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昨年の訪日外国人数は過去4番目

2023年12月の訪日外国人は273万人で「12月としては」過去最大

日本政府観光局(JNTO)が17日に公表したデータによると、2023年を通じた訪日外国人数は2507万人で過去4番目の水準に達しました。過去最高だった2019年の3188万人には及ばないにせよ、2016年の2404万人を超過しています。ちなみに12月の訪日者数は273万人で、これは「12月としては」、過去最大の数値です。また、月次グラフで見ると、とくに最近、訪日外国人は増えています。ただし、2019年との顕著な違いがあるとしたら、中国人観光客の激減と韓国人観光客の急増でしょう。

訪日外国人は過去4番目

「速報」です。日本政府観光局(JNTO)が17日夕刻に発表した『訪日外客統計』によれば、2023年を通じて日本を訪問した訪日外国人総数が2507万人と、過去4番目の水準だったことが明らかとなりました。

過去最高だった2019年の3188万人や過去2番目だった2018年の3119万人、過去3番目だった2017年の2869万人などと比べれば、それぞれ及びませんでしたが、2016年の2404万人という水準については超過しました。

過去の訪日外国人
  • 1位…3188万人(2019年)
  • 2位…3119万人(2018年)
  • 3位…2869万人(2017年)
  • 4位…2507万人(2023年)
  • 5位…2404万人(2016年)

(【出所】JNTO『訪日外客統計』)

このペースで進めば2024年は過去最高更新か?

このあたり、日本政府が「2020年に4000万人」という訪日外国人目標を掲げていたことを思い出しておくと、この水準と比べればまだまだ不十分ではあります。

ただ、2016年以降の訪日外国人数の月次推移をグラフ化してみるとわかるとおり(図表1)、今年9月以降の訪日外国人数は過去最高だった2017~19年の水準とほぼ並んでいます。

図表1 訪日外国人の月次推移(2016年以降、2020~22年を除く)

(【出所】JNTOデータをもとに作成)

ちなみに12月の訪日外国人数は2,734,000人(速報)で、12月としての値で見たら過去最大です。

もしも今年1月以降もこのペースを維持するのだとしたら、今年、つまり2024年を通じた訪日外国人数は過去最高水準を更新する可能性も出てきます。

国別内訳に大きな違いが!

ただし、訪日外国人の内訳で見ると、コロナ前のピークだった2019年と比べて、顕著な違いが生じていることも間違いありません。

図表2は、2019年(1~12月)と2023年(1~12月)の訪日外国人を、国籍別に比較したものです。

図表2 訪日外国人の国別内訳(2019年vs2023年)
2023年1月~12月 2019年1月~12月 増減
1位:韓国 6,958,467 5,584,597 +1,373,870
2位:台湾 4,202,379 4,890,602 ▲688,223
3位:中国 2,424,969 9,594,394 ▲7,169,425
4位:香港 2,114,378 2,290,792 ▲176,414
5位:米国 2,045,952 1,723,861 +322,091
6位:タイ 995,570 1,318,977 ▲323,407
7位:フィリピン 622,243 613,114 +9,129
8位:豪州 613,105 621,771 ▲8,666
9位:シンガポール 591,304 492,252 +99,052
10位:ベトナム 573,820 495,051 +78,769
その他 3,923,835 4,256,638 ▲332,803
総数 25,066,022 31,882,049 ▲6,816,027

(【出所】JNTOデータをもとに作成。ただし、2023年のデータについては速報値のものが混じっているため不正確である点には注意)

これで見るとわかるとおり、2023年に最も多く日本を訪れた外国人は韓国人で、これに対し2019年においてトップを占めていた中国人は台湾を下回って3位です。

2019年といえば、「ノージャパン」の影響で韓国人訪日客が(とくに8月以降は)激減していた年でもありますが、その韓国人訪日客が急増し、中国人訪日客が急減した格好であり、単純に中韓両国が入れ替わったようなものだと考えて良いでしょう。

そもそもちょっと輸出管理措置を適正化しただけですぐに「ノージャパン」が発生するような国からの観光客がトップを占めているという状況、あるいは独裁政党の一存で観光旅行パッケージ商品が売れたり売れなかったりするような国からの観光客に依存するという状況は、それぞれ、非常に不安定と言わざるを得ません。

外国人観光客誘致と国家戦略

このあたり、著者自身が当ウェブサイト、あるいは月刊正論や著書を通じてこれまでに指摘してきたとおり、そもそも訪日観光客を増やすこと自体を政策目標にすることについて、著者自身は反対の立場です。

もちろん、外国人観光客が増えれば、その分、日本国内で外国人がたくさんのおカネを落としますし(一説によるとその額は年間5兆円前後だそうです)、また、日本にやって来て日本を好きになってくれる外国人(とくに欧米人)が増えれば、間接的に日本の安全保障にも寄与します。

あまり考えたくはないのですが、日本がウクライナのように無法国家から攻め込まる可能性はゼロとはいえませんし、万が一、日本が戦争に巻き込まれたときに、「日本に行ったことがある」という人がたくさんいる国では、「日本を助けよ」という世論がその国でわき上がる効果も期待できます。

その意味で、外国人観光客が大挙して日本にやってきてくれるというのは、日本にとっては決して悪い話ではありません。

経済のためには原発再稼働を進めた方が良いのかもしれない

しかし、それと同時に、産業構造だけで見るならば、日本は観光業といった労働集約的な産業をあまり振興するだけの余裕はありません。

じつは、日本は製造大国であり、輸出大国です。

2022年実績で見て、日本の輸出額(98兆円)のうち製造業に関連する金額は約8割以上を占めていますので、「外貨」という意味では、製造業が観光業の10~20倍を稼いでいるという言い方もできるでしょう。

なお、当ウェブサイトで「日本は製造大国で輸出大国だ」、などと申し上げると、「何を言っているのか」、「日本は貿易赤字国だ」、などと反論を受けることもあります(『「日本は輸入大国でもある」は数字で見て正しいのか?』等参照)。

この点、日本は貿易赤字国ではあるのですが、それは主要な原発の操業が止まっていて、発電などのために外国から大量の化石燃料を輸入せざるを得ない状況にあるからです。

※余談ですが、稼働できる原発がすべて再稼働すれば、2450万kW(日本が必要とする電力の約4分の1相当)の出力が回復しますので、化石燃料の輸入は3分の1から半分は減らせる計算であり、そうなれば貿易赤字幅が圧縮されるか、場合によっては赤字が解消します。

つまり、外貨の獲得と産業振興という観点からは、観光業を振興するよりも、原発の積極的な再稼働を通じて電力供給を安定化させるほうが、国家戦略・経済対策という観点からは優先順位が高いのではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (1)

  • >万が一、日本が戦争に巻き込まれたときに、「日本に行ったことがある」という人がたくさんいる国では、「日本を助けよ」という世論がその国でわき上がる効果も期待できます。

    この観点からも、韓国がトップってのは問題だと思うのです♪
    地理的に遠くて、自分とこに脅威がなければ、好き嫌いで「助けよう」って思ってくれやすいのです♪

    でも、地理的に近いと、日本を助けることで、日本に攻めてきた無法者に標的にされかねないって恐怖が出てくるのは自然なことだと思うのです♪

    下手したら、その恐怖がまさって、無法者に加担したりしかねないのです♪

    だから、近くの国の支援って、あんましあてにはならない気がするのです♪