●ドイツ、●フランス、◯その他、●カナダ、◯タイ
    1.5〜2万円未満 : ◯インドネシア
    1〜1.5万円未満 : ◯ロシア、◯インド、◯マレーシア、◯フィリピン、◯ベトナム

    総消費額について、
    30万円以上 : ●スペイン、●英国、●イタリア、●オーストラリア、●ドイツ、●フランス、●米国、●カナダ、◯その他
    25〜30万円未満 : ◯シンガポール、◯中国、◯ロシア
    20〜25万円未満 : ◯マレーシア、◯インド、◯ベトナム、◯香港
    15〜20万円未満 : ◯インドネシア、◯フィリピン、◯台湾、◯タイ
    10〜15万円未満 : ◯韓国

    欧米豪は、日数が長く、1泊当たり消費額が多く、総額も多い。
    それにしても、ロシア、インド、ベトナム、は滞在日数が異常に多いのだが、何をしているのだろう?1泊当たりの消費額も低くて、貧乏旅行をしているのか?
    韓国は、滞在日数が異常に短い。国内旅行代わりにリピートしているのか?公教育で徹底した反日嫌日を教えられているのに何をしに来るのか?まさか仏像を探しに来ているのか?